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屋内貯蔵所の空地はなぜ塀と散水設備で減らせるのか|隣接設置だけではゼロにできない理由を解説

屋内貯蔵所の空地を確認する点検員のイメージ

屋内貯蔵所には、貯蔵倉庫の周囲に空地を保有する義務があります。
ところが敷地が狭く、政令が定める表どおりの幅を確保できない現場は珍しくありません。
規則第14条を使うと、塀と散水設備を設ける方法と、屋内貯蔵所どうしを隣接させる方法という2つの入口から空地の幅を減らせます。
ただし、空地をまったく保有しなくてよい場合は、この2つの入口で同じではありません

敷地が狭くて、政令の表どおりの空地が確保できません。
何か方法はあるのでしょうか。

規則第14条という条文に、空地の幅を減らせる方法が定められています。
順番に確認していきましょう。

塀を建てれば減らせると聞いたことがあります。
それだけで大丈夫でしょうか。

塀だけでは足りません。
散水設備まで含めた条件があります。

この記事の結論
  • 屋内貯蔵所は貯蔵倉庫の周囲に空地を保有する義務がありますが、危険物の規制に関する規則第14条を使うと空地の幅を減らせます
  • 入口は塀と散水設備を設ける方法屋内貯蔵所どうしを隣接させる方法の2つです。
  • 塀と散水設備の方法では、耐火構造の塀・散水設備・消防活動用の空地の3つを満たす必要があります。
  • 隣接させる方法では、指定数量の倍数が20を超える場合は間の空地の幅を3分の1以上かつ3メートル以上保有しなければなりません。
  • 空地をまったく保有しなくてよいのは、塀と散水設備の措置を講じたうえで告示の要件を満たした場合に限られます

屋内貯蔵所の空地をどこまで減らせるかを整理した図解。空地の基本の幅を確認、塀と散水設備の有無を確認、隣接する屋内貯蔵所の有無を確認、空地をゼロにできるかを確認の4段階を示す

屋内貯蔵所の空地はなぜ必要なのか

貯蔵倉庫の周囲に点線で示された広い空地と、奥にある境界の柵のイメージ
屋内貯蔵所は、危険物を貯蔵する専用の建築物である貯蔵倉庫を中心に基準が組まれています。
その周囲に確保する空地も、基準の柱の一つです。
危険物の規制に関する政令第十条第一項第二号 危険物を貯蔵し、又は取り扱う建築物(以下この条において「貯蔵倉庫」という。)の周囲に、次の表に掲げる区分に応じそれぞれ同表に定める幅の空地を保有すること(略)。ただし、次のいずれかに該当するときは、総務省令で定めるところにより、その空地の幅を減ずること(ロに該当する場合にあつては、その空地の幅を減じ、又はその空地を保有しないこと)ができる。イ 二以上の屋内貯蔵所を隣接して設置するとき。ロ 耐火構造の塀の設置その他の防火上有効な措置として総務省令で定める措置を講じたとき。
空地の幅は、指定数量の倍数が増えるほど広くなる表で決まっています
表どおりの空地を保有できないときは、政令第10条第1項第2号ただし書のイ又はロのどちらかを使います。
イは屋内貯蔵所どうしを隣接して設置するときロは耐火構造の塀など総務省令で定める措置を講じたときです。
このロに該当する場合だけ、空地の幅を減らすだけでなく保有しないことまで認められています。
次の項目から、それぞれの入口の具体的な中身を確認します。

