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二酸化炭素消火設備の起動装置はなぜ二十秒放出を遅らせるのか|手動式と自動式に共通する保安措置を解説

起動装置はなぜ二十秒動かないのか

不活性ガス消火設備には、火災を感知すると自動で薬剤を放射するものと、人が操作して初めて薬剤が出る手動式の起動装置があります。
駐車場やボイラー室などに設けられる二酸化炭素消火設備の多くは、実はこの手動式が原則です。
しかし起動スイッチを押しても、実際に薬剤が放射されるまでには時間差があります。
なぜ手動が原則で、なぜ時間差が設けられているのか、条文から確かめます。

駐車場の二酸化炭素消火設備は、起動スイッチを押したらすぐ薬剤が出るんですよね。

いいえすぐには出ません
条文が定める仕組みを一緒に見てみましょう。

え、すぐ出ないと消火が遅れませんか。

人が逃げる時間を確保するためです。
条文の順番どおりに確認していきましょう。

この記事の結論
  • 二酸化炭素を放射する不活性ガス消火設備の起動装置は、常時人のいない場所を除いて手動式が原則です。窒素・IG-五五・IG-五四一を放射するものは逆に自動式が原則です。
  • 手動式の起動装置は、防護区画外で内部を見とおすことができ、操作した人が容易に退避できる出入口付近に設けます。
  • 起動装置の放出用スイッチは、音響警報装置を起動する操作をした後でなければ操作できない構造になっています。
  • 二酸化炭素を放射する全域放出方式には、起動から貯蔵容器の弁が開くまで二十秒以上の遅延装置を設けることが義務づけられています。
  • 貯蔵容器を置く場所と防護区画の出入口には、二酸化炭素の危険性を知らせる標識を設けなければなりません。

火災感知から音響警報起動操作を経て二十秒後に放出されるまでの流れを示す図解

不活性ガス消火設備の起動装置はなぜ手動式が原則なのか

貯蔵容器につながる赤い起動装置と制御盤を備えた不活性ガス消火設備のイメージ図
不活性ガス消火設備の起動装置には、人が操作する手動式と、感知器と連動する自動式の2種類があります。
条文はこの2つを、放射する消火剤の種類によって使い分けています。
消防法施行規則第19条第5項第14号 起動装置は、次のイ又はロに定めるところによること。
イ 二酸化炭素を放射する不活性ガス消火設備にあつては、次の(イ)及び(ロ)に定めるところによること。
(イ) 手動式とすること。ただし、常時人のいない防火対象物その他手動式によることが不適当な場所に設けるものにあつては、自動式とすることができる。
(ロ) 全域放出方式のものには、消火剤の放射を停止する旨の信号を制御盤へ発信するための緊急停止装置を設けること。
ロ 窒素、IG-五五又はIG-五四一を放射する不活性ガス消火設備にあつては、自動式とすること
二酸化炭素を放射する設備は、人の命に関わる危険性が高いため手動式が原則です
これは、火災を感知しただけで自動的にガスが放射されると、防護区画の中に人が残っていた場合に逃げ遅れる危険があるからです。
常時人がいない駐車場や機械室などに限って、自動式とすることが認められています。
反対に窒素・IG-五五・IG-五四一を使う設備は、条文上は自動式が原則という逆の扱いになっています。
全域放出方式には、誤って起動した場合に止められる緊急停止装置も別に義務づけられています。

