家電やコンセントなど、製品が原因かもしれない火災のあと、消防はその調査結果をどこへ伝えているのでしょうか。
平成23年6月23日、消防庁は消防技第19号で、製品火災に係る情報と火災調査結果の情報共有について通知しました。
通知は、消防庁から消費者庁、経済産業省、そしてNITEへつながる流れと、消防機関が守る対応を示しています。
この記事では、通知の対象と中身、見落としやすい点を、消防庁の通知と現行の条文をもとに解説します。
自分の建物で家電が火元の火災が起きたら、調べた結果はその後どうなるのでしょうか。
消防の中だけで終わるものなのでしょうか。
消防庁の通知が、他の機関へ共有する流れを示しています。
順に確かめましょう。
通知は、いつ出されたものですか。
平成23年6月23日付けの消防技第19号です。
根拠の条文は、現行のものと照らして確認しています。
- 消防庁は平成23年6月23日の消防技第19号で、製品火災に係る情報及び火災調査結果の一層の情報共有を通知しました。
- 平成23年2月から、消防庁は、製造者責任の有無を特定できないものも含めた全ての製品火災報告を、消費者庁へ通知する運用に改めました。
- 流れは、消防庁から消費者庁、経済産業省へ進み、NITEが行う技術上の調査に製品火災報告が活用されるとされています。
- 消防機関が製品火災と判断していない事案でも、製造者等が重大製品事故として報告していれば、NITEから消防機関へ照会が来ることがあります。
- 建物の関係者は、焼けた製品の名称・型式・購入先を答えられるようにしておくと、火災調査が進みやすくなります。
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目次
製品火災の情報はなぜ消防から他の機関へ広く共有されることになったのか

火災調査の結果を、製品の安全対策に生かす必要があるとして出されました。
消防法(昭和23年法律第186号)第31条の規定に基づき消防機関が実施する火災の原因等の調査(以下「火災調査」という。)については、その後の消防機関における予防・警戒体制の確立や適切な消火活動を遂行する上で不可欠な資料を提供するものであることから、消防機関の「責務」として規定されています。一方で、近年は製品安全対策の観点から、特に製品火災に係る情報及び火災調査結果に関しては、関係機関との情報共有等を通じた有効活用が求められており、「今後の火災予防行政の基本的な方向について(報告)」(平成22年12月予防行政のあり方に関する検討会)においては、「消費者行政や独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)など他機関との連携を強化」する必要があること等について、提言されているところです。
消防長又は消防署長は、消火活動をなすとともに火災の原因並びに火災及び消火のために受けた損害の調査に着手しなければならない。
通知は、消防法第31条の火災調査を、消防機関の「責務」と位置付けています。
そのうえで、平成22年12月の予防行政のあり方に関する検討会の報告が、消費者行政やNITEとの連携の強化を提言したと述べています。
平成23年2月の総務省の勧告でも、消防機関とNITEの連携と情報共有を一層進めるよう、消防庁と経済産業省に勧告されたと、通知の注記にあります。
消防庁が平成23年2月から運用を改めたのは、この流れの中でのことです。
消防の火災調査の結果が、製品の安全にも役立てられるのですね。
はい。
通知は、他の機関との情報共有の必要性を前提にしています。
どの火災の情報が消費者庁への通知の対象になるのか

従来の運用と、平成23年2月からの運用の違いが要点です。
「製品火災に係る報告について」(平成21年4月14日消防予第154号・消防技第16号・消防特第67号)により消防機関から消防庁へ報告されている製品火災の情報及び火災調査結果(以下「製品火災報告」という。)については、従来、消費者庁との協議に基づき、「製造者責任あり」とされている火災の確定報(最終報)を対象として、消防庁より消費者庁に対し消費者安全法(平成21年法律第50号)第12条第1項の規定に基づく通知を行っていたものである。(略)平成23年2月より、原則として上記確定報(最終報)のみならず、製造者責任の有無を特定できないものを含めた全ての製品火災報告について、消費者庁に対し通知を行うよう運用改善を図ったところである。
行政機関の長、都道府県知事、市町村長及び国民生活センターの長は、重大事故等が発生した旨の情報を得たときは、直ちに、内閣総理大臣に対し、内閣府令で定めるところにより、その旨及び当該重大事故等の概要その他内閣府令で定める事項を通知しなければならない。
従来は、消費者庁との協議に基づき、「製造者責任あり」とされた確定報だけを、消防庁が消費者庁へ通知していました。
平成23年2月からは、製造者責任の有無を特定できないものも含めて、全ての製品火災報告を通知する運用に改められました。
通知は、この報告の根拠として、平成21年4月14日付けの消防予第154号・消防技第16号・消防特第67号を示しています。
| 時期 | 消防庁から消費者庁への通知の対象 |
|---|---|
| 従来 | 「製造者責任あり」とされている火災の確定報(最終報) |
| 平成23年2月から | 原則として確定報(最終報)のみならず、製造者責任の有無を特定できないものを含めた全ての製品火災報告 |
責任の有無が特定できない火災も、通知の対象に入ったのですね。
はい。
通知は、全ての製品火災報告を対象にしたと述べています。
消防が集めた情報はどの順でNITEの調査につながるのか

