BLOG

屋外タンク貯蔵所の注入口はなぜ危険物の性質で基準が変わるのか|静電気接地電極と掲示板免除の仕組みを解説

屋外タンク貯蔵所の注入口を点検する作業員

屋外タンク貯蔵所というと、保安距離や防油堤といった周囲との関係にばかり目が向きがちです。
実は危険物を注入する入り口、注入口そのものにも独自の技術基準が定められています。
しかも基準の中身は、貯蔵する危険物の静電気による災害のおそれや引火点によって細かく変わります。
今回はこの注入口の基準を、条文からたどっておきます

屋外タンク貯蔵所の注入口は、弁と蓋さえ付いていれば基準を満たすと思っていました。

いいえ、危険物の性質によって接地電極や掲示板まで必要になります。
条文で範囲を確認しましょう。

危険物の性質によって、ということは全部の注入口で同じではないんですか。

はい、静電気による災害のおそれ引火点で必要な設備が変わります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 危険物の規制に関する政令第11条第1項第10号は、屋外タンク貯蔵所の注入口について場所・結合方式・弁又は蓋という共通の基準を定めています
  • ガソリンやベンゼンなど静電気による災害が発生するおそれのある危険物の注入口には、接地電極の設置が義務付けられます
  • 引火点が21度未満の危険物の注入口には、掲示板の設置が原則として必要です
  • ただし市町村長等が火災の予防上必要ないと認めるときは、掲示板の設置義務が免除されます
  • 掲示板の様式は危険物の規制に関する規則第18条第2項で幅0.3メートル以上・長さ0.6メートル以上等と定められています

屋外タンク貯蔵所の注入口が政令第11条第1項第10号により場所結合弁又は蓋の共通基準と静電気接地電極引火点21度未満の掲示板という性質に応じた基準を定めていることを示す図解

屋外タンク貯蔵所の注入口にはなぜ独自の基準があるのか

屋外貯蔵タンクの注入口の弁と蓋を確認する人物
屋外タンク貯蔵所の基準というと、保安距離や防油堤といった周囲との関係ばかりが目立ちます。
実は危険物を注入する入り口そのものにも、共通して守るべき基準が定められています。
危険物の規制に関する政令第11条第1項第10号 液体の危険物の屋外貯蔵タンクの注入口は、次によること。イ 火災の予防上支障のない場所に設けること。ロ 注入ホース又は注入管と結合することができ、かつ、危険物が漏れないものであること。ハ 注入口には、弁又は蓋を設けること。
注入口には場所・結合方式・弁又は蓋という三つの共通基準があります
まず火災の予防上支障のない場所に設けることが求められ、周囲の状況を踏まえた立地選定が前提になります。
次に注入ホースや注入管と確実に結合でき、かつ危険物が漏れない構造であることが必要です。
そして注入口自体には弁又は蓋を設け、使用していない間は密閉できる状態にしておきます。
ここまでは貯蔵する危険物の種類を問わない共通基準で、次の号からは危険物の性質に応じた基準が加わります。

注入口の基準は、どんな危険物でも同じなんですか。

共通の基準はここまでです。
ここから危険物の性質によって基準が変わります。

静電気接地電極や掲示板はどの危険物の注入口に必要になるのか

ガソリン携行缶に静電気除去の接地電極を取り付ける人物
注入口の基準には、共通の三つに加えて危険物の性質によって変わる二つの基準があります。
どちらも対象になる危険物の範囲を正しく押さえておく必要があります。
危険物の規制に関する政令第11条第1項第10号 (略)ニ ガソリン、ベンゼンその他静電気による災害が発生するおそれのある液体の危険物の屋外貯蔵タンクの注入口付近には、静電気を有効に除去するための接地電極を設けること。ホ 引火点が二十一度未満の危険物の屋外貯蔵タンクの注入口には、総務省令で定めるところにより、見やすい箇所に屋外貯蔵タンクの注入口である旨及び防火に関し必要な事項を掲示した掲示板を設けること。ただし、市町村長等が火災の予防上当該掲示板を設ける必要がないと認める場合は、この限りでない。
接地電極はガソリンやベンゼンなど静電気による災害のおそれがある危険物に必要です
条文はガソリン・ベンゼンを例示しつつ「その他静電気による災害が発生するおそれのある液体の危険物」という性状で対象を定めており、品名を機械的に暗記するだけでは足りません。
一方、掲示板は引火点が21度未満の危険物の注入口が対象で、接地電極とは別の基準です。
つまり同じ注入口でも、静電気災害のおそれと引火点という二つの物性を別々に確認する必要があります。
自社が貯蔵する危険物のSDS(安全データシート)等で、この二つの性質を確認することが実務の出発点になります。

ガソリン以外でも接地電極が必要になることがあるんですか。

はい、静電気による災害のおそれがある性質で判断します。
品名だけで決めつけないようにしましょう。

掲示板にはどのような様式が求められるのか

屋外貯蔵タンク注入口の掲示板を掲げる人物
掲示板の設置が必要になった場合、次に問題になるのはその様式です。
政令の委任を受けて、総務省令が具体的な仕様を定めています。
危険物の規制に関する規則第18条第2項 令第11条第1項第10号ホ(略)の規定による掲示板は、次のとおりとする。一 掲示板は、幅〇・三メートル以上、長さ〇・六メートル以上の板であること。二 掲示板には、「屋外貯蔵タンク注入口」(略)と表示するほか、取り扱う危険物の類別、品名及び前項第四号に規定する注意事項を表示すること。三 掲示板の色は、地を白色、文字を黒色(前項第四号に規定する注意事項については、赤色)とすること。
掲示板の寸法・表示事項・色まで、様式は総務省令で細かく定められています
大きさは幅0.3メートル以上・長さ0.6メートル以上で、「屋外貯蔵タンク注入口」である旨を明記します。
表示事項は危険物の類別・品名に加え、性質に応じた注意事項(禁水・火気注意・火気厳禁のいずれか)も含みます。
色は地を白色、文字を黒色とし、注意事項の文字だけは赤色にする決まりです。
自作の表示板を掲げる前に、この三つの要件を満たしているかを確認しておく必要があります。

