吹抜けのロビーや天井の高い店舗では、避難口誘導灯を天井からつり下げて付けることがあります。
国の消防法施行令第26条と消防法施行規則第28条の3は、誘導灯の位置や明るさを細かく定めていますが、地震に備えた取付けの数値は書いていません。
大阪市では、大阪市消防局の運用基準が、自重の5倍と2倍の荷重と、つり下げるときの45度の空間を求めています。
この記事では、国の基準と大阪市の運用を分けて読み、通路誘導灯への準用と堺市・東大阪市との違いまで順にたどります。
大阪市で、ビルの吹抜けのロビーに避難口誘導灯を天井からつり下げる計画です。
取付け方に決まりはあるのでしょうか。
大阪市の運用基準には、誘導灯の耐震措置の項目があります。
つり下げる場合の条件も書かれています。
国の法令ではなく、大阪市の基準に書かれているのですね。
はい、国の規則には取付けの耐震の数値が見当たりません。
国の基準と大阪市の運用を分けて見ていきましょう。
- 消防法施行令第26条と消防法施行規則第28条の3には、誘導灯を地震に備えて取り付ける数値は書かれていません(強度の定めは床面に設ける通路誘導灯の号だけです)
- 大阪市の運用基準は、避難口誘導灯に自重の5倍以上の垂直荷重と自重の2倍以上の水平荷重に耐えることを求めています
- 天井等からつり下げるときは、器具つり下げ用鋼管(パイプ)等を使い、天井面等から45度の円すい角の弧線上に有効な空間を残します(揺れ止め等があれば不要)
- 通路誘導灯の設置方法は避難口誘導灯の第2.2.(1)及び(2)の例によるとされ、同じ耐震措置がかかります
- 堺市は「地震動等に耐えられるよう堅固に固定」を★(堺市独自の指導基準)で定め、東大阪市の運用基準には耐震措置の項目がありません
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目次
国の基準に誘導灯の耐震の数値はあるのか

避難口誘導灯の大もとは、消防法施行令第26条第2項第1号です。
第4項は、誘導灯の設置と維持の細目を第1号から第12号まで並べています。
通行の障害にならないこと、常時点灯、防水構造、周囲に紛らわしい灯火を置かないこと、非常電源などです。
このうち器具の強さに触れているのは、次の第5号だけです。
器具そのものについては、第6項が消防庁長官の定める基準(誘導灯及び誘導標識の基準)に委ねています。
そこで、取付けの耐震は各消防本部の運用基準を見ることになります。
国の基準を順番に並べます。
- 施行令第26条第2項第1号が、避難口誘導灯を避難口に避難上有効なものとなるように設けることを求めます
- 規則第28条の3第4項が、誘導灯の設置と維持の細目を第1号から第12号まで定めます
- 強度の定めは第5号の床面に設ける通路誘導灯だけで、地震に備えた取付けの数値はありません
- 第6項が、器具を消防庁長官が定める基準に適合させることを求めます
- 取付けの耐震は、建物のある市の消防本部の運用基準で確かめます
国の規則だけ読むと、誘導灯を天井からつり下げる方法には決まりがないように見えますね。
規則の本文には取付けの耐震の数値がありません。
大阪市では運用基準に書かれています。
大阪市は避難口誘導灯の耐震措置に何を求めているのか

