スプリンクラー設備を付ける建物でも、ヘッドを設けなくてよい部分があります。
国の消防法施行規則がその部分を決めていますが、大阪市消防局の運用基準はさらに部分を足しています。
金庫室・小さな物入・駐車場へのスロープ・車寄せなどです。
この記事では、国の規則から大阪市の特例基準までのつながりを順にたどり、堺市の審査基準とも比べます。
大阪市でテナントビルの改修を考えています。
金庫室にもスプリンクラーヘッドがいるのか気になっています。
大阪市の運用基準には金庫室の特例が書かれています。
ただし区画の条件があります。
条件を満たせば、ヘッドを付けなくてよいのですか。
はい、消防長や消防署長が認めればその扱いになります。
国の決まりから順に見ていきましょう。
- ヘッドを設けなくてよい部分は、国の消防法施行規則第13条第3項が決めています
- 大阪市の運用基準は令第32条又は大阪市火災予防条例第47条を適用する特例基準として、省略できる部分を足しています
- 耐火構造の壁・床と特定防火設備で区画した金庫室等、床面積1平方メートル未満の物入・押入・SK室はヘッドを設置しないことができます
- 駐車場へのスロープと車寄せは、耐火構造・不燃仕上げ・屋内消火栓設備等の有効範囲などの条件つきです
- 堺市はSKにはヘッドを設置するとしており、小さな収納の扱いが大阪市と違います
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目次
大阪市はスプリンクラーヘッドを省略できる部分をどう足しているのか

国の消防法施行規則第13条第3項が、ヘッドを設けなくてよい部分を並べています。
三 エレベーターの機械室、機械換気設備の機械室その他これらに類する室
五 エレベーターの昇降路、リネンシュート、パイプダクトその他これらに類する部分
六 直接外気に開放されている廊下その他外部の気流が流通する場所
国の規則の読み方は、手術室のヘッドを扱った記事や昇降路とパイプダクトの記事で解説しています。 大阪市消防局の「消防用設備等の設置に係る運用基準」は、閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備の節の最後に特例基準を置いています。
書き出しは次のとおりです。
そのうえで、条例第47条に同じ形の特例があります。
- 国の規則第13条第3項が、ヘッドを設けなくてよい部分を決めています。
- 大阪市火災予防条例で上乗せされるスプリンクラー設備も、条例第40条第3項で規則第13条第3項の例によるとされています。
- 大阪市の運用基準 第14 特例基準が、令第32条又は条例第47条を適用して、金庫室や物入などの部分を足しています。
- 令第32条・条例第47条は「消防長(又は消防署長)が認めるとき」の規定なので、最終的な判断は所轄の消防署が行います。
特例基準の項目には行政指導を示す◆が付いていませんが、中身は個々の建物ごとの適用の判断です。
「書いてあるから自動的に省略できる」のではなく、設計の段階で所轄の消防署と協議して使うものと考えてください。
国の規則に足す形で、大阪市が部分を増やしているのですね。
はい、令第32条の特例として足しています。
次は金庫室と物入を見ていきます。
金庫室や小さな物入やSK室にヘッドはいらないのか

