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セルロイドはなぜ倉庫の温度管理が必要になるのか|第五類危険物の分解発火リスクと二択の構造基準を解説

セルロイド等の温度管理点検をする防災屋スタッフ

屋内貯蔵所の基準というと、空地の幅や壁の耐火構造にばかり目が向きがちです。
実は政令は、特定の危険物を貯蔵する倉庫に対して、温度そのものを管理する義務まで定めています。
対象になるのは第五類危険物のうち、温度が上がると分解して発火するおそれのある物品です。
今回はこの温度管理義務の仕組みを、条文からたどっておきます

屋内貯蔵所の基準は空地の幅と壁の耐火構造さえ守れば十分だと思っていました。

いいえ、特定の危険物を貯蔵する倉庫では温度の管理まで必要です。
政令が対象と方法を定めています。

温度の管理とはどういうことですか。

構造か設備のどちらかで発火を防ぎます。
条文を順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 危険物の規制に関する政令第10条第1項第15号は、温度上昇により分解し発火するおそれのある第五類危険物の貯蔵倉庫について温度管理を義務付けています
  • 対象になるのは政令が名指しするセルロイドその他、総務省令で個別に指定される物品に限られます
  • 対応方法は発火する温度に達しない構造にするか、通風装置や冷房装置等の設備を設けるかのどちらかで足ります
  • 基準になるのは危険物ごとに固有の発火する温度であり、一律に低温を保てばよいわけではありません
  • 該当する物品の判定や発火する温度の確認に迷う場合は、所轄消防署に相談することが実務の要点です

屋内貯蔵所の貯蔵倉庫が政令第10条第1項第15号によりセルロイド等の危険物について発火する温度に達しない構造か通風装置や冷房装置等の設備のいずれかを備えることを義務付けられていることを示す図解

貯蔵倉庫の温度管理義務とはどんな規定なのか

倉庫の壁に取り付けられた温度計を見上げる人物とドラム缶の列
屋内貯蔵所の基準は、位置や空地の幅、壁や床の構造など建物そのものに関わるものが中心です。
その中に一つだけ、貯蔵倉庫内の温度そのものを対象にした号があります。
危険物の規制に関する政令第10条第1項第15号 第五類の危険物のうちセルロイドその他温度の上昇により分解し、発火するおそれのあるもので総務省令で定めるものの貯蔵倉庫は、当該貯蔵倉庫内の温度を当該危険物の発火する温度に達しない温度に保つ構造とし、又は通風装置、冷房装置等の設備を設けること。
この号は、貯蔵倉庫内の温度そのものを管理させる屋内貯蔵所固有の基準です
第10条の他の号は空地の幅や壁の耐火構造など、建物の外形や材料を定めるものがほとんどです。
この号だけは、貯蔵する危険物の性質に応じて庫内の環境そのものを管理させる点で異色の存在です。
対象になる危険物が具体的に何を指すのかは、次の号から確認します。

温度の管理は屋内貯蔵所ならどこでも必要なんですか。

いいえ、対象になる危険物の範囲が決まっています。
次にその範囲を確認しましょう。

どの危険物が温度管理の対象になるのか

複数の容器が並ぶ棚の中で小さな丸缶だけを指し示す人物
温度管理が必要になるかどうかは、貯蔵する危険物の性質によって決まります。
条文が挙げている対象の範囲を確認します。
危険物の規制に関する政令第10条第1項第15号 第五類の危険物のうちセルロイドその他温度の上昇により分解し、発火するおそれのあるもので総務省令で定めるものの貯蔵倉庫は(略)。
対象になるのは第五類危険物のすべてではなく、政令が限定した性質を持つものだけです
条文が名指しする唯一の例はセルロイドで、これは硝化綿を主成分とする合成樹脂であり、温度が上がると分解して発火するおそれがある物品として知られています。
それ以外の対象物品は「その他(略)総務省令で定めるもの」として、総務省令で個別に指定される仕組みになっています。
第五類危険物というだけで一律に対象になるわけではなく、あくまで温度上昇により分解し発火するおそれがあると個別に指定された物品に限られる点が要点です。

第五類の危険物を扱っていれば、みんな温度管理が必要になるんですか。

いいえ、セルロイドその他個別に指定されたものだけが対象です。
該当するかどうかは規則で確認できます。

発火を防ぐにはどちらの方法を選べばよいのか

断熱された倉庫の壁と換気ファンを両手で示す人物
対象になる危険物が分かったところで、実際に求められる対応方法を確認します。
条文は方法を一つに絞っておらず、選べる形にしています。
危険物の規制に関する政令第10条第1項第15号 (略)当該貯蔵倉庫内の温度を当該危険物の発火する温度に達しない温度に保つ構造とし、又は通風装置、冷房装置等の設備を設けること。
選べるのは、庫内の温度を保つ構造にするか、通風・冷房等の設備を設けるかのどちらかです
条文は「又は」でこの二つを結んでおり、両方を満たす必要はありません
基準になるのは、対象となる危険物ごとに固有の発火する温度であって、条文自体には具体的な数値は書かれていません。
つまり一律の基準温度を下回ればよいのではなく、貯蔵する物品そのものの性状として発火する温度を確認したうえで、それに達しない環境を作る必要があります。
構造で対応するか設備で対応するかは、既存の建物や貯蔵量に応じて現場ごとに選ぶことになります。