その「2 設置方法」に、耐震措置が出てきます。
(2) 避難口誘導灯には、次により耐震措置を講じること
ア 自重の5倍以上の垂直荷重に耐えるものであること
イ 自重の2倍以上の水平荷重に耐えるものであること
アは真下に引っ張る力、イは横から押す力に耐えることを求めています。
計算上の例として、自重5kgの器具なら、垂直に25kg分、水平に10kg分の荷重に耐える取付けになります。
「2 設置方法」には◆が付いていません。
大阪市の凡例では、無印は法令基準(消防庁予防課長通知等で示されている法令解釈基準を含む)、◆は行政指導基準です。
すぐ前の「1 設置場所」には◆が付いているので、設置方法は法令基準の扱いで書き分けられています。
ただし、自重の5倍と2倍の数値をどの通知から取ったのかは、運用基準に書かれていません。
項目を表にします。
| 項目 | 大阪市の運用基準(第2 2) | 印 |
|---|---|---|
| (1) 埋め込む場合 | 壁等の強度及び耐火性能に支障をきたさないように設ける | 無印 |
| (2)ア 垂直荷重 | 自重の5倍以上に耐える | 無印 |
| (2)イ 水平荷重 | 自重の2倍以上に耐える | 無印 |
| (2)ウ つり下げる場合 | 器具つり下げ用鋼管(パイプ)等を使い、45度の円すい角の弧線上に有効な空間を保有(揺れ止め等で不要) | 無印 |
器具の重さの5倍と2倍に耐えられる付け方にする、ということですね。
はい、垂直は5倍・水平は2倍です。
器具の重さと取付け金具の強さを施工図で示しておきましょう。
天井からつり下げるときの45度の空間とは何か

1つは、器具つり下げ用鋼管(パイプ)等を使うことです。
もう1つは、器具の真上の天井面等から45度の円すい角の弧線上に有効な空間を残すことです。
運用基準の図3-2-5「つり下げ器具の保有空間」は、天井等から2本の管で器具を下げ、器具の両端の上の天井面に45°の角度を示しています。
つり下げた器具が揺れたときに、まわりの天井や梁に当たらないための空間と読めますが、運用基準に趣旨の説明はありません。
ただし書により、揺れ止め等の有効な措置を講じれば、この空間の定めは適用されません。
つり下げる場合の確かめ方を順番に並べます。
- 付け方が天井等からつり下げる形かを確かめます(壁や天井に直接付けるならア・イだけです)
- アとイのとおり、自重の5倍以上の垂直荷重と2倍以上の水平荷重に耐える取付けにします
- つり下げには器具つり下げ用鋼管(パイプ)等を使います
- 器具の真上の天井面等から45度の円すい角の弧線上に有効な空間を残し、梁などに当たらないかを図面で確かめます
- 空間を残せないときは、揺れ止め等の有効な措置を講じる計画にして、消防署に図面で相談します
| 付け方 | 大阪市の運用基準でかかる項目 |
|---|---|
| 壁や天井に直接付ける | (2)ア 自重の5倍以上の垂直荷重・イ 自重の2倍以上の水平荷重 |
| 天井等からつり下げる | ア・イに加えて、ウの鋼管(パイプ)等と45度の空間 |
| つり下げ+揺れ止め等の有効な措置 | ア・イはかかり、ウの45度の空間はただし書で不要 |
| 壁等に埋め込む | (1) 壁等の強度及び耐火性能に支障をきたさないように設ける |
つり下げた誘導灯の上に梁があると、45度の空間が取れないかもしれません。
その場合は揺れ止め等の有効な措置を考えます。
どんな揺れ止めなら足りるかは消防署に図面で確かめましょう。
通路誘導灯にも同じ耐震措置がかかるのか

つまり通路誘導灯にも、埋め込みの(1)と耐震措置の(2)ア〜ウがそのままかかります。
第3 2は、階段や傾斜路に設けるものを除いていないので、文言上は階段の通路誘導灯も含めてかかります。
この準用も◆が付いていない無印の項目です。
連鎖を順番に並べます。
- 通路誘導灯の取扱いは、運用基準の第3 通路誘導灯から読み始めます
- 第3 2 設置方法が、第2.2.(1)及び(2)の例によると書いています
- 借りる先は、避難口誘導灯の第2 2(1)の埋め込みと、(2)の耐震措置です
- (2)のア・イで、通路誘導灯も自重の5倍以上の垂直荷重と2倍以上の水平荷重に耐える取付けになります
- つり下げる通路誘導灯は、(2)ウの鋼管(パイプ)等と45度の空間(又は揺れ止め等)もかかります
一方、同じ節の「第4 客席誘導灯」と「第5 誘導標識」には、第2 2を借りる書き方は見当たりません。
誘導灯の点滅機能や音声誘導機能の扱いは、大阪市の点滅機能と音声誘導機能の記事で取り上げています。
種類ごとに表にします。
| 誘導灯の種類 | 大阪市の運用基準での耐震措置 |
|---|---|
| 避難口誘導灯 | 第2 2(2)ア〜ウを直接定める |
| 通路誘導灯(廊下・階段など) | 第3 2で第2.2.(1)及び(2)の例による |
| 客席誘導灯 | 第4に第2 2を借りる書き方は見当たらない |
| 誘導標識 | 第5に第2 2を借りる書き方は見当たらない |
通路誘導灯は、避難口誘導灯の決まりを借りているのですね。
はい、第3 2の「例による」で同じ耐震措置になります。
つり下げる通路誘導灯も45度の空間を忘れずに。
堺市や東大阪市では同じ扱いなのか

