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加圧送水装置のポンプ用電動機はなぜ出力11キロワット以上でじか入れ始動を使えないのか|スターデルタ始動などの基準を解説

加圧送水装置のポンプ用電動機の始動盤を示すアイキャッチ

屋内消火栓設備やスプリンクラー設備の加圧送水装置には、ポンプを回す電動機が組み込まれています。
ポンプ室の制御盤を見ると、単純な入切スイッチではなく大きな始動盤が付いていることがあります。
これは電動機の出力によって、選べる始動方式が消防庁告示で決められているためです。
本記事では加圧送水装置の電動機になぜ始動方式の基準があるのかを、根拠となる告示から順に解説します。

ポンプ室の制御盤が思ったより大きくて驚きました。

あれは電動機の始動盤ですね。
出力によって始動方式が決まっています。

普通のスイッチじゃだめなんですか。

はい、消防庁告示で始動方式が決まっているんです。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 加圧送水装置のポンプ用電動機は、消防庁告示が定める加圧送水装置の基準に適合しなければなりません
  • 交流電動機の出力が11キロワット以上の低圧電動機は、じか入れ始動を使うことができません
  • 認められる始動方式はスターデルタ始動リアクトル始動など、始動電流を抑えるものに限られます
  • 電磁式スターデルタ始動の電動機は、停止中に巻線へ電圧を加えない措置が必要です
  • 電動機の絶縁性能は電気設備に関する技術基準を定める省令第5条の基準にも適合させなければなりません

加圧送水装置の電動機の始動方式の基準を示す図解

加圧送水装置のポンプ用電動機はなぜ出力11キロワット以上でじか入れ始動を使えないのか

大型の電動機とポンプに接続された始動盤を示す図
加圧送水装置の電動機は、家庭用の機器のように入切スイッチだけで動かせるわけではありません。
出力が一定を超える電動機には、始動時の電流を抑える方式が消防庁告示で義務づけられています。
交流電動機の始動方式は、じか入れ始動(電動機の出力が十一キロワット以上で低圧電動機であるものを除く。)、スターデルタ始動、クローズドスターデルタ始動、リアクトル始動、コンドルファ始動、二次抵抗始動その他これらに類するものであること。(加圧送水装置の基準 平成9年6月30日消防庁告示第8号 五 電動機(四)イ)
出力11キロワット以上の低圧電動機は、じか入れ始動を使うことができません。
大きな電動機をじか入れで始動すると、起動の瞬間に定格電流の数倍という大きな突入電流が流れます。
この電流は電源系統に瞬間的な電圧降下を引き起こし、周辺の設備に影響を及ぼすおそれがあります。
そこで消防庁告示は、一定出力を超える電動機について、始動電流を抑える方式を義務づけました。
つまり制御盤が大きく見えるのは、この始動電流対策の装置が組み込まれているためだということです。

うちのポンプは何キロワットか調べた方がよさそうですね。

はい、銘板の出力表示で確認できます。
次はほかの始動方式を見ましょう。

スターデルタ始動のほかにどんな始動方式が認められているのか

内部構造が異なる複数の制御盤を並べた図
始動方式にはスターデルタ始動のほかにも、いくつかの種類が認められています。
名称は違っても、目指しているところは共通しています。
直流電動機の始動方式は、イに規定する始動方式と同等以上の始動電流を低減することができる性能を有するものであること。(加圧送水装置の基準 平成9年6月30日消防庁告示第8号 五 電動機(四)ロ)
認められる始動方式は、始動電流を抑える効果があるものに限られます。
交流電動機ではスターデルタ始動のほか、クローズドスターデルタ始動、リアクトル始動、コンドルファ始動、二次抵抗始動などが認められています。
これらはいずれも、始動時に電動機へかける電圧や回路を工夫して、大きな突入電流を防ぐ方式です。
直流電動機を使う場合も、交流電動機の始動方式と同等以上の電流低減効果を持たせることが求められています。
つまり方式の名称よりも、始動電流を実際にどこまで抑えられるかが基準の本質だということです。

方式の名前が違うだけで意味は同じなんですね。

はい、始動電流を抑えるという目的は共通です。
次は停止中の注意点を見ましょう。

電磁式スターデルタ始動のポンプはなぜ停止中も電動機に注意が必要なのか

電磁接触器と静止した電動機を示す制御盤内部の図
始動方式の基準は、動いているときだけでなく止まっているときにも及びます。
とくに電磁式スターデルタ始動には、専用の注意点があります。
電磁式スターデルタ始動方式のものにあっては、ポンプの停止中において、電動機巻線に電圧を加えないように措置が講じられているものであること。(加圧送水装置の基準 平成9年6月30日消防庁告示第8号 五 電動機(四)ニ)
停止中の電動機に電圧をかけ続けることは認められていません。
スターデルタ始動は、起動直後だけスター結線で電圧を抑え、その後デルタ結線に切り替える方式です。
電磁接触器を使う電磁式では、待機中にコイルへ電圧がかかったままになる配線が起こり得ます。
これを放置すると巻線の劣化や発熱につながるおそれがあるため、停止中は電圧を加えない措置が義務づけられました。
つまり点検では、ポンプが止まっている間の制御盤の状態まで確認する必要があるということです。

