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消防法の基準はなぜ市町村で変わるのか|委任条例と付加条例の仕組みを解説

消防法の基準はなぜ市町村で変わるのかを示すアイキャッチ画像

系列店を出したら、隣の市に移っただけで消防から求められる設備が違って困ったことはないでしょうか。
消防法は全国共通のはずですが、実際に建物へ適用される設置基準の多くは市町村の「火災予防条例」で決まります。
条例が独自に基準を決めているわけではなく、消防法そのものが基準づくりを条例に託す仕組みを持っているためです。
この記事では消防法が条例に基準を託す委任条例と付加条例のしくみと、自分の建物の条例を確認する方法を整理します。

系列店を出したら、市が違うだけで指摘される設備まで違ったんです。

それは条例が消防法から基準づくりを託されているからです。
まず条例と消防法の関係を確認していきましょう。

条例って、消防が現場の都合で勝手に決めているものだと思ってました。

実は消防法第9条など、条文そのものが「基準は条例で定める」と委ねています。
どの条文が根拠になっているか、一緒に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 消防法は火を使う設備や住宅用防災機器などの基準づくりを、条文そのもので市町村条例に託しています(委任条例)
  • 消防法第17条第2項は、地域の事情で政令の基準だけでは防火の目的を達成できないときに条例で基準を付け加えることを認めています(付加条例)
  • 付加条例は政令の基準を厳しくする方向でのみ使うことができ、緩める方向には使えません
  • 各市町村は総務省消防庁が示す火災予防条例(例)をもとに条文を作るため、章立てや条文番号がよく似ています
  • 自分の建物に適用される基準を正確に知るには、所在地の市町村条例そのものを確認する必要があります

委任条例と付加条例の二つの仕組みを示し、委任条例は市町村がゼロから基準を作り、付加条例は基準を厳しくする方向だけに使えることを表した図解

消防法の基準はなぜ市町村で変わるのか

旗の違う二つの同じ形のオフィスビルが並び、片方の壁面にだけ小さな装置が追加されているイメージ
消防法は全国共通の法律ですが、建物に実際に適用される基準は市町村ごとの条例で細かく決まります。
これは条例が独自に判断しているのではなく、消防法自体がその仕組みを用意しているためです。
消防法(昭和23年法律第186号)第9条 かまど、風呂場その他火を使用する設備又はその使用に際し、火災の発生のおそれのある設備の位置、構造及び管理(略)その他火の使用に関し火災の予防のために必要な事項は、政令で定める基準に従い市町村条例でこれを定める。
火を使う設備の基準は、消防法そのものが市町村条例に基準づくりを委ねています。
これを委任条例と呼び、条例は法律から基準の中身づくりを任された存在という位置づけになります。
かまどや炉、変電設備のような火を使う設備の位置・構造・管理の基準は、この委任によって条例が定めています。
そのため同じ消防法が適用されていても、基準の中身そのものは市町村ごとに条例の条文として別々に存在します。
自分の建物がある市町村の条例を見なければ、正確な基準は分かりません。

法律ひとつで済むはずなのに、なぜ条例を挟む必要があるんでしょうか。

設備の使い方や建物事情は地域ごとに違うため、細かい基準づくりを条例に任せています。
次はその根拠になる条文を見てみましょう。

どの条文が委任でどの条文が付加に当たるのか

白紙の書類が重なったイメージと、屋上に薄い層が一枚追加された建物が並ぶイメージ
条例に基準づくりを任せる仕組みには、実は2つの種類があります。
どちらも消防法の条文そのものが根拠になっています。
消防法(昭和23年法律第186号)第17条第2項 市町村は、その地方の気候又は風土の特殊性により、前項の消防用設備等の技術上の基準に関する政令又はこれに基づく命令の規定のみによつては防火の目的を充分に達し難いと認めるときは、条例で、同項の消防用設備等の技術上の基準に関して、当該政令又はこれに基づく命令の規定と異なる規定を設けることができる。
委任条例と付加条例は、条例が基準を作る方向がまったく違います。
委任条例(第9条・第9条の2・第9条の4)は、政令の基準がまだ無いところに市町村が基準をゼロから作る仕組みです。
付加条例(第17条第2項)は、すでにある消防用設備等の政令の基準(第10条から第29条の3まで)の上に、地域の事情でさらに基準を積み重ねる仕組みです。
どちらも「消防法が条例に基準を託す」という点は同じですが、白紙に書くか、既存の基準に書き加えるかが異なります。

付加条例って、政令の基準に上乗せするものってことですよね。

そのとおりです。政令の基準では防火の目的を達成できない場合に限って上乗せできます。
次は委任条例が実際に何を定めているかを見ていきましょう。

火災予防条例は具体的に何を定めているのか

煙突のある炉と赤い警報ベル、ドラム缶が並ぶイメージ
委任条例が定める中身は、大きく3つの体系に分かれます。
条文の並び方は多くの市町村で似た構成になっています。
消防法(昭和23年法律第186号)第9条の2第1項 住宅の用途に供される防火対象物(略)の関係者は、次項の規定による住宅用防災機器(略)の設置及び維持に関する基準に従つて、住宅用防災機器を設置し、及び維持しなければならない。
委任条例の中身は、火を使う設備・住宅用防災機器・危険物の3つの体系に分かれます。
火を使う設備・器具の位置・構造・管理の基準(第9条の委任)。炉や厨房設備、変電設備などが対象です。
住宅用防災機器の設置・維持の基準(第9条の2の委任)。住宅用の警報器などが対象です。
指定数量未満の危険物・指定可燃物の貯蔵・取扱いの基準(第9条の4の委任)。ドラム缶などでの少量の危険物の扱いが対象です。
総務省消防庁は昭和36年11月22日付けで「火災予防条例(例)」を示しており、多くの市町村がこれをもとに条文を作るため、章立てや条文番号がよく似ています。

