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不活性ガス消火設備等の音響警報装置はなぜ14秒以内でひと区切りになるのか|のこぎり波の警報音と男声メッセージの基準を解説

二酸化炭素消火設備の貯蔵容器と壁面に設置された音響警報装置のスピーカー

不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備は、消火剤を放射する直前に必ず音響警報装置を鳴らします。
この警報音は現場の判断で好きに止められるものではなく、告示が波形も長さも細かく決めています。
音圧はスピーカーで92デシベル以上、ベルやブザーでも90デシベル以上と数値まで指定されています。
本記事では不活性ガス消火設備等の音響警報装置の基準(平成7年消防庁告示第3号)が定める音圧・警報音の構成・表示の基準を解説します。

うちは二酸化炭素消火設備が入っているんですが、警報はベルが鳴るだけだと思っていました。

実は音声で知らせるタイプもあって、どちらも告示で構造が決まっているんですよ。

へえ、ベルと音声でこんなに細かく基準があるんですね。

はい。
消火剤が放射される直前に鳴る警報なので、音圧や長さまで厳密に決まっているんです。

この記事の結論
  • 不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備の音響警報装置は、消防法施行規則が消防庁長官に委任する形で平成7年消防庁告示第3号という1つの告示に基準が統一されている
  • 全域放出方式は原則音声による警報装置とすることが求められ、常時人のいない防火対象物など一部の例外を除きベルだけでは足りない
  • スピーカーの音圧は92デシベル以上、ベル・ブザー・モーター式サイレンは90デシベル以上と数値で決まっている
  • 警報音(シグナル+メッセージ+無音)は14秒以内の1単位にまとめ、起動信号が遮断されるまで自動的に繰り返される
  • 音声装置には製造者名・製造年・型式記号・定格電圧・消費電流の5項目、スピーカーやベル等にはこれと異なる表示事項がある

不活性ガス消火設備等の音響警報装置の基準を示す図解。起動信号・警報音の鳴動・14秒の区切り・表示の確認ステップ

不活性ガス消火設備等の音響警報装置とはどんな装置か

音声警報装置のスピーカーと音響装置のベルが並んで壁に取り付けられている図
不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備は、消火剤を放射する前に必ず警報を鳴らします。
告示はこの警報装置を「音声警報装置」と「音響装置」の2種類に分けて定義しています。
消防法施行規則第19条第5項第17号 音響警報装置は、次のイからニまでに定めるところによること。イ 手動又は自動による起動装置の操作又は作動と連動して自動的に警報を発するものであり、かつ、消火剤放射前に遮断されないものであること。ロ 防護区画又は防護対象物にいるすべての者に消火剤が放射される旨を有効に報知できるように設けること。ハ 全域放出方式の不活性ガス消火設備に設ける音響警報装置は、音声による警報装置とすること。ただし、常時人のいない防火対象物(略)にあっては、この限りでない。ニ 音響警報装置は、消防庁長官が定める基準に適合するものであること。
音響警報装置は、鳴らし始めたら消火剤の放射まで止められない警報です。
告示の「用語の意義」は、スピーカーで音声を流す「音声警報装置」と、ベルやブザーなどだけを鳴らす「音響装置」を区別しています。
規則は不活性ガス消火設備(第19条)・ハロゲン化物消火設備(第20条)・粉末消火設備(第21条)を別々の条文で定めていますが、音響警報装置についてはいずれも同じ告示(平成7年消防庁告示第3号)に従います。
全域放出方式は原則として音声警報装置とすることが求められ、ベルだけでは足りません。
点検の現場では、まず設置されている警報装置が音声タイプかベルなどの音のみタイプかを確認するところから始めるとよいでしょう。

