鴻巣市・桶川市・北本市を受け持つ埼玉県央広域消防本部は、消防用設備等の審査基準を公開しています。
その自動火災報知設備の章には、壁の赤い押しボタン=発信機に付けるカバーの扱いが書かれています。
透明なカバーは障害物と扱わず、福祉施設で利用者のいたずらを防ぐために見えないように覆うことも条件つきで認めています。
この記事では県央広域の基準を原文でたどり、国の条文と鈴鹿市・四日市市・津市・大阪市・東大阪市・堺市の基準とも比べます。
鴻巣市で高齢者のデイサービスを運営しています。
利用者さんが廊下の押しボタンを触ってしまうので、カバーを付けたいのです。
県央広域の基準には、発信機のカバーについて書いた項目があります。
透明なものと見えなくするもので扱いが分かれます。
カバーの種類で扱いが違うのですね。
はい、見えなくする方は令第32条の適用になります。
国の条文から順にたどっていきましょう。
- 国の基準(消防法施行規則第24条第8号の2)は、各階の各部分から歩行距離50m以下・床から0.8m以上1.5m以下・直近に表示灯という位置と数を定めていて、カバーには触れていません
- 県央広域の基準は、視認に影響がなく容易に開けて操作できるアクリル製カバー等を操作の障害と扱わないとしています(▲=行政指導基準)
- 福祉施設で利用者のいたずら防止のために発信機を見えないように覆うことは、従業員への周知の徹底を条件に令第32条を適用して認めることができるとしています
- 50㎡以下の小規模な階は、上か下の階の発信機まで歩行距離25m以下なら、その階の発信機を省略できるとしています(特定1階段等防火対象物を除く)
- カバーに触れた項目はほかの6つの本部の公開基準に見当たらず、各階に置かなくてよい場面も大阪市・東大阪市・堺市はメゾネット型の住戸などで書いています
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目次
発信機はどんな場所に付けることになっているのか

まず国の条文と、県央広域の基準が設置場所に足している言葉を確かめます。
発信機は、(略)次に定めるところによること。
イ 各階ごとに、その階(前条第四項第一号ヘに掲げる部分を除く。)の各部分から一の発信機までの歩行距離が五十メートル以下となるように設けること。
ロ 床面からの高さが〇・八メートル以上一・五メートル以下の箇所に設けること。
ハ 発信機の直近の箇所に表示灯を設けること。
ア 出入口若しくは階段の出入口の付近又は廊下若しくは通路の多数の者の目にふれやすい場所で、かつ、操作の容易な場所に設けること。▲
規則が決めているのは、各階の各部分から歩行距離50m以下、床から0.8m以上1.5m以下の高さ、直近の表示灯といった位置と数の線です。
県央広域の基準はそこに「多数の者の目にふれやすい場所」と「操作の容易な場所」という言葉を足していて、末尾の▲は凡例で行政指導基準を示す記号です。
ほかの本部の基準も、設置場所はほぼ同じ言葉で書いています。
| 本部 | 発信機の設置場所の書き方 | 付いている記号 |
|---|---|---|
| 埼玉県央広域消防本部(鴻巣市・桶川市・北本市) | 多数の者の目にふれやすい場所で、操作の容易な場所 | ▲(行政指導基準) |
| 鈴鹿市消防本部 | 多数の者の目にふれやすい場所と、操作の容易な場所(付近に操作上支障となる障害物がない場所)の両方を満たす場所 | 後半に▲ |
| 四日市市消防本部 | 多数の者の目にふれやすい場所で、操作の容易な場所 | 全文に下線(市の行政指導) |
| 津市消防本部 | 設置場所の項目は無く、表示灯に非常電源が要らないことと、P型2級受信機にP型1級発信機を使えることだけを書いている | ― |
| 大阪市消防局 | 多数の目にふれやすい場所で、容易に操作できる場所 | ◆(市の行政指導基準) |
| 東大阪市消防局 | 多数の目にふれやすい場所で、容易に操作できる場所 | ●(行政指導基準) |
| 堺市消防局 | 多数の者の目にふれやすく、すみやかに操作できる場所/操作上支障となる障害物がない箇所 | ★(市独自の指導基準) |
まずは各階の発信機がどこにあり、前に棚や台車を置いていないかを見て回るのが出発点です。
押しボタンの前に車いすを並べている階があるかもしれません。
置いた物も操作の障害になりえます。
カバーを考える前に、各階の発信機の前を一度見て回りましょう。
透明なアクリルカバーを付けても障害物にならないのか

