連結散水設備は、地階の天井に散水ヘッドを並べ、消防ポンプ自動車が外の送水口から水を送る設備です。
国の基準には、屋内消火栓設備のような水源やポンプの規定がありません。
ところが大阪市の運用基準は、閉鎖型のヘッドを使う連結散水設備に専用のポンプと水源を設けると定めています。
配管に水を満たしておく方法も、屋内消火栓設備の節から借りています。
この記事では、国の基準と大阪市の運用を分けて読み、堺市の書き方とも比べます。
大阪市で地下1階の駐車場と倉庫に連結散水設備を付ける計画があります。
閉鎖型のヘッドにすれば水損が少ないと聞きました。
大阪市の運用基準では、閉鎖型ヘッドにすると専用ポンプと水源が必要になります。
送水口だけでは済みません。
消防車が送水する設備なのに、ポンプまで要るのですね。
はい、配管の充水も屋内消火栓の節を借りて求めています。
国の基準と大阪市の運用を分けて見ていきましょう。
- 国の基準(消防法施行令第28条の2・施行規則第30条の3)は、散水ヘッドと送水口の基準を定めるだけで、水源や加圧送水装置の規定はありません
- 大阪市の運用基準は、閉鎖型ヘッドを使う場合に専用のポンプと電動機による加圧送水装置と水源を設けるとしています(◆=行政指導基準)
- ポンプは5個のヘッドから同時に0.04メガパスカル以上・毎分50リットル以上を出せ、閉鎖型スプリンクラーヘッドの作動で自動的に起動するもの、水源はヘッドの個数(最大5)×0.5立方メートル以上です
- 配管の充水は屋内消火栓設備の基準(第5.1)に準じるとされ、送水口は1の送水区域が10個以下なら単口形にできると書かれています
- 堺市の審査基準は、ポンプや水源の項目を置かず、高架水槽(有効水量4立方メートル以上)で配管を常時充水する形です。東大阪市の公開資料には連結散水設備の基準がありません
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目次
国の基準では連結散水設備に水源やポンプはいるのか

連結散水設備を付ける建物は、消防法施行令第28条の2第1項が決めています。
技術上の基準は、同じ条の第2項と、消防法施行規則第30条の3に書かれています。
一 散水ヘツドは、前項の防火対象物の地階の部分のうち総務省令で定める部分の天井又は天井裏に、総務省令で定めるところにより設けること。
二 送水口は、消防ポンプ自動車が容易に接近できる位置に設けること。
1つの送水区域につなぐヘッドの数は、種類ごとに上限があります。
送水口のホース接続口は、双口形のものとすること。ただし、一の送水区域に取り付ける散水ヘッドの数が四以下のものにあつては、この限りでない。
屋内消火栓設備にある水源の水量や加圧送水装置の規定は、令第28条の2にも施行規則第30条の3にもありません。
水は、消防隊が消防ポンプ自動車で送水口から送ることが前提の設備です。
配管の細目が屋内消火栓設備の規定をどこまで借りているかは、連結散水設備の配管はなぜ屋内消火栓の基準を2つしか借りないのかで取り上げています。
国の条文には、ポンプや水槽の話は出てこないのですね。
はい、国の基準では消防車の送水だけで動く設備です。
大阪市の運用基準はそこに上乗せしています。
大阪市は閉鎖型ヘッドの連結散水設備に何を求めるのか

