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切削装置だけを使う一般取扱所はなぜ区画も警報装置も要らないのか|指定数量の倍数十未満の空地緩和もあわせて解説

切削装置だけを使う一般取扱所の基準を解説する記事のアイキャッチ画像、精密な工作機械と切削油タンクが置かれた施設内の写真

切削油を使って加工する機械だけの一般取扱所には、消防法令上の特例が用意されています。
基準は取り扱う量や建物の造りごとに細かく分かれており、思い込みで判断すると許可申請でつまずきます。
特に「区画」や「警報装置」の要否は、他の号の一般取扱所と混同しやすい落とし穴です。
この記事では危険物の規制に関する規則第二十八条の六十の二を条文から読み解き、切削装置だけの一般取扱所に本当に必要な要件を整理します。

うちの工場、切削油を使う機械が一台だけあるんですが。
これも危険物の規制の対象になるんでしょうか。

切削装置だけを使う一般取扱所には専用の特例基準があります。
まずは対象になる条件を確認しましょう。

ほかの号の一般取扱所とは基準が違うんですか。

はい、区画警報装置の要否が号ごとに変わります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 切削油を使う切削装置・研削装置だけの一般取扱所は、指定数量の倍数三十未満かつ高引火点危険物を百度未満で扱うものに限られます
  • 基本の特例(第二項)では地階なし・窓なしなど複数の建物要件に加え、壁柱床はりの耐火構造が必要です
  • 厚さ七十ミリメートルの鉄筋コンクリートによる区画までは求められません。他の号との違いです
  • 焼入れ装置等に課される警報装置も、この号の一般取扱所には課されていません
  • 指定数量の倍数十未満なら区画すら不要で、周囲三メートルの空地を確保すれば足ります

切削装置だけの一般取扱所はなぜ区画も警報装置もいらないのかを示す四列のインフォグラフィック、対象の設備の確認・建物基準の確認・区画の要否の確認・空地緩和の確認という手順を示す

切削装置を使う一般取扱所とはどんな施設を指すのか

切削装置を使う一般取扱所とはどんな施設を指すのか
まず、この特例の対象になる施設の定義を確認します。
該当するかどうかは、条文の要件を一つずつ照らし合わせて判断します。
令第十九条第二項第七号に掲げる一般取扱所 切削油として危険物を用いた切削装置、研削装置その他これらに類する装置以外では危険物を取り扱わない一般取扱所(高引火点危険物のみを百度未満の温度で取り扱うものに限る。)で指定数量の倍数が三十未満のもの(危険物を取り扱う設備を建築物に設けるものに限る。)(危険物の規制に関する規則第二十八条の五十四第七号)
対象は切削油を使う装置だけです。
切削装置・研削装置その他これらに類する装置以外で危険物を取り扱わない一般取扱所が対象で、高引火点危険物百度未満の温度で扱うものに限られます。
指定数量の倍数は三十未満まで、かつ危険物を取り扱う設備を建築物内に設ける施設だけがこの号の対象です。
倍数が三十以上になったり、屋外に設備を置いたりすると、この号の特例そのものが使えなくなります。
まずは自分の施設が、この入口の条件をすべて満たしているかを確認してください。

うちの機械はちょうど百度未満で使ってます。
倍数もぎりぎり三十未満のはずです。

それなら対象になりそうですね。
次は建物側の基準を見ていきましょう。

建物にはどんな基本要件が求められるのか

建物にはどんな基本要件が求められるのか
対象になったら、次は建物の基準です。
第二十八条の六十の二第二項が定める要件を確認します。
第二十八条の五十四第七号の一般取扱所のうち、その位置、構造及び設備が第二十八条の五十五第二項第一号及び第三号から第八号まで、第二十八条の五十六第二項第二号並びに前条第二項第六号及び第三項第一号に掲げる基準に適合するものについては、令第十九条第一項において準用する令第九条第一項第一号、第二号、第四号から第十一号まで、第十八号及び第十九号の規定は、適用しない。(危険物の規制に関する規則第二十八条の六十の二第二項)
基準は他の号からの寄せ集めです。
地階を有しないこと・窓を設けないこと・出入口に特定防火設備を設けることなど、第二十八条の五十五第二項の要件の大半を引き継ぎます。
これに加え、上階がなければ屋根を不燃材料で造ること(第二十八条の五十六第二項第二号)、タンク直下に囲いを設けること(第二十八条の六十第二項第六号)、壁柱床はりを耐火構造とすること(同第三項第一号)も求められます。
一つの条文だけでなく、複数の号を横断して基準が組み立てられている点に注意してください。
どれか一つでも欠けると、この特例そのものが成立しません。

いろんな条文をまたいでるんですね。
見落としが怖いです。

条文の準用先を一つずつ照らし合わせるのが確実です。
次は意外な落とし穴を見ていきましょう。

なぜ区画も警報装置も求められないのか

なぜ区画も警報装置も求められないのか
他の一般取扱所の特例と比べると、この号には無い要件があります。
実際に条文を照らし合わせて確認します。
(比較対象・第二十八条の五十五第二項第二号)建築物の一般取扱所の用に供する部分は、壁、柱、床、はり及び屋根(上階がある場合には、上階の床)を耐火構造とするとともに、出入口以外の開口部を有しない厚さ七十ミリメートル以上の鉄筋コンクリート造又はこれと同等以上の強度を有する構造の床又は壁で当該建築物の他の部分と区画されたものであること。
区画と警報装置は準用リストに入っていません。
第二十八条の六十の二第二項が引用する条項に、この第二号(厚さ七十ミリメートルの鉄筋コンクリート等での区画)は含まれていません。
同じく、焼入れ・放電加工の一般取扱所(第二十八条の五十六第二項第三号)に課される危険な温度に達するまでに警報する装置も、この号には課されていません。
切削油は焼入れ油ほど高温での加熱を伴わないため、他部分との厳重な区画や早期の警報までは求めない構成になっていると考えられます。
ただし壁柱床はりを耐火構造にする要件(第二十八条の六十第三項第一号)は残っているので、耐火構造そのものを省略できるわけではありません。