県央広域の基準は、このカバーを名指しで扱っています。
イ 操作上支障となる障害物がないこと。
なお、発信機を視認に影響がなく、容易に開放し操作ができるアクリル製カバー等は操作障害とは扱わない。▲
条件は2つで、カバーごしに発信機が見えることと、カバーを容易に開けて操作できることです。
この一文にも▲が付いているので、県央広域の行政指導基準としての整理です。
基準は鍵の有無や開け方の細かな形までは書いていないので、開けるのに手間がかかりそうなカバーは選ぶ前に確かめるのが確実です。
鈴鹿市と堺市も「操作上支障となる障害物がない」ことを求めていますが、カバーがその障害物に当たるかどうかまでは書いていません。
付ける前にカバーの製品資料をそろえ、開け方を消防本部に説明できるようにしておきます。
透明で、さっと開けられることが大事なのですね。
はい、開けやすさは製品によって差があります。
候補のカバーは買う前に消防本部へ見せておきましょう。
福祉施設で発信機を見えないように覆ってよいのか

県央広域の基準は、福祉施設などで発信機を見えないように覆う場合も書いています。
また、福祉施設等で利用者のいたずら防止を目的に発信機部分を視認できないように覆うことは、従業員に発信機の設置位置及び操作上の注意等の周知を徹底することで令32条を適用して操作の支障とは扱わないことができる。
この節の規定は、消防用設備等について、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、この節の規定による消防用設備等の基準によらなくとも、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、かつ、火災等の災害による被害を最少限度に止めることができると認めるときにおいては、適用しない。
前段の透明なカバーは「障害物ではない」という整理ですが、後段は令第32条を適用して「操作の支障とは扱わない」という組み立てで、消防長又は消防署長が個別に認めるものです。
条件として基準が書いているのは、従業員に発信機の設置位置と操作上の注意などを周知徹底することです。
この一文には▲が付いておらず、ほかの6つの本部の公開基準には同じ趣旨の項目が見当たりません。
覆う前に埼玉県央広域消防本部へ相談し、従業員への周知を消防計画や訓練のどこで行うかまで決めておくと話が進めやすくなります。
見えなくすると、職員が場所を忘れないかが心配です。
だからこそ従業員への周知の徹底が条件になっています。
覆った発信機の位置を職員全員で確かめておきましょう。
小さな階では発信機を省いてよいのか