その第6が、閉鎖型ヘッドを使う場合の加圧送水装置と水源です。
加圧送水装置には専用のポンプ及び電動機を用いるものとし、規則第12条第1項第7号ハ、(ハ)、(ホ)から(チ)まで、ニ及びヘ並びに第9号の規定の例によるほか、5個(1の送水区域における散水ヘッドの設置個数が5個未満の場合は、当該設置個数)の散水ヘッドから同時に放水した場合に、それぞれの散水ヘッドの先端において、放水圧力が0.04メガパスカル以上で、かつ、放水量が50リットル毎分以上の性能が得られるものとするとともに、閉鎖型スプリンクラーヘッドの作動により自動的に起動するものとする。
大阪市は、その一部の「例による」として、ポンプの性能や付属設備の考え方を屋内消火栓設備から借りています。
そのうえで、連結散水設備用に独自の数字を置いています。
| 項目 | 大阪市 第6の内容 |
|---|---|
| ポンプ | 専用のポンプと電動機(規則第12条第1項第7号・第9号の一部の例による) |
| 性能 | 5個(5個未満ならその個数)のヘッドから同時に放水して、各ヘッドで0.04メガパスカル以上・毎分50リットル以上 |
| 起動 | 閉鎖型スプリンクラーヘッドの作動で自動的に起動 |
| 水源 | ヘッドの数が最も多い区域の個数(最大5)×0.5立方メートル以上(5個なら2.5立方メートル以上) |
法令の義務そのものではなく、大阪市が地域の実績などから定めた上乗せの指導という位置付けです。
あわせて第7は、閉鎖型ヘッドに使うヘッドそのものを指定しています。
消防隊が着けば、送水口から送水して放水を続ける流れです。
火事でヘッドが開いたら、消防車が来る前にポンプが動くのですね。
はい、そのために5個分の性能と水源を求めています。
次は配管と送水口です。
配管の充水と送水口はどの規定を借りているのか

(1) 屋内消火栓設備の基準(第5.1)に準じて充水のための措置を講じること
(2) 各送水区域の配管の末端には、送水試験を行うことのできる試験用止水弁及び排水管を設けること
ただし書きの「最遠の屋内消火栓まで10メートル」は屋内消火栓設備の言葉なので、連結散水設備でどう読むかは第4に書かれていません。
ここは「準じて」の範囲を所轄の消防署と確かめるのが確実です。
第4 2はこのほか、(3)で1の送水区域のヘッドが11個以上20個以下なら管の呼び80ミリメートルまでの管径表を置き、(4)でヘッド1個あたり毎分80リットル・0.1メガパスカルとして摩擦損失を計算するよう定めています。
送水口は、第2の柱書に国の基準と違う書き方があります。
大阪市は、閉鎖型ヘッドなら10個以下まで単口形にできると書いています。
どの規定を根拠にした扱いかは、この節には書かれていません。
送水口の口数の考え方は連結散水設備の送水口はなぜ穴がひとつの建物があるのかでも解説しています。
大阪市の閉鎖型ヘッドの扱いを順番に並べると次のとおりです。
- 消防法施行令第28条の2が、地階の床面積の合計700平方メートル以上の建物に連結散水設備を求めます
- 消防法施行規則第30条の3が、閉鎖型スプリンクラーヘッドは1の送水区域に20個以下などの細目を決めます
- 大阪市の第7が、閉鎖型ヘッドを閉鎖型スプリンクラーヘッドの検定品とします
- 大阪市の第4 2(1)が、屋内消火栓設備の基準 第5.1に準じて配管を常時充水します
- 大阪市の第6が、規則第12条第1項第7号・第9号の一部の例による専用ポンプと水源を求めます
- 大阪市の第2が、ヘッド10個以下の送水区域なら送水口を単口形にできるとします
ポンプは第6、充水は屋内消火栓の節、と別々の場所に書いてあるのですね。
はい、第4と第6をセットで読むのがこの節のこつです。
次は堺市の書き方を見ましょう。
堺市は閉鎖型ヘッドの連結散水設備をどう扱うのか

