オフィスや共同住宅の共用部に、1人で使う箱型の個室ブースを置く例があります。
床や壁に固定されず、人が入って使うこうしたブースは、消防の基準では「可動式ブース」と呼ばれます。
ブースを置くと、その中にも感知器やスプリンクラーヘッドが必要になる場合があります。
堺市消防局の審査基準には、可動式ブースだけを扱う独立した節があり、国の通知に堺市の注意書きが加わっています。
この記事では、国の通知と堺市の基準を分けて条件の借り方をたどり、大阪市や東大阪市とも比べます。
堺市の事務所に、1人用の個室ブースを入れる計画があります。
ブースの中にも感知器が必要ですか。
ブースの中も消防用設備等の対象になり得ますが、条件を満たせば設置しないことができます。
堺市は審査基準に専用の節を設けています。
国の決まりと堺市の決まりは、どう違うのですか。
中身の多くは国の通知と同じですが、堺市は点検や音の測り方に注意書きを足しています。
順番に見ていきましょう。
- 堺市の審査基準は「第13 可動式ブースに係る消防用設備等の取扱い」で、令和6年8月23日付け消防予第404号を基にしたと明記しています
- ブース内の感知器やスプリンクラーヘッドを省ける条件は、仮眠を伴わないものと仮眠を伴うものの2つに分かれ、どちらも床面積6平方メートル以下が前提です
- スピーカー、排煙口と散水ヘッド、特定共同住宅等の規定は、前の項目の条件を借りる書き方です
- 堺市は、点検結果を消防署長へ報告するよう指導することや、音圧65デシベルは現地で測ることなど、国の通知にない注意書きを加えています
- 大阪市はスプリンクラー、放送設備、特定共同住宅等の節に分けて書き、東大阪市の公開資料には可動式ブースの記載が見当たりません
▼

目次
堺市は可動式ブースを審査基準のどこで扱っているのか

冒頭の「適用」で、どの国の通知を基にしたかを書いています。
なお、当該取扱いは、消防用設備等の設置が義務付けられている防火対象物の一部に可動式ブースが設置される場合を想定しているものであり、 防火対象物の部分の過半を可動式ブースが占めるような活用をしている場合は想定していないこと。
堺市の基準は、この改正後の内容を基にしています。
また、フロアの過半をブースが占めるような使い方は、この取扱いの想定外です。
ブースの定義と、仮眠の有無による2つの区分は次のとおりです。
| 区分 | 次のどれにも当てはまらないもの(堺市 Ⅰ 2(7)(8)) |
|---|---|
| 仮眠を伴わない可動式ブース | 火気設備等の使用を行うもの、宿泊を目的とするもの、仮眠を伴うおそれがあるもの |
| 仮眠を伴う可動式ブース | 火気設備等の使用を行うもの、宿泊を目的とするもの、喫煙その他の火気の使用を行うもの |
つまり、宿泊用のブースや、火気設備等を使うブースは、どちらの区分にも入りません。
仮眠を伴うブースでも、喫煙などの火気を使わなければ、条件つきで対象になります。
休憩用に仮眠ができるブースでも、対象から外れるわけではないのですね。
はい、仮眠を伴うブースには別の条件が用意されています。
次はブースの中の感知器とヘッドの条件を見ます。
堺市でブース内の感知器やスプリンクラーヘッドを省ける条件は何か

