熱媒体油循環装置だけを使う一般取扱所にも、専用の特例基準が定められています。
この装置は危険物以外の物を加熱するためのものなので、油そのものが高温になることを前提に設計します。
油圧装置や切削装置を使う一般取扱所にある「100度未満で使う」という縛りが、この号には書かれていません。
この記事では、危険物の規制に関する規則が定める熱媒体油循環装置専用の一般取扱所の基準と、高温ゆえに求められる体積膨張対策を条文にそって整理します。
うちは熱媒体油で別のタンクを間接的に温めている設備なんですが、この基準に入るんですか。
はい、熱媒体油循環装置以外では危険物を扱わない一般取扱所が対象です。
まずは号の定義から確認しましょう。
他の号にある「100度未満」という制限がここには無いって本当ですか。
はい、条文にその文言はありません。
だからこそ体積膨張への対策が必要になります。
- 危険物以外の物を加熱するための熱媒体油循環装置以外では危険物を取り扱わない一般取扱所には、専用の特例基準が定められています
- 対象になるのは高引火点危険物(引火点100度以上の第四類危険物)に限られます
- 油圧装置や切削装置の号にある「100度未満で取り扱う」という縛りはこの号にはありません
- 危険物を取り扱う設備は、危険物の体積膨張による漏えいを防止できる構造にする必要があります
- 建物の構造基準は塗装用・洗浄用・焼入放電加工用の一般取扱所の基準を寄せ集めて準用しています
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目次
熱媒体油循環装置だけを使う一般取扱所とは何を指すのか

まずは対象になる施設の条件を条文で確認します。
同規則第十三条の六第一項 高引火点危険物とは、引火点が百度以上の第四類の危険物をいう。
高引火点危険物とは、引火点が100度以上の第四類の危険物を指します。
指定数量の倍数は30未満に限られ、危険物を取り扱う設備を建築物内に設ける施設だけが対象です。
油圧装置や切削装置を使う一般取扱所には「100度未満の温度で取り扱うものに限る」という条件が付きますが、熱媒体油循環装置の号にはこの文言がありません。
まずは自社の設備が高引火点危険物だけを扱っているか、指定数量の倍数を確認します。
熱媒体油循環装置は具体的にどんな設備を指すんですか。
危険物以外の物を加熱するために、熱媒体油という危険物を循環させる装置です。
温度の上限が条文に無い点が特徴です。
どの技術基準が熱媒体油循環装置向けに置き換わるのか

ここは製造所の一般基準との対応関係です。
同条第二項 第二十八条の五十四第八号の一般取扱所のうち、その位置、構造及び設備が次の各号に掲げる基準に適合するものについては、令第十九条第一項において準用する令第九条第一項第一号、第二号及び第四号から第十一号までの規定は、適用しない。
除外されるのは製造所の一般基準(令第九条第一項)のうち第一号(保安距離)と第二号(空地)、そして第四号から第十一号(地階の禁止・耐火構造・屋根・防火設備・網入ガラス・床の構造・採光照明換気・蒸気の排出)です。
標識・掲示板を定めた第三号や、タンク・配管・温度測定装置・直火の禁止・電気設備などを定めた第十二号以降は、この特例の対象になっていません。
入れ替わる号とそのまま残る号を条文で線引きしてから、次の基準を確認します。
一般基準が全部入れ替わるわけじゃないんですか。
はい、入れ替わるのは保安距離・空地・建物構造の号だけです。
温度測定装置などはそのまま生きています。
体積膨張による漏えいはどうやって防ぐのか

他の号には無い、この号だけの要件です。
熱媒体油循環装置には「100度未満で使う」という縛りが無いため、油は高温まで加熱される前提で設計します。
液体は温度が上がると体積が膨張し、密閉された配管や槽のままでは圧力が上がって漏えいにつながります。
条文はこの構造上のリスクに対して、膨張した分を吸収できる構造にすることを求めています。
油圧装置や切削装置のように温度に上限がある号には、この要件は置かれていません。
膨張した分は、どこに逃がせばいいんですか。
条文は逃がし先までは指定していません。
体積膨張を吸収できる構造にすることが求められています。
建物の構造基準はなぜ複数の条文を寄せ集めているのか

実務で見落としやすいのはここです。
塗装や印刷を専ら行う一般取扱所の基準(第二十八条の五十五)からは地階の禁止・窓の禁止・出入口の防火設備・床の構造・採光換気設備・蒸気排出設備を借りています。
洗浄を専ら行う一般取扱所の基準(第二十八条の五十五の二)からはタンク周囲の囲いと過熱防止装置を、焼入れ・放電加工を専ら行う一般取扱所の基準(第二十八条の五十六)からは耐火構造による区画を借りています。
一つの条文にまとまっていないため、複数の条文を横に並べて確認しないと基準を取りこぼします。
図面のチェックリストは、この三つの条文の号番号をそのまま並べて作るのが確実です。
条文が一か所にまとまっていないのは不便ですね。
そのとおりです。
三つの条文を横に並べて確認するチェックリストを作ってください。
許可を取るまでに何を確認しておけばよいか

一つずつ条文と図面を突き合わせながら進めます。
- 対象の設備が熱媒体油循環装置以外では危険物を扱わないことを確認する
- 使用する危険物が高引火点危険物(引火点100度以上の第四類危険物)だけであることを確認する
- 指定数量の倍数が30未満であることを確認する
- 建物の構造を三つの条文(第二十八条の五十五・五十五の二・五十六)の該当する号ごとに確認する
- 危険物を取り扱う設備が体積膨張による漏えいを防止できる構造になっているかを確認する
迷ったときは、まず高引火点危険物かどうかと指定数量の倍数から確認するのが近道です。
他の号との違いを最初に確認しておいたほうがいいんですね。
はい、100度未満の縛りが無いことを最初に押さえてください。
体積膨張の対策も見落とさずに済みます。
よくある質問
まとめ
100度未満の縛りが無い分、体積膨張の対策が要になるんですね。
よく分かりました。
まずは高引火点危険物かどうかから確認してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第十一条第一項・第五項
- 危険物の規制に関する政令第九条第一項・第十九条第一項・第二項第八号
- 危険物の規制に関する規則第十三条の六第一項・第二十八条の五十四第八号・第二十八条の五十五第二項・第二十八条の五十五の二第二項・第二十八条の五十六第二項・第二十八条の六十の三
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





