工事中の建物には足場や防炎シートに覆われながら、毎日大勢の作業員と関係者が出入りしています。
令和7年11月に香港の高層住宅で起きた改修工事中の火災は、そうした現場のリスクを国内にも突きつけました。
消防庁は出火原因の特定を待たず、令和8年3月30日付で工事中の防火対象物に向けた注意喚起をまとめています。
四つの留意事項がどんな現場にも当てはまる形で示されました。
うちのビルも来月から外壁の改修工事に入るんです。
工事中は防火管理をどう考えればいいのでしょうか。
令和8年3月に消防庁が工事中の防火対象物向けの注意喚起を出しています。
香港の火災を教訓にまとめられた最新の通知です。
香港の火災のニュースは見ました。
あの教訓が具体的にどう活かされているのか知りたいです。
通知には出火防止から応急対応まで四つの留意事項が並んでいます。
今日はその中身を順番に見ていきましょう。
- 通知は令和7年11月26日に香港の高層住宅で起きた改修工事中の火災を教訓に、令和8年3月30日付でまとめられました
- 対象は工事関係者や建物関係者全般で、建物の規模による線引きはありません
- 通知が示す留意事項は出火防止・工事用シート・消防用設備等の運用・応急対応の四つです
- 法的根拠は消防組織法第37条の助言で、義務ではありませんが機会を捉えた指導が求められています
- 改修工事中に設備の一部を止める場合は停止範囲と時間を必要最小限にすることが欠かせません
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目次
香港の高層住宅火災はなぜ国内の工事現場への注意喚起を招いたのか

まず何が起きて、なぜ国内向けの通知につながったのかを確認します。
火災の発生は令和7年11月26日で、通知の日付は約4か月後の令和8年3月30日です。
消防庁は現地の調査結果を待つのではなく、予防行政のあり方に関する検討会で教訓をまとめる形を選びました。
海外の火災であっても、改修工事という同じ条件が国内の現場にもあることが動機になっています。
つまりこの通知は特定の事故原因への対処ではなく、工事中という状態そのもののリスクに向き合うための文書です。
やっぱり海外の火災でも国内の通知につながるんですね。
うちの現場にも関係しそうで気になります。
改修工事という条件が同じなら、規模を問わず関係します。
次は対象の範囲を見ていきましょう。
注意喚起の対象になるのはどんな工事中の防火対象物なのか

規模による線引きがあるのかどうかを確かめます。
新築工事と改修工事のどちらであっても、工事中の防火対象物であれば対象になります。
防火管理者の選任義務は収容人員50人以上など具体的な基準で線引きされていますが、この通知にそうした下限はありません。
指導を受けるのは工事関係者と建物関係者の両方で、施工業者だけの話にしていない点も特徴です。
小規模な現場でも「対象外」と判断せず、四つの留意事項に目を通すことが出発点になります。
うちは小さなテナントの改修だから対象外かと思っていました。
本当に規模は関係ないんですか。
規模による除外は書かれていません。
工事関係者と建物関係者の両方が対象になります。
通知が示す四つの留意事項とはなにか

まず出火防止と工事用シートの項目から見ていきます。
1番目は火気を使う作業や火花が出る作業そのものへの備えで、可燃物の除去と消火器の準備、必要なら不燃性シートで火花の飛散を防ぐことを求めています。
2番目は工事用シートそのものの性能で、消防法令に基づく防炎物品を使うことが明記されています。
3番目は改修工事中でも消防用設備等の機能を維持することが原則で、一部を止める場合の考え方が示されています。
4番目は火災が起きたときの通報・初期消火・避難誘導と、工事の進捗に応じた事前の計画を求めるものです。
4つとも当たり前のようで、現場では抜けそうな項目ですね。
特に気をつけるべきはどれですか。
次は三番目の設備の運用を詳しく見ます。
ここが一番見落とされやすい項目です。
助言にとどまる通知をなぜ現場は軽く見てはいけないのか

義務ではないという言葉だけで読み飛ばしてよいのか確かめます。
消防組織法第37条の助言は都道府県・市町村への根拠規定で、工事現場に直接命令する条文ではありません。
それでも通知は「機会を捉えて指導するようお願いします」と明記しており、立入検査などの場面で実際に確認される想定です。
特に見落とされやすいのが三番目の項目、改修工事中に消防用設備等の一部を止める場面です。停止する範囲と時間を必要最小限にし、代替設備や巡回警戒で補うことまでが求められています。
「義務ではないから」と読み飛ばすと、立入検査で初めて指摘を受けることになります。
助言だから守らなくていいのかと思っていました。
指導される可能性があるなら話は別ですね。
義務ではなくても指導の対象になります。
工事前に確認しておくほうが安心です。
着工前に管理権原者はなにを確認すればよいのか

着工前にできる準備を整理します。
火気作業や火花が出る作業の予定を洗い出し、消火器と不燃性シートの配置を決めておくこと。
使用する工事用シートに防炎表示があるかを事前に確かめること。
消防用設備等を一部でも止める工程があるなら、停止範囲と時間、代替措置をあらかじめ工程表に落とし込んでおくこと。
そして工事の進み具合ごとに変わる避難経路と通報ルートを、その都度更新できる形で計画に残しておくことです。
工事の進み具合で避難経路が変わるという発想はありませんでした。
工程表と一緒に見直すようにします。
はい、四つの留意事項を工程表の各段階に当てはめれば漏れにくくなります。
着工前のミーティングで一度確認しておきましょう。
よくある質問
まとめ
工事の担当者にも四つの留意事項を共有してみます!
着工前のミーティングで確認します。
着工前の確認が一番確実な進め方です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防予第120号「工事中の防火対象物における火災予防上の留意事項について」(令和8年3月30日・消防庁予防課長)
- 消防組織法第37条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





