地下の売場や窓の少ない階に排煙設備を付けるとき、機械室や便所にまで排煙口が要るのか迷うことがあります。
国の消防法施行令第28条は、排煙設備が必要な建物を決めていますが、部屋ごとの外し方の一覧はありません。
堺市消防局の審査基準は、令第32条を適用して排煙口を設けないことができる部分を6つ挙げています。
この記事では、国の条文から堺市の6つの項目までを順にたどり、大阪市の特例基準とも比べます。
堺市で、地下に売場がある店舗ビルを計画しています。
機械室やトイレにも排煙口が要るのですか。
堺市の審査基準では、条件に当たれば機械室や便所に排煙口を設けないことができます。
ただし区画や仕上げの条件があります。
部屋の広さでも決まるのですか。
小さな部屋には50平方メートル以下、廊下は15平方メートル以下という線があります。
国の条文から順に読んでいきましょう。
- 国の消防法施行規則第29条が排煙設備を外せるとするのは、常時開放の開口部がある部分やガス系の消火設備がある部分などです
- 堺市の審査基準は、令第32条を適用して排煙口を設けないことができる部分を6つ挙げています
- 耐火構造の建物で区画し準不燃材料で仕上げた部分は、50平方メートル以下(廊下は15平方メートル以下)なら対象です
- 機械室・浴室や便所・区画した階段・冷蔵室や金庫室も対象で、小さな冷蔵室には収容物と温度の警報の条件が付きます
- 大阪市は排煙設備を設置しないことができる部分として9つの項目を挙げ、仮設建築物や冷蔵室では別の節の基準を借りています
▼

目次
国の基準では排煙設備をどこに付けてどこを外せるのか

対象は、地下街、劇場などの舞台部、店舗や駐車場などの地階・無窓階で、面積が一定以上のものです。
一 別表第一(十六の二)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が千平方メートル以上のもの
二 別表第一(一)項に掲げる防火対象物の舞台部で、床面積が五百平方メートル以上のもの
三 別表第一(二)項、(四)項、(十)項及び(十三)項に掲げる防火対象物の地階又は無窓階で、床面積が千平方メートル以上のもの
第1号は常時開放の開口部がある部分で、くわしくは常時開放の窓の免除を解説した記事で取り上げています。
第2号は、関係者が主に使う部分で、ガス系などの消火設備を設けた部分です。
ただ、令第28条にも規則第29条にも、機械室や便所といった部屋の名前は出てきません。
そこで各地の消防本部は、消防長などが認めれば基準によらなくてよいとする令第32条を使い、外せる部分を基準に書いています。
国の条文には、機械室や便所という言葉は無いのですね。
はい、だから市の基準を読む必要があります。
まず堺市の審査基準を見ます。
堺市の審査基準は排煙口を設けない部分をどう決めているのか

見出しの★は、凡例で堺市消防局が防火安全性の向上を目的として定めた指導基準の印です。
建物のほかの部分の排煙設備まで要らなくなるとは書いていません。
また堺市は、排煙設備の節の冒頭で、建築基準法との関係にもふれています。
両方の法律で排煙設備の目的が違うことは、消防法と建築基準法の排煙設備の違いの記事で解説しています。
建築基準法で要らないから大丈夫、とはいかないのですね。
はい、堺市は消防法の側で6つの項目に当たるかを見ます。
次に6つの中身を読みます。
堺市の6つの特例は何を条件にしているのか

