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高度利用地区の容積率や建蔽率はなぜ都市計画が丸ごと決めるのか|建築基準法第五十九条の規制を解説

広い前面広場を持つ高層タワーと背後の低層街並みの写真

建物の容積率や建蔽率は、通常なら用途地域ごとに決められた計算式で算出します。
けれども、大規模な市街地の再開発などでは、その計算式がまるごと入れ替わる区域があります。
そこでは都市計画そのものが、容積率・建蔽率・建築面積という三つの数字を直接定めます。
この高度利用地区という仕組みがどんな建物に、どんな基準を課すのかを解説します

うちの近くの再開発エリアも、容積率が地図で見る用途地域の数字とだいぶ違う気がします。

その区域は用途地域の計算式ではなく都市計画が数字を直接指定しているのかもしれません。
容積率・建蔽率・建築面積の三つをまとめて定める仕組みです。

三つとも都市計画が決めてしまうということですか。

はい、「高度利用地区」という指定です。
まず制度の中身から確認しましょう。

この記事の結論
  • 高度利用地区に指定されると、用途地域の計算式に代えて容積率・建蔽率・建築面積の三つの数字を都市計画そのものが直接定めます(建築基準法第五十九条第一項)。
  • 移転が容易な小規模建築物・公衆便所や交番等・学校や駅舎等の三つの類型は、この規制の対象から除かれます。
  • 建物の壁面の位置も、都市計画が定めた壁面の位置の制限に反して建築することはできません(同条第二項)。
  • 敷地内に道路に接する有効な空地が確保されていること等を条件に、日影規制の適用除外を受けられる場合があります(同条第四項)。
  • 学校等や日影規制適用除外の許可には、あらかじめ建築審査会の同意が必要です(同条第五項)。

高度利用地区では都市計画が容積率と建蔽率と建築面積を一括で定めることを示す図解

高度利用地区とはどんな区域のことをいうのか

都市計画板が容積率建蔽率建築面積の三つを一括で示し高さの異なる建物が並ぶ通りのイラスト
容積率や建蔽率は、通常は用途地域ごとに定められた計算式で決まります。
けれども、大規模な市街地の再開発などでは、この計算式が丸ごと入れ替わる区域があります。
建築基準法第五十九条第一項 高度利用地区内においては、建築物の容積率及び建蔽率並びに建築物の建築面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、それぞれの建築面積)は、高度利用地区に関する都市計画において定められた内容に適合するものでなければならない。
高度利用地区は、用途地域の計算式に代えて容積率・建蔽率・建築面積の三つの数字を都市計画そのものが直接定める区域です
通常の用途地域では、この三つの数字は地域ごとの計算式や前面道路の幅員などから機械的に算出されます。
高度利用地区に指定されると、この計算に代えて、都市計画が街区ごとに独自の数字をそのまま基準として定めます。
市街地の再開発などで建物の規模を柔軟に設計したい場合に使われる指定です。
次は、この規制が及ばない建物があるかどうかを確認しましょう。

うちの近くの再開発エリアでも、これに近い話を聞いたことがあります。

街区全体の再開発などで指定されることが多い区域です。
次はこの規制の対象外になる建物を見ていきましょう。

どんな建物なら高度利用地区の規制を受けなくてよいのか

移転容易な木造の小屋と交番や学校など公益施設が並び青いチェックマークが付くイラスト
高度利用地区に指定された区域でも、すべての建物が同じ扱いになるわけではありません。
容積率・建蔽率・建築面積の規制が及ばない建物が、三つの類型で定められています。
建築基準法第五十九条第一項ただし書き ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物については、この限りでない。
一 主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造その他これらに類する構造であつて、階数が二以下で、かつ、地階を有しない建築物で、容易に移転し、又は除却することができるもの
二 公衆便所、巡査派出所その他これらに類する建築物で、公益上必要なもの
三 学校、駅舎、卸売市場その他これらに類する公益上必要な建築物で、特定行政庁が用途上又は構造上やむを得ないと認めて許可したもの
高度利用地区の規制が及ばない建物は、移転しやすい小規模建築物と公益上必要な建物の三つの類型に限られます
一号は、木造や鉄骨造等で階数二以下・地階なしの、容易に移転や除却ができる建築物です。
二号は公衆便所や交番など、三号は学校や駅舎など特定行政庁の許可を受けた公益施設が対象になります。
三号だけは特定行政庁の許可が要件になっている点が一号・二号と異なります。
次は、対象になる建物には壁面や容積率がどう定められるのかを確認しましょう。

うちの建物は普通のオフィスなので、この三つには当てはまらなそうです。

その場合は原則どおり、都市計画で定められた数字に従うことになります。
次は具体的にどう定められるのかを見ていきましょう。

壁面の位置と容積率の上限はどう定められるのか

壁面線に沿って建ち並ぶ高層タワーのイラスト
対象になる建物では、壁面の位置についても都市計画の内容に従う必要があります。
さらに容積率の扱いにも、通常の用途地域とは違う独自の準用があります。
建築基準法第五十九条第二項 高度利用地区内においては、建築物の壁又はこれに代わる柱は、建築物の地盤面下の部分及び国土交通大臣が指定する歩廊の柱その他これに類するものを除き、高度利用地区に関する都市計画において定められた壁面の位置の制限に反して建築してはならない。ただし、前項各号の一に該当する建築物については、この限りでない。
高度利用地区内の建物は、都市計画が定めた壁面の位置の制限に反して建築することはできません
例外になるのは、建物の地盤面下の部分と、国土交通大臣が指定する歩廊の柱など限られたものだけです。
容積率についても独自の扱いがあり、都市計画で定めた容積率の最高限度は第五十二条第一項各号の数値とみなして同条の規定が適用されます(同条第三項)。
つまり容積率の計算の仕組みそのものは通常の用途地域を借りながら、数字だけを都市計画の指定値に置き換える構造です。
次は、この規制の中でも見落としやすい適用除外を確認しましょう。

