改修工事の足場に、緑や白の工事用シートが張られているのをよく見かけます。
あのシートには、実は消防法の決まりが掛かっています。
しかも決まりが掛かるかどうかは、完成後の建物の用途では決まりません。
分かれ目はいま工事中かどうかです。
来月からテナントビルの改修工事が始まります。
足場に張るシートまで消防法の話になるのでしょうか。
なります。
工事用シートは消防法施行令が名前を挙げている防炎対象物品の一つです。
うちは事務所ビルなので防炎とは無縁だと思っていました。
工事中の建物は完成後の用途とは別枠で対象になります。
どこまでが対象なのかを順に見ていきましょう。
- 消防法第8条の3第1項は防炎対象物品に政令の基準以上の防炎性能を求めています
- 工事中の建築物その他の工作物は完成後の用途とは別の枠で対象になります
- その枠を絞っているのは消防法施行規則第4条の3第1項の五つの号です
- 建築物から外れるのは都市計画区域外のもつぱら住居の用に供するものだけです
- 足場に張る工事用シートは令が名前を挙げている防炎対象物品の一つです
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目次
工事中の建物にも防炎の決まりがあるのはなぜか

その物品と、義務が掛かる建物を決めているのが政令です。
つまり義務が生まれるのは、政令が決めた建物で政令が決めた物品を使うときです。
このうち建物の側を決めているのが消防法施行令第4条の3第1項で、物品の側を決めているのが同条第3項です。
そして建物の側の条文には、旅館や病院といった用途の並びに続けて工事中の建築物その他の工作物が書かれています。
足場のシートが消防法の話になるのは、この一句があるからです。
用途の一覧に工事中が混ざっているという読み方でよいのでしょうか。
正確には並びにでつないだ別の束です。
用途の束と工事中の束が横に並んでいると考えてください。
工事中で防炎規制を受けるのはどの建築物と工作物か

その総務省令が消防法施行規則第4条の3第1項です。
令が総務省令で定めるものを除くと言い、規則がその定めるものを各号に掲げるもの以外のものだと言っています。
除かれるのが各号以外のものなので、結局は各号に当たるものだけが工事中の枠に残ります。
残るのは建築物とプラットホームの上屋と貯蔵槽と化学工業製品製造装置、そして前二号に掲げるものに類する工作物です。
前二号は直前の2つの号を指すので、類する工作物として拾われるのは貯蔵槽と化学工業製品製造装置の側になります。
建築物と書いてあるだけで、用途の限定はないのですね。
括弧の中で外れるのは都市計画区域外のもつぱら住居の用に供するものだけです。
事務所も倉庫も工場も建築物として残ります。
工事中に防炎品にしなければならない物品はどれか

工事用シートもその列挙の中に名前があります。
カーテン、布製のブラインド、暗幕、じゆうたん等、展示用の合板、どん帳その他舞台において使用する幕、舞台において使用する大道具用の合板、そして工事用シートが並んでいます。
この列挙は建物ごとに変わるものではないので、工事中の建築物でも同じ8つが対象です。
足場のシートだけを見て終わりにせず、現場に持ち込む幕やじゆうたん等も同じ扱いになると考えておくと外しません。
仮設の間仕切りに布を垂らすような使い方をするなら、それがどの物品に当たるのかを先に整理しておきます。
シートだけの話ではないということですね。
物品の列挙は建物の種類で変わりません。
仮設で持ち込むものも一度書き出してみてください。
工事中と完成後で防炎の対象はどう入れ替わるのか

それが分かる条文が消防法施行令第4条の3第1項です。
前の束は用途で決まる防火対象物で、劇場や旅館や病院などの列挙です。
後ろの束が工事中の建築物その他の工作物で、こちらは用途の列挙を経由しません。
そのため、完成すると前の束に入らない事務所ビルや倉庫でも、工事をしている間は後ろの束に入ります。
逆に工事が終われば後ろの束から抜けるので、前の束の用途に当たらない建物では義務が続きません。
工事のたびに掛かって終われば外れるという、時期で入れ替わる規制だと覚えておくと迷いません。
完成したら外れるのに、工事の間だけ掛かるのは不思議な感じがします。
工事中は火気を使う作業が入り建物も未完成のままです。
条文がそこを別の束にしていると読むと収まりがよくなります。
工事が始まる前になにを確かめればよいのか

確かめる相手は物品に付いている表示になります。
だから建物側の確認は、届いたシートに表示が付いているかを見るところから始まります。
工事が決まったら、まず自分の建物が消防法施行規則第4条の3第1項の各号のどれに当たるかを確かめます。
次に足場に張るシートを防炎品にすることを、施工会社との仕様や見積の段階で決めておきます。
最後に現場へ持ち込む幕やじゆうたん等がないかを工程表と突き合わせておけば、あとから慌てずに済みます。
着工してから言われると、シートを張り直すことになりますね。
だからこそ仕様の段階で決めておくのが早道です。
足場を組んでからでは費用も工程も動きます。
よくある質問
まとめ
工事に入る前にシートの表示を見ておけばよいと分かりました。
さっそく施工会社に確かめてみます。
対象かどうかは工事中かどうかで決まります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
この記事を書いた人
監修・編集者
青木 俊輔
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、一般社団法人予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第8条の3第1項(防炎対象物品と防炎性能)
- 消防法第8条の3第4項(表示が付されていない物品の販売の禁止)
- 消防法施行令第4条の3第1項(防炎防火対象物と工事中の建築物その他の工作物)
- 消防法施行令第4条の3第3項(防炎対象物品の指定)
- 消防法施行令第4条の3第4項(防炎性能の基準)
- 消防法施行規則第4条の3第1項(工事中のもののうち総務省令で定めるもの)
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