二酸化炭素と窒素で、起動の仕組みが逆なんですね。

人がいる可能性で条文が分けています。
次は手動式の設置場所を見てみましょう。

手動式の起動装置はどこにどんな形で設ければよいのか

出入口付近の高さに設けられた赤い起動装置に人が手を伸ばすイメージ図
手動式の起動装置は、押した人が自分自身を守れる場所に設けることが条文の出発点です。
高さや色、表示の仕方まで細かく決められています。
消防法施行規則第19条第5項第15号 手動式の起動装置は、次のイからチまでに定めるところによること。
イ 起動装置は、当該防護区画外で当該防護区画内を見とおすことができ、かつ、防護区画の出入口付近等操作をした者が容易に退避できる箇所に設けること。
ロ 起動装置は、一の防護区画又は防護対象物ごとに設けること。
ハ 起動装置の操作部は、床面からの高さが0.8メートル以上1.5メートル以下の箇所に設けること。
ホ 起動装置の外面は、赤色とすること
ヘ 電気を使用する起動装置には電源表示灯を設けること。
起動装置は操作した人が逃げ遅れない場所に設けるという考え方が土台になっています。
防護区画の外側から中を見とおせて、操作したあとすぐに出入口へ退避できる位置が条件です。
高さは大人が無理なく手を伸ばせる0.8メートルから1.5メートルの範囲に限られます。
外面を赤色にして遠目にも起動装置だとわかるようにし、電気式には電源表示灯も付けます。
一つの防護区画には一つの起動装置を設けるので、複数の区画をまとめて一台で兼用することはできません。

うちの起動装置は廊下の少し奥まった場所にあります。

退避できる位置かどうか確認しましょう。
次は操作の順番の話です。

なぜ音響警報を鳴らしてからでないと起動できないのか

透明カバーの付いた起動装置と音を出す警報ベルを並べたイメージ図
起動装置のスイッチは、押せばすぐに反応する単純な作りではありません。
音響警報を鳴らす操作を経てからでないと、消火剤を放射する操作ができない順番になっています。
消防法施行規則第19条第5項第15号ト 起動装置の放出用スイッチ、引き栓等は、音響警報装置を起動する操作を行つた後でなければ操作できないものとし、かつ、起動装置に有機ガラス等による有効な防護措置が施されていること。
同項第17号イ (音響警報装置は)手動又は自動による起動装置の操作又は作動と連動して自動的に警報を発するものであり、かつ、消火剤放射前に遮断されないものであること。
起動装置は先に警報、後で放射という一方通行の順番でしか操作できません。
放出用スイッチや引き栓は有機ガラスなどの透明なカバーで保護されており、誤って触れてもすぐには作動しない構造です。
音響警報は起動操作と連動して自動的に鳴り、消火剤が放射される前に途中で止めることはできません。
全域放出方式では、防護区画の中にいるすべての人へ音声で知らせる警報とすることが原則です。
自動式の起動装置にも、自動と手動を切り替える鍵付きのスイッチが別に設けられています。

警報が鳴ってから放射までの間に、逃げる時間があるということですか。

そのための順番です。
次は放射までの時間差を見ていきましょう。

二酸化炭素はなぜ起動から二十秒放出を遅らせるのか

扉の脇の警告標識と遅延装置のダイヤルを描いたイメージ図
手動式のスイッチを押しても、二酸化炭素はすぐには出てきません。
条文は、放射までの時間と放射後の知らせ方の両方を細かく定めています。
消防法施行規則第19条第5項第19号 全域放出方式の不活性ガス消火設備には、次のイ又はロに定めるところにより保安のための措置を講じること。
イ 二酸化炭素を放射するものにあつては、次の(イ)から(ホ)までに定めるところによること。
(イ) 起動装置の放出用スイッチ、引き栓等の作動から貯蔵容器の容器弁又は放出弁の開放までの時間が二十秒以上となる遅延装置を設けること。
(ニ) 防護区画の出入口等の見やすい箇所に消火剤が放出された旨を表示する表示灯を設けること。
(ホ) (略)二酸化炭素が人体に危害を及ぼすおそれがあること等を表示した標識を設けること。
ロ 窒素、IG-五五又はIG-五四一を放射するものにあつては、イ(ニ)の規定の例によること。
起動から放射までに二十秒以上の猶予が生まれるように、条文で遅延装置の設置が義務づけられています。
この二十秒の間に、集合管や操作管に設けた閉止弁を閉じれば、その区画への放射そのものを止めることもできます。
放射された後は、出入口の見やすい場所の表示灯が点灯し、危険を知らせる標識も別に掲示されます。
一方で窒素・IG-五五・IG-五四一を放射する設備には、二十秒の遅延装置や標識までは求められておらず、表示灯の設置だけが共通で求められています。
同じ不活性ガス消火設備でも、薬剤の種類によって保安措置の重さがはっきり違います。