止まっている間まで気にしたことはなかったです。

はい、停止中の配線状態も点検の対象です。
次は停電したときの話をします。

消火ポンプの運転中に停電し復電したときはどうなるのか

途切れた電源から復旧して放水を再開するポンプの図
消火活動は、停電が起きた最中に必要になることもあります。
そのときポンプがどう動くべきかも、あらかじめ基準で決まっています。
ポンプの運転中に電気の供給が停止し、再び供給が行われた場合において、始動装置を操作することなく再度運転することができるものであること。(加圧送水装置の基準 平成9年6月30日消防庁告示第8号 五 電動機(四)ハ)
停電から復電すると、ポンプは自動で運転を再開しなければなりません。
火災による停電は、消火活動の最中に起きることも想定されます。
係員が制御盤まで駆け付けて始動ボタンを押し直さなければ動かない構造では、放水が長時間止まってしまいます。
そこで告示は、電源が復旧すれば自動的に運転が続く性能を電動機に求めています。
つまり停電を経験したポンプ設備ほど、この自動復帰の機能が働いたかどうかを点検で確認する価値が高いということです。

係員が駆け付ける前に動いてくれるのは安心ですね。

はい、自動復帰の機能が働くことが前提です。
最後は絶縁性能を確認しましょう。

電動機の絶縁性能はどんな基準に適合させる必要があるのか

作業員が電動機の絶縁抵抗を測定する図
始動方式だけを満たしても、電動機の安全性は完結しません。
絶縁性能については、別の法律の省令が基準を定めています。
電動機は、電気設備に関する技術基準を定める省令(平成9年通商産業省令第52号)第5条の規定による絶縁性能を有するように設置されるものであること。(加圧送水装置の基準 平成9年6月30日消防庁告示第8号 五 電動機(三))
電動機の絶縁は、消防の告示と経済産業省の省令の両方にまたがる基準で守られています。
電気設備に関する技術基準を定める省令は、電路を大地から絶縁することを原則として求めています。
加圧送水装置の電動機もこの一般則の対象で、事故時に想定される異常電圧でも絶縁破壊が起きない性能が必要です。
つまり加圧送水装置の電動機は、消防用設備としての基準と電気設備一般の基準の両方を満たす必要があるということです。
点検の際は、この絶縁性能が維持されているかを示す絶縁抵抗の測定記録もあわせて確認しておくとよいでしょう。

消防の基準だけの話じゃなかったんですね。

はい、電気設備の技術基準も関わってきます。
ここまでの基準を整理しましょう。

よくある質問

Q加圧送水装置の始動方式の基準はどの設備に適用されますか?
A屋内消火栓設備やスプリンクラー設備など、ポンプを用いる加圧送水装置全般に適用されます。
Q電動機の出力が11キロワット未満であればじか入れ始動を選べますか?
Aはい、出力11キロワット未満の低圧電動機であれば、じか入れ始動を選ぶことができます。
Q始動方式の基準に違反していないかは自分で確認できますか?
A制御盤の仕様だけで判断するのは難しく、消防設備士や消防設備点検資格者による点検での確認が実務的です。
Q古い制御盤は始動方式を見直さなくてもよいですか?
A制御盤を更新する際は、現行の告示基準に適合する製品へ更新することが望まれます。

まとめ

加圧送水装置のポンプ用電動機は、消防庁告示が定める加圧送水装置の基準に適合しなければならない
出力11キロワット以上の低圧電動機はじか入れ始動を使うことができない
認められる始動方式はスターデルタ始動リアクトル始動など始動電流を抑えるものに限られる
直流電動機も交流電動機と同等以上の始動電流の低減性能が求められる
電磁式スターデルタ始動は停止中に電動機巻線へ電圧を加えない措置が必要
停電から復電した際は始動装置を操作せずに自動で運転を再開できる性能が必要
電動機の絶縁性能は電気設備に関する技術基準を定める省令第5条の基準にも適合させる

制御盤の見え方が、これで意味を持って見えるようになりました!

始動方式や絶縁性能の点検もお手伝いできます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則第12条第1項第7号ニ(屋内消火栓設備の加圧送水装置の構造及び性能)
  • 加圧送水装置の基準(平成9年6月30日消防庁告示第8号)五 電動機
  • 電気設備に関する技術基準を定める省令第5条(電路の絶縁)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。設備の仕様や点検の実施方法は機種や建物ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署または専門業者にご確認ください。

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