冒頭の概要で、閉鎖型スプリンクラーヘッドを使う理由と注意点を説明しています。
用語の意義では、閉鎖型散水ヘッドは規格がなく製品化されていないとも書かれています。
そのうえで、細目の1(5)が具体的な数字を定めています。
(ア) 高架水槽から主管までの配管は、呼び径50A 以上のものとすること。
(イ) 高架水槽の有効水量は、4.0 ㎥以上とすること。なお、当該水槽の水位が低下した場合に呼び径25A 以上の配管により自動的に給水できる装置を設けた場合には、当該有効水量を3.0 ㎥以上とすることができる。
イ 各送水区域の配管の末端には、充水及び送水点検を行うための末端試験弁を設け、その直近の見やすい箇所に試験弁である旨を表示した標識を設けること。
その配管径(a)と有効水量(c)を外し、連結散水設備用に呼び径50A以上・有効水量4.0立方メートル以上へ置き換えています。
自動給水装置(呼び径25A以上)があれば3.0立方メートル以上にできます。
この(5)には★が付いていて、堺市の凡例では堺市消防局が防火安全性の向上のために定めた指導基準です。
ヘッドは2(2)アで、閉鎖型スプリンクラーヘッドのうち標準型(小区画型を除く)で感度種別2種のものとされています。
設計送水圧力は3(4)イで、閉鎖型スプリンクラーヘッドなら最も条件の悪いヘッドで0.1メガパスカル以上・毎分80リットル以上を出せる圧力とされています。
一方で、第21の細目には大阪市の第6のような専用ポンプや水源の項目は見当たりません。
堺市は高架水槽で満たしておく形で、ポンプは求めていないのですね。
はい、水槽は4立方メートル以上と大きめです。
同じ目的でも、市によって手段が違います。
大阪市と堺市と東大阪市を比べると何が違うのか

そのため、比べられるのは大阪市と堺市です。
| 項目 | 大阪市 | 堺市 | 国の基準 |
|---|---|---|---|
| 閉鎖型ヘッドの種類 | 閉鎖型スプリンクラーヘッドの検定品(第7) | 標準型(小区画型を除く)・感度種別2種(2(2)ア★) | 閉鎖型散水ヘッドか閉鎖型スプリンクラーヘッド |
| 配管の充水 | 屋内消火栓設備 第5.1に準じる(第4 2(1)◆) | 高架水槽・50A以上・4.0立方メートル以上(1(5)★) | 規定なし |
| 専用ポンプ | 必要(5個同時に0.04メガパスカル・毎分50リットル、自動起動)(第6◆) | 項目なし | 規定なし |
| 水源 | 個数(最大5)×0.5立方メートル以上(第6◆) | 項目なし | 規定なし |
| 送水口の単口形 | ヘッド10個以下まで(第2◆) | ヘッド4個以下(用語の意義) | ヘッド4個以下 |
違うのは、大阪市が専用ポンプと水源まで持たせて自動で放水させるのに対し、堺市は大きめの高架水槽で充水するにとどめている点です。
閉鎖型ヘッドを選ぶと、大阪市ではポンプ室や水槽の場所、非常電源まで計画に入ってきます。
開放型ヘッドとどちらにするかは、設計の早い段階で所轄の消防署と協議してください。
連結散水設備そのものを省ける条件は、鈴鹿市で地階の連結散水設備はドライエリアがあれば省けるのかで、大阪市・堺市も含めて比べています。
同じ閉鎖型ヘッドでも、大阪市と堺市で設備の中身がかなり違うのですね。
はい、大阪市はポンプと水源、堺市は高架水槽です。
建物のある市の基準で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず地階の図面で、ヘッドの種類と送水区域ごとの個数を数えます。
閉鎖型ならポンプ室と水槽の場所も先に押さえます!
大阪市と堺市のどちらの基準で審査されるかで、設備の構成が変わります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第5章 第2節 連結散水設備 第2 送水口・第4 配管 2・第6 加圧送水装置及び水源・第7 散水ヘッド、第1章 第2節 屋内消火栓設備 第5 配管 1 充水措置、凡例 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第21 連結散水設備 Ⅰ 概要・Ⅱ 細目 1(5)・2(2)・3(4)、第2 屋内消火栓設備 Ⅱ.3.(2).ア、第1章 総則 4 凡例 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準(公開資料) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令 第28条の2
- 消防法施行規則 第12条第1項第7号・第9号、第30条の3
※本記事は公表されている法令および大阪市・堺市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の建物の扱いは、所轄の消防署にご確認ください。