空地を減らす方法が、条文の中に2つあるんですね。
何が違うんでしょうか。

はい、入口が2つあります。
まずは塀と散水設備を使う方法から見ていきましょう。

塀と散水設備を設けるとどこまで空地の幅を減らせるのか

屋内貯蔵所の建物と、その手前に設けられた耐火構造の塀、屋根から水を撒く散水設備のイメージ
政令第10条第1項第2号ロの「総務省令で定める措置」の中身は、規則第14条第1項に定められています。
塀を建てるだけでは終わらない点に注意が必要です。
危険物の規制に関する規則第十四条第一項 令第十条第一項第二号ロ(同条第二項においてその例による場合を含む。)の総務省令で定める措置は、次のとおりとする。一 貯蔵倉庫(令第十条第一項第二号の貯蔵倉庫をいう。以下同じ。)の周囲で同号の表に定める幅の空地を保有することができない部分に、耐火構造の塀の設置その他の防火上有効な措置を講ずるとともに、延焼防止上有効に冷却するための散水設備等を設けること。二 貯蔵倉庫の主要な出入口の周辺に、消防活動のための空地を保有すること。
空地を保有できない部分には、塀と散水設備の両方が必要です
そのうえで貯蔵倉庫の主要な出入口の周辺には、消防活動のための空地を別に確保しなければなりません。
塀は耐火構造とし、延焼を防ぐために有効な散水設備等を組み合わせる構成になっています。
「その他の防火上有効な措置」という書き方なので、具体的な仕様は告示で示されます。
塀を建てるだけで散水設備を省く設計は、この号を満たしません。

塀があれば十分だと思っていました。
散水設備まで必要なんですね。

そうなんです。
出入口周辺の消防活動用の空地も忘れずに確保してください。

屋内貯蔵所どうしが隣接するとどこまで幅を減らせるのか

隙間を挟んで隣り合う2棟の屋内貯蔵所の建物のイメージ
もう一つの入口は、屋内貯蔵所どうしを隣接させる方法です。
こちらは規則第14条第2項に具体的な数値が定められています。
危険物の規制に関する規則第十四条第二項 令第十条第一項第二号ただし書(同条第二項においてその例による場合を含む。以下この条において同じ。)の規定により、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める要件を満たす範囲内において、令第十条第一項第二号の表に定める空地の幅を減ずることができる。一 指定数量の倍数が二十を超える屋内貯蔵所(第七十二条第一項に規定する危険物のみを貯蔵し、又は取り扱うものを除く。)と他の屋内貯蔵所を同一の敷地内に隣接して設置する場合 当該屋内貯蔵所が当該他の屋内貯蔵所との間に保有する空地の幅が、令第十条第一項第二号の表に定める空地の幅の三分の一を下回らず、かつ、三メートルを下回らないこと。二 第七十二条第一項に規定する危険物のみを貯蔵し、又は取り扱う二以上の屋内貯蔵所を同一の敷地内に隣接して設置する場合 当該屋内貯蔵所が相互間に保有する空地の幅が、〇・五メートルを下回らないこと。
隣接させる方法では、空地をゼロにはできず幅を減らせるだけです
一般の屋内貯蔵所どうしなら、表の空地の幅の3分の1以上かつ3メートル以上を間に保有します。
塩素酸塩類等(規則第72条第1項の危険物)のみを貯蔵する屋内貯蔵所どうしなら、0.5メートル以上まで縮められます。
どちらも「他の屋内貯蔵所」との間の話であり、貯蔵倉庫の外側全周に効くわけではありません。
数値は指定数量の倍数や貯蔵する危険物の種類で変わるので、条件を取り違えないようにします。

隣に建てるだけで、ここまで空地を減らせるんですね。
数値がしっかり決まっているんですね。

そうです。
ただしゼロにはできない点に注意してください。

空地をまったく保有しなくてよい場合はどこまで限られるのか

塀に直接接する屋内貯蔵所の建物と、隙間なく並んだ2棟の屋内貯蔵所の建物を対比したイメージ
ここが実務でいちばん誤解されやすいところです。
空地をゼロにできるのは、2つの入口のうち片方だけです。
危険物の規制に関する規則第十四条第三項 令第十条第一項第二号ただし書の規定により、第一項第一号及び第二号に規定する措置を講じた場合において、告示で定める要件を満たすときは、令第十条第一項第二号の表に定める幅の空地を保有しないことができる。
空地をゼロにできるのは、塀と散水設備の措置を講じた場合だけです
規則第14条第3項が引用しているのは「第1項第1号及び第2号に規定する措置」であり、これは塀・散水設備・消防活動用の空地の措置を指します。
第2項の隣接させる方法だけを使っても、この第3項の対象にはなりません。
つまり単に隣に建てただけでは、空地は減らせても消すことはできません。
「隣接させれば空地は要らない」という思い込みは、条文を取り違えた例です。