警報装置には音声のものとベルのものがあるんですね。
うちがどちらなのか確認したことがありませんでした。

全域放出方式は基本的に音声で知らせるきまりなので、まずそこを確認してみましょう。

音圧の基準はどこまで求められるか

音圧計とスピーカーの間を測定テープでつなぎ距離を測っている図
警報音は、離れた場所にいる人にも確実に聞こえなければ意味がありません。
告示は音圧の下限を、装置の種類ごとに数値で定めています。
二(二)イ (前略)スピーカーの音圧は、スピーカーの中心軸上から一メートル離れた位置で九十二デシベル以上であること。 三(一)ニ 定格電圧における音圧は、ベル、ブザー又はモーター式サイレンの中心軸上から一メートル離れた位置において九十デシベル以上であること。
スピーカーは92デシベル以上、ベルやブザーは90デシベル以上の音圧が必要です。
測定位置は装置の中心軸上から1メートル離れた地点と決められており、感覚ではなく実測で確認します。
音圧調整器が付いたスピーカーは、設定された音圧を容易に調整できないよう措置することも求められています。
ベル・ブザー・モーター式サイレンは、定格電圧の80パーセントの電圧でも音を発することが条件です。
音圧が基準を下回っていないかは、点検のたびに実測して確認する項目のひとつです。

音圧って感覚で「大きい音だから大丈夫」と判断してもいいものなんでしょうか。

いいえ、中心軸上1メートルで実測した数値で判断するきまりなので、点検では音圧計を使いますよ。

警報音はなぜ14秒以内でひと区切りになるのか

オシロスコープに映るのこぎり波と区切られたタイムラインが並ぶ図
警報音は鳴らしっぱなしではなく、決まった長さの単位を繰り返す構造になっています。
告示は、その1単位の中身と長さまで細かく規定しています。
ハ 音声警報音は、シグナル、メッセージ及び一秒間の無音状態を一単位として構成し、一単位の所要時間は十四秒を超えないものであること。 ニ シグナルは、次によること。(イ)基本波形は、一周期に対する立ち上がり時間の比が〇・二以下ののこぎり波であること。(ロ)三百ヘルツから二キロヘルツまでの〇・五秒間のスイープ音であること。(ハ)エンベロープは、矩形波とすること。(ニ)シグナルは、スイープ音、〇・五秒間の無音状態、スイープ音、〇・五秒間の無音状態、スイープ音、一・五秒間の無音状態の順に連続するシグナルを一単位としたものであること。
警報音の1単位は、シグナル・メッセージ・無音を合わせて14秒を超えられません。
シグナルの波形は、立ち上がりが緩やかなのこぎり波で、300ヘルツから2キロヘルツまで0.5秒かけて駆け上がる音を3回繰り返します。
スイープ音の間には0.5秒の無音を挟み、最後は1.5秒の無音で締めくくります。
そのあとに続くメッセージも含めて全体を14秒以内に収める構造で、途中で音の種類が変わっても同じ1単位が続いているだけです。
この波形とタイミングは装置内部で自動生成されるため、現場で調整する項目ではありません。

警報音が何度も鳴っているように聞こえたんですが、あれは壊れているんでしょうか。

いいえ、14秒以内の1単位を繰り返す正常な動作なので、故障ではありません。

一度鳴り始めた警報音はなぜ途中で止められないのか

鳴り続けるスピーカーと二酸化炭素消火設備の貯蔵容器が並ぶ図
火災の現場では、警報が鳴っている途中で誰かが止めたくなる場面もあり得ます。
しかし告示は、警報を途中で止められない構造にすることを求めています。
消防法施行規則第19条第5項第17号イ 音響警報装置は、手動又は自動による起動装置の操作又は作動と連動して自動的に警報を発するものであり、かつ、消火剤放射前に遮断されないものであること。 告示 ト 音声警報装置の起動信号を受信後、自動的に最初の音声警報音が開始し、起動信号の遮断又は停止信号があるまで前ハの音声警報音が繰返し発せられること。
警報音は起動信号が遮断されるまで、自動的に鳴り続ける構造になっています。
現場の判断で音量を下げたり、途中で切り上げたりすることは想定されていません。
メッセージの内容も男声による危険性の周知に固定されており、話者や言い回しを現場で変えることもできません。
音圧調整器が付いているスピーカーであっても、設定した音圧を容易に変更できないようにする措置が義務づけられています。
「うるさいから」といって現場の判断で音を絞れない設計になっている点が、点検で見落としやすい落とし穴です。