国の規則にも小さな収納の規定はありますが、対象の用途と面積が限られています。
大阪市の特例の3は、条文の上では用途を限らず、1平方メートル未満の物入・押入・SK室を対象にしています。 堺市消防局の審査基準は、小さな収納の扱いが違います。
まず、便所や浴室に付随した部分を国の規則の「浴室、便所その他これらに類する場所」として扱う項目で、SKについて次のように書いています。
a 便所又は浴室に付随した小規模な洗面所(可燃物が存する場合を除く。)
なお、SK(掃除用流し)については、掃除用具やトイレットペーパー等の可燃物が存置されるおそれがあるため、ヘッドを設置すること。
(ア) 人が出入りできないこと。
(イ) 照明器具、換気扇等の設備が設けられていないこと。
(ウ) 収納庫の扉等の前面側に設けるヘッドで有効に警戒されていること。
| 部分 | 大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|
| 金庫室 | 耐火構造の壁・床又は特定防火設備等で区画 | 可燃物品がキャビネット等に格納され、開口部に特定防火設備等 |
| 物入・押入 | 床面積1平方メートル未満なら設置しないことができる | 面積で省略する記述は見当たらない |
| SK室 | 床面積1平方メートル未満なら設置しないことができる | ヘッドを設置する(★) |
| 家具・吊り戸棚などの収納庫 | 該当する記述は見当たらない | 人が出入りできない・照明等がない・前面のヘッドで警戒されていれば省略できる |
小さな収納の扱いを番号順に整理すると、次のとおりです。
- まず国の規則第13条第3項の部分(便所・機械室など)に当たるかを見ます。病院や老人福祉施設などの小規模な施設なら、2平方メートル未満の収納設備も対象です。
- 大阪市なら、物入・押入・SK室の床面積が1平方メートル未満かを図面で確かめます。
- 金庫室は、耐火構造の壁・床と特定防火設備で区画されているかを確かめます。
- 堺市の建物ではSKにはヘッドを設置する前提で計画し、家具の収納庫は3つの条件を確かめます。
同じSK室でも、大阪市と堺市で扱いが違うのですね。
はい、可燃物を置くかどうかの見方の差です。
市ごとに基準を確かめてください。
駐車場へのスロープや車寄せにヘッドはいらないのか

大阪市の特例基準の5は、スロープについて4つの条件を置いています。
(1) 壁、床及び天井を耐火構造とし、かつ、壁及び天井(天井のない場合にあっては屋根)の仕上げを不燃材料としたものであること
(2) 駐車の用に供する部分とは、随時閉鎖することができ、かつ、感知器の作動と連動して閉鎖する防火戸により区画されていること
(3) 煙の充満するおそれが少ないものであること
(4) 屋内消火栓設備又は補助散水栓の有効範囲内であること
大阪市の運用基準は、ヘッドの設置方法の節で、この第6号の範囲を次のように決めています。
(1) 通行・運搬の用途のみに供されるものであること
(2) 特定主要構造部が耐火構造であり、かつ、壁及び天井(天井のない場合にあっては、屋根)の仕上げを不燃材料としたものであること
(3) 屋内消火栓設備又は補助散水栓の有効範囲内であること
それより奥の部分は、特例基準の6の3つの条件を満たせばヘッドを設置しないことができる、という二段の作りです。 堺市の審査基準は、開放型の廊下や庇について、5メートル未満に加えて断面の形を条件にしています。
a 常時開放されている部分は、1m 以上の高さ又は床面から天井(天井がない場合は屋根)までの高さ(以下「天井高」という。)の1/3以上であること。
b 常時開放されている部分は、天井高の1/2以上の位置に存していること。
c 開放型の廊下、通路等の天井面から小梁、垂れ壁等の下端までは、30cm 以下であること。ただし、当該廊下、通路等に可燃物がない場合はこの限りでない。
d 常時開放されている部分の前面に1m 以上の空地を有すること。
スロープと車寄せの読み方を、番号順に並べると次のとおりです。
- 車寄せは、まず外気に開放された面からおおむね5メートル未満の部分を分けます。そこは国の規則の第6号でヘッドが要りません。
- 5メートル以上奥の部分は、通行・運搬だけに使い、耐火構造で不燃仕上げかを確かめます。
- スロープは、駐車部分との間に感知器と連動して閉まる防火戸があるかを確かめます。
- どちらも屋内消火栓設備か補助散水栓の有効範囲内であることが条件なので、ホースが届く範囲を図面で示して協議します。
車寄せの奥まで屋根が深いと、条件を確かめる部分が増えるのですね。
はい、5メートルの線が分かれ目です。
図面に線を引いて相談すると話が早いです。
高天井の隣やダクトの上や厨房はどう扱うのか

