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区画避難安全検証法はなぜ一室単位の緩和を認めるのか|建築基準法施行令が定める排煙設備と内装制限の除外を解説

テナントの一室だけ排煙設備が無いのはなぜ許されるのか

事務所ビルの中には、テナントの一室だけ排煙設備が見当たらず、内装制限も受けていないように見える区画がある。
それも必ず違反というわけではない。
建築基準法施行令第128条の7は、その一室(区画部分)ごとに安全性を計算で確かめれば、排煙設備や内装制限の適用を除外できる仕組みを定めている。
この記事では条文にそって、区画避難安全検証法がどんな条件と計算を求めているのかを順番に確認する。

テナントの一室だけ排煙設備が無いと聞いたのですが、それでも大丈夫なのでしょうか。

区画ごとに計算で安全性を確かめれば、排煙設備や内装制限の適用を除外できる仕組みがあります。
設計段階でその区画が対象になっているかどうかがポイントです。

区画ごとというのは、階全体とは違うのでしょうか。

建築基準法施行令第128条の7が区画避難安全検証法という方法を定めています。
今日はその中身を順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 準耐火構造の床・壁や所定の防火設備で区画された一室(区画部分)ごとに、計算で安全性を確かめれば排煙設備や内装制限の適用を除外できる仕組みがあります
  • 対象になるのは主要構造部が準耐火構造または不燃材料造の建築物の区画部分、または大臣認定を受けた区画部分に限られます
  • 検証するのは「区画避難安全性能」=区画部分にいる全員が避難を終えるまでの間、煙やガスが避難上支障のある高さまで降下しないことです
  • 二以上の階にわたって区画された部分は対象外で、階や建物全体を対象にする階避難安全検証法・全館避難安全検証法とは別の仕組みです
  • 自分のテナントや部屋がこの検証法を使っているかどうかは確認済証や設計図書で確認できます

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区画避難安全検証法の考え方を示した図解

区画避難安全検証法とはどんな緩和を認める仕組みなのか

厚い防火の壁と床で囲まれた一室と壁の無い開放的な部分を並べた図
施行令の内装制限や排煙設備の基準は、建物全体ではなく一室ごとに緩和される場合がある。
その仕組みを条文で確認する。
建築基準法施行令第128条の7第1項(抜粋)
居室その他の建築物の部分で、準耐火構造の床若しくは壁又は(略)防火設備で区画されたもの(二以上の階にわたつて区画されたものを除く。以下「区画部分」という。)のうち、当該区画部分が区画避難安全性能を有するものであることについて、区画避難安全検証法により確かめられたもの(主要構造部が準耐火構造である建築物又は主要構造部が不燃材料で造られた建築物の区画部分に限る。)又は国土交通大臣の認定を受けたものについては、第百二十六条の二、第百二十六条の三及び第百二十八条の五(第二項、第六項及び第七項並びに階段に係る部分を除く。)の規定は、適用しない。
区画避難安全性能さえ確かめれば、その一室単位で基準の一部が外れる。
第128条の7は、準耐火構造の床・壁や所定の防火設備で囲まれた一室(区画部分)ごとに安全性を計算で確かめた場合、排煙設備や内装制限の一部の適用を除外すると定めている。
対象になるのはあくまで区画部分単位で、建物全体や階全体が自動的に対象になるわけではない。
ただし二以上の階にわたって区画された部分はこの検証法の対象から外れる。
どの基準が具体的に免除されるかは次の項目で確認する。

一室ごとに免除されるとは、具体的にどんな基準が対象になるのでしょうか。

排煙設備と内装制限が対象になります。
次の項目で条文を確認しましょう。

区画避難安全検証法を使うとどの基準が適用除外になるのか

天井の排煙ダクトと2種類の内装材のサンプルを並べた図
免除される規定は排煙設備と内装制限にまたがる。
条文で具体的な条番号を確認する。
建築基準法施行令第128条の7第1項(抜粋)
(略)については、第百二十六条の二、第百二十六条の三及び第百二十八条の五(第二項、第六項及び第七項並びに階段に係る部分を除く。)の規定は、適用しない。
免除の対象は排煙設備の設置・構造と内装制限の一部である。
第126条の2の排煙設備の設置義務、第126条の3の排煙設備の構造に加え、第128条の5が定める内装制限の一部が対象になる。
第128条の5は第2項・第6項・第7項と階段に係る部分を除いて適用が除外されるため、内装のすべてが自由になるわけではない。
階避難安全検証法(第129条)や全館避難安全検証法(第129条の2)が対象にする廊下幅や竪穴区画とは異なる基準が外れる点に注意する。
除外されるのは条文の一部であり、区画部分の中でも階段に関わる部分は対象から外れたままである。

排煙設備が要らない部屋があるのは、こういう理由だったんですね。

階段に関わる部分は除外の対象外です。
次は区画避難安全性能の中身を見ていきましょう。

区画避難安全性能とはどのような状態を確かめているのか

部屋の天井付近だけに薄い煙の層があり床側は出口まで開けている様子の図
計算が確かめているのは、区画部分の中で避難が間に合うかどうかである。
条文の定義を確認する。
建築基準法施行令第128条の7第2項(抜粋)
前項の「区画避難安全性能」とは、当該区画部分のいずれの室(火災の発生のおそれの少ないものとして国土交通大臣が定める室を除く。以下「火災室」という。)で火災が発生した場合においても、当該区画部分に存する者の全てが当該区画部分から当該区画部分以外の部分等までの避難を終了するまでの間、当該区画部分の各居室及び各居室から当該区画部分以外の部分等に通ずる主たる廊下その他の建築物の部分において、避難上支障がある高さまで煙又はガスが降下しないものであることとする。
確かめているのは、区画部分にいる全員が逃げ切るまで煙が危険な高さまで下がらないことである。
火災の発生のおそれが少ない室として大臣が定める室は火災室から除かれ、それ以外の室で火災が起きた想定で検証する。
避難が終わるまでの経路は「区画部分から区画部分以外の部分等まで」であり、階避難安全検証法の「直通階段まで」より短い距離で完結する。
避難階かどうかで「区画部分以外の部分等」が指す場所も変わり、避難階なら地上またはそこに通ずる部分、それ以外の階なら直通階段に通ずる部分になる。
数値基準ではなく、避難時間と煙の降下時間の前後関係で安全性を判断する点は他の検証法と共通する。

