移送取扱所は、危険物を運ぶ配管が住宅地や山林を長い距離にわたって通り抜ける施設です。
中でも配管がまとまって出入りする「移送基地」は、人が近づきやすく、万一漏れた危険物が敷地の外まで広がる危険もある場所です。
だから規則は、移送基地そのものに人の侵入を防ぐ設備と、危険物を敷地内に留める設備の両方を求めています。
今回は、危険物の規制に関する規則第28条の51が定める移送基地の保安措置を解説します。
うちの移送基地は、タンクや配管がまとまっている分だけ人の出入りも多くて、どこまで柵で囲えばいいのか正直迷っています。
移送基地には、原則としてさく・へい等を設けて公衆の立入りを防ぐ義務があります。
まずは、なぜ移送基地だけに特別な保安措置が求められるのかを確認しましょう。
柵で囲うだけでなく、危険物そのものが漏れたときの対策も別に必要なんですね。
そこも気になります。
結論から確認して、そのあと条文の中身を順に見ていきましょう。
- 移送基地には原則としてさく・へい等を設け、公衆がみだりに立ち入らないようにしなければならない
- 移送基地には危険物の流出を防止するための措置を講じる義務がある
- 危険物を取り扱う施設は、配管の最大常用圧力に応じて敷地境界から5メートルから15メートル離す
- 工業専用地域では、この距離を3分の1に短縮できる
- 水に溶けない第四類の危険物を扱う施設には油分離装置を設け、敷地境界は0.5メートル以上の土盛りで高くする
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目次
移送基地はなぜさくやへいで公衆の立入りを防がなければならないのか

だからこそ規則は、この場所を独立した条文で規制しています。
規則第28条の51第1項は、移送基地の構内に公衆がみだりに入らないようさく・へい等を設けることを義務づけています。
第2項は、万一の漏えいに備えて構外への危険物の流出を防止するための措置を別途講じるよう求めており、2つの項はそれぞれ独立した目的を持っています。
どちらも「ただし書」で例外が用意されている点は共通していますが、例外が認められる条件は項ごとに異なります。
次の見出しから、この例外の中身を確認していきます。
さく・へいがなくても、条文上は問題ない移送基地もあるということですか。
条文上はそうなります。
ただし、その判断は個別の立地状況によるので、次の見出しで詳しく見ていきましょう。
流出防止の措置はどんなときに求められるのか

まずはこの委任の構造を条文で確認します。
規則は「保安上支障がないと認められる場合」だけをただし書きの例外とし、それ以外の移送基地には一律に流出防止措置を求める組み立てになっています。
告示第66条は、この措置の中身を三つの号に分けて具体的に定めており、規則だけを読んでも何を備えればよいかは分かりません。
つまり「移送基地には流出防止措置が要る」というルールと「その中身は告示の三号」という二段構えで理解する必要があります。
次の見出しで、この三つの号を順に確認します。
「保安上支障がない場合」というのは、誰がどうやって判断するんでしょうか。
条文には基準そのものが書かれていないので、所轄消防署との協議で個別に判断されます。
自己判断で措置を省略しないことが大切です。
危険物の流出を防ぐために何を備えなければならないのか

一つずつ確認します。
第一号は、地上に設置する危険物取扱施設を、配管の最大常用圧力に応じて敷地境界から5メートルから15メートル離すよう求めています。圧力が高いほど離す距離も長くなる仕組みです。
第二号は、水に溶けない第四類の危険物を扱う施設について、漏れた危険物が構外へ流出しないよう油分離装置の設置を義務づけています。
第三号は、敷地の境界部分そのものを土盛り等で0.5メートル以上高くすることを求めており、液体があふれ出ても境界を越えにくくする役割を持ちます。
「離す・受け止める・せき止める」の三段構えだと理解すると整理しやすくなります。
距離を離すだけでなく、油分離装置と土盛りまで組み合わせて三重に備えるんですね。
そのとおりです。
次の見出しで、この三つの号を適用するときに見落としやすい点を確認しましょう。
工業専用地域なら距離を縮められるのはなぜか

条件を取り違えると、必要な措置を見落とすことになります。
第一号の距離基準は、工業専用地域(都市計画法に基づき工業の利便を増進するために定める地域)に設置する場合に限り、通常の3分の1まで短縮できます。住宅地に近い一般の地域では短縮は認められません。
また第一号の距離基準は「地下に設置するものを除く」とされているため、地下に埋設した施設には別の考え方が必要です。
第二号の油分離装置は「水に溶けない第四類の危険物」に限った措置で、水に溶けるアルコール等の危険物を扱う施設は対象外になります。ただし対象外だからといって流出防止措置そのものが不要になるわけではなく、油分離装置以外の方法で構外への流出を防ぐ必要があります。
「地上施設に限った距離基準」「工業専用地域限定の短縮」「水に溶けない第四類限定の油分離装置」という三つの条件を、それぞれ別に確認することが欠かせません。
アルコール系の危険物を扱っている場合、油分離装置を付けなくてよいと考えていいんでしょうか。
油分離装置そのものは不要になりますが、流出防止措置全体が免除されるわけではありません。
取り扱う危険物の性質を所轄消防署と確認しましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

確認の起点は、施設の場所と取り扱う危険物の種類です。 まず施設の場所と用途地域を確認します。
危険物を取り扱う施設が地上にあるか地下にあるかで距離基準の適用が変わるため、施設の設置場所を最初に確認します。
次に、敷地が工業専用地域に当たるかどうかを確認し、当たる場合は距離を3分の1まで短縮できるかを検討します。
取り扱う危険物が水に溶けない第四類に当たる場合は、油分離装置が正常に機能しているかを定期的に点検します。
最後に、敷地境界の土盛りが0.5メートルの高さを保っているか、経年で沈下していないかも現地で確かめることをおすすめします。
まずは自社の移送基地が工業専用地域に当たるかどうかを確認してみます。
それが分かれば、距離・油分離装置・土盛りの三つを一気に整理できます。
不明な点があれば所轄消防署にも相談してみてください。
よくある質問
まとめ
工業専用地域に当たるかどうかを確認するところから始めてみます!
移送基地の保安措置づくりは、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する規則第28条の51
- 危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示(昭和49年自治省告示第99号)第66条
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





