屋内消火栓設備やスプリンクラー設備の加圧送水装置には、ポンプを回す電動機が組み込まれています。
ポンプ室の制御盤を見ると、単純な入切スイッチではなく大きな始動盤が付いていることがあります。
これは電動機の出力によって、選べる始動方式が消防庁告示で決められているためです。
本記事では加圧送水装置の電動機になぜ始動方式の基準があるのかを、根拠となる告示から順に解説します。
ポンプ室の制御盤が思ったより大きくて驚きました。
あれは電動機の始動盤ですね。
出力によって始動方式が決まっています。
普通のスイッチじゃだめなんですか。
はい、消防庁告示で始動方式が決まっているんです。
順番に見ていきましょう。
- 加圧送水装置のポンプ用電動機は、消防庁告示が定める加圧送水装置の基準に適合しなければなりません
- 交流電動機の出力が11キロワット以上の低圧電動機は、じか入れ始動を使うことができません
- 認められる始動方式はスターデルタ始動やリアクトル始動など、始動電流を抑えるものに限られます
- 電磁式スターデルタ始動の電動機は、停止中に巻線へ電圧を加えない措置が必要です
- 電動機の絶縁性能は電気設備に関する技術基準を定める省令第5条の基準にも適合させなければなりません
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目次
加圧送水装置のポンプ用電動機はなぜ出力11キロワット以上でじか入れ始動を使えないのか

出力が一定を超える電動機には、始動時の電流を抑える方式が消防庁告示で義務づけられています。
大きな電動機をじか入れで始動すると、起動の瞬間に定格電流の数倍という大きな突入電流が流れます。
この電流は電源系統に瞬間的な電圧降下を引き起こし、周辺の設備に影響を及ぼすおそれがあります。
そこで消防庁告示は、一定出力を超える電動機について、始動電流を抑える方式を義務づけました。
つまり制御盤が大きく見えるのは、この始動電流対策の装置が組み込まれているためだということです。
うちのポンプは何キロワットか調べた方がよさそうですね。
はい、銘板の出力表示で確認できます。
次はほかの始動方式を見ましょう。
スターデルタ始動のほかにどんな始動方式が認められているのか

名称は違っても、目指しているところは共通しています。
交流電動機ではスターデルタ始動のほか、クローズドスターデルタ始動、リアクトル始動、コンドルファ始動、二次抵抗始動などが認められています。
これらはいずれも、始動時に電動機へかける電圧や回路を工夫して、大きな突入電流を防ぐ方式です。
直流電動機を使う場合も、交流電動機の始動方式と同等以上の電流低減効果を持たせることが求められています。
つまり方式の名称よりも、始動電流を実際にどこまで抑えられるかが基準の本質だということです。
方式の名前が違うだけで意味は同じなんですね。
はい、始動電流を抑えるという目的は共通です。
次は停止中の注意点を見ましょう。
電磁式スターデルタ始動のポンプはなぜ停止中も電動機に注意が必要なのか

とくに電磁式スターデルタ始動には、専用の注意点があります。
スターデルタ始動は、起動直後だけスター結線で電圧を抑え、その後デルタ結線に切り替える方式です。
電磁接触器を使う電磁式では、待機中にコイルへ電圧がかかったままになる配線が起こり得ます。
これを放置すると巻線の劣化や発熱につながるおそれがあるため、停止中は電圧を加えない措置が義務づけられました。
つまり点検では、ポンプが止まっている間の制御盤の状態まで確認する必要があるということです。
止まっている間まで気にしたことはなかったです。
はい、停止中の配線状態も点検の対象です。
次は停電したときの話をします。
消火ポンプの運転中に停電し復電したときはどうなるのか

そのときポンプがどう動くべきかも、あらかじめ基準で決まっています。
火災による停電は、消火活動の最中に起きることも想定されます。
係員が制御盤まで駆け付けて始動ボタンを押し直さなければ動かない構造では、放水が長時間止まってしまいます。
そこで告示は、電源が復旧すれば自動的に運転が続く性能を電動機に求めています。
つまり停電を経験したポンプ設備ほど、この自動復帰の機能が働いたかどうかを点検で確認する価値が高いということです。
係員が駆け付ける前に動いてくれるのは安心ですね。
はい、自動復帰の機能が働くことが前提です。
最後は絶縁性能を確認しましょう。
電動機の絶縁性能はどんな基準に適合させる必要があるのか

絶縁性能については、別の法律の省令が基準を定めています。
電気設備に関する技術基準を定める省令は、電路を大地から絶縁することを原則として求めています。
加圧送水装置の電動機もこの一般則の対象で、事故時に想定される異常電圧でも絶縁破壊が起きない性能が必要です。
つまり加圧送水装置の電動機は、消防用設備としての基準と電気設備一般の基準の両方を満たす必要があるということです。
点検の際は、この絶縁性能が維持されているかを示す絶縁抵抗の測定記録もあわせて確認しておくとよいでしょう。
消防の基準だけの話じゃなかったんですね。
はい、電気設備の技術基準も関わってきます。
ここまでの基準を整理しましょう。
よくある質問
まとめ
制御盤の見え方が、これで意味を持って見えるようになりました!
始動方式や絶縁性能の点検もお手伝いできます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則第12条第1項第7号ニ(屋内消火栓設備の加圧送水装置の構造及び性能)
- 加圧送水装置の基準(平成9年6月30日消防庁告示第8号)五 電動機
- 電気設備に関する技術基準を定める省令第5条(電路の絶縁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。設備の仕様や点検の実施方法は機種や建物ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署または専門業者にご確認ください。