対象になる部屋の範囲が階全体より狭いのですね。

区画部分単位なので避難経路も短く設定されています。
次は実際の確かめ方を見ていきましょう。

区画避難安全検証法はどうやって確かめるのか

ストップウォッチと煙の高さを測る目盛り付きゲージを並べた図
検証法には計算による方法が2つ用意されている。
どちらを使うかは設計者の選択になる。
建築基準法施行令第128条の7第3項(抜粋)
第一項の「区画避難安全検証法」とは、次の各号のいずれかに掲げる方法をいう。
一 次に定めるところにより、火災発生時において当該区画部分からの避難が安全に行われることを当該区画部分からの避難に要する時間に基づき検証する方法
二 次に定めるところにより、火災発生時において当該区画部分からの避難が安全に行われることを火災により生じた煙又はガスの高さに基づき検証する方法
確かめ方は避難時間で比べる方法と、煙の高さで比べる方法の2種類である。
一号の方法は、居室ごとの避難完了時間と煙・ガスの降下時間を計算し、避難のほうが先に終わることを確かめる。
二号の方法は、避難完了時間が経過した時点の煙・ガスの高さを計算し、その高さが避難上支障のある高さを下回らないことを確かめる。
いずれも居室の用途・床面積・天井の高さ・内装材料・排煙設備の構造などが計算の材料になり、具体的な計算式は国土交通大臣が別途定めている。
計算に代えて国土交通大臣の認定を受けたものも同様に基準の適用が除外される。

計算式は自分で作るのではなく、決まった方法があるんですね。

国土交通大臣が定める計算方法か大臣認定のどちらかです。
最後に実務で見落としやすい点を確認しましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

階段のある吹き抜けが2つの階にまたがっている様子に禁止マークを付けた図
区画避難安全検証法には、階や全館の検証法と混同しやすい落とし穴がある。
チェックすべき点をまとめる。
  • 区画部分が二以上の階にわたっていないかを確認する(わたっていれば区画避難安全検証法の対象外になる)
  • その区画の主要構造部が準耐火構造または不燃材料造かどうかを確認する
  • 確認済証・検査済証・建築計画概要書で区画避難安全検証法を使っているかを確認する
  • 階避難安全検証法・全館避難安全検証法とは別の仕組みであることを混同しない
まず確かめるのは、その区画が二以上の階にわたっていないかである。
一室に見えても吹き抜けやメゾネットで二階にわたる区画は区画避難安全検証法の対象から外れる。
階避難安全検証法や全館避難安全検証法とは対象範囲も免除される条文も異なるため、3つの検証法を混同しないことが実務上のポイントになる。
テナント入れ替えで区画を区切り直す工事は検証の前提を崩すおそれがあるため、設計者や管理会社に確認する。
記録が見当たらない場合は特定行政庁の建築指導課に相談する。

テナントを区切り直すときは要注意ですね。

確認済証で対象になっているかを見ておくと安心です。
次はよくある質問でおさらいします。

よくある質問

Q区画避難安全検証法はどんな建物にも使えますか?
A主要構造部が準耐火構造または不燃材料造の建築物の区画部分に限られます。木造の区画部分には使えません。
Q区画避難安全検証法と階避難安全検証法はどう違いますか?
A区画避難安全検証法は一室単位の区画部分を対象にし、免除されるのは排煙設備と内装制限です。階避難安全検証法は階全体を対象にし、廊下幅や直通階段の基準が免除される点が異なります。
Q二以上の階にわたる区画にはこの検証法を使えますか?
A使えません。第128条の7は二以上の階にわたって区画されたものを区画部分の定義から除いています。
Q自分のテナントが区画避難安全検証法を使っているかどうかはどこで確認できますか?
A確認済証や検査済証、建築計画概要書などの設計図書に記載があります。見当たらない場合は特定行政庁に確認してください。

まとめ

✔準耐火構造の床・壁などで区画された一室(区画部分)ごとに計算で安全性を確かめれば基準の一部が外れる仕組みがあります
✔建築基準法施行令第128条の7が区画避難安全検証法という方法を定めています
✔使えるのは準耐火構造または不燃材料造の区画部分、あるいは大臣認定を受けた区画部分に限られます
✔免除の対象は排煙設備の設置・構造と内装制限の一部です
✔検証するのは避難が終わるまで煙やガスが危険な高さまで降下しないことです
✔二以上の階にわたる区画は対象外で、階避難安全検証法・全館避難安全検証法とは別の仕組みです
✔確認済証や設計図書で検証法の適用有無を確かめることが実務での基本です

一室単位でも緩和の仕組みがあることがよく分かりました。

確認済証の有無だけでもぜひ次の機会に調べてみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法施行令第128条の7(避難上の安全の検証を行う区画部分に対する基準の適用)
  • 建築基準法施行令第126条の2・第126条の3・第128条の5(適用除外の対象となる規定)
  • 建築基準法施行令第129条・第129条の2(階避難安全検証法・全館避難安全検証法)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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