まず、仮眠を伴わないブースの条件を表にまとめます。
| 項目 | 仮眠を伴わない可動式ブース(堺市 Ⅱ 1(1)) |
|---|---|
| ア 床面積 | 6平方メートル以下 |
| イ 消火の性能 | 次の(ア)か(イ)のどちらか |
| (ア) 自動消火装置で満たす | 天井と壁を不燃材料で仕上げ、住宅用下方放出型自動消火装置を設け、パッケージ型自動消火設備Ⅱ型の点検基準の例で点検する。消火が難しい易燃性の可燃物がある場合や、床から2.5メートルを超える高さに放出口を設ける場合などは使えない |
| (イ) 消火実験で満たす | 消火実験で確実に消火できることと、ブースから1メートル離れた場所で熱量3キロワット毎平方メートル未満、一酸化炭素1,000ppm以下を確かめ、大学などの第三者機関の検証結果がある。(ア)の不燃仕上げ・自動消火装置・点検を満たすブースは熱量と一酸化炭素の確認が不要 |
| ウ 目視 | ブースの外から中の火災を目視できる。ブースの内部と外部直近に連動型住宅用防災警報器を置き、互いに早く知らせる措置をとる場合は目視でなくてよい |
| 項目 | 仮眠を伴う可動式ブース(堺市 Ⅱ 1(2)) |
|---|---|
| ア | (1)のアとイを満たす(床面積と消火の性能) |
| イ | ブースの内部と外部直近に煙を感知する連動型住宅用防災警報器を設けて連動させる。仮眠中の人に知らせる性能が警報器の警報音と同等以上であること |
| ウ | ブースの内外の火災を、従業員などの常駐場所でも覚知できるようにする |
| エ | 出入口扉に施錠装置を設けない(非常の際に外から容易に開けられる場合を除く) |
| オ | ブース内の見やすい場所に、喫煙その他の火気の使用を禁止する表示を設ける |
堺市は、自動消火装置の点検に次の一文を足しています。
なお、点検した結果は、消防法第17 条の3の3の規定に準じて消防署長あて報告するよう指導すること。
堺市は、その点検結果を消防署長あてに報告するよう指導すると書いています。
また、堺市は「易燃性の可燃物」の意味も定義しています。
一方、表面が合成皮革でクッション材が主にポリウレタンのソファは、自動消火装置では消火が難しい例として挙がっています。
ブースに置く家具を決めるときは、素材と防炎表示を確かめるとよいでしょう。
自動消火装置の点検結果まで、消防署に出すのですね。
はい、堺市では報告するよう指導すると書かれています。
次はスピーカーなどの規定が条件を借りる流れです。
スピーカーや排煙口や共同住宅の規定はどの条件を借りているのか

2から4は、1の条件を番号で借りる書き方です。順にたどると次のようになります。
- 出発点は、Ⅱ1の(1)仮眠を伴わないブースと(2)仮眠を伴うブースの条件です
- Ⅱ2のスピーカーは、仮眠を伴わないブースなら1(1)のアとウだけを借ります。消火の性能のイは借りていません
- 仮眠を伴うブースなら、1(1)のアと、1(2)のイからオまでを借ります
- そのうえで、ブース内の音圧65デシベル以上か、警報音と光で知らせる機器かのどちらかを満たします
- Ⅱ3の排煙口と散水ヘッドは、1(1)か1(2)の条件を満たすブースをそのまま借ります
- Ⅱ4の特定共同住宅等は、感知器やヘッドは1を、音声警報装置は2を借ります
通知と堺市の基準が「8メートルを超える場所」のブースを取り上げているのは、このただし書で外せない範囲を扱うためと読めます。
堺市は、音圧の確かめ方にも注意書きを足しています。
なお、可動式ブース内における音圧が65db 以上とは、製品出荷前に工場等で実施した試験データではなく、当該可動式ブースを設置する現地で測定した結果であること(以下同じ。)。
警報音と光で知らせる機器を使う場合も、堺市は起動の仕方と音楽などの扱いを書き足しています。
また、当該可動式ブース内において暗騒音(BGM等の音響(ヘッドホン等から流れる音を含む。))を有する場合であっても、当該可動式ブース内の警報音以外の音の停止等を必ずしも必要とするものではないこと。
その前から第32条の特例を受けている共同住宅も、共用部分にブースを置いた場合は(3)と同じように扱えるとしています。
スピーカーの条件には、自動消火装置の条件が入っていないのですね。
はい、借りる番号が項目ごとに違います。
次は大阪市の書き方と比べます。
大阪市では可動式ブースの規定はどこに書かれているのか