国の条文は「各階ごとに」なので、ここは目に見える違いです。
ウ 50㎡以下の小規模な階(特定1階段等防火対象物は除く。)で上階及び下階又はそのいずれかの階の発信機までの歩行距離が25m以下である場合は、当該階の発信機を省略することができる。
条件は、その階が50㎡以下であることと、上の階か下の階の発信機まで歩行距離25m以下であることで、国の50mの半分の距離で見ています。
特定1階段等防火対象物は、飲食店や物品販売店などの特定用途の部分が避難階以外の階にあり、そこから避難階か地上へ直通する階段が原則2つ以上ない建物で、消防法施行規則第23条第4項第7号ヘが定義しています。
この一文には▲がなく、根拠になる条文も書かれていません。
ほかの本部は、各階に置かなくてよい場面を別の形で書いています。
| 本部 | 各階に置かなくてよい場面 | 基準の書き方 |
|---|---|---|
| 埼玉県央広域消防本部 | 50㎡以下の小規模な階で、上か下の階の発信機まで歩行距離25m以下(特定1階段等防火対象物を除く) | 発信機の項目の中・記号なし |
| 大阪市消防局 | スキップフロア型やメゾネット型など2以上の階数がある住戸は、廊下階に設けて各部分から歩行距離50m以下 | 特例基準 9・規則第24条第8号の2イによらないことができる |
| 大阪市消防局 | 大規模な冷凍・冷蔵倉庫の庫内は、押しボタン・灯火・防災センター等での覚知などを条件に設置しないことができる | 特例基準 8 |
| 東大阪市消防局 | メゾネット型共同住宅等で、出入口のない階の住戸の各部分から出入口のある階の発信機まで歩行距離50m以下 | 特例基準 ⑷・記号なし |
| 堺市消防局 | メゾネット型共同住宅等で、東大阪市と同じく歩行距離50m以下 | 令第32条又は条例第72条を適用・★ |
| 鈴鹿市・四日市市・津市 | 発信機の項目に見当たらない | ― |
つまり小さな階なら、上か下の階の押しボタンで足りることがあるのですね。
はい、ただし特定1階段等防火対象物は対象外です。
自分の建物が当たるかどうかを先に確かめましょう。
発信機にカバーを付けるとき明日から何を確かめればよいのか

▲の付いた項目がどんな性格のものかも、県央広域の基準が自分で書いています。
この基準は、(略)当本部が付加した行政指導事項である。
(略)防火対象物の関係者(略)に義務を課すものではなく、あくまでも相手方の任意の協力により実現されるものであることを前提としなければならない。
透明なカバーの扱いは▲の行政指導基準なので、義務ではなく任意の協力という位置づけですが、発信機は火災のときにすぐ押せることが前提の設備です。
見えなく覆う方は令第32条の適用なので、事前の相談が欠かせません。
確かめる順番は次のとおりです。
- 透明なカバーは、発信機と表示灯が見えるか、鍵や工具なしで開けられるかを確かめる
- 見えなく覆うなら、付ける前に埼玉県央広域消防本部へ相談し、令第32条の扱いになるかを確かめる
- 覆った発信機の位置と開け方を従業員全員に伝え、訓練で実際に開けて押す手順を確かめる
- 点検のときにカバーの開け方を点検業者と共有し、点検後に元どおり閉まっているかを見る
- 50㎡以下の小さな階で発信機を置いていない場合は、上下の階の発信機までの歩行距離を図面で確かめる
付ける前の相談と、付けた後の周知の両方が要るのですね。
はい、カバーの開け方を書いた紙を職員室にも置いておくと安心です。
点検業者にも同じ紙を渡しておきましょう。
よくある質問
まとめ
カバーの候補を選んで、埼玉県央広域消防本部に相談してきます!
職員への周知の方法も一緒に決めておくと話が早いです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第32条、消防法施行規則 第23条第4項・第24条第8号の2(e-Gov法令検索)
- 埼玉県央広域消防本部「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」第1章 総則 第2・第3、第4章 第10 自動火災報知設備 7 発信機 第4章 第10 自動火災報知設備のPDF
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第4章 第10 自動火災報知設備 6 発信機
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」自動火災報知設備 4 発信機
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」5-11 自動火災報知設備 6 発信機
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」自動火災報知設備 第7 発信機及び表示灯・第12 特例基準 8・9
- 東大阪市消防局「自動火災報知設備の設置に係る運用基準」Ⅱ 5 発信機・9 特例基準 ⑷
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第12 自動火災報知設備 Ⅱ 5 発信機・11 特例適用基準
※本記事は各消防本部が公開している審査基準・運用基準と国の法令に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。各本部の資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。令第32条の適用は、消防長又は消防署長が個別の建物ごとに判断するものです。