構造も設備も両方そろえたほうが安心ではないですか。

条文上はどちらか一方で基準を満たします。
現場の事情に合わせて選んで構いません。

実務で見落としやすいのはどこか

温度計のつまみを極端な位置まで回そうとする人物とそれを示す禁止マーク
この基準は名前の響きから「できるだけ低温にすればよい」と思われがちです。
実際の条文を見ると、求められている基準はそれとは違います。
危険物の規制に関する政令第10条第1項第15号 (略)当該貯蔵倉庫内の温度を当該危険物の発火する温度に達しない温度に保つ構造とし、又は通風装置、冷房装置等の設備を設けること。
基準は「発火する温度に達しないこと」であって、一律に低温を目指すことではありません
発火する温度は危険物ごとに固有の数値であり、必要以上に厳しい低温管理を行っても条文上の要求以上のコストがかかるだけです。
もう一つの見落としは、構造要件と設備要件を両方満たさなければならないと誤解することです。
条文は「又は」で結ばれた択一の規定であり、通風装置や冷房装置等の設備を設ければ構造まで変更する必要はありません。
対象物品の発火する温度を確認せずに設備の仕様だけを決めてしまうと、実際には基準に届いていない対応になりかねません。

とにかく倉庫を冷やしておけば安全だと思っていました。

基準は発火する温度に達しないことです。
まずは物品ごとの数値を確認しましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストを持つ人物と消防署を思わせる建物
対象になる危険物と対応方法が分かったところで、確認する手順を整理します。
自社の屋内貯蔵所に当てはめて、順番に見ていきましょう。
  • 屋内貯蔵所で貯蔵している危険物が第五類に該当するか確認する
  • 該当する場合はセルロイドその他、総務省令で個別に指定される対象物品にあたるか確認する
  • あたる場合はその危険物固有の発火する温度を性状試験の成績書等で確認する
  • 貯蔵倉庫を温度を保つ構造にするか、通風装置・冷房装置等の設備にするかを選ぶ
  • 判断に迷う場合は自己判断で進めず所轄消防署に相談する
確認するのは、区分・対象物品・発火する温度・対応方法・相談先の五つで足ります
セルロイド以外にも総務省令で個別に指定される物品があるため、第五類だからと自己判断で対象外と決めつけないことが大切です。
既存の屋内貯蔵所で温度管理に不安がある場合は、増設や貯蔵物品の変更を待たずに確認しておくのが実務的です。
判断に迷う場合は、自己流の設備選定に進む前に所轄消防署へ相談することが安全です。

まずは自社の危険物が対象物品にあたるか確認してみます。

対象が分かれば、対応方法も選びやすくなります。
不安な点があれば一緒に確認しましょう。

よくある質問

Qセルロイド以外の危険物もこの号の対象になりますか?
Aなります。政令は「セルロイドその他(略)総務省令で定めるもの」と定めており、総務省令で個別に指定される他の第五類危険物も対象に含まれます。第五類であるというだけで一律に対象になるわけではありません。
Q温度を保つ構造と通風・冷房設備の両方を設ける必要がありますか?
Aいいえ。条文は「又は」で結ばれており、どちらか一方を満たせば足ります。既存の建物や貯蔵量に応じて、構造か設備のいずれかを選ぶことになります。
Q「発火する温度」とは何度を指すのですか?
A条文に一律の数値は書かれておらず、貯蔵する危険物ごとに固有の発火する温度を指します。物品の性状試験の成績書等で個別に確認する必要があります。
Q対象物品にあたるかどうか自社で判断できない場合はどうすればよいですか?
A自己判断で放置せず、所轄消防署へ相談してください。対象物品の該当性や発火する温度の確認方法について、個別に案内を受けることができます。

まとめ

危険物の規制に関する政令第10条第1項第15号は、屋内貯蔵所の貯蔵倉庫に温度管理を義務付けています
対象は第五類の危険物のうち温度上昇により分解し発火するおそれのあるものです
政令が名指しする例はセルロイドで、それ以外は総務省令で個別に指定されます
対応方法は温度を保つ構造にするか通風装置・冷房装置等の設備を設けるかのどちらかです
基準は危険物ごとに固有の発火する温度に達しないことで、一律の低温管理ではありません
構造要件と設備要件は択一であり、両方をそろえる必要はありません
対象物品や発火する温度の判断に迷う場合は自己判断で放置せず所轄消防署へ相談することが大切です

まずは自社が貯蔵する危険物が対象物品にあたるか確認してみます!

温度管理の方法に不安があれば、一緒に確認しましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第10条第1項第15号
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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