規定は、設備ごとの特例基準の3か所に分かれています。
| 大阪市の運用基準の場所 | 設置しないことができるもの |
|---|---|
| 第1章 第3節 閉鎖型スプリンクラー 第14 特例基準 15 | スプリンクラーヘッド |
| 第2章 第6節 放送設備 第6 特例基準 1(3) | スピーカー |
| 第8章 第7節 特定共同住宅等 第8 特例基準 5・6 | 共用部分などのブース内の共同住宅用スプリンクラー設備のヘッド、共同住宅用自動火災報知設備の感知器、住戸用自動火災報知設備の感知器、連結散水設備の散水ヘッド、音声警報装置など |
スプリンクラーの特例15は、目視の条件に大阪市の書き足しがあります。
(ア) 可動式ブースの内部及び外部直近に煙を感知する連動型住宅用防災警報器(特定小規模施設用自動火災報知設備が設置されている防火対象物にあっては、当該設備の煙感知器を含む。)が有効に設置され、火災を感知した際に相互に連動させる等の方法により、可動式ブース内部で発生した火災及び可動式ブース外部直近で発生した火災をそれぞれ当該可動式ブース外部直近及び当該可動式ブース内部において早期に覚知できるよう措置されていること
(イ) 自動火災報知設備が設置されている防火対象物にあっては、可動式ブースの内部に当該設備の煙感知器が設置され、当該ブースの外部に火災を有効に報知することができること
仮眠を伴うブースの(3)にも、65デシベル以上の警報音で同等以上とみなす注や、感知器でブースごとに火災の場所を見分ける注があります。
特定共同住宅等の節は、このスプリンクラーの特例15を借りています。
- 出発点は、第1章 第3節 第14のスプリンクラーの特例15です
- 特定共同住宅等の5(2)は、その15に適合するブースなら、ブース内の共同住宅用スプリンクラーヘッド等を設置しないことができるとしています
- ただし、15のうち(1)カ(イ)と、(3)イを自動火災報知設備の煙感知器にした場合は除いて借ります
- つまり特定共同住宅等の共用部分のブースでは、自動火災報知設備の煙感知器で代える方法は使わず、15の残りの条件で判断します
大阪市は設備ごとの特例に分けて書いているのですね。
はい、そのため読む節を設備ごとに探す必要があります。
最後に3市を表で比べます。
堺市と大阪市と東大阪市で可動式ブースの扱いは何が違うのか

| 項目 | 堺市 | 大阪市 | 東大阪市 |
|---|---|---|---|
| 規定の置き場所 | 第2章 第1節 第13の独立した節 | スプリンクラー、放送設備、特定共同住宅等の特例基準に分散 | 公開6資料に記載なし |
| 一般の建物のブース内の感知器 | Ⅱ1で設置しないことができる | 自動火災報知設備の節に項目なし(特例15はスプリンクラーヘッドのみ) | 公開6資料に記載なし |
| スピーカーを外せるブースの場所 | スピーカーから8メートルを超える場所 | 特例1(3)の文面に8メートルの前置きなし | 公開6資料に記載なし |
| 65デシベルの確かめ方 | 設置する現地で測定した結果 | 注記なし | 公開6資料に記載なし |
| 自動消火装置の点検結果 | 消防署長あて報告するよう指導 | 記載なし | 公開6資料に記載なし |
| 自動火災報知設備の煙感知器による代替 | 記載なし | 目視の代わりなどに使えると明記(特定共同住宅等の共用部分では除く) | 公開6資料に記載なし |
| 排煙口と散水ヘッド | Ⅱ3で設置しないことができる | 一般の建物の節に項目なし(特定共同住宅等の散水ヘッドは5・6) | 公開6資料に記載なし |
その中に、可動式ブースを取り上げた記載は見当たりませんでした。
大阪市で記載が見当たらない設備や東大阪市のブースは、国の通知を基に管轄の消防署と協議することになると考えられます。
国の通知の全体像は可動式ブースの通知を全国向けに解説した記事、自動消火装置は住宅用下方放出型自動消火装置の記事で取り上げています。
同じ大阪府内でも、書いてある場所や注意書きが違うのですね。
はい、市ごとに基準の書き方が違います。
ブースを置く前に、所轄の消防署で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
ブースの床面積と家具の素材、点検の段取りを先に確かめます。
図面と製品資料も消防署に持っていきます!
先に整理しておけば、消防署との協議が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第2章 第1節 第13 可動式ブースに係る消防用設備等の取扱い Ⅰ 1・2、Ⅱ 1〜4、Ⅲ https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第1章 第3節 第14 特例基準 15、第2章 第6節 第6 特例基準 1(3)、第8章 第7節 第8 特例基準 5・6 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局 公開の運用基準(消火器具・自動火災報知設備・避難器具・誘導灯・連結送水管・非常コンセント) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防庁予防課長通知「可動式ブースに係る消防用設備等の取扱いについて(通知)」(令和5年3月30日付け消防予第211号)、「『可動式ブースに係る消防用設備等の取扱いについて(通知)』の一部改正について」(令和6年8月23日付け消防予第404号) https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/items/240823_yobou_404.pdf
- 消防法 第17条の3の3、消防法施行令 第5条第1項、第5条の2第1項、第32条、消防法施行規則 第25条の2第2項第3号
※本記事は公表されている法令および堺市・大阪市・東大阪市の公開資料、消防庁の通知に基づく一般的な解説です。運用基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々のブースや建物の扱いは、所轄の消防署にご確認ください。





