建築物に使う防火設備や非常用の照明装置などは、同じ仕様のものが、たくさんの建物に取り付けられます。
ところが、建物ごとに、その部品の一つ一つが基準に適合しているかを審査していては、手間がかかります。
そこで、部品の「型式」そのものが基準に適合しているかを、あらかじめ認定しておく仕組みがあります。
建築基準法第68条の10は、その型式適合認定を、国土交通大臣が申請により行うことができると定めています。
今回は建築基準法第68条の10が定める型式適合認定について、認定の対象と建築確認の審査での扱い、防火管理者が押さえておきたい点をあわせて解説します。
防火設備の型式が認定されていると、建物の確認は何か変わるのですか。
認定されたら、審査が要らなくなるのでしょうか。
確認そのものが要らなくなるわけではありません。
まず、型式適合認定の条文から見ていきましょう。
それは、建築基準法のどの条文に書かれているのですか。
確認の特例とは別の条文ですか。
建築基準法第68条の10に書かれています。
確認の特例は第6条の4で、この認定を受けた型式につなげます。
- 第68条の10は、国土交通大臣が、申請により、政令で定める建築材料や建築物の部分の型式が、政令で定める一連の規定に適合することを認定できると定めています。
- 認定されるのは建物そのものではなく、型式です。
- 認定型式に適合する建築材料を用いる建築物や、認定型式に適合する建築物の部分を有する建築物では、第6条の4により、確認の審査で見る規定から政令で定める規定が除かれます。
- 除かれる規定の範囲は、施行令第10条が、認定の内容ごとに定めています。
- 防火設備や非常用の照明装置も対象になりますが、消防法令の基準が緩むわけではありません。
▼
目次
型式適合認定はなぜ建物ではなく型式そのものの適合を国土交通大臣が申請により認定する仕組みなのか

まず、条文の第1項を確認しましょう。
認定を受けるのは、個々の建物ではなく、その建築材料や建築物の部分の型式です。
認定を行うのは国土交通大臣で、申請があったときに行うことができると書かれています。
適合を確かめる相手は、条文の言い方では「前三章の規定又はこれに基づく命令の規定」のうち、技術的基準に関する政令で定める一連の規定です。
その一連の規定には、第68条の25第1項の構造方法等の認定の内容も含まれると、かっこ書きで書かれています。
認定の名前は、条文で「型式適合認定」と定義されています。 続く第2項には、手続についての規定があります。
この記事では、省令の細かい手続には踏み込まず、条文と政令の内容を見ていきます。
型式を認定するのは、国土交通大臣なのですね。
どんなものが対象になりますか。
対象は政令で決まっています。
次の見出しで、政令の定めを見ていきます。
型式適合認定の対象はなぜ施行令第136条の2の11で建築物の部分と一連の規定に分けて定められているのか

その政令が、施行令第136条の2の11です。
まず、書き出しの部分を確認しましょう。
第1号は、門、塀、改良便槽などを除いた建築物の部分を、広く対象にしています。
第2号は、表に挙げた建築物の部分と、その部分に対応する一連の規定を定めています。
第2号の表に挙がっているのは、防火設備、換気設備、屎尿浄化槽、合併処理浄化槽、非常用の照明装置、給水タンク又は貯水タンク、冷却塔設備、エレベーターの部分で昇降路及び機械室以外のもの、エスカレーター、避雷設備の10種類です。
防火管理者にとって身近なのは、防火設備や非常用の照明装置でしょう。 第1号と第2号の書き出しを、条文で確認しておきます。
次のいずれかに掲げる規定
(建築基準法施行令第百三十六条の二の十一第二号)次の表の建築物の部分の欄の各項に掲げる建築物の部分
同表の一連の規定の欄の当該各項に掲げる規定(これらの規定中建築物の部分の構造に係る部分に限る。)
どちらの規定に適合するものとして認定を受けたかで、対応する規定の範囲が変わります。
その範囲の違いは、あとの見出しで確認します。
対象は、建築物の部分と一連の規定の組み合わせなのですね。
認定された型式を使うと、確認はどうなりますか。
確認の審査で見る規定が変わります。
次の見出しで、第6条の4を見ていきます。
認定型式に適合する部分を使う建築物はなぜ確認の審査で見る規定が変わるのか

それが、第6条の4第1項です。
まず、条文を確認しましょう。
(建築基準法第六条の四第一項第一号)第六十八条の十第一項の認定を受けた型式(次号において「認定型式」という。)に適合する建築材料を用いる建築物
(建築基準法第六条の四第一項第二号)認定型式に適合する建築物の部分を有する建築物
「認定型式」とは、第68条の10第1項の認定を受けた型式のことです。
第1号が認定型式に適合する建築材料を用いる建築物、第2号が認定型式に適合する建築物の部分を有する建築物です。
第3号は、建築士の設計に係る建築物を扱うものなので、この記事では取り上げません。
条文は、第6条第1項の「政令で定めるものをいう。以下同じ」を読み替えて、「建築基準法令の規定のうち政令で定める規定を除く」と加えています。 読み替えの対象になっている第6条第1項は、確認を受ける義務を定めた規定です。
その中の言葉を、次のように確認します。
確認そのものが要らなくなるとは、条文のどこにも書かれていません。
除かれるのは、政令で定める規定だけです。
第6条の4第2項は、その政令には、審査を要しないこととしても建築物の安全上、防火上及び衛生上支障がないと認められる規定を定めるものとすると書いています。
次の見出しで、その政令の中身を見ていきます。
審査で見る規定から、一部が除かれるのですね。
どの規定が除かれますか。
施行令第10条が定めています。
次の見出しで、除かれる規定の範囲を見ていきます。
確認の審査から除かれる規定はなぜ施行令第10条で認定の内容に応じた範囲に限られるのか