消防庁から先は、三つの機関を順に通ります。
なお、消費者庁においては、消防庁より受領した製品火災報告について、消費者安全法第13条第2項の規定に基づき経済産業省へ提供を行うものとするよう、平成23年2月より運用改善がなされており、経済産業省においては、消費生活用製品安全法(昭和48年法律第31号)第36条第4項の規定に基づき独立行政法人製品評価技術基盤機構(以下「機構」という。)が行う技術上の調査に関して、消費者庁より受領した製品火災報告が活用されている(別添スキーム図参照。)。
内閣総理大臣は、前項の規定により取りまとめた結果を、関係行政機関、関係地方公共団体及び国民生活センターに提供するとともに、消費者委員会に報告するものとする。
主務大臣は、第一項の規定による公表につき、必要があると認めるときは、機構に、消費生活用製品の安全性に関する技術上の調査を行わせることができる。この場合において、主務大臣は、機構に対して、当該調査の実施に必要な範囲内において、当該調査に必要な情報を提供することができる。
消防機関が火災調査で得た製品火災報告は、まず消防庁が受け、消費者庁へ通知します。
消費者庁は、消費者安全法第13条第2項に基づき、これを経済産業省へ提供します。
経済産業省は、消費生活用製品安全法第36条第4項に基づきNITEが行う技術上の調査で、この報告を活用します。
消費者庁から経済産業省への提供も、平成23年2月からの運用改善によるものと、通知は述べています。
| 段階 | 担当 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| ① | 消防機関 | 火災調査を行い、製品火災報告を消防庁へ報告する | 消防法第31条 |
| ② | 消防庁 | 消費者庁へ通知する | 消費者安全法第12条第1項 |
| ③ | 消費者庁 | 経済産業省へ提供する | 消費者安全法第13条第2項 |
| ④ | 経済産業省 | NITEが行う技術上の調査に活用する | 消費生活用製品安全法第36条第4項 |
消防の報告が、NITEの調査にまで使われるのですね。
はい。
通知は、報告が技術上の調査に活用されていると述べています。
消防が製品火災と判断していない事案でも情報を求められることがあるのか

建物の関係者から見ると、見落としやすい点です。
製品火災報告に係る事案以外の事案(例えば、消防機関においては製品火災と判断していないものの、当該製品の製造者等において消費生活用製品安全法第2条第6項の規定に基づく重大製品事故と判断し、同法第35条第1項の規定に基づき消費者庁に報告されている事案)について、機構から消防機関に照会等があった場合には、当該消防機関は、地方公共団体の個人情報の保護に関する条例上の制約を踏まえつつ、火災調査に係る業務等への支障を生じない限りにおいて、情報の提供等について必要な対応(特段の事情により情報の提供等が困難である場合においては、その旨の回答を行うことも含む。)を行うこと。
消費生活用製品の製造又は輸入の事業を行う者は、その製造又は輸入に係る消費生活用製品について重大製品事故が生じたことを知つたときは、当該消費生活用製品の名称及び型式、事故の内容並びに当該消費生活用製品を製造し、又は輸入した数量及び販売した数量を内閣総理大臣に報告しなければならない。
例として、消防機関は製品火災と判断していなくても、製造者等が重大製品事故と判断して消費者庁へ報告した事案があります。
この場合、NITEから消防機関に照会があれば、消防機関は必要な対応を行うよう求められています。
ただし、個人情報の保護に関する条例上の制約を踏まえ、火災調査に支障を生じない限りで対応し、特段の事情で難しければ、その旨を回答します。
なお、通知は重大製品事故を消費生活用製品安全法第2条第6項と書いていますが、現行の法律では、製品事故が第6項、重大製品事故は第7項に定められています。
消防が製品火災と見ていなくても、製造者側から報告が出ることがあるのですね。
はい。
通知のスキーム図の注記は、消防機関の判断と製造事業者等の認識が一致しないケースがあり得ると述べています。
製品が原因かもしれない火災のあと建物の関係者は何を確認すればよいのか

そのうえで、通知の流れを踏まえて、次の5点を自分の建物に当てはめて確かめてみてください。
製品火災に係る消防庁への報告については、「製品火災に係る報告について(再周知)」(平成22年12月15日消防庁予防課消防技術政策室事務連絡)に示すとおり、引き続き実施すること。特に、第一報については、消防本部において把握した時点で、報告対象に該当する可能性のある事案についても幅広く迅速に実施すること。
消防長又は消防署長は、前条の規定により調査をするため必要があるときは、関係のある者に対して質問し、又は火災の原因である疑いがあると認められる製品を製造し若しくは輸入した者に対して必要な資料の提出を命じ若しくは報告を求めることができる。
通知が求めているのは消防機関の対応で、建物の関係者に何かを義務付けてはいません。
ですが、第一報は、可能性のある事案でも幅広く迅速に報告されます。
だから、火災調査で聞かれる製品の名称・型式・購入先を、すぐ答えられるようにしておくと、調査が進みやすくなります。
これは通知に書かれた義務ではなく、通知の流れを踏まえた実務上のおすすめとして読んでください。
- 火災調査で聞かれる製品の名称・型式・購入先を、使用中の機器の一覧などで確かめておく
- 火災が起きたら、焼けた製品を消防の調査が終わるまで片付けないよう、現場の関係者に周知しておく
- 消防機関の質問に答える窓口を、防火管理者が担うと決めておく
- 製造者側からも重大製品事故として報告される場合があると、関係者に伝えておく
- 消防用設備等の不具合は、別の通知で消防庁へ報告される仕組みがあると知っておく
製品の型式や購入先は、いざというとき答えられるようにしておきます。
そうですね。
焼けた製品は、調査が終わるまで片付けないよう周知してください。
よくある質問
まとめ
製品火災の情報の流れを踏まえて、備えを固めます!
火災調査への備えの相談も、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「製品火災に係る情報及び火災調査結果の一層の情報共有等について」(平成23年6月23日 消防技第19号 消防庁消防技術政策室長通知)
- 消防法(昭和23年法律第186号)第31条・第32条 e-Gov法令検索
- 消費者安全法(平成21年法律第50号)第12条・第13条 e-Gov法令検索
- 消費生活用製品安全法(昭和48年法律第31号)第2条・第35条・第36条 e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