壁面の位置まで都市計画で決まってしまうんですね。

地盤面下の部分などの限られた例外を除いて対象になります。
次は見落としやすい適用除外を確認しましょう。

なぜ高度利用地区では日影規制まで外れることがあるのか

広い空地に囲まれた高層タワーの影が短く周囲の低い建物に届かないイラスト
高度利用地区では、容積率や壁面だけでなく日影の規制にも独自の扱いがあります。
一定の条件を満たすと、日影規制そのものが適用除外になることがあります。
建築基準法第五十九条第四項 高度利用地区内においては、敷地内に道路に接して有効な空地が確保されていること等により、特定行政庁が、交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて許可した建築物については、第五十六条第一項第一号及び第二項から第四項までの規定は、適用しない。
敷地内に道路に接する有効な空地が確保されていること等を条件に、日影規制の適用除外を受けられる場合があります
対象になるのは第五十六条第一項第一号の高さ制限と、第二項から第四項までの日影による中高層建築物の制限です。
特定行政庁が交通上・安全上・防火上・衛生上支障がないと認めて許可することが前提で、空地があれば自動的に外れるわけではありません。
高度利用地区の再開発では、広い空地を確保する代わりに高さを伸ばす設計がよく用いられます。
次は、この許可を受けるために何を確認すればよいのかを整理しましょう。

空地さえあれば日影の規制は関係なくなるということですか。

特定行政庁の許可を受けて初めて適用除外になります。
次は確認の手順を整理しましょう。

高度利用地区に関わる計画では何を確認すればよいのか

都市計画課の窓口で担当者と住民が地図を確認しているイラスト
高度利用地区に関わる土地の取引や建築計画では、早い段階での確認が欠かせません。
確認すべき点を整理します。
  • 計画地が高度利用地区に指定されているかを都市計画課の都市計画図で確認する
  • 指定されている場合、都市計画が定める容積率・建蔽率・建築面積・壁面の位置の制限の具体的な数字を確認する
  • 計画する建物が三つの適用除外類型(移転容易な小規模建築物・公衆便所や交番等・学校や駅舎等)に当てはまるかを確認する
  • 日影規制の適用除外を受けたい場合は、空地の確保を含めて特定行政庁にあらかじめ相談する
まず自分の計画地が高度利用地区に指定されているかどうかを都市計画図で確認することが出発点です
指定されていれば、通常の用途地域の計算式は使えず、都市計画そのものが定めた数字に従うことになります。
学校等の許可や日影規制の適用除外の許可を受けるには、特定行政庁があらかじめ建築審査会の同意を得る必要があります(同条第五項、第四十四条第二項準用)。
同意の手続きには時間がかかることがあるため、余裕を持った相談が大切です。
次はよくある質問を見ていきましょう。

まずは都市計画図を確認してみます。

指定されていれば都市計画の数字がそのまま基準になります。
次はよくある質問を見ていきましょう。

よくある質問

Q高度利用地区は用途地域とは別に指定されるのですか?
A別ではありません。高度利用地区は用途地域に重ねて指定される地域地区の一つで、容積率・建蔽率・建築面積の三つの数字を都市計画が直接定めます。
Q移転容易な建築物とはどんなものですか?
A主要構造部が木造・鉄骨造・コンクリートブロック造等で、階数二以下・地階なしの、容易に移転や除却ができる建築物を指します(第五十九条第一項第一号)。
Q日影規制の適用除外はどんな建物でも受けられますか?
Aいいえ。敷地内に道路に接する有効な空地が確保されていること等を条件に、特定行政庁が交通上・安全上・防火上・衛生上支障がないと認めて許可した建築物に限られます。
Q学校や駅舎などの許可にはどんな手続きが必要ですか?
A特定行政庁の許可に加えて、あらかじめ建築審査会の同意を得ることが必要です(第五十九条第五項、第四十四条第二項準用)。

まとめ

高度利用地区に指定されると、容積率・建蔽率・建築面積の三つの数字を都市計画そのものが直接定めます(建築基準法第五十九条第一項)。
高度利用地区は、用途地域・高度地区などと並ぶ地域地区の一つとして都市計画に位置づけられています(建築基準法第八条第一項第四号)。
移転容易な小規模建築物・公衆便所や交番等・学校や駅舎等の三つの類型は規制の対象から除かれます。
対象になる建物は、壁面の位置の制限にも反して建築することはできません(同条第二項)。
容積率の最高限度は第五十二条第一項各号の数値とみなして同条の規定が適用されます(同条第三項)。
敷地内に道路に接する有効な空地が確保されていること等を条件に、日影規制の適用除外を受けられる場合があります(同条第四項)。
学校等や日影規制適用除外の許可には、あらかじめ建築審査会の同意が必要です(同条第五項)。

この地区の計画に関わるときは、まず指定の有無を確認します!

建築審査会の同意を含む手続きへの対応も、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第八条第一項・第五十九条第一項〜第五項(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法第五十二条第一項・第四十四条第二項・第五十六条第一項第一号・第二項〜第四項(e-Gov法令検索)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。該当性の判断や規定の適用範囲は個別の土地の状況によって異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。

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