まず、柱書と第1号、第2号を確認しましょう。
(建築基準法施行令第十条第一号)法第六条の四第一項第二号に掲げる建築物のうち、その認定型式に適合する建築物の部分が第百三十六条の二の十一第一号に掲げるものであるもの
その認定型式が、同号イに掲げる全ての規定に適合するものであることの認定を受けたものである場合にあつては同号イに掲げる全ての規定、同号ロに掲げる全ての規定に適合するものであることの認定を受けたものである場合にあつては同号ロに掲げる全ての規定
(建築基準法施行令第十条第二号)法第六条の四第一項第二号に掲げる建築物のうち、その認定型式に適合する建築物の部分が第百三十六条の二の十一第二号の表の建築物の部分の欄の各項に掲げるものであるもの
同表の一連の規定の欄の当該各項に掲げる規定(これらの規定中建築物の部分の構造に係る部分が、当該認定型式に適合する建築物の部分に適用される場合に限る。)
第1号は、認定型式がイに掲げる全ての規定に適合するとの認定なら、イに掲げる全ての規定が対象です。
ロに掲げる全ての規定に適合するとの認定なら、ロに掲げる全ての規定が対象になります。
第2号の表に挙がった部分では、一連の規定のうち、建築物の部分の構造に係る部分に限って除かれます。
除かれる範囲は認定の内容に応じて決まるため、「型式適合認定を受けた」というだけでは、どの規定が審査から外れるかは分かりません。 たとえば、第2号の表の防火設備の項には、次の規定が一連の規定として挙がっています。
第百九条第一項、第百九条の二、第百十条の三、第百十二条第一項、第十二項ただし書、第十九項及び第二十一項、第百十四条第五項、第百三十六条の二第三号イ並びに第百三十七条の十第一号ロ(4)の規定
ただし、除かれるのはそれらの規定のうち構造に係る部分だけです。
取付けの場所や建物全体の規定まで除かれると、条文は定めていません。
除かれる範囲は、認定の内容で決まるのですね。
全体を、整理したいです。
一覧の表で、比べてみましょう。
あわせて防火管理者の確認事項も見ておきます。
型式適合認定の制度はなぜ建築の手続と消防の手続を分けて考える必要があるのか

分けて読むと、混乱しにくくなります。
| 項目 | 条文の書き方 | 押さえる点 |
|---|---|---|
| 認定を行う者 | 国土交通大臣が、申請により、型式適合認定を行うことができる(第68条の10第1項) | 認定されるのは型式です |
| 認定の対象 | 政令で定める建築材料や建築物の部分(施行令第136条の2の11) | 防火設備や非常用の照明装置などの10種類が表に挙がっています |
| 確認の特例 | 認定型式に適合する建築材料を用いる建築物や、認定型式に適合する建築物の部分を有する建築物(第6条の4第1項) | 審査で見る規定から政令で定める規定が除かれます |
| 除かれる規定 | 認定の内容に応じて、イやロの全ての規定、又は表の一連の規定の構造に係る部分(施行令第10条) | 除かれるのは構造に係る部分などに限られます |
| 手続 | 申請の手続などは国土交通省令で定める(第68条の10第2項) | 細かい手続は省令を見ます |
型式適合認定は、建築基準法の技術的基準に関する規定への適合を認める制度で、防火管理者の義務を直接決めるものではありません。
ただし、建物に付いている防火設備などが、どの認定を受けたものかを知っておくと、改修や交換の相談が進めやすくなります。
似た名前の制度に、第68条の11の型式部材等製造者の認証があります。
こちらは製造者を認証する制度で、認定とは別の制度です。 これらは建築基準法の確認の審査に関する話で、消防法令の基準を決めるものではありません。
判断に迷うときは、建築の窓口と消防署への相談も欠かせません。
明日から次の点を確認してください。
- 建物の防火設備や非常用の照明装置が、型式適合認定を受けた型式のものかを、設計図書や仕様書で確かめて控えておく。
- 防火設備などを取り替えるときは、認定を受けた型式のものかを施工業者に尋ねる。
- 確認の審査から除かれる規定の範囲は、設計者や確認を行った機関に照会しておく。
- 増築などで規模や用途が変わることで、消防用設備等の基準が変わる場合があるため、所轄消防署へ事前に相談する。
- 建築の話と消防の話は別の制度なので、両方の窓口へ確かめる。
建築の話と消防の話を混同しないように、それぞれの窓口へ確かめておきましょう。
設備の型式の認定を、まず確認します。
交換の話が出たら、業者や両方の窓口に相談します。
認定の状況が分かれば、あとの相談も早くなります。
相談は、建築の窓口と消防の両方の窓口にしておくと安心です。
よくある質問
まとめ
防火設備の認定の有無を、確認しておく必要があるんですね。
この記事の内容を管理者にも共有します!
設備の認定の状況が分かれば、改修や交換の相談も進めやすくなります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第六十八条の十・第六条の四・第六条、建築基準法施行令第十条・第百三十六条の二の十一(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。区域の計画と条例の制限の内容は地区計画と条例ごとに確認が必要な場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