大阪市の特例基準の7は、その隣の部分の扱いです。
(1) ダクト等を取り付ける床又は壁が不燃材料で造られていること
(2) ダクト等(ダクトにあっては被覆材料を含む。)が不燃材料で造られ、かつ、その上部に可燃物が存置されていないこと
堺市は反対に、幅1.2メートル以下のダクトでも、障害になるおそれがあれば下にもヘッドを付けるとしています。
高天井・ダクト・厨房の読み方を並べると、次のとおりです。
- 高天井の隣の部分は、放水型ヘッド等の放水範囲に床が入るかを確かめます。堺市はあわせて感知の障害がないかを見ます。
- 幅や奥行が1.2メートルを超えるダクトは、国の規則で下にもヘッドが要ります。
- 大阪市では、床・壁とダクトが不燃材料で、上に可燃物がなければ、ダクトの上のヘッドを外せます。
- 厨房は、大阪市の告示第44号の消火装置がレンジやフライヤーを包んでいれば、その有効範囲のヘッドを外せます。
ダクトの扱いは、大阪市と堺市で向きが逆なのですね。
はい、大阪市は外す話、堺市は足す話です。
ダクトの寸法と材質を図面に書いておきましょう。
堺市や東大阪市の基準と比べて何が同じで何が違うのか

(2) ◆ : 指導基準のうち、消防庁の通知等を参考に定めたもの
(3) ★ : 指導基準のうち、堺市消防局として防火安全性の向上を図ることを目的として定めたもの
一方、SKにヘッドを設置する扱いやダクトの下のヘッドは★の堺市独自の指導です。
同じ総則は、指導は関係者に義務を課すものではなく、任意の協力によって実現されるものとも書いています。 3市を並べると、次のとおりです。
大阪市は閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備の節、堺市はスプリンクラー設備の審査基準を確かめた範囲です。
| 部分 | 大阪市 | 堺市 | 東大阪市 |
|---|---|---|---|
| 金庫室 | 区画すれば設置しないことができる | 可燃物の格納と開口部の特定防火設備が条件 | 公開の運用基準にスプリンクラー設備の基準なし |
| 1平方メートル未満の物入・押入 | 設置しないことができる | 記述は見当たらない | 同上 |
| SK室 | 1平方メートル未満なら設置しないことができる | ヘッドを設置する(★) | 同上 |
| 冷蔵室・冷凍室 | 区画と収容物などの条件で設置しないことができる | 不燃材料・自動温度調節・警報で省略できる | 同上 |
| 駐車場へのスロープ | 4つの条件で設置しないことができる | 記述は見当たらない | 同上 |
| 外気に開放された廊下・車寄せ | 5メートル未満は国の第6号、奥は3つの条件 | 5メートル未満に断面形状の条件(★) | 同上 |
| 高天井の隣 | 放水型ヘッド等で包含されれば設置しない | 同じ(感知障害に留意) | 同上 |
| 幅の広いダクト | 不燃なら上のヘッドを設けない | 1.2メートル以下でも下面に設ける(★) | 同上 |
| スケートリンク・プール | 記述は見当たらない | リンクの滑走部分や可燃物のないプールは省略できる | 同上 |
東大阪市は、公開されている運用基準が消火器具・自動火災報知設備・避難器具・誘導灯・連結送水管・非常コンセント設備の6つで、スプリンクラー設備の基準は公開されていません。
東大阪市で同じ相談をするときは、所轄の消防署に直接確かめてください。
大阪市と堺市で、同じ部分でも答えが変わることがあるのですね。
はい、建物のある市の基準で考えるのが基本です。
設計の早い段階で消防署と協議しましょう。
よくある質問
まとめ
金庫室とスロープの区画を設計者と確かめます。
SK室の面積も1平方メートル未満か測ってみます!
協議の前に整理しておけば、設計のやり直しを防げます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第1章 第3節 閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備(第9 ヘッドの設置方法 柱書、第14 特例基準 柱書・2・3・5・6・7・10・12) https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 大阪市火災予防条例 第40条第3項・第47条(大阪市例規データベース)
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版)第1章 総則(2 運用上の留意事項・4 凡例)、第3章 第1節 第4 スプリンクラー設備 Ⅱ 細目 1(3)ア・イ・エ、2(3)ク(ア)、5(2)イ https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 東大阪市 消防用設備等の運用基準(公開資料) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令 第12条第2項第1号・第32条
- 消防法施行規則 第13条第3項・第13条の2第4項第1号ロ
※本記事は公表されている法令および各市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準・審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の建物でヘッドを省略できるかの判断は、所轄の消防署にご確認ください。





