倉庫の荷さばき場や車庫には、壁が無く屋根だけが架かった「上屋」がよくあります。
国の消防法施行規則は、外部の気流が流通する上屋のうち、感知器では火災を有効に感知できない場所を、感知器を設ける部分から外しています。
鈴鹿市消防本部の審査基準は、この場所を、常時外気に直接開放される部分から5m未満の範囲と読んでいます。
この記事では、鈴鹿市の読み方を条文の順にたどり、大阪市・東大阪市・堺市の基準と並べて、5メートルに付く条件の違いを整理します。
鈴鹿市で物流倉庫を管理しています。
荷さばき場の屋根の下に、感知器が付いていない部分があります。
屋根の下でも、外の空気が通る部分は感知器を設けない部分になることがあります。
鈴鹿市の審査基準は、その範囲を距離で決めています。
距離で決まるのですか。
屋根の下は、全部同じ扱いだと思っていました。
開いている側から5メートル未満かどうかで分かれます。
国の規則、鈴鹿市の審査基準、近くの市の基準の順に読みましょう。
- 国の消防法施行規則第23条第4項第1号ロは、上屋その他外部の気流が流通する場所で有効に感知できないものを、感知器を設ける部分から外していますが、距離は書いていません
- 鈴鹿市の審査基準は、この場所を「常時外気に直接開放される部分から5m未満の範囲の部分」と読んでいます
- 車庫や倉庫の上屋は、5m未満の範囲を除いて警戒区域を設定すれば足りるとされています
- 同じ鈴鹿市でもスプリンクラー設備の節では、開いている部分の断面形状の条件が加わり、店舗や倉庫等に使う部分はヘッドを省略できません
- 大阪市は仕上げと可燃物と用途、東大阪市と堺市は断面形状の条件を5メートルに付けているので、建物のある市の基準で確かめます
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目次
国の基準は上屋の感知器をどう決めているのか

自動火災報知設備の感知器をどこに設けるかは、消防法施行規則第23条第4項で決まっています。
ロ 上屋その他外部の気流が流通する場所で、感知器によつては当該場所における火災の発生を有効に感知することができないもの
屋根が架かっているというだけで、当然に外れるわけではありません。
また、条文には、開いている側から何メートルという距離も、開口の大きさも書かれていません。
どこまでを「外部の気流が流通する場所」と見るかは、各市の運用基準や審査基準が具体的に書いています。
もう1つ押さえておきたいのが、消防法施行令第21条第2項第2号の警戒区域です。
上屋を感知器から外すと、その部分を警戒区域の面積に入れるのかどうかも問題になります。
鈴鹿市の審査基準は、この2つを警戒区域の項目でまとめて書いています。
屋根があるだけでは外れないのですね。
距離の決まりは、国の条文には無いのですか。
はい、国の規則は有効に感知できないものという条件だけです。
距離の物差しは、市の基準を開いて確かめます。
鈴鹿市の審査基準は5メートルをどう使っているのか

自動火災報知設備は第4章 第10で、上屋の扱いは警戒区域の項目に書かれています。
イ 省令第23条第4項第1号ロに規定する「上屋その他外部の気流が流通する場所」とは、常時外気に直接開放される部分から5m未満の範囲の部分※をいう。(※5mセットバックの規定)
ウ 車庫、倉庫等の上屋部分は、常時外気に直接開放される部分から5m未満の範囲の部分を除いて警戒区域を設定すれば足りる。
鈴鹿市の審査基準の凡例では、無印の項目は法令基準(法令解釈又は運用基準を含む)とされ、ア・イ・ウはどれも無印です。
イが、ロの「上屋その他外部の気流が流通する場所」を、常時外気に直接開放される部分から5m未満の範囲の部分と決めています。
ウは、車庫や倉庫の上屋について、5m未満の範囲を除いて警戒区域を設定すれば足りるとしています。
ウに付いている第10-6図は、トラックが入る上屋の例で、開いている側から5mの範囲を外し、それより奥の上屋の部分を、倉庫の警戒区域(600平方メートル以下)と一緒に描いています。
アは別の話で、ピロティや吹きさらしの廊下、バルコニー、屋外階段など、建築基準法上の床面積に入らない部分を、警戒区域の面積から除外するものです。
ここまでのつながりを、番号順にまとめます。
- 国の消防法施行規則第23条第4項第1号ロで、上屋その他外部の気流が流通する場所のうち有効に感知できないものが、感知器を設ける部分から外れる
- 鈴鹿市の第10 2(1)イで、その場所を「常時外気に直接開放される部分から5m未満の範囲の部分」と読む
- 同じくウで、車庫、倉庫等の上屋は、5m未満の範囲を除いて警戒区域を設定すれば足りるとする
- 5mより奥の上屋の部分は、イの「上屋その他外部の気流が流通する場所」に当たらないので、感知器を設ける部分として残ると読めます(第10-6図は奥の部分を倉庫の警戒区域と一緒に描いている)
- 警戒区域の面積の上限は、国の消防法施行令第21条第2項第2号の600平方メートル以下で確かめる
鈴鹿市の第10-5図は、4面開放から1面開放までの例を挙げ、外気に面する5m未満の場所を辺ごとに網かけで示しています。
開いている側から5メートルまでが外れて、奥は残るのですね。
うちの荷さばき場も、図面で測ってみます。
はい、開いている辺が複数あれば、辺ごとに5メートルを測ります。
第10-5図に、開いている面の数ごとの例があります。
同じ鈴鹿市でもスプリンクラー設備では何が違うのか