印の★は、堺市の凡例で指導基準のうち、堺市消防局として防火安全性の向上を図ることを目的として定めたものです。
避難口誘導灯・通路誘導灯・客席誘導灯の固定は★ですが、階段通路誘導灯の固定だけは無印です。
堺市はさらに、誘導標識を容易にはがれないよう接着剤等で固定することも★で求めています。
公開されている東大阪市の運用基準からは、耐震措置の数値は読み取れません。
誘導灯の消灯の扱いを3市で比べた記事は、堺市の誘導灯の消灯の記事です。
3市の書き方を表にします。
| 項目 | 大阪市 | 堺市 | 東大阪市 |
|---|---|---|---|
| 避難口誘導灯の耐震 | 自重の5倍以上の垂直荷重・2倍以上の水平荷重(無印) | 地震動等に耐えられるよう堅固に固定(★) | 項目なし(埋め込みの定めのみ) |
| つり下げる場合 | 鋼管(パイプ)等+45度の空間(揺れ止め等で不要) | 記載なし | 記載なし |
| 通路誘導灯 | 第2.2.(1)及び(2)の例による | 堅固に固定(★)、階段通路誘導灯は無印 | 第2.2の例による(埋め込みのみ) |
| 客席誘導灯 | 第2 2を借りる書き方は見当たらない | 堅固に固定(★) | ― |
| 誘導標識 | ― | 接着剤等で固定(★) | ― |
- 建物のある市の誘導灯の基準(大阪市は第3章 第2節、堺市は第18、東大阪市は誘導灯及び誘導標識の運用基準)を開きます
- 大阪市では、自重の5倍と2倍に耐える取付けを施工図と器具の資料で示します
- 大阪市でつり下げるなら、鋼管(パイプ)等と45度の空間か、揺れ止め等の措置を計画します
- 堺市では、堅固に固定の方法と、誘導標識の接着剤等での固定を確かめます
- 東大阪市は公開の運用基準に耐震措置の項目がないので、東大阪市消防局に直接確かめます
同じ大阪府内でも、数値まで書いている市と書いていない市があるのですね。
はい、大阪市は5倍・2倍・45度、堺市は堅固に固定です。
建物のある市の基準で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず、誘導灯ごとに付け方と器具の重さを一覧にします。
つり下げる場所は梁との位置関係を図面で確かめます!
取付け金具の強さと揺れ止めまで決めておけば、誘導灯の施工図が早く固まります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第3章 第2節 誘導灯及び誘導標識 第2 避難口誘導灯 2 設置方法(1)(2)ア〜ウ・図3-2-5、第3 通路誘導灯 2 設置方法、凡例 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第3章 第1節 第18 誘導灯及び誘導標識 Ⅱ 細目 3 設置要領等 (2)イ(キ)・(4)イ(シ)(ス)・(5)イ(イ)・(6)イ(カ)・(7)イ(オ)、第1章 総則 4 凡例 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 東大阪市消防局「誘導灯及び誘導標識の運用基準」第2 2 設置方法、第3 2 設置方法 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令 第26条第2項第1号
- 消防法施行規則 第28条の3第4項第5号・第6項
※本記事は公表されている法令および大阪市・堺市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の建物の扱いは、所轄の消防署にご確認ください。





