一戸建ての敷地に宿泊棟と浴室棟とトイレ棟を分けて建てる、という民泊の形態は珍しくありません。
敷地の中に複数の棟があるとき、その一つひとつを消防法令上どう扱えばよいのか迷う関係者は多いはずです。
浴室棟や便所棟にも自動火災報知設備が要るのか、住宅用防災機器はどこまで付ければよいのか、事業者が留守にする間の安全はどう確保するのか。
今回は消防庁の執務資料から、複数棟型の民泊に関する五つの質疑応答を解説します。
うちの敷地、母屋とは別にお風呂専用の棟とトイレ専用の棟があるんですが、民泊にするとそれぞれ別の用途になるんでしょうか。
棟ごとに用途判定を行います。
浴室棟や便所棟は設備の扱いも変わってきます。
住宅用防災機器や、事業者が留守にする間の対策まで考えると、何から手を付ければいいのか分からなくて。
それでは五つの疑問を順番に見ていきましょう。
- 宿泊棟・浴室棟・便所棟・事業者居住棟のように複数棟へ分かれる届出住宅は、棟ごとに330号通知を適用して用途判定する
- 宿泊室が存しない浴室棟や便所棟は、消防法施行令第32条の規定を適用して自動火災報知設備等の設置を免除できる
- 一戸建て住宅の一部だけを届出住宅にする場合は、棟全体で330号通知を適用したうえで判定する
- 住宅として扱われる届出住宅の宿泊室には住宅用防災機器の設置義務があり、連動型の警報器が望ましい
- 住宅宿泊事業者が一時的に不在になる間は、代理者の設置や常時連絡できる体制など複数の対策を組み合わせる
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目次
宿泊棟や浴室棟など複数棟に分かれた届出住宅は、どう用途判定するか

平成30年1月、消防庁予防課長がまとめた執務資料にこんな質疑があります。
住宅宿泊事業法に基づく届出住宅等に係る消防法令上の取扱いについて(平成29年10月27日消防予第330号)は、届出住宅を原則として令別表第一(5)項イ(旅館・ホテル等)として扱い、家主が不在とならないことと宿泊室の床面積が一定以下であることを条件に(5)項ロ(住宅)として扱う特例を定めていますが、敷地内に複数の棟がある場合は、この判定を棟ごとに別々に行います。
事業者居住棟・宿泊棟・浴室棟・便所棟をひとまとめに考えて一つの結論を出すのではなく、棟ごとに330号通知を当てはめて答えを出すという考え方です。
届出は一つだから、まとめて一つの用途になると思っていました。
棟ごとに別々に判定するのが基本です。
宿泊室が存しない浴室棟や便所棟は、自動火災報知設備等を免除してよいか

同じ質疑応答の後段にこうあります。
消防法施行令第32条は、防火対象物の位置・構造・設備の状況から判断して、火災の発生や延焼のおそれが著しく少なく、被害を最小限度に止められると認めるときは、消防用設備等の基準によらなくてよいと定める特例規定です。
浴室棟・便所棟は宿泊室がなく火気を使う設備も限られるため、この特例を使って自動火災報知設備等の設置を免除できますが、免除できるのはあくまで消防長又は消防署長が個別に認めた場合であり、届出をすれば自動的に免除されるわけではありません。
浴室棟にもセンサーを付けないといけないと思っていました。
消防署の個別の判断が必要です。
一戸建て住宅の一部だけを届出住宅にする場合、棟全体の用途はどう判定するか

執務資料にはこんな質疑があります。
一戸建て住宅の二階の一室だけを届出住宅にした場合でも、一階を含む棟全体を対象に330号通知第1を当てはめて用途を判定します。
共同住宅の一住戸の一部だけを届出住宅にした場合も考え方は同じで、届出した部分だけでなく住戸単位でまとめて判定します。
なお、令別表第一の対象物の用途に供される部分が一戸建て住宅の一部に存する場合は、その部分を除いたうえで330号通知を適用し、棟全体の用途としては41号通知(令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱いについて)を適用して判定します。
届出した二階の一室だけ見てもらえると思っていました。
棟全体をまとめて判定します。
住宅として扱われる届出住宅の宿泊室には、住宅用防災機器の設置義務があるか

執務資料にはこんな質疑があります。
消防法第9条の2は住宅の用途に供される防火対象物の関係者に住宅用防災機器の設置と維持を義務づけており、宿泊室も居住者の寝室と同じく設置対象になります。
さらに宿泊客と居住者が別々の部屋で就寝する民泊では、どこかで火災が起きたときに離れた部屋の居住者がすぐに気づけるよう、一つの警報器の作動を他の警報器にも知らせる連動型が推奨されています。
住宅扱いになれば警報器も不要になると思っていました。
宿泊室にも設置義務があります。
住宅宿泊事業者が一時的に不在になる間、火災時の安全はどう確保するか

執務資料にはこんな質疑があります。
住宅宿泊事業法施行規則第9条第3項に定める「日常生活を営む上で通常行われる行為に要する時間の範囲内の不在」であれば、不在であっても住宅としての扱いは変わりませんが、その間の安全は代理者・火気制限・連絡体制という複数の対策を組み合わせて確保することが求められます。
どれか一つではなく、組み合わせて備えるという考え方です。
買い物くらいなら留守にしても平気だと思っていました。
代理者や連絡体制も備えてください。
よくある質問
まとめ
うちの浴室棟や便所棟も、一度消防署に相談してみます!
難しいときは所轄の消防署や専門家にご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第9条の2
- 消防法施行令第32条
- 消防法施行規則第6条第5項、第1条の3
- 住宅宿泊事業法施行規則第9条第3項
- 住宅宿泊事業法に基づく届出住宅等に係る消防法令上の取扱いについて(平成29年10月27日付け消防予第330号 消防庁予防課長)
- 住宅宿泊事業法等に係る執務資料の送付について(通知)(平成30年1月9日付け消防予第2号 消防庁予防課長)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した質疑応答は平成30年の執務資料によるもので、条文の番号等は現行条文と照らして編集部で確認しています。個別の事案についての適用は、所轄の消防署にご確認ください。





