吹抜きのような広い空間をはさんで建物の複数の部分が向き合っている場合、その空間に面した壁や開口部をすべて防火区画の基準どおりに作らなければならないのでしょうか。
建築基準法施行令第112条第3項には、一定の条件を満たせば、その空間部分自体が特定防火設備で区画されているものとみなす仕組みがあります。
ただしこの緩和は誰でも使えるわけではなく、対象になる建築物と、国土交通大臣が定めた構造方法または認定という条件が付きます。
空間部分の緩和は、対象建築物の種類と認定構造の両方がそろって初めて使える仕組みです。
うちのビルは中央に吹抜きがあって、両側のフロアが吹抜きに向かって開いています。
この吹抜きに面した部分も、全部防火区画で仕切らないといけないんでしょうか。
建築基準法施行令第112条第3項に、その吹抜きのような空間部分をみなし区画として扱える緩和があります。
ただし条件を満たす建築物と構造方法が必要です。
条件次第だとは思っていました。
どんな建物なら使えて、どんな構造が求められるのか教えてください。
対象になる建築物の範囲、みなし区画の仕組み、そして見落としやすい対象外のケースを順番に確認していきましょう。
- 建築基準法施行令第112条第3項は、吹抜き等の空間部分に接する建物の二以上の部分を、特定防火設備で区画されているものとみなす緩和を定めています。
- 対象になるのは特定主要構造部を耐火構造とした建築物に限られます。
- 相互に火熱による防火上有害な影響を及ぼさない構造方法として、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるか認定を受ける必要があります。
- この規定が適用されると、第1項ただし書の読み替えにより空間部分そのものもみなし区画の扱いを受けます。
- 準耐火建築物など特定主要構造部を耐火構造としていない建築物には、この第3項の緩和は使えません。
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目次
吹抜きに面した部分はなぜ区画とみなされることがあるのか

吹抜きやアトリウムのように複数階にまたがる大きな空間があると、その空間に面した各階の部分を物理的な壁や防火戸だけで区切るのは現実的でないことがあります。
第3項は、こうした空間部分に接する建物の部分を、一定の条件のもとで区画されているものとみなす仕組みを定めています。
条文は具体的な面積や高さの数値を示さず、「一定の規模以上の空間」という表現にとどめています。
この空間部分に、建物の二以上の部分が接している状態が、第3項の対象になる場面です。
みなし区画が成立すると、二以上の部分と空間部分そのものが特定防火設備で区画されているものとして扱われ、第1項の規定が適用されます。
物理的に壁を作らなくても区画したことになるんですか。
それだと何もしなくていいということでしょうか。
いいえ、何もせずに済むわけではありません。
対象になる建築物の種類と構造方法の条件を、次に確認しましょう。
どんな建築物ならこの緩和を使えるのか

第1項の区画義務そのものは準耐火建築物等にも及びますが、第3項の対象はそのうちの一部だけです。
第1項本文が対象にする「法第二条第九号の三イ若しくはロのいずれかに該当する建築物」や「第百三十六条の二第一号ロ若しくは第二号ロに掲げる基準に適合する建築物」のうち、第3項が明示的に挙げているのは特定主要構造部を耐火構造としたものに限られます。
つまり同じ第1項の区画義務を負う建築物であっても、準耐火構造や告示の基準への適合で足りている建築物は、この空間部分のみなし区画をそのままでは使えません。
自分の建物がどちらに当たるかは、確認申請時の構造区分の記載で確認できます。
耐火構造と準耐火構造、どちらの建物か忘れてしまった場合はどこを見ればいいですか。
確認済証や検査済証に添付されている設計図書、または構造計算書に主要構造部の耐火性能の区分が記載されています。
不明な場合は設計を担当した建築士に確認しましょう。
みなし区画が成立するにはどんな構造方法が必要なのか

どんな構造でも自動的にみなし区画になるわけではありません。
これを満たす方法は二つあり、国土交通大臣が定めた構造方法(告示で示された仕様)を用いるか、個別に国土交通大臣の認定を受けるかのいずれかです。
片側の部分の壁や開口部だけを頑丈にしても足りず、空間部分をはさんで向き合う双方の部分の関係全体で、火熱の影響を及ぼし合わないことが確認できる必要があります。
みなし区画が成立すると、第1項ただし書の適用条文も「もの又は第三項の規定が適用される建築物の同項に規定する空間部分に」と読み替えられ、空間部分についても除外規定の対象に含められます。
国土交通大臣が定めた構造方法というのは、具体的にどこで確認できるんですか。
告示で個別に定められており、設計段階で建築士や指定確認検査機関が適用の可否を判断します。
認定を受けたものであれば認定書の写しが設計図書に添付されているはずです。
実務で見落としやすいのはどこか

第1項本文が対象にする建築物と、第3項が緩和を使える建築物の範囲は同じではないため、区画義務があるからといって自動的に空間部分の緩和が使えるとは限りません。
また、そもそも吹抜きのような空間部分が無く、建物の各部分が通常の壁や床だけで完全に囲われている場合は、第3項を持ち出す前提自体が成立しません。
みなし区画は「空間部分に接する二以上の部分」という構造上の状況があって初めて検討できる規定です。
さらに、みなし区画が成立するのは国土交通大臣が定めた構造方法または認定を受けた構造方法を用いた場合に限られ、設計者が独自に「影響を及ぼさないはず」と判断しただけでは要件を満たしません。
増改築で吹抜き部分の一部を床でふさぐなど空間部分の形状を変更する場合は、認定や構造方法の前提が崩れていないかをあらためて確認する必要があります。
吹抜きの一部を後から床でふさぐ工事をする場合、届け出などは必要になるんでしょうか。
増改築の規模によっては確認申請が必要になります。
空間部分の形状が変わるとみなし区画の前提も変わるため、着手前に建築主事や指定確認検査機関へ相談してください。
明日からなにを確認すればよいのか

- 建物に吹抜きその他一定の規模以上の空間部分があり、複数の部分がそこに接しているか確認する
- 建物の主要構造部が特定主要構造部を耐火構造とした建築物に該当するか、設計図書で確認する
- 空間部分に接する構造が、国土交通大臣が定めた構造方法または認定を受けた構造方法によっているか確認する
- みなし区画が成立している場合でも、空間部分自体の形状や用途が設計時から変わっていないか確認する
- 増改築で空間部分に手を加える計画があれば、着手前に建築主事や指定確認検査機関へ相談する
判断に迷う場合は、確認申請時の設計図書と合わせて専門家へ相談すると安全です。
吹抜きがあれば自動的に緩和されるわけではないんですね。
設計図書を確認してみます。
はい、建築物の種類と構造方法の両方がそろって初めて使える緩和です。
迷ったときは早めに専門家へ相談しましょう。
よくある質問
まとめ
吹抜きがあれば自動的に緩和されるわけではなく、建築物の種類と構造方法の両方を確認する必要があるとよく分かりました。
ありがとうございました!
こちらこそご相談ありがとうございます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第112条第1項・第3項
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の建物への適用や特定行政庁・指定確認検査機関の運用は異なる場合があります。個別の判断は建築主事または指定確認検査機関にご確認ください。





