危険物施設の許可申請に、消防機関から独自の条件を付けられたらどうしますか。
昭和48年、給油取扱所の変更許可処分に、隣接住民の同意書を提出するまで異議を申さないという条件が付けられ、会社側がこれを争った事例があります。
判決は許可の性質を明らかにした一方で、市側の主張のうち退けられた部分もはっきり示しています。
この判例が突きつけているのは技術上の基準に適合していれば許可は必ず与えられるという原則です。
技術基準に適合していれば、市は必ず許可を出さなきゃいけないんですよね。
技術上の基準に適合すれば許可を拒めないと判断された判例があります。
隣接住民の同意書を求められたら、素直に出すしかないんですか。
同意書の提出を条件にした処分は無効と判断されました。
認められなかった市側の主張まで、この記事で見ていきます。
- 昭和48年、給油取扱所の変更許可処分に隣接住民の同意書提出を求める条件が付けられました
- 争点は消防法11条2項が定める許可の性質です
- 判決は技術上の基準に適合すれば条件なしで許可を与えなければならないと判示しました
- 環境保全条例を根拠に条件を付けられるとの市側の主張は認められませんでした
- 別の許可申請を2年以上放置したことは不作為の違法にあたるとされました
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目次
どんな経緯で条件が付けられたのか

判決が認定した事実だけを並べます。
- 会社は給油取扱所を経営し、以前から可搬式給油取扱所の許可を得ていた
- 昭和48年3月、消防法11条1項に基づき、固定式給油取扱所への変更許可を申請した
- 市はいったん許可処分をしたが、その許可書の写しと引き換えに「隣接住民の同意書を提出するまで異議を申さない」という念書を差し入れさせ、事実上、同意書の提出を条件(附款)とした
- 会社は隣接住民の同意を得られず、その後に申請した別の設備(灯油専用の一般取扱所)の許可申請についても、市は2年以上何の応答もしなかった
- 会社は、許可処分が既に存在し効力を有すること、同意書提出の義務がないこと、別申請への不作為が違法であることの確認を求めて訴訟を起こした
会社側は固定式への変更に必要な設備を整え、政令が定める技術上の基準に適合させていました。
それでも市は、許可書の写しと引き換えに、隣接住民の同意書を提出するまで許可の受理に異議を申さない旨の念書を求めました。
念書を差し入れたのは会社の元売り会社の担当者でしたが、会社自身がその条件に同意したという事実は認められていません。
自分の施設でも、許可申請の際に技術基準以外の書面提出を求められていないか、一度確認してください。
技術基準に適合していても、別の条件を付けられることがあるんですか。
その条件が消防法に違反していないかが争われました。
会社と市どちらの主張が対立したのか

双方の言い分をそれぞれ確認します。
会社側は、消防法11条2項の許可は覊束処分であり、技術上の基準に適合していれば市は許可を与えなければならず、独自の条件を付す根拠はないと主張しました。
市側は、高砂市が定めた環境保全条例に基づき、公害防止のため必要な範囲で条件を付すことができると反論しました。
どちらの主張が通るかで、隣接住民の同意書を提出する義務の有無が決まります。
自分の施設でも、行政から求められた条件が、法令のどの規定に基づくものかを確認する習慣をつけてください。
隣接住民の同意なんて、消防法には書いていない気がするんですが。
そこが裁判所の判断のポイントになりました。
裁判所はどこを違法と判断したのか

神戸地裁と大阪高裁、どちらも同じ結論です。
給油取扱所の変更許可は、技術上の基準に適合しているかどうかだけで許可・不許可が決まる覊束処分であり、行政庁が独自の条件を付けることは許されないとされました。
さらに、会社が別に申請した灯油専用の一般取扱所の設置許可についても、市が2年以上何の応答もしなかったことが問題とされました。
判決は、通常要求される注意義務を尽くして調査・検討すれば、10日から15日程度の審査期間に事務処理の期間を加えた範囲で応答できたはずだとして、この放置を不作為の違法と判断しました。
自分の施設でも、許可申請から長期間応答がないときは、その期間が技術審査に本当に必要な期間かどうかを考えてみてください。
技術基準さえ満たしていれば、それ以上は求められないんですね。
覊束処分だからこそ、条件を付ける余地がないと判断されました。
市側のどの言い分が退けられたのか

どこで言い分が退けられたのかを見ていきます。
市側は、高砂市環境保全条例に基づき、公害防止のため隣接住民の同意を条件にできると主張しましたが、会社がその条例の許可をまだ受けていない時点での処分だったため、条例を根拠にできないとされました。
また市側は、会社の元売り会社が隣接住民の同意書提出を約束する念書を差し入れていたとも主張しましたが、証人尋問の結果、会社自身がそのような約束をした事実は認められないとして退けられました。
念書を差し入れたのは会社から代理権を与えられていない元売り会社の担当者であり、会社を拘束する合意とは認められなかったためです。
自分の施設でも、取引先や代理人が行政に差し入れる書面が、自社を拘束する約束になっていないか目を通しておいてください。
代理人が書いた念書だけで、会社が約束したことにはならないんですね。
代理権が無ければ会社を拘束しないと判断されました。
明日からどう対応すればよいのか

判決が示した線引きを整理します。
まず、許可申請で技術上の基準以外の書面提出を求められたら、その根拠となる法令・条例を確認すること。
次に、根拠が消防法や政令の技術基準にないものであれば、応じる法的義務がない可能性があると考え、安易に念書や誓約書に署名しないこと。
そして、申請から応答なく長期間(技術審査に通常必要な期間を大きく超える期間)放置されたときは、不作為の違法を争える可能性があることを覚えておくこと。
今日のうちに、進行中の許可申請があれば、求められている書面が技術基準に基づくものかどうかを確認してください。
求められた書面が技術基準に基づくものかを見ればいいんですね。
根拠を確認する習慣が、不要な条件を防ぎます。
よくある質問
まとめ
許可申請の書面を
もう一度確認しに行きます。
技術基準に基づかない条件は
争える余地があります。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 昭和50年9月12日 神戸地方裁判所判決
- 昭和52年10月28日 大阪高等裁判所判決(控訴棄却)
- 消防法第11条第2項(当時)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)所収の判例を参考に、独自に解説を作成
※判決文の引用中の関係者の表記は、いずれも役割を示す表記(会社・隣接住民など)に置き換えています。本記事は確定した判決の内容を要約したものです。判決当時の法令に基づく判断であり、条文番号も当時のものです。その後の改正により現在の規定とは異なる場合があります。個別の事案についての法的な判断は弁護士に、消防法令の適用は所轄消防署にご確認ください。





