屋外タンク貯蔵所の定期点検で、側板の溶接部を撮影する放射線透過試験の担当者から「フィルムではなくデジタルカメラのような機材で撮ると言われたが大丈夫か」と聞かれたことはありませんか。
令和6年3月、消防庁はデジタル検出器を使った放射線透過試験の運用指針を示し、フィルムに代わる新しい撮影方法を正式に認めました。
合否の判定基準や検査を行う技術者の要件は変わらないため、慌てて工事業者を変える必要はありません。
ただし指針が定める撮影方法や記録の要件を知らないと、検査結果を正しく受け取れません。
うちのタンクの点検業者から検出器をデジタルに変えると言われました。
これまでと同じ基準で大丈夫でしょうか。
合否の基準は今までと同じ危険物の規制に関する規則のままです。
変わるのは撮影の機材と技術者の要件だけです。
具体的にはどんな条件が付くんですか。
対象のタンクと運用指針の中身を順番に見ていきましょう。
- 令和6年3月18日、消防庁は消防危第60号でデジタル検出器を使った放射線透過試験の運用指針を示しました。
- 対象は特定屋外タンク貯蔵所(1,000キロリットル以上)の側板の縦継手・水平継手です。
- 撮影はJIS Z 3110に基づき、試験技術者には専用の教育・訓練が求められます。
- 合否判定の基準は危険物の規制に関する規則第20条の7第2項のままで、フィルムのときと変わりません。
- 不合格箇所は消防予第52号別添第4.7により措置し、検査記録には合否判定結果もあわせて残します。
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目次
デジタル検出器を使った放射線透過試験はなぜ認められたのか

従来はフィルムに撮影する方法しか認められていませんでしたが、新しい技術の登場でルールが見直されました。
従来は日本産業規格Z3104に準拠し、撮影媒体にフィルムを使う放射線透過試験だけが行われてきました。
平成29年にデジタル検出器を使う方式がJIS Z 3110として規格化され、各種インフラ構造物の点検への導入が検討されるようになりました。
消防庁は「新技術を活用した屋外貯蔵タンクの効果的な予防保全に関する調査検討会」を開催し、検討結果を踏まえて令和6年3月18日付けで運用指針を示しました。
背景にあるのは、フィルムの現像・保管に比べてデジタル撮影が点検の効率化につながるという期待です。
なぜ今になってフィルムから変わったんでしょうか。
撮影の規格自体が平成29年に整備されて、消防庁が導入を検討してきたからです。
令和6年にようやく指針という形になりました。
どの屋外貯蔵タンクのどの溶接部が対象になるのか

危険物の規制に関する政令が定める、特定の規模以上のタンクに限られます。
政令が特定屋外タンク貯蔵所と呼ぶのは、貯蔵し、又は取り扱う液体の危険物の最大数量が1,000キロリットル以上のタンクです。
このタンクの側板にある縦継手と水平継手が、放射線透過試験の対象になります。
ただし重ね補修に係る継手や、接液部以外での工事(取替え工事を除く)に係る継手は対象から除かれます。
準特定屋外タンク貯蔵所(500キロリットル以上1,000キロリットル未満)はこの指針の対象外です。
うちのタンクは800キロリットルなので準特定だから対象外ですね。
容量が1,000キロリットル未満なら、この運用指針の対象にはなりません。
ただし他の保安検査の基準は別に及びますのでご注意ください。
運用指針は具体的に何を求めているのか

機材が変わっても、検査の質を落とさないための取り決めです。
撮影にはJIS Z 3110「溶接継手の放射線透過試験-デジタル検出器によるX線及びγ線撮影技術」を適用します。
試験を行う技術者は、JIS Z 2305が定める非破壊試験技術者の資格又はこれと同等の資格を持ち、デジタル検出器に関する教育・訓練を受けていなければなりません。
1箇所あたりの撮影範囲は原則28cm程度とし、不足する場合は一部を重ねて複数回撮影します。
画像には複線形像質計と針金形透過度計を配置し、像質区分クラスAを満たす必要があります。
資格を持つ業者に頼めばそれで十分でしょうか。
資格に加えて、デジタル検出器の教育・訓練を受けているかも確認してください。
両方そろって初めて指針の要件を満たします。
フィルムのときと合否の基準は変わるのか

しかし指針が定めているのは撮影の手順だけで、合否そのものの物差しは同じです。
きずの種別の判定・分類、そして合否判定はいずれも危険物の規制に関する規則第20条の7第2項によって行うと定められています。
これはフィルムを使っていた従来の検査と全く同じ条文で、割れやアンダーカット、ブローホールなどの許容基準に変更はありません。
つまりデジタル検出器は撮影の手段が変わるだけで、合格ラインそのものを緩める制度ではありません。
像質区分クラスAを満たさない画像で判定すると、本来の基準で見るべききずを見落とす恐れがあるため注意が必要です。
基準が変わらないなら安心して任せられますね。
はい、ただし像質の基準を満たした画像であることが前提です。
撮影条件が指針どおりかは事前に確認しておきましょう。
タンクの点検業者に明日から何を確認すればよいのか

明日からできる確認事項を整理します。
合否判定で不合格となった箇所があれば、「屋外タンク貯蔵所の保安点検等に関する基準について」(昭和50年5月20日付け消防予第52号)別添第4.7に従って措置します。
検査記録には、JIS Z 3110が定める記録事項に加えて、合否判定の結果もあわせて残すことが求められます。
タンクの所有者は、依頼する業者がデジタル検出器を用いた放射線透過試験の資格と教育・訓練を受けているか、契約前に確認しておくと安心です。
検査記録の保存は次回の定期点検や保安検査でも根拠資料になるため、大切に保管してください。
次の点検のときに業者へ確認してみます。
それで十分です。
記録の保存も忘れずにお願いします。
よくある質問
まとめ
デジタル検出器のことがよく分かりました。
業者への確認もしっかりやります。
ぜひそうしてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防危第60号「デジタル検出器を用いた放射線透過試験に係る運用指針について」(令和6年3月18日・消防庁危険物保安室長)
- 危険物の規制に関する政令第11条第1項第4号の2
- 危険物の規制に関する規則第20条の7第1項・第2項
- 「屋外タンク貯蔵所の保安点検等に関する基準について」(昭和50年5月20日付け消防予第52号)別添第4.7
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