区画がいらないのは意外でした。
耐火構造だけでいいんですね。

はい、区画までは不要ですが耐火構造は必須です。
次は倍数が小さい施設の緩和を見ましょう。

指定数量の倍数が十未満ならどこまで簡素化できるのか

指定数量の倍数が十未満ならどこまで簡素化できるのか
取り扱う量がさらに少ない施設には、もう一段階の緩和があります。
第三項の要件を確認します。
第二十八条の五十四第七号の一般取扱所(指定数量の倍数が十未満のものに限る。)のうち、その位置、構造及び設備が次の各号に掲げる基準に適合するものについては、令第十九条第一項において準用する令第九条第一項第一号、第二号、第四号から第十一号まで、第十八号及び第十九号の規定は、適用しない。一危険物を取り扱う設備(危険物を移送するための配管を除く。)は、床に固定するとともに、当該設備の周囲に幅三メートル以上の空地を保有すること。(略)二建築物の一般取扱所の用に供する部分(前号の空地を含む。)の床は、危険物が浸透しない構造とするとともに、適当な傾斜を付け、かつ、貯留設備及び当該床の周囲に排水溝を設けること。(危険物の規制に関する規則第二十八条の六十の二第三項第一号・第二号)
倍数十未満なら耐火構造も不要になります。
危険物を取り扱う設備を床に固定し、周囲に幅三メートル以上の空地を確保すれば、第二項の建物基準そのものが不要になります。
ただし床が危険物を浸透させない構造であること、適当な傾斜と貯留設備、周囲の排水溝は引き続き必要です。
設備から三メートル未満の距離に建築物がある場合でも、その壁と柱が耐火構造であれば距離を短縮できます。
量が減っても「何もしなくてよい」わけではなく、空地と床の対策に置き換わるだけだと理解してください。

うちは倍数がもっと小さいので、こっちが使えそうです。
空地さえ確保すればいいんですね。

はい、ただし床の排水溝は必須です。
最後に確認の手順をまとめます。

明日から何を確認すればよいのか

明日から何を確認すればよいのか
最後に、実務で確認すべき手順を整理します。
順番にチェックしてください。
(危険物の規制に関する規則第二十八条の五十四第七号・第二十八条の五十五第二項・第二十八条の五十六第二項第二号・第二十八条の六十・第二十八条の六十の二に基づく確認手順)
  • 取り扱う危険物が高引火点危険物で百度未満の温度で使用されているかを確認する
  • 指定数量の倍数が三十未満か、さらに十未満かを確認する
  • 建物が地階なし・窓なし・特定防火設備の出入口など第二十八条の五十五の要件を満たしているかを確認する
  • 区画や警報装置が不要な号であることを、準用条文で確認する
  • 倍数十未満で空地の緩和を使う場合は、幅三メートルの確保と床の排水溝を点検する

これで一通り確認できそうです。
あとは実際の申請図面と照らし合わせてみます。

不明な点があれば所轄の消防署か㈱防災屋にご相談ください。
手続きまで一緒に確認します。

よくある質問

Q切削装置と研削装置以外にも、同じ特例が使える装置はありますか?
A条文は「その他これらに類する装置」と定めており、切削油を使う同種の加工装置であれば対象になり得ますが、個別の判断は所轄消防署への確認が必要です。
Q指定数量の倍数が三十以上になったらどうなりますか?
A第二十八条の五十四第七号の対象から外れるため、この特例は使えず、令第九条第一項の一般基準がそのまま適用されます。
Q空地の三メートルが確保できない場合はどうすればよいですか?
A第三項ただし書により、設備から三メートル未満となる建築物の壁と柱が耐火構造であれば、その距離の幅の空地でも足ります。
Q区画が不要でも、防火上の対策は何も要らないのですか?
Aいいえ、地階なし・窓なし・特定防火設備の出入口・採光換気設備・可燃性蒸気の排出設備・ダンパーなど複数の要件が引き続き課されます。

まとめ

切削装置・研削装置以外では危険物を取り扱わない一般取扱所は、第二十八条の五十四第七号の特例対象です
対象は高引火点危険物のみを百度未満で扱う、指定数量の倍数三十未満の施設に限られます
基本の特例では地階なし・窓なしなど七つの要件(五十五条第二項)に加え、壁柱床はりの耐火構造が必要です
厚さ七十ミリメートルの鉄筋コンクリートによる区画は、この号の一般取扱所には求められません
焼入れ装置等に必要な警報装置も、この号には課されていません
指定数量の倍数十未満なら、周囲三メートルの空地を確保するだけで足ります
空地でも床の浸透防止・排水溝は必須で、免除されるわけではありません

切削装置だけの施設でも、条文を一つずつ確認すれば整理できそうです!

まずは対象になる装置かどうかから確認してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第十一条第一項・第五項
  • 危険物の規制に関する政令第十九条第一項・第二項第七号
  • 危険物の規制に関する規則第二十八条の五十四第七号
  • 危険物の規制に関する規則第二十八条の五十五第二項
  • 危険物の規制に関する規則第二十八条の五十六第二項第二号
  • 危険物の規制に関する規則第二十八条の六十第二項第六号・第三項第一号
  • 危険物の規制に関する規則第二十八条の六十の二

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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