隣接させるだけでは空地をゼロにできないんですね。
勘違いしていました。

よくある勘違いです。
ゼロにするなら塀と散水設備の措置から検討してください。

明日からなにを確認すればよいのか

巻き尺を手にした点検員と、その先にある屋内貯蔵所の建物、背後の標識のイメージ
ここまでの内容を、確認する順番に並べ直します。
入口を取り違えないことが最初の一歩です。
  • 政令第10条第1項第2号の表で、指定数量の倍数に応じた空地の幅を確認する。
  • 表の幅を確保できないときは、塀と散水設備を使うか隣接設置を使うかを決める。
  • 塀と散水設備を使う場合は、消防活動のための空地も別に確保する。
  • 隣接設置を使う場合は、貯蔵する危険物の種類に応じた最小幅(3分の1以上かつ3メートル以上、または0.5メートル以上)を確認する。
  • 空地をゼロにしたい場合は、塀と散水設備の措置に加えて告示の要件を満たしているかを所轄消防署に確認する。
屋内貯蔵所の設置・変更にも許可が必要です。
基準をすべて満たしても、消防法第11条に基づく市町村長等の許可を受けなければ使用できません
入口を取り違えると、設計のやり直しにつながります。
迷ったときは、所轄の消防署に早めに相談するのが近道です。

確認する順番がよく分かりました。
まずは表の空地から見直します。

その順番で大丈夫です。
入口を取り違えないことが一番大切です。

よくある質問

Q屋内貯蔵所の空地はなぜ減らせるのですか?
A危険物の規制に関する規則第14条が、政令第10条第1項第2号ただし書の委任を受けて塀と散水設備を設ける方法屋内貯蔵所どうしを隣接させる方法の2つの措置を定めているためです。
Q隣接設置だけで空地をゼロにできますか?
Aいいえ。隣接設置(規則第14条第2項)では空地の幅を減らせるだけで、ゼロにはできません。ゼロにできるのは塀と散水設備の措置(第1項)を講じ、告示の要件も満たした場合に限られます。
Q隣接する屋内貯蔵所どうしの最小の空地の幅はどれくらいですか?
A一般の屋内貯蔵所どうしなら表の幅の3分の1以上かつ3メートル以上、塩素酸塩類等のみを貯蔵する屋内貯蔵所どうしなら0.5メートル以上です。
Q塀と散水設備の措置では何を確認すればよいですか?
A耐火構造の塀と散水設備等に加えて、貯蔵倉庫の主要な出入口の周辺に消防活動のための空地を確保しているかを確認します。

まとめ

屋内貯蔵所は貯蔵倉庫の周囲に空地を保有する義務がありますが、危険物の規制に関する規則第14条を使うと空地の幅を減らせます
入口は塀と散水設備を設ける方法(第1項)屋内貯蔵所どうしを隣接させる方法(第2項)の2つです。
塀と散水設備の方法では、耐火構造の塀・散水設備等に加えて消防活動のための空地も別に確保します。
隣接させる方法では、一般の屋内貯蔵所どうしなら3分の1以上かつ3メートル以上を保有します。
塩素酸塩類等のみを貯蔵する屋内貯蔵所どうしなら、0.5メートル以上まで縮められます。
空地をまったく保有しなくてよいのは、塀と散水設備の措置に加えて告示の要件を満たした場合に限られます
屋内貯蔵所を設置・変更するときは、消防法第11条に基づく市町村長等の許可が必要です。

屋内貯蔵所の空地の考え方が、これで整理できました。
入口を取り違えないように進めます!

はい、ぜひそうしてください。
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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令第10条第1項第2号(屋内貯蔵所の空地の基準・ただし書のイ・ロ)
  • 危険物の規制に関する規則第14条第1項・第2項・第3項(屋内貯蔵所の空地の特例)
  • 危険物の規制に関する規則第72条第1項(塩素酸塩類等の定義)
  • 消防法第11条第1項(製造所、貯蔵所又は取扱所の設置・変更の許可)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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