高さ70mを超えるビルの連結送水管について、点検業者から「湿式です」と言われても、なぜ湿式でなければならないのか説明できますか。
実はこの基準、地階を除く階数が11以上というだけでは発生しません。
高さが70mを超えて初めて、湿式化という基準が上乗せされます。
さらに、そのとき加圧送水装置の起動装置は「直接操作」と「遠隔操作」の両方ができなければならないと定められていることは、意外と知られていません。
うちのビルは15階建てなんですが、連結送水管は全部湿式にする必要があるんでしょうか。
実は湿式が必要になるのは高さ70mを超える建物だけなんです。
15階なら70mを超えているか、図面で確認したほうがよさそうですね。
はい、起動装置の二重化もあわせて確認しましょう。
- 連結送水管を湿式にしなければならないのは、地階を除く階数が11以上かつ高さ70mを超える建築物だけです。
- 70m以下の11階建て以上の建物は、双口形放水口と非常電源付き加圧送水装置までが基準で、湿式化までは求められません。
- 湿式化とあわせて、加圧送水装置の起動装置は直接操作と遠隔操作の両方ができるものでなければなりません。
- 遠隔操作の操作部は、送水口の直近または中央管理室のどちらかに設けます。
- この基準は平成2年の消防法施行規則改正で設けられ、現行の同規則第31条第6号イにそのまま引き継がれています。
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目次
なぜ高さ70mを超えるビルだけ連結送水管を湿式にしなければならないのか

まずは湿式と乾式の違いから確認します。
火災のときに消防車が送水口から水を送り込んで、初めて配管が満たされる仕組みです。
高さ70mを超えるような超高層ビルでは地上から最上階近くまで配管が長く伸びており、空の配管に水が届くまでの時間差そのものが命取りになりかねません。
そこで湿式にしておけば、屋上の高架水槽の水圧で配管内が常に満水の状態を保ち、送水と同時に放水口から水が出せます。
次は、この基準が具体的にどの建物に適用されるのかを見ていきます。
空の配管に水を通すだけなら、別に湿式じゃなくてもいい気がします。
高さがあるほど水が届くまでの時間差が大きくなるんです。
湿式化の対象になるのはどの建物のどの部分なのか

基準の内訳を確認します。
そのうえでさらに高さが70mを超えている場合だけ、この記事で扱う湿式化と起動装置の基準が上乗せされます。
1フロアあたりの階高をおよそ3.5mとすると、20階建て前後からこの基準に該当してくる計算です。
自分の建物が70mを超えているかどうかは、確認済証や建築計画概要書の「最高高さ」欄で確認できます。
次は、湿式化とあわせて何が義務付けられているのかを見ていきます。
うちは18階建てですが、70mを超えているかは把握していません。
確認済証の最高高さ欄を一度確認してみてください。
湿式化とあわせて起動装置に何が義務付けられたのか

条文の定義を確認します。
消防隊が送水口に到着してすぐポンプを起動できる直接操作と、送水口の直近または中央管理室からの遠隔操作の両方を備える必要があります。
現場に駆けつけた隊員がその場で起動できると同時に、建物管理側が状況を見ながら中央管理室から先に起動することもできる、という二重の備えです。
あわせてポンプの吐出量や全揚程も、放水口の設置個数や高さに応じた計算式で決められています。
次は、この基準で実務上見落としやすい点を確認します。
遠隔操作さえあれば、直接操作は無くてもいいのかと思っていました。
いいえ、両方そろって初めて基準を満たします。
実務で見落としやすいのはどこか

中央管理室の防災盤を更新した際、連結送水管の起動装置の配線が引き継がれていなかったという例は実務で珍しくありません。
送水口直近の操作部も屋外に露出しているため、盤の電源や配線の劣化・断線に気づきにくい設備です。
点検報告書が「機能異常なし」となっていても、実際にボタンを押して起動するところまで確認していないこともあります。
次は、明日から確認できる具体的な手順を整理します。
中央管理室の盤を更新したとき、この配線まで気にしたことがなかったです。
更新工事のたびに引き継ぎ確認をおすすめします。
明日から何を確認すればよいのか

確認済証や建築計画概要書の「最高高さ」欄、もしくは設備台帳の記載で、地階を除く階数11以上かつ高さ70m超に該当するかを確認します。
該当する場合は、点検報告書に「湿式」「高架水槽」の記載があるかを確認します。
次に、起動装置が送水口の直近と中央管理室の両方から実際に起動できるかを、点検のときに業者へ確認してもらいます。
改修や更新工事のあとは特に、配線の引き継ぎ状況を業者へ確認しておくと安心です。
まずは確認済証を引っ張り出して、高さを確認してみます。
湿式化と起動装置の二重化をあわせてチェックしましょう。
よくある質問
まとめ
確認済証の最高高さ、さっそく引っ張り出してみます!
それが一番の備えになります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防用設備等試験結果報告書及び消防用設備等試験基準の一部改正について(平成2年11月30日、消防庁予防課長)
- 消防法施行規則の一部を改正する省令(平成2年自治省令第17号)による消防法施行規則第31条第6号
- 消防法施行規則第31条第6号イ・(ハ)・(ニ)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