点検中に警報音がずっと鳴っていて止め方を探してしまいました。

起動信号を遮断するまで自動で鳴り続ける設計なので、正しい手順で止める必要がありますよ。

現場では表示のどの項目を確認すればよいか

音声装置の銘板をクリップボードと虫眼鏡で確認する図
音響警報装置にも噴射ヘッドと同じように、機器ごとの表示事項が決められています。
装置の種類によって、確認すべき項目の数が少しずつ違います。
第四 表示 一 音声装置 (一)製造者名又は商標 (二)製造年 (三)型式記号 (四)定格電圧及び交流又は直流の別 (五)消費電流又は消費電力 二 スピーカー 前記一(一)及び(三)に掲げる事項のほか、(一)入力インピーダンス又は音圧調整器付の旨 (二)定格入力 三 ベル、ブザー及びモーター式サイレン並びに電子式サイレン及び電子式ブザー 前記一(一)及び(三)から(五)までに掲げる事項
音声装置は5項目、スピーカーやベル等は4項目の表示を確認します。
音声装置は製造者名又は商標・製造年・型式記号・定格電圧及び交流又は直流の別・消費電流又は消費電力の5項目です。
スピーカーは製造者名と型式記号に加え、入力インピーダンス又は音圧調整器付きである旨、定格入力を確認します。
ベル・ブザー・モーター式サイレン・電子式サイレン・電子式ブザーは、製造者名・型式記号・定格電圧及び交直の別・消費電流又は消費電力を確認します。
銘板が読めないほど汚れていたら清掃してから確認し、それでも読み取れなければ点検報告書に記録しておきましょう。

スピーカーとベルで確認する項目の数が違うのを初めて知りました。

音声装置は5項目と少し多いので、点検のときは種類ごとに区別して確認してくださいね。

よくある質問

Q音響警報装置の基準はどの消火設備に適用されるか?
A不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備に適用され、消防法施行規則第19条第5項第17号・第20条第4項第13号・第21条第4項第15号がそれぞれ消防庁長官への委任規定を置いている。
Q全域放出方式なら必ず音声で警報しなければならないか?
A原則としてそうだが、常時人のいない防火対象物(自動式の起動装置を設けた二酸化炭素放射のものを除く)など一部の例外では音声でなくてもよい。
Q警報音の1単位はどれくらいの長さか?
Aシグナル・メッセージ・一秒間の無音を合わせて14秒を超えない長さで、起動信号が遮断されるまで自動的に繰り返される。
Q音圧の基準はどのくらいか?
Aスピーカーは中心軸上1メートルの位置で92デシベル以上、ベル・ブザー・モーター式サイレンは同じ位置で90デシベル以上と定められている。

まとめ

不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備の音響警報装置は平成7年消防庁告示第3号で基準が統一されている。
委任元は消防法施行規則第19条第5項第17号・第20条第4項第13号・第21条第4項第15号で、いずれも消防庁長官が定める基準に適合するものであることを求める。
全域放出方式は原則音声による警報装置とすることが求められ、常時人のいない防火対象物など一部の例外を除きベルだけでは足りない。
音圧はスピーカーが92デシベル以上、ベル・ブザー・モーター式サイレンが90デシベル以上で、いずれも中心軸上1メートルの位置で測定する。
警報音はシグナル・メッセージ・無音を合わせて14秒を超えない1単位で構成され、起動信号が遮断されるまで自動的に繰り返される
シグナルの波形は立ち上がり比〇・二以下ののこぎり波で、300ヘルツから2キロヘルツまでのスイープ音を3回繰り返す。
表示は音声装置が5項目、スピーカーやベル等が4項目で、点検のときは種類ごとに区別して確認する。

警報音って鳴っているだけだと思ってましたけど、波形や長さまで告示で決まっているのは知らなかったです。

音圧・構成・表示の3つを押さえておけば、点検のときに迷いません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 不活性ガス消火設備等の音響警報装置の基準(平成7年消防庁告示第3号)
  • 消防法施行規則(昭和三十六年自治省令第六号)第19条・第20条・第21条
  • 総務省消防庁「告示」一覧(https://www.fdma.go.jp/laws/kokuji/)

※本記事は公表されている法令および消防庁の告示に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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