| 項目 | 対象 | 条件 |
|---|---|---|
| (1) | 床面積50平方メートル以下の部分(廊下は15平方メートル以下) | 特定主要構造部を耐火構造とした建物・耐火構造の壁若しくは床又は自動閉鎖式の防火設備で区画・壁と天井を準不燃材料で仕上げ |
| (2) | エレベーターの機械室・機械換気設備の機械室・ポンプ室・冷凍機械室その他これらに類する室 | 特定主要構造部を耐火構造とした建物・耐火構造の壁若しくは床又は自動閉鎖式の特定防火設備で区画(面積の上限は書かれていない) |
| (3) | 浴室・シャワー室・洗面室・便所・風除室・エレベーターの昇降路・リネンシュート・パイプダクトその他これらに類する部分 | 区画などの条件は書かれていない |
| (4) | 階段(消火活動拠点となる部分を除く)・エスカレーターその他これらに類する部分 | 防火戸又は防煙壁で区画 |
| (5) | 冷蔵室・冷凍室・金庫室等 | 耐火構造の壁及び床で区画・開口部に特定防火設備である防火戸等 |
| (6) | 床面積50平方メートル以下の冷蔵室又は冷凍室 | 不燃材料の壁・床若しくは天井又は扉で区画・収容物と温度の警報の条件 |
部屋の用途は書かれておらず、建物・区画・仕上げ・面積の4つがそろうかで決まります。
(2)には面積の上限が書かれていないので、大きな機械室の扱いは所轄の消防署で確かめてください。
(4)の消火活動拠点は、特別避難階段の附室や非常用エレベーターの乗降ロビーのように、消防隊が活動の足場にする場所のことです。
(6)の小さな冷蔵室・冷凍室は、中に入れる物と警報にも条件が付きます。
ア 収容物は、不燃性の物品又は生鮮食料品等出火の恐れが少ないものであること。
イ 当該場所における火災を早期に感知することができる自動温度調節装置が設けられ、かつ、防災センター等常時人のいる場所に警報が発せられること。
うちの地下の倉庫は30平方メートルほどです。
倉庫を名指しした項目は無いので、(1)の4つの条件に当たるかを図面で見ます。
仕上げが準不燃材料かも確かめましょう。
大阪市の特例基準はほかの節の基準をどう借りているのか

大阪市の凡例では◆が行政指導の印ですが、この第6には◆が付いていません。
大阪市の第6の2は(1)から(9)までの9項目で、そのうちいくつかは別の節の基準を借りています。
借りている先を、順番にたどると次のとおりです。
- (1)消火活動拠点以外の部分で、建築基準法の規定に適合する排煙設備が設置されている部分(規則第30条第10号の建物は、同号と第3号ホ・第5号・第11号の措置も原則として必要)
- (2)仮設建築物で、屋内消火栓設備の基準 第12.2.(1)から(4)までに適合するもの。借りる先は、存続期間が6カ月以内・避難・早期の発見と報知・初期消火の4つです(大阪市の仮設建築物の記事で解説)
- (3)耐火構造の壁及び床と特定防火設備である防火戸で区画した、機械室等100平方メートル以下、倉庫・階段室の前室50平方メートル以下(スプリンクラー設備があれば100平方メートル以下)、エレベーターホール50平方メートル以下、非常電源付きの換気設備がある変電室等、階段室・エスカレーター室
- (4)耐火構造の壁及び床と特定防火設備である防火戸等で区画した冷蔵室・冷凍室・金庫室等
- (5)50平方メートル以下の冷蔵室・冷凍室で、閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備の基準 第14.4.(1)に適合するもの(大阪市の冷凍倉庫の記事で解説)
- (6)15平方メートル以下の機械室・変電設備室・分電盤室等で、隣の排煙設備がある室を使う4つの条件に適合するもの
- (7)浴室・シャワー室・洗面所・便所・風除室・エレベーターの昇降路・リネンシュート・パイプダクト等
- (8)関係者が主に使う部分で、評価を受けたガス系の消火設備を設けた部分
- (9)閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備の基準 第14.15に該当するもの(可動式ブース。国の考え方は可動式ブースの記事で解説)
排煙の(5)は、スプリンクラー設備の第14.4.(1)の条件をそのまま使い、面積だけ50平方メートル以下に絞っています。
ア 収容物は、不燃性の物品又は生鮮食品等出火のおそれが少ないものであること
イ 冷蔵室又は冷凍室の温度に異常が生じたときに、防災センター等に当該異常を表示し、かつ、警報を発する装置が設けられていること
ウ イによる移報用電気配線は、規則第12条第1項第5号の規定の例によること
(8)も、排煙設備の節の第4で、評価を受けたガス系の消火設備を規則第29条第2号に掲げる消火設備とみなすとしていて、国の規則とつながっています。
(6)の15平方メートル以下の小さな機械室には、次の4つの条件が付きます。
ア 当該室は、排煙設備が設けられている室(床面積が当該室の床面積より大きい室に限る。)に隣接していること
イ 隣接する排煙設備が設けられている室との間には、幅75センチメートル以上、高さ1.8メートル以上の出入口が設けられていること
ウ 隣接する排煙設備が設けられている室以外の部分とは、不燃材料の壁及び床で区画されていること
エ 室内のいずれの部分からも、イの出入口までの水平距離が5メートル以下であること
大阪市は、ほかの節を開かないと条件が分からないのですね。
はい、仮設や冷蔵室は借りている先の条件まで読むのが大切です。
最後に2市を並べてみます。
堺市と大阪市を並べると何が同じで何が違うのか