消防法施行規則第13条第3項第6号です。
六 直接外気に開放されている廊下その他外部の気流が流通する場所
ア 開放型の廊下、通路、ひさし等の場所
イ 直接外気に面するそれぞれの部分から5m未満の場所であって、常時開放されている断面形状の部分(この項において「有効な吹きさらし部分」という。)のうち、次のアからウまでに適合する部分
(ア) 有効な吹きさらし部分は、1m以上の高さ又は床面から天井(天井がない場合は屋根)までの高さ(この項において「天井高」という。)の3分の1以上であること。
(イ) (ア)の有効な吹きさらし部分は、天井高の2分の1以上の位置より上に存すること。
(ウ) 開放型の廊下、通路等の天井面から垂れ壁等の下端までは、40㎝以下であること。
(5) (4)の規定にかかわらず、次のア又はイに掲げる部分は、スプリンクラーヘッドを省略することは認められず、当該部分にスプリンクラーヘッドを設けて警戒すること。
ア 店舗、倉庫等に使用する部分
イ スプリンクラーヘッドが有効に感知すると想定される部分
自動火災報知設備の第10 2(1)イは、常時外気に直接開放される部分から5m未満という距離で読んでいました。
第3 6(4)は、場所を開放型の廊下、通路、ひさし等に限り、開いている部分の高さと位置、垂れ壁等の深さまで求めています。
さらに(5)で、店舗や倉庫等に使う部分は、(4)に当てはまってもヘッドを省略できないとしています。
同じ言葉でも、もとになる規則の条が違えば、鈴鹿市の読み方も違います。
理由までは書かれていませんが、設備ごとに別の節を開いて確かめる必要があるということです。
| 項目 | 自動火災報知設備(第10 2(1)イ・ウ) | スプリンクラー設備(第3 6(4)(5)) |
|---|---|---|
| もとになる国の規則 | 第23条第4項第1号ロ | 第13条第3項第6号 |
| 5mの測り方 | 常時外気に直接開放される部分から5m未満 | 直接外気に面するそれぞれの部分から5m未満 |
| 場所 | 上屋その他(ウで車庫、倉庫等の上屋を名指し) | 開放型の廊下、通路、ひさし等 |
| 開いている部分の断面形状 | イ・ウには書かれていない | 1m以上又は天井高の3分の1以上、天井高の2分の1以上の位置より上、垂れ壁等まで40センチメートル以下 |
| 用途による除外 | イ・ウには書かれていない | 店舗、倉庫等に使用する部分などは省略できない |
同じ市でも、設備によって条件が変わるのですね。
倉庫の上屋にスプリンクラー設備がある場合はどうなりますか。
スプリンクラー設備の節では、倉庫等に使用する部分はヘッドを省略できないとされています。
設備ごとに節を開いて確かめましょう。
大阪市や東大阪市や堺市は5メートルにどんな条件を付けているのか