掲示板は市販のものをそのまま使ってもいいんですか。

寸法と表示事項、色の基準を満たしていれば構いません。
自己判断で省略しないようにしましょう。

掲示板の免除規定を見落としていないか

免除の書類を確認する人物と掲示板の無い注入口
掲示板の基準を確認したところで、実務でつまずきやすい点があります。
条文にはただし書きで免除の余地が用意されています。
危険物の規制に関する政令第11条第1項第10号 (略)ホ (略)ただし、市町村長等が火災の予防上当該掲示板を設ける必要がないと認める場合は、この限りでない。
掲示板の設置は、市町村長等が不要と認めれば免除されることがあります
このただし書きは引火点21度未満の危険物の注入口に一律で掲示板を求めるのではなく、現場の状況を踏まえた判断の余地を残す趣旨です。
ただし免除は市町村長等の判断であって、事業者が自己判断で省略してよいわけではありません。
逆に、静電気による災害のおそれがある危険物の接地電極には、こうした免除規定が置かれていない点にも注意が必要です。
掲示板を省略したい場合は、その可否を含めて所轄消防署に確認するのが実務の順序になります。

うちの注入口は目立たない場所にあるので、掲示板は要らないですよね。

その判断は市町村長等が行うものです。
自己判断で省略せず確認しましょう。

明日から注入口の何を確認すればよいのか

左に図面を手渡す人物 右にチェックリストを持って受け取る人物
基準の全体像が分かったところで、確認する手順を整理します。
自社の屋外タンク貯蔵所に当てはめて、順番に見ていきましょう。
  • 注入口が火災の予防上支障のない場所に設けられ、ホースと結合でき、弁又は蓋があるか確認する
  • 貯蔵する危険物が静電気による災害のおそれがある性質かどうかを確認し、必要なら接地電極の有無を確認する
  • 貯蔵する危険物の引火点が21度未満かどうかを確認し、必要なら掲示板の有無と様式を確認する
  • 掲示板が無い場合は、市町村長等の免除判断を受けているかを確認する
確認するのは、共通基準・静電気の性質・引火点・掲示板の免除有無の四つで足ります
静電気による災害のおそれがある危険物には免除規定が無いため、接地電極は例外なく確認する必要があります。
掲示板が設置されていない注入口を見つけた場合は、免除ではなく単なる未設置というおそれもあります。
判断に迷う場合は、自己流の解釈に進む前に所轄消防署へ相談することが安全です。

まずは自社が扱う危険物の性質を確認してみます。

性質が分かれば、必要な設備もはっきりします。
不安な点があれば一緒に確認しましょう。

よくある質問

Q静電気による災害が発生するおそれのある危険物とは具体的に何を指しますか?
A政令はガソリン、ベンゼンを例示しつつ「その他静電気による災害が発生するおそれのある液体の危険物」という性状で対象を定めています。品名で機械的に判断するのではなく、静電気の帯電しやすさという性質から個別に確認する必要があります。
Q掲示板の設置免除は誰が判断するのですか?
A政令第11条第1項第10号ホのただし書きにより、市町村長等が火災の予防上必要ないと認める場合に限り免除されます。事業者が自己判断で省略することはできません。
Q屋内貯蔵タンクや地下貯蔵タンクの注入口にも同じ基準は適用されますか?
A政令第12条・第13条にそれぞれ屋内貯蔵タンク・地下貯蔵タンクの注入口の基準が別途定められています。掲示板の様式は規則第18条第2項で共通の号立てになっていますが、貯蔵タンクの区分ごとに条項が異なる点に注意が必要です。
Q接地電極の設置を怠るとどうなりますか?
A技術上の基準に適合しない状態となり、所轄消防署から是正を求められる可能性があります。静電気による災害のおそれがある危険物を扱う場合は、速やかに接地電極の有無を確認する必要があります。

まとめ

危険物の規制に関する政令第11条第1項第10号は、屋外タンク貯蔵所の注入口について場所・結合方式・弁又は蓋という共通基準を定めています
ガソリンやベンゼンなど静電気による災害のおそれがある危険物の注入口には接地電極の設置が必要です
引火点が21度未満の危険物の注入口には原則として掲示板の設置が必要です
ただし市町村長等が火災予防上必要ないと認める場合は掲示板の設置義務が免除されます
掲示板の様式は規則第18条第2項で幅0.3メートル以上・長さ0.6メートル以上等と定められています
掲示板の色は地を白色、文字を黒色とし、注意事項の文字は赤色にする決まりです
免除の判断は市町村長等が行うものであり、事業者の自己判断で省略することはできません

まずは自社が貯蔵する危険物の性質を確認してみます!

注入口の設備に不安があれば、一緒に確認しましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第11条第1項第10号
  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第18条第1項第4号・第2項
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
屋外タンク貯蔵所の注入口を点検する作業員
屋外タンク貯蔵所というと、保安距離や防油堤といった周囲との関係にばかり目が向きがちです。 実は危険物を注入する入り口、注入口そのものにも独自の技術基準が定められています。 しかも基準の中身は、貯蔵する危険物の静電気による...