給油取扱所には、ガソリンや軽油を扱うことを前提にした位置・構造・設備の基準があります。
メタノールやエタノール、またはこれらを含む危険物を扱うときは、この基準だけでは足りません。
危険物の規制に関する政令第十七条第四項が、総務省令へ上乗せの特例基準を委任しているためです。
この記事では、専用タンクの設備から給油作業そのものまで、メタノール等・エタノール等に特有の基準を条文から整理します。
うちのスタンドはガソリンと軽油だけなので、特別な基準は関係ないですよね。
実はメタノールやエタノールを扱う給油取扱所には、通常の基準に加えて専用の特例基準があります。
具体的にはどんな設備が必要になるんですか。
専用タンクの検知装置など、条文で定められた設備があります。
順番に見ていきましょう。
- メタノール等・エタノール等を扱う給油取扱所には、通常の位置・構造・設備の基準(令第十七条第一項〜第三項)に加えて上乗せの特例基準(同条第四項)が定められています。
- メタノールを取り扱う専用タンクには、漏れを検知する装置の設置が原則として必要です
- 専用タンク・簡易タンクの注入口には、弁を設けて閉鎖管理することが求められます
- エタノールを取り扱う場合もメタノールとほぼ同じ規定が適用されますが、「含有するもの」を扱うケースは規定が緩和されます
- 給油や注入の作業時には、排水溝を切替弁で収容設備に接続しておくことが義務付けられています
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目次
なぜメタノール等・エタノール等だけ別の基準があるのか

根拠になる条文の位置づけを押さえます。
令第十七条第一項から第三項までは、ガソリンや軽油など一般的な危険物を扱う給油取扱所の位置・構造・設備の基準です。
メタノール等・エタノール等はこの基準だけでは足りず、同条第四項が総務省令(規則)へ追加の特例を委任しています。
これは危険物の取扱いの作業そのものを縛る令第二十七条第七項とは別の条文で、こちらは施設を作るときの基準です。
給油取扱所でこれらの危険物を扱う予定があるなら、まずこの上乗せ基準の対象になることを認識してください。
位置とか構造の基準は、もう昔に確認したままです。
昔の確認だけでは上乗せ特例が抜けているかもしれません。
次に対象範囲を見ていきましょう。
どんな給油取扱所にこの上乗せ基準が及ぶのか

屋外・屋内・複合施設のいずれもが対象です。
規則第二十八条の二が屋外給油取扱所、第二十八条の二の二が屋内給油取扱所の特例を定めています。
さらに第二十八条の二の三は、圧縮天然ガス等充てん設備や圧縮水素充てん設備を併設する給油取扱所、自家用の給油取扱所にも同じ枠組みを適用します。
どの条文も根拠は令第十七条第四項で共通していますが、参照先の基準(第一項・第二項・第三項)が施設のタイプごとに変わります。
自施設が屋外型か屋内型か、他の充てん設備を併設しているかを、まず特定してください。
うちは屋外型ですが、複合施設の扱いは関係なさそうです。
屋外型なら第二十八条の二が直接効きます。
次はタンクの設備を確認しましょう。
専用タンクにはどんな設備が求められるのか

四つの要素に分けて見ていきます。
一つ目は漏れ検知装置で、専用タンクまたはその周囲に設置します。
二つ目は注入口の弁と、注入し過ぎを自動で止める設備です。
三つ目は注入口の周囲の排水溝・切替弁と、漏れた危険物を受け止める四立方メートル以上の設備。
四つ目は簡易タンクを設ける場合の注入口の弁で、こちらは弁を設けるだけで足ります。
これらはガソリンや軽油の専用タンクには課されない、メタノール等・エタノール等だけの上乗せです。
タンクだけじゃなくて、簡易タンクにも弁が要るんですね。
はい、簡易タンクも対象です。
次はメタノールとエタノールの違いを見ましょう。
メタノールとエタノールで規定はどう違うのか

三つのパターンを比較します。
第二項により、エタノールを取り扱う専用タンクには漏れ検知装置を含む第一項の規定がそのまま適用されます(第三号を除く)。
一方で、メタノールやエタノールを「含有するもの」を扱う専用タンクは、別立ての第三項で規定され、漏れ検知装置までは求められません。
含有物のケースは排水溝・切替弁・四立方メートル以上の設備が基本ですが、給油空地の外に流出するおそれがなければこれも適用されません。
純物質か含有物かで、求められる設備の数が変わる点を見落とさないでください。
含有物だから緩いというのは、意外でした。
はい、純物質か含有物かで設備の数が変わります。
最後に作業のときのルールを確認しましょう。
給油や注入のときに何を守ればよいのか

令第二十七条第七項に基づく規則第四十条の十四が定めています。
給油や注入をするときは、排水溝を切替弁で漏れた危険物を収容する設備につなぐことが義務です。
専用タンク・簡易タンクの注入口の弁は、注入ホースが緊結されているとき以外は閉鎖しておかなければなりません。
これまで見た検知装置や弁は施設を「作るとき」の基準で、この二つは実際に「使うとき」に守る基準という違いがあります。
日々の給油業務のマニュアルに、この二つの手順を組み込んでおいてください。
- 取り扱う危険物がメタノール等かエタノール等のどちらに当たるかを確認する
- 専用タンクに漏れ検知装置・注入口の弁・過剰注入防止設備が設置されているかを確認する
- 「含有するもの」を扱う場合は、検知装置が免除される規定に該当するかを確認する
- 給油・注入時に排水溝が切替弁で収容設備に接続されているかを確認する
- 判断に迷う場合は工事や運用の変更前に所轄消防署へ相談する
弁を閉め忘れることが、一番怖いですね。
はい、閉め忘れが典型的な違反です。
よくある質問もあわせてご確認ください。
よくある質問
まとめ
設備の基準と作業の基準、両方あることがよく分かりました。
助かります。
まずは専用タンクの設備から確認してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第十一条第一項・第五項
- 危険物の規制に関する政令第十七条第一項・第四項
- 危険物の規制に関する政令第二十七条第七項
- 危険物の規制に関する規則第二十五条の二
- 危険物の規制に関する規則第二十八条の二・第二十八条の二の二・第二十八条の二の三
- 危険物の規制に関する規則第四十条の十四
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





