住宅用防災警報器は、寝室や階段の天井・壁に付ければそれで終わり、というわけではありません。
壁際に家具があって基準どおりの位置が取れなかったり、階段が吹き抜けで天井に手が届かなかったりする住宅は珍しくないからです。
工事に資格が要るのかという素朴な疑問から、換気口や家具をどう避けるかという実務の悩みまで、
今回は5つの疑問から、基準どおりに付けられないときの考え方を解説します。
自分で住宅用防災警報器を取り付けようと思うんですが、工事に資格は要るんでしょうか。
資格は要りません。
ただし取り付け位置には細かい基準があります。
うちは壁際に家具があったり、階段が吹き抜けだったりで、基準どおりに付けられるか心配で。
そういう場合の考え方も含めて、5つの疑問を順番に見ていきましょう。
- 住宅用防災機器の設置工事は、消防設備士でなくても行うことができる
- 壁際の家具などで基準どおりの離隔距離が確保できないときは、消防長の特例で設置できることがある
- 階段が吹き抜けで天井に設置できないときも、煙を有効に感知できる位置であれば特例が認められる
- 換気口等の空気吹出し口からは、感知部までの距離が1.5メートル以上離れた位置に設置する
- 行き来できない二世帯住宅は、それぞれ別の住宅として世帯ごとに設置する
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目次
住宅用防災機器の設置工事に消防設備士の資格は必要か

平成17年3月、消防庁防火安全室がまとめた執務資料にこんな質疑があります。
消防法施行令第36条の2は、消防設備士でなければ工事できない設備として屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・自動火災報知設備・金属製避難はしごなど13種類を列挙していますが、このリストに住宅用防災機器(住宅用防災警報器・住宅用防災報知設備)は入っていません。
そのため住宅の関係者自身や、工務店・電気店など消防設備士の資格を持たない業者でも、設置工事そのものを行うことができます。
ただし誰が工事してもよいからこそ、取り付け位置の基準は自分でも理解しておく必要があります。
資格がないとダメだと思い込んでいました。
資格は不要でも、位置の基準は要確認です。
壁際に家具があって離隔距離を確保できないときはどうするか

執務資料にはこんな質疑があります。
設置維持省令(住宅用防災機器の設置及び維持に関する条例の制定に関する基準を定める省令)第7条第2号は、警報器を天井なら壁やはりから0.6メートル以上、壁なら天井から下方0.15メートル以上0.5メートル以内に設置するよう定めていますが、
消防法施行令第5条の8に基づき、条例で定める消防長(消防署長)の特例によって、基準どおりの位置に動かせない事情があり、かつ火災を有効に感知できる位置であれば、そのまま設置を認めてもらえる余地があります。
家具の配置をあきらめる前に、所轄の消防署に相談してみる価値があります。
家具を動かせないと、もう設置できないと思っていました。
有効に感知できる位置かどうかがポイントです。
階段が吹き抜けで天井に設置できないときはどうするか

執務資料にはこんな質疑があります。
設置維持省令第7条第1号は、階段の上端に住宅用防災警報器を設置することを基本の基準として定めていますが、吹き抜けの階段や踊り場の天井のように構造上どうしても設置が難しい住宅では、同じく施行令第5条の8の特例により、階段に流れ込んだ煙を有効に感知できる位置であれば、基準の高さにこだわらず設置することが認められます。
家具の場合と同じく、機能を果たせる位置かどうかが判断の軸になっているということです。
吹き抜けのある家だと、取り付け自体が無理かと思っていました。
煙を感知できる位置なら設置できます。
換気口の近くではどこを基準に距離を測ればよいか

執務資料にはこんな質疑があります。
同じ執務資料には、天井や壁への取り付け位置についても「天井から下方0.15メートル以上0.5メートル以内とは、住宅用防災警報器のどの位置で測定すればよいか」という質疑があり、こちらもおおむね感知部の中心までの位置とすると回答されています。
壁からの距離も、換気口からの距離も、器具のケースの端ではなく感知部を基準に測るという考え方は共通しています。
取り付け場所を決めるときは、メジャーをケースの縁ではなく感知部に当てる、という細かな違いが基準を満たすかどうかを左右します。
器具の端で測ればいいと思っていました。
感知部の中心で測ってください。
行き来できない二世帯住宅ではどう設置すればよいか

執務資料にはこんな質疑があります。
消防法第9条の2第1項は「住宅の用途に供される防火対象物の関係者」に設置義務を課す条文で、行き来できない二世帯住宅では、親世帯・子世帯それぞれが独立した「住宅」として扱われます。
そのため、寝室や階段の上端といった設置基準も世帯ごとに満たす必要があり、片方の世帯に設置してあれば足りる、という考え方にはなりません。
二世帯住宅を計画・リフォームするときは、玄関や階段が世帯ごとに独立しているかを確認したうえで、それぞれの世帯分の設置を忘れないようにする必要があります。
一軒の家だから、まとめて1セットでいいと思っていました。
世帯ごとに必要だと考えてください。
よくある質問
まとめ
うちの寝室や階段も、一度測ってみます!
難しいときは所轄の消防署や専門家にご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第9条の2、第17条の5
- 消防法施行令第5条の6、第5条の7、第5条の8、第36条の2
- 住宅用防災機器の設置及び維持に関する条例の制定に関する基準を定める省令(平成16年総務省令第138号)第7条
- 住宅用防災警報器及び住宅用防災報知設備に係る技術上の規格を定める省令(平成17年総務省令第11号)
- 住警器等の設置及び維持に関する執務資料について(平成17年3月31日付け消防安第65号 消防庁防火安全室長から各都道府県消防防災主管部長・東京消防庁・各指定都市消防長あて)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した質疑応答は平成17年の執務資料によるもので、条文の番号等は現行条文と照らして編集部で確認しています。個別の事案についての適用は、所轄の消防署にご確認ください。