ただし、5メートルに付ける条件と、基準の中での書かれている場所が違います。
大阪市は、国の規則の読み方としてではなく、特例基準の項目として書いています。第12の柱書は、令第32条又は条例第47条の規定を適用するとしています。
大阪市の条件は、面する部分が不燃材料で仕上げられていること、可燃物を置かないこと、通行・運搬の用途だけに使うことです。
東大阪市は、開放型の廊下、通路、庇等について、開いている部分の断面形状の条件を4つ付けています。この項目には、凡例で法令基準に行政指導を加えた基準を表す▲印が付いています(PDFの画像で確認)。
堺市は、自動火災報知設備の警戒区域の項目で、定義をスプリンクラー設備の節の第4 Ⅱ 1(3)ア(ウ)から借りています。借りた先の(ウ)には、堺市消防局として定めた指導基準を表す★印が付いています。
断面形状の条件を、鈴鹿市のスプリンクラー設備の節と並べると次のとおりです。
| 条件 | 鈴鹿市(スプリンクラー設備 第3 6(4)イ) | 東大阪市(自動火災報知設備 (2)ア) | 堺市(スプリンクラー設備 第4 Ⅱ 1(3)ア(ウ)) |
|---|---|---|---|
| 開いている部分の高さ | 1m以上又は天井高の3分の1以上 | 1メートル以上又は天井高の1/3以上 | 1m以上又は天井高の1/3以上 |
| 開いている部分の位置 | 天井高の2分の1以上の位置より上 | 天井高の1/2以上の位置 | 天井高の1/2以上の位置 |
| 天井面から小梁・垂れ壁等の下端まで | 40センチメートル以下 | 30センチメートル以下 | 30センチメートル以下(廊下、通路等に可燃物がない場合はこの限りでない) |
| 開いている部分の前面の空地 | 書かれていない | 1メートル以上 | 1m以上 |
| 項目 | 鈴鹿市 | 大阪市 | 東大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|---|---|
| 書かれている場所 | 第4章 第10 2(1)イ・ウ(警戒区域) | 第2章 第1節 第12 特例基準 2(15) | Ⅱ 細目 2 感知器 (2) 設置方法 ア | 第12 Ⅱ 1(6)ク(警戒区域)+第4 Ⅱ 1(3)ア(ウ)の例 |
| 印 | 無印(法令基準) | ◆なし(令第32条又は条例第47条を適用する特例基準) | ▲(法令基準に行政指導を加えた基準) | クは無印・借りた先の(ウ)は★ |
| 対象の場所 | 上屋その他(車庫、倉庫等の上屋) | 上屋その他 | 開放型の廊下、通路、庇等 | 外気に面して常時開放された部分(定義は開放型の廊下、通路、庇等) |
| 5メートルの外の条件 | 書かれていない | 不燃材料の仕上げ・可燃物の存置なし・通行・運搬の用途のみ | 断面形状の(ア)〜(エ) | 断面形状のa〜d |
| 面積の扱い | 5m未満を除いて警戒区域を設定すれば足りる | (15)には書かれていない | 感知区域の面積は5メートルを除いた面積 | 5m未満の場所を除いて警戒区域を設定できる |
つまり、5メートルは同じでも、市によって条件の付け方が違うのですね。
はい、垂れ壁の深さも、鈴鹿市のスプリンクラー設備の節は40センチメートル、東大阪市と堺市は30センチメートルです。
建物のある市の基準で確かめましょう。
上屋のある建物では明日からなにを確かめればよいのか

平面図と建物のある市の基準を並べれば、相談の前にかなりのことが整理できます。
- 平面図で、上屋や開放型の廊下のうち、常時外気に開放されている辺に印を付ける
- 開いている辺ごとに、5メートルの線を図面に引く(鈴鹿市は第10-5図に開いている面の数ごとの例がある)
- 建物のある市の基準で、5メートルに付く条件(断面形状・仕上げ・可燃物・用途)を確かめる
- 5メートルより奥の部分が、どの警戒区域に入るかを確かめる(鈴鹿市は第10-6図)
- スプリンクラー設備がある建物は、規則第13条第3項第6号を扱う節も別に開く
- 線を引いた図面を持って、管轄の消防本部・消防署で確かめる
増築や改修で壁やシャッターを足すと、常時外気に開放されている辺そのものが変わります。
そのときは、5メートルの線を引き直す必要があります。
鈴鹿市の審査基準は令和7年9月1日に改正されていて、最新の版は鈴鹿市のサイトに章ごとに掲載されています。
まずは図面に、開いている辺と5メートルの線を引いてみます。
はい、その図面があれば消防署への相談もしやすくなります。
増築や改修で壁を足したときも、引き直しましょう。
よくある質問
まとめ
上屋の5メートルの意味が分かりました。
図面に線を引いて、消防署に相談してみます!
市ごとの条件を確かめた図面があれば、相談も早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」(令和6年4月1日 鈴消予第881号制定・令和7年9月1日 鈴消予第340号改正)第1章 総則 2 運用上の留意事項(凡例)、第4章 第3 スプリンクラー設備 6(4)(5)、第4章 第10 自動火災報知設備 2(1)ア〜ウ・第10-5図・第10-6図 https://www.city.suzuka.lg.jp/shobo/1012943/1016101/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第2章 第1節 自動火災報知設備 第12 特例基準 2(15) https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局「自動火災報知設備の設置に係る運用基準」Ⅱ 細目 2 感知器 (2) 設置方法 ア https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第二十二版(令和8年4月1日改正)第1章 総則 4 凡例、第3章 第1節 第4 スプリンクラー設備 Ⅱ 1(3)ア(ウ)、第12 自動火災報知設備 Ⅱ 1(6)ク https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 消防法施行令第21条第2項第2号
- 消防法施行規則第13条第3項第6号、第23条第4項第1号ロ
※本記事は公表されている法令および各市消防本部・消防局の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準・審査基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。「書かれていない」とした項目は、各市が公開している基準の該当する節を読んだ範囲でのものです。感知器やスプリンクラーヘッドを設けなくてよいかどうかの個別の判断は、所轄消防署にご確認ください。





