劇場やホールを運営していると、車椅子を使うお客様の隣に座る同伴者の席についての相談が増えています。
客席のいすは火災予防条例で床への固定が原則ですが、同伴者席まで同じ扱いでよいのか迷う場面は少なくありません。
令和7年に消防庁が示した通知では、車椅子使用者用客席の横に設ける同伴者席について、固定の考え方が整理されました。
この記事では2つの固定方法と、床への固定を免除できる特例の3条件を、通知の内容に沿って解説します。
うちの劇場も車椅子席の横に同伴者用のいすを置く予定なんですが。
床に固定しないといけないんでしょうか。
令和7年の通知で同伴者席だけの取扱いが整理されましたよ。
2つの固定方法と、固定を免除できる特例があります。
固定しなくてよいこともあるなら、うちにも使えるかもしれません。
どういう条件なんでしょうか。
順番に整理していきますね。
まず結論から見てみましょう。
- 令和6年の政令改正とバリアフリー建築設計標準の改定を受け、消防庁が劇場等の同伴者席の固定の取扱いを整理しました(消防予第248号)。
- 対象は車椅子使用者用客席の横に設ける同伴者席だけで、通常のいす席の固定義務は変わりません。
- 床に固定する場合はあらかじめ固定したいすと床埋め込みナット式のボルト固定の2方法が認められています。
- 介助目的・避難通路に設けない・必要最小限の数の3条件をすべて満たせば、第36条の2の特例で床への固定を免除できます。
- 特例の適用可否は消防長(消防署長)の判断のため、設計段階で所轄消防署に確認しておく必要があります。
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目次
劇場の同伴者席はなぜ通知で整理されたのか

バリアフリーの基準が見直されたことで、同伴者席の扱いが新たに整理されました。
車椅子使用者用客席の隣に同伴者席を設ける設計が標準になったことで、いすを床に固定する原則との整合をどう取るかが課題になりました。
そこで消防庁予防課が、火災予防条例(例)上の取扱いを整理して各消防機関に示したのが今回の通知です。
劇場等の新築・改修を検討している施設ほど、早い段階でこの通知の内容を押さえておく必要があります。
古い設計のまま増築や模様替えをする場合も無関係ではありません。
うちの劇場も車椅子席の横に同伴者用のいすを置く予定なんですが。
床に固定しないといけないんでしょうか。
令和7年の通知で同伴者席だけの取扱いが整理されましたよ。
順番に見ていきましょう。
どの客席のどの席が対象になるのか

車椅子使用者用客席の横に設ける同伴者席に限られます。
劇場等の客席のいすは、火災予防条例(例)第35条(屋内)・第36条(屋外)によって床への固定が原則とされており、この原則自体は今回の通知でも変わっていません。
通知が扱うのは、車椅子使用者用客席の横に設ける同伴者席という限られた範囲だけです。
一般のいす席や車椅子使用者用客席そのものの固定義務には触れていません。
まず自分の施設のどの席が同伴者席に当たるのかを図面で確認することが最初の一歩になります。
じゃあ普通の客席のいすは、これまでどおり床に固定したままでいいんですね。
そのとおりです。
今回整理されたのは同伴者席だけなので、混同しないよう図面で範囲を確認しましょう。
固定しなくてよいのはどんな場合なのか

それぞれの中身を確認します。
あらかじめ固定したいす席を設ける方法(例1)と、床埋め込みナットを使ってボルトで必要なときだけ固定できるようにする方法(例2)のどちらも認められます。
さらに、介助目的であること・客席の避難通路に設けないこと・観覧時に必要最小限の数であることの3条件をすべて満たせば、第36条の2の特例により床への固定そのものを免除できます。
3条件は「どれか」ではなく「すべて」を満たす必要があります。
可動椅子にする場合は、この3条件を満たす配置になっているかを設計段階でチェックしておくことが欠かせません。
うちは車椅子の方の隣に、必要なときだけ可動のいすを置きたいんですが。
それなら特例の対象になりえます。
介助目的・避難通路に置かない・必要最小限の数、この3つを満たしているか確認しましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

可動だからといって自由に置けるわけではありません。
可動椅子にした同伴者席であっても、火災予防条例(例)第35条第5号・第36条第4号が定める客席の避難通路の中に置くことはできません。
観覧時以外に予備のいすを通路脇へ常設しておくことも、必要最小限の数の条件から外れる可能性があります。
特例の適用可否は消防長(消防署長)の判断によるため、固定しない設計にする場合は所轄消防署との事前協議が前提になります。
図面上は問題なくても、実際の運用で通路をふさいでいないかを定期的に確認することも忘れないようにします。
混雑する公演のときだけ予備のいすを通路のそばに置いておきたいんですが、それは大丈夫でしょうか。
常設すると必要最小限の数から外れるおそれがあります。
観覧時だけ出し入れする運用にして、通路をふさがないようにしましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

最後に確認しておきたい手順をまとめます。
車椅子使用者用客席の横に同伴者席を計画する際は、固定式にするか可動式にするかをまず決め、可動式なら3条件を満たす配置かどうかを図面に落とし込みます。
固定式にする場合は、あらかじめ固定するいす(例1)か、床埋め込みナットでボルト固定できるいす(例2)のどちらにするかを選びます。
この通知は消防組織法第37条に基づく助言として発出されたものなので、実際の適用は所轄消防署の判断に委ねられます。
設計図面を持って早めに所轄消防署へ相談し、協議の記録を残しておくことをおすすめします。
設計の早い段階で消防署に相談しておいたほうがよさそうですね。
そのとおりです。
図面を持って事前に相談すれば、固定方法や特例の適用をスムーズに決められますよ。
よくある質問
まとめ
床への固定と特例の違いがよく分かりました!
今度の改修計画に活かします。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防予第248号「劇場等における車椅子使用者客席の同伴者席の固定に係る取扱いについて(通知)」(令和7年6月26日 消防庁予防課長)
- 火災予防条例(例)第35条・第36条・第36条の2(客席の基準・基準の特例)
- 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令の一部を改正する政令(令和6年政令第221号)
- 「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」(令和7年5月30日 国住参建第996号)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