| 項目 | 堺市 | 大阪市 |
|---|---|---|
| 基準の中の位置 | 第20 排煙設備 Ⅱ 4 特例基準(★) | 第5章 第1節 排煙設備 第6 特例基準(◆なし) |
| 書き方 | 排煙口を設けないことができる | 排煙設備を設置しないことができる |
| 小さな部屋 | 区画し準不燃材料で仕上げた50平方メートル以下(廊下は15平方メートル以下) | 15平方メートル以下の機械室等で、隣の排煙設備がある室を使う4つの条件 |
| 機械室 | 特定防火設備で区画・面積の上限は書かれていない | 特定防火設備で区画・100平方メートル以下 |
| 倉庫・前室・エレベーターホール | 名指しした項目はない | 50平方メートル以下(倉庫と前室はスプリンクラー設備があれば100平方メートル以下) |
| 浴室・便所・昇降路など | 対象 | 対象(ほぼ同じ書き方) |
| 階段・エスカレーター | 防火戸又は防煙壁で区画(消火活動拠点を除く) | 耐火構造の壁・床と特定防火設備で区画した階段室・エスカレーター室 |
| 冷蔵室・冷凍室・金庫室 | 耐火構造で区画・特定防火設備等(同じ書き方) | 耐火構造で区画・特定防火設備等(同じ書き方) |
| 50平方メートル以下の冷蔵室 | 収容物と自動温度調節装置の警報 | スプリンクラー設備の第14.4.(1)を借りる |
| 建築基準法の排煙設備 | 建築基準法で免除されても消防法は免除されない | 消火活動拠点以外で建築基準法に適合する排煙設備があれば設置しないことができる |
| ほかの項目 | なし | 仮設建築物・変電室等・ガス系の消火設備・可動式ブース |
違いが大きいのは、小さな部屋の面積の線と、建築基準法の排煙設備の扱いです。
大阪市の図面を堺市でそのまま使ったり、その逆をしたりしないよう注意してください。
なお、今回確かめた東大阪市の公開資料(6つの運用基準)には排煙設備の節がないため、比べていません。 建築基準法の排煙設備がいらない部屋の考え方は、倉庫やボーリング場の排煙設備の質疑の記事で紹介しています。
大阪市なら100平方メートルまでの機械室、と思い込んでいました。
堺市は区画の戸と仕上げで決まる書き方です。
迷ったら所轄の消防署に図面で相談しましょう。
よくある質問
まとめ
機械室と倉庫の区画の戸と仕上げを図面で確かめます。
堺市の6つの項目に当てはめて整理します!
先に整理しておけば、協議が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版)総則 4 凡例、第20 排煙設備 Ⅰ 概要 3(1)・Ⅱ 細目 4 特例基準(1)から(6)まで https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」凡例、第5章 第1節 排煙設備 第4・第6 特例基準 2(1)から(9)まで、第1章 第2節 屋内消火栓設備 第12 2、第1章 第3節 閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備 第14 4(1)・15 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 消防法施行令 第28条・第32条
- 消防法施行規則 第12条第1項第5号・第29条・第30条
※本記事は公表されている法令および各市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準・審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の部屋で排煙口や排煙設備を省略できるかの判断は、所轄の消防署にご確認ください。





