深夜の宿泊施設で火が出たとき、最初にものを言うのは設備より体制です。
昭和61年の熱川温泉ホテル大東館の火災をきっかけに、消防庁は旅館・ホテル等の防火管理の進め方を通知で統一しました。
渡り廊下や地下通路でつながった複数の建物をどう数えるか、夜間はだれが動き、通報はどこへ届くか。
通知が示したのは建物のつながり方によって防火管理の単位が変わるという線引きです。
隣の建物とうちは渡り廊下でつながっていますが、防火管理は別々のままです。
これで問題ないのでしょうか。
地下通路や渡り廊下でつながっていれば、一の防火対象物として扱うのが原則です。
夜間はフロントに1人しかいなくて、消防計画にも夜間の書き方が特にありません。
そこも今日の通知が名指しした点です。
夜間の体制まで含めて整理していきましょう。
- 同一の管理権原者に属する旅館・ホテル等が地下通路や渡り廊下等で連結されている場合は、一の防火対象物として防火管理を行うとされました
- 夜間の宿直体制や発災時の消火・通報・避難誘導の体制は、消防計画に記載すべきとされています
- 防災センターや管理人室には、一の押しボタン操作で通報できる装置を設置することが求められます
- 宿泊者用の公衆電話やピンク電話は、緊急通報ボタン付のものにすることとされました
- 未実施の消防機関では防火管理者の選任や消防計画の作成が必要になる場合があると示されています
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目次
旅館やホテルの防火対策はなぜ通知で見直されたのか

消防庁はこれを受けて、旅館・ホテル等の防火管理の進め方をあらためて示す通知を出しました。
それまでも旅館・ホテル等の防火安全対策は繰り返し指導されてきましたが、熱川温泉と峰温泉で相次いだ火災事故を受け、消防庁は防火管理の運用そのものを統一する通知に踏み込みました。
この消防予第85号は、夜間の体制、複数棟の扱い、通報の仕組みという3つの実務的な論点を一度に整理しています。
自分の旅館やホテルがこの3つに当てはまるかどうかを、次の見出しから順に確認していきます。
通知というと堅苦しい印象がありますが、うちにも関係しますか。
今も生きている基準です。
次の見出しから、まず対象になる建物の条件を見ていきましょう。
通知が対象とするのはどんな旅館やホテルか

通知は、こうしたつながりがあるかどうかで防火管理の単位を決めるとしています。
道路を挟んで別々の敷地に建っていても、同じ管理権原者が持つ旅館・ホテル等が専用の地下通路や渡り廊下でつながっていれば、これらは一の防火対象物として防火管理を行うことになります。
逆に接続がなく、使用や管理の実態も別であれば、これまでどおり別の防火対象物として扱われます。
判断のカギは接続の有無と管理権原者が同じかどうかの2点です。
自分の建物が公道や敷地の境界を挟んで別棟とつながっていないか、まず図面で確かめてください。
うちは本館と別館が地下の通路でつながっていますが、防火管理者は別々に選任しています。
それはこの通知が想定する一体管理の対象に当たる可能性が高いです。
次の見出しで、求められる中身を見ていきましょう。
夜間の体制と通報の仕組みになにを求めているのか

通知は、この夜間の弱さを消防計画と設備の両面で埋めるよう求めています。
消防法施行規則第3条第1項第1号リが定める「消火活動、通報連絡及び避難誘導に関すること」は、昼夜を問わず消防計画に記載が必要な事項ですが、通知はここに夜間の宿直体制まで具体的に書き込むよう求めました。
あわせて通知は、防災センターや管理人室に一の押しボタン操作で通報できる電話機を備え、宿泊者用の公衆電話やピンク電話も緊急通報ボタン付のものにするよう示しています。
体制と設備の両方がそろって、はじめて夜間の初動が動きます。
自館の消防計画に、夜間の宿直者が誰でどう動くかまで書かれているかを確認してください。
消防計画には「夜間は宿直員が対応」としか書いていません。
それだとだれが何をするかが伝わりません。
宿直者の動線と通報の手順まで書き足しましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

通知自体が、この未実施のケースを想定して念を押しています。
渡り廊下や地下通路の存在は建築時からの図面ではっきりしているのに、防火管理者の選任や消防計画の作成が棟ごとのまま止まっていることがあります。
逆に、増築や別会社への貸付けで実態としては管理が分かれているのに、古い消防計画が一体のまま残っていることもあります。
どちらの向きにずれていても、実態と書類が合っていないという点は同じです。
所轄消防署に確認する前に、まず自分たちで接続の有無と管理の実態を照らし合わせておくと話が早くなります。
増築した別館は別の会社が運営していますが、渡り廊下ではつながっています。
そのケースは接続と管理実態の両方を確認する必要があります。
判断に迷ったら所轄消防署に相談してください。
明日からなにを確認すればよいのか

特別な工事をしなくても、今日から始められる確認が多くあります。
まず自館が他の建物と地下通路や渡り廊下でつながっていないかを図面で確認し、つながっていれば防火管理者と消防計画が一体になっているかを見ます。
次に消防計画の夜間の項目を開き、宿直者の人数と動きが具体的に書かれているかを確かめます。
そのうえで防災センターや管理人室の電話機、宿泊者用の公衆電話やピンク電話に緊急通報ボタンが付いているかを一台ずつ確認します。
迷う点が出てきたら、そこで初めて所轄消防署に相談すれば十分です。
今日からできることが分かりました。
まず図面を確認してみます。
それが一番早い一歩です。
順番に進めていきましょう。
よくある質問
まとめ
つながり方で防火管理の単位が変わると分かりました。
まず図面を見直します。
接続の有無と夜間の体制、通報の装置を図面と消防計画で確かめれば大きく外しません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 旅館・ホテル等における防火安全対策の推進について(通知)(昭和61年6月25日 消防予第85号 消防庁予防救急課長)
- 消防法施行規則第3条第1項第1号(防火管理に係る消防計画の記載事項)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