じゃあどこの市町村でも条例の内容はだいたい同じということですか。

骨格は似ていますが、数値や運用の細部は市町村ごとに変わることがあります。
次は基準を緩めてもらえるかどうかを確認しましょう。

基準を緩める条例は作れるのか

屋上から上向きの矢印が伸びる建物と、その奥に薄く点線で描かれた建物が並ぶイメージ
「うちの市なら基準を免除してもらえるはず」という期待は、条文の作りからすると誤りです。
条例が動ける方向は、法律の条文自体によって決められています。
地方自治法(昭和22年法律第67号)第14条第1項 普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第二条第二項の事務に関し、条例を制定することができる。
付加条例は、政令の基準を厳しくする方向でのみ使うことができます。
消防法第17条第2項は「政令の基準のみでは防火の目的を充分に達し難いと認めるとき」に限って条例で基準を付け加えられると定めています。
つまり基準を緩めるための条例は、そもそも条文の対象外です。
委任条例についても、市町村は消防法から任された範囲を超えて基準を作ることはできず、法令に違反する条例は制定できません(地方自治法第14条第1項)。
「隣の市はここまで求められないらしい」という話をそのまま自分の建物に当てはめることはできない点にも注意が必要です。

知り合いの店がある市では、うちより緩い基準だったので同じにしてもらえないかと思ってました。

他の市の運用は、そのまま自分の建物には適用されません
最後に、自分の建物の条例を確認する手順を見ていきましょう。

自分の建物の条例はどうやって確認すればよいのか

タブレットで位置情報を確認する人物と、隣に積まれた本のイメージ
条例の内容そのものは市町村ごとに違いますが、確認する手順は共通しています。
今日から始められる4つの確認を、順番に見ていきましょう。
  • 建物がある市町村名と「火災予防条例」で例規集を検索する
  • 総務省消防庁の「火災予防条例(例)」の条文番号と照らし、自分の条例の対応条文(第9条→第3章、第9条の2→第3章の2、第9条の4→第4章)を探す
  • 附則の施行期日や経過措置を確認し、改正前の基準がまだ適用される設備がないか見る
  • 内容に疑問があれば、自己判断せず所轄消防署に確認する
条例の中身は、所在地の市町村の条例そのもので確認するのが一番確実です。
他の市町村の記事やうわさ話をそのまま自分の建物に当てはめず、まずは自分の市町村の例規集を開くところから始めましょう。
分からないまま放置せず、早めに確認する習慣をつけておくことが欠かせません。

とりあえず自分の市の例規集で「火災予防条例」を検索してみます。

それが一番確実な進め方です
よくある質問もまとめておきます。

よくある質問

Q火災予防条例は全国どこでも同じ内容なのですか?
Aいいえ。総務省消防庁が示す「火災予防条例(例)」を土台にしていますが、実際に条文を定めるのは各市町村です。地域の事情によって内容が異なることがあります。
Q消防法に基準があるのに、なぜ条例でも基準を決めるのですか?
A消防法第9条などが、火を使う設備の基準を「市町村条例で定める」と直接指定しているためです。法律が最初から条例に基準づくりを委ねる仕組み(委任条例)になっています。
Q条例で基準を緩めてもらうことはできますか?
Aできません。消防法第17条第2項の付加条例は、政令の基準だけでは防火の目的を達成できないときに基準を追加するための規定で、緩める方向には使えません。
Q自分の建物にどの条例が適用されるか分からないときはどうすればよいですか?
A建物がある市町村の例規集で「火災予防条例」を検索し、内容に疑問があれば所轄消防署に確認するのが確実です。

まとめ

消防法は火を使う設備や住宅用防災機器などの基準づくりを、条文そのもので市町村条例に託しています(委任条例)
委任条例の根拠は消防法第9条・第9条の2・第9条の4です
消防法第17条第2項は、政令の基準だけでは防火の目的を達成できないときに条例で基準を付け加えることを認めています(付加条例)
付加条例は基準を厳しくする方向でのみ使うことができます
各市町村は総務省消防庁の「火災予防条例(例)」をもとに条文を作るため、章立てや条文番号がよく似ています
条例が消防法に違反する内容を定めることはできません(地方自治法第14条第1項
自分の建物に適用される基準は、所在地の市町村条例そのもので確認する必要があります

条例が消防法から基準づくりを託されている仕組みが分かりました。
まずは自分の市の火災予防条例を調べてみます。

迷ったときは所轄消防署か、私たちにご相談ください
㈱防災屋でもご相談を承っています。

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参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第9条・第9条の2・第9条の4・第17条
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第10条〜第29条の3
  • 地方自治法(昭和22年法律第67号)第14条第1項
  • 総務省消防庁「火災予防条例(例)」(昭和36年11月22日自消甲予発第73号、令和5年2月21日消防予第59号改正)
  • e-Gov 法令検索

※本記事は公表されている法令および総務省消防庁の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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