二酸化炭素を放射する不活性ガス消火設備の貯蔵容器と聞くと、赤い縦型のボンベを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
実は消防法施行規則には、消火剤を常温で高圧のまま蓄える高圧式のほかに、消火剤を零下十八度以下まで冷やして低い圧力で蓄える低圧式という貯蔵方式が定められています。
低圧式貯蔵容器には、高圧式には無い専用の計器と安全装置が条文で細かく義務づけられています。
この記事では、低圧式貯蔵容器に何を備えなければならないのかを、消防法施行規則の条文から解説します
うちの二酸化炭素消火設備の丸いタンクに、温度計のようなものが付いているんですが、あれは何なんでしょうか。
それはおそらく低圧式の貯蔵容器ですね。
零下十八度以下で消火剤を保管するタイプです。
普通の赤いボンベと何が違うんですか。
消火剤を冷やして低い圧力で貯めるぶん、専用の計器や安全装置が必要になるんです。
- 二酸化炭素消火剤の貯蔵容器には、常温で貯める高圧式と、零下十八度以下に冷やして貯める低圧式の二つの方式がある
- 低圧式貯蔵容器には液面計及び圧力計を設けなければならない
- 圧力警報装置は二・三メガパスカル以上又は一・九メガパスカル以下で作動するものと定められている
- 容器内部の温度は自動冷凍機によって零下二十度以上零下十八度以下に保たれる
- 圧力の異常上昇に備え破壊板と放出弁を消防庁長官が定める基準に適合するものにしなければならない
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目次
二酸化炭素消火設備の貯蔵容器になぜ高圧式と低圧式があるのか

消防法施行規則第十九条第五項に、それぞれの貯蔵条件が定められています。
条文上、四十度以下で温度変化の少ない設置場所という基準は高圧式・低圧式のどちらの貯蔵容器にも共通してかかります。
そのうえで、消火剤を零下十八度以下まで冷やして貯める容器だけを「低圧式貯蔵容器」と呼び、次のイからニの基準が別枠で追加されます。
高圧式のボンベがずらりと並ぶ設備と違い、低圧式は保冷材で覆われた大きな横置きのタンク一本で構成されることが多い形です。
どちらの方式かは設備図面や銘板で確認できます。
うちの設備、丸いタンクなんですが低圧式ってやつでしょうか。
銘板に低圧式貯蔵容器と書かれていれば、そのとおりです。
低圧式貯蔵容器にはどんな計器を備えなければならないのか

条文には具体的にどんな計器を備えるかが定められています。
液面計は容器内にどれだけ消火剤が残っているかを、圧力計は内部の圧力を表示する計器です。
圧力警報装置は、二・三メガパスカル以上または一・九メガパスカル以下という決まった圧力の範囲を外れたときに作動するよう条文で数値まで定められています。
この数値の幅は、低圧式貯蔵容器が常に一定の圧力範囲で運用されることを前提にした基準です。
点検の際は、これらの計器の表示に異常な値が出ていないかをまず確認します。
圧力警報装置の数字まで条文で決まってるんですね。
はい。
二・三メガパスカルと一・九メガパスカルという上下の範囲まで数値で定められています。
温度はどうやって零下十八度以下に保たれるのか

この温度管理を担うのが自動冷凍機です。
この範囲より温度が上がると圧力が上昇し、逆に下がりすぎても設計上想定していない状態になるため、条文は上下の限界を両方とも数値で定めています。
温度管理は自動冷凍機が行うため、通常の運用では人が手動で調整する場面はありません。
自動という言葉のとおり、常時電源が確保されている必要があります。
点検では冷凍機が正常に稼働しているか、電源が確保されているかを確認します。
停電したら冷凍機も止まってしまうんじゃないですか。
そのため非常電源の確保も設備全体の基準として別に定められています。
圧力が上がりすぎたときの安全装置は何か

それが破壊板と放出弁です。
破壊板は容器に設けられ、想定を超える圧力がかかると破れて内部の圧力を開放する構造の部品です。
放出弁も同様に、消火剤を安全な方向へ逃がす役割を持ちます。
どちらも消防庁長官が定める基準に適合したものを使うことが条文で求められており、規格外の部品への交換はできません。
交換や整備が必要になった場合は、必ず消防設備士など資格を持つ業者に依頼します。
破壊板が壊れたら容器ごと交換しないといけないんですか。
破壊板自体を基準どおりの部品に交換すれば足りることが多く、容器全体の交換とは限りません。
低圧式貯蔵容器では明日からなにを確認すればよいのか

条文の基準を踏まえて、日常的に確認しておきたい点を整理します。
- 液面計と圧力計の表示に異常な値が出ていないか
- 圧力警報装置が作動する範囲(二・三メガパスカル以上・一・九メガパスカル以下)を外れていないか
- 自動冷凍機が正常に稼働し、非常電源が確保されているか
- 破壊板と放出弁が消防庁長官の定める基準に適合したものか
- 設置場所が温度四十度以下で温度変化の少ない場所に保たれているか
液面計・圧力計・圧力警報装置は日常点検でも表示を確認しやすい部分です。
自動冷凍機と非常電源、破壊板・放出弁の適合性は専門的な判断が必要なため、消防用設備等の点検の際に点検資格者へ確認します。
設置場所の温度条件は、周囲に発熱源を置いていないかという視点でも確認できます。
分からない表示や異音があれば、自己判断で操作せず点検業者に相談することが大切です。
日常点検でも見られる部分があるんですね。
はい。
計器の表示だけでも、まず異常の有無を確認できます。
よくある質問
まとめ
低圧式貯蔵容器の見るべきポイントがよく分かりました。
液面計と圧力計の表示、これからは意識して確認します!
点検や整備でご不明な点があれば、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則第十九条第五項第六号・第九号・第十号(不活性ガス消火設備の技術上の基準)
- 消防法施行令第十二条(消火設備に関する基準)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