二十秒の間に逃げればいいということですね。

閉止弁を閉めるという選択肢もあります。
最後に点検での確認ポイントをまとめます。

明日からなにを確認すればよいのか

点検員が起動装置と警告標識を照合しているイメージ図
ここまでの内容を、点検や日常管理の場面に落とし込みます。
四つのポイントに整理します。 確認は四つのポイントに整理できます。
まず、自分の設備が二酸化炭素と窒素・IG系のどちらかを、起動装置が手動式か自動式かで見分けます。
次に、手動式の起動装置が退避できる位置にあり、外面が赤色で高さの範囲に収まっているかを確認します。
さらに、音響警報が起動と連動して鳴るか、放出用スイッチに有機ガラス等の保護があるかを点検します。
最後に、二酸化炭素の設備では遅延装置・閉止弁・表示灯・標識の四つがそろっているかを、点検業者と一緒に確かめます。

次の点検で起動装置も一緒に見てもらいます。

四つのポイントを伝えておくと確実です。
点検計画の見直しもまとめてお手伝いできます。

よくある質問

Q二酸化炭素消火設備の起動装置は必ず手動式にしなければなりませんか?
A常時人のいない防火対象物その他手動式によることが不適当な場所に設けるものは、自動式とすることができます。それ以外の場所は手動式が原則です。
Q起動装置の操作部を透明カバーで覆うのはなぜですか?
A有機ガラス等による防護措置は誤操作を防ぐために条文で義務づけられています。音響警報を鳴らす操作をした後でなければ放出用スイッチを操作できない構造とあわせて、二重に誤作動を防いでいます。
Q二十秒の遅延装置は二酸化炭素以外の不活性ガス消火設備にも必要ですか?
A条文上、二十秒の遅延装置は二酸化炭素を放射するものに限って義務づけられています。窒素・IG-五五・IG-五四一を放射するものは、放出表示灯の設置のみが共通で求められています。
Q起動装置の高さはなぜ0.8メートルから1.5メートルの範囲と決まっているのですか?
A条文に理由までは書かれていませんが、大人が無理なく手を伸ばして操作できる範囲として定められています。同様の高さの範囲は、他の消火設備の起動装置にも共通して使われています。

まとめ

不活性ガス消火設備の起動装置は、二酸化炭素は手動式が原則、窒素・IG-五五・IG-五四一は自動式が原則と条文で使い分けられています。
手動式の起動装置は、防護区画外で内部を見とおせ、操作した人が容易に退避できる箇所に設けます。
起動装置の操作部は床面から高さ0.8メートル以上1.5メートル以下の箇所に設け、外面は赤色とします。
放出用スイッチは音響警報装置を起動する操作をした後でなければ操作できない構造で、有機ガラス等による防護措置も必要です。
音響警報装置は起動と連動して自動的に鳴り、消火剤放射前に遮断されない構造とし、全域放出方式では音声警報を原則とします。
二酸化炭素を放射する全域放出方式には、二十秒以上の遅延装置・閉止弁・放出表示灯・危険標識の四つの保安措置が義務づけられています。
窒素・IG-五五・IG-五四一を放射するものは、遅延装置や標識までは求められず放出表示灯の設置にとどまります。

二十秒の意味がよく分かりました!

起動装置の点検や保安措置の見直しもまとめてお手伝いできます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 消防法施行規則第19条第5項第14号(不活性ガス消火設備の起動装置の種別)
  • 消防法施行規則第19条第5項第15号(手動式の起動装置の設置基準)
  • 消防法施行規則第19条第5項第16号(自動式の起動装置の設置基準)
  • 消防法施行規則第19条第5項第17号(音響警報装置の基準)
  • 消防法施行規則第19条第5項第19号(全域放出方式の保安のための措置)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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