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新潟の製菓工場火災はなぜ防火管理講習の内容を変えたのか|乾燥機の酸化熱と内装材の見落としを解説

夜の製菓工場の外観写真

防火管理者や防災管理者になるための講習は、実は大きな火災のたびに内容が見直されています。
令和4年、新潟県の製菓工場で起きた火災をきっかけに、講習で教える内容が追加されました。
出火の原因は、ふだん目の届きにくい乾燥機の内部にたまった煎餅カスでした。
消防庁は令和5年、火気設備の維持管理と内装材の重要性を講習内容に加えるよう通知しました。

防火管理の講習って、内容はいつも同じだと思っていました。

実は大きな火災のあとに内容が見直されることがあるんですよ。

去年のニュースで見た工場火災、講習にも関係してるんですか。

はい。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 令和4年2月、新潟県村上市の製菓工場で発生した火災(死者6名)を受け、防火・防災管理講習のガイドラインが改正されました。
  • 出火原因は、乾燥機の内部にたまった煎餅カスが酸化熱で発火点に達したことでした。
  • 天井に吹き付けられていた発泡ポリウレタンが延焼を急拡大させた要因とされています。
  • 改正後は甲種防火管理新規講習・乙種防火管理講習などで、火気設備の維持管理と内装材の重要性を教えることになりました。
  • 既に選任されている防火管理者は新しい内容を自動的に学ぶわけではないため、自分の建物での確認が必要です。

防火防災管理講習に火気管理が追加される流れを示す図解

新潟の製菓工場火災はなぜ講習内容の見直しにつながったのか

製菓工場の乾燥機から煙が上がり消防車が駆けつける様子を示す図
令和4年2月、新潟県の製菓工場で大きな火災が起きました。
その出火原因が、講習の内容を見直す直接のきっかけになりました。
本火災は、製菓工場の1階北西側の煎餅の焼き工程3号機上段の乾燥機内に堆積した油分を含んだ煎餅カスが乾燥機及び乾燥機下に設置された焼釜から熱を受け、さらに、油分の酸化反応による酸化熱も加わったことで発火点に達し、出火原因となった可能性が高いこと。また、天井に吹き付けられた発泡ポリウレタンが延焼拡大要因となった可能性が高いこと。(防火・防災管理に関する講習のガイドラインの改正について 令和5年1月20日消防予第41号)
出火の火元は、ふだん誰も中をのぞかない場所でした。
煎餅を焼く工程の乾燥機内部に、油分を含んだ煎餅カスが堆積していたのです。
乾燥機や焼釜からの熱に加え、油分が酸化する際に生じる酸化熱が重なったことで発火点に達したとされています。
さらに天井の発泡ポリウレタンが燃え広がる要因となり、被害は死者6名・負傷者1名にまで拡大しました。
消防庁はこの火災を消防法第35条の3の2に基づき調査し、中間報告を踏まえて講習内容の改正に踏み切りました。

乾燥機の中って、そんなに危険なものがたまるんですね。

だから講習で教える中身そのものが見直されたんです。

どの講習のどんな内容が変わったのか

防火管理講習のテキストと火気管理の項目が追加される様子を示す図
変わったのは、講習そのものの回数ではありません。
講習の中で説明する項目が追加されました。
別添2「防火・防災管理に関する講習のガイドライン」の「第3章 講習の内容」の「第1節 甲種防火管理新規講習」、「第2節 乙種防火管理講習」及び「第8節 甲種防火管理新規講習及び防災管理新規講習の併催」の「2 火気管理」の項目に、次の内容を講習時に受講者へ説明することとして追加したこと。(同通知)
対象になったのは、甲種防火管理新規講習乙種防火管理講習・防災管理新規講習との併催講習の3つです。
これらの講習の「火気管理」という項目に、新しい説明内容が追加される形での改正でした。
これから防火管理者になる人が受ける講習が対象で、既に選任されている防火管理者が受け直す再講習は今回の対象に含まれていません。
つまり、今の防火管理者がこの改正内容を自動的に学ぶ機会は、用意されていないということです。

もう防火管理者になっている人には、関係ない話なんですか。

いいえ、中身を知っておくべきなのはむしろ今の防火管理者です。

ガイドラインは具体的に何を求めているのか

火気設備と壁の不燃材料を示すチェックリストの図
追加された内容は、4つの項目にまとめられています。
最初の2つは、危険性そのものへの理解を求めるものです。
⑴ 火気設備等を使用する場合の出火及び延焼拡大の危険性に関すること。 ⑵ 火気使用室の内装を準不燃材料、不燃材料等とする重要性に関すること。(同通知)
まず求めているのは、火を使う設備そのものへの理解です。
火気設備等が出火や延焼拡大の原因になり得ることを、受講者にはっきり説明するよう求めています。
あわせて、火を使う部屋の内装を準不燃材料や不燃材料にしておく重要性も、講習内容に加わりました。
今回の火災で燃え広がった発泡ポリウレタンのような可燃性の内装材が、まさにこの項目が想定するリスクです。

うちの厨房の壁って、そこまで気にしたことなかったです。

火を使う部屋の内装は、意外と見落とされがちなんですよ。

実務で見落としやすいのはどこか

乾燥機内部にカスがたまり気づかれずに放置されている断面の図
今回の火災では、3つの問題点が挙げられています。
どれも、日々の点検の延長で見過ごされやすいものでした。
⑴ 乾燥機の内部に煎餅カスが堆積していたことから、清掃頻度が適切ではなかった可能性があること。⑵ 堆積していた煎餅カスは酸化熱が発生する危険性が高かったが、火気取扱いの基本的知識が不足していたことにより、出火防止対策が不十分であった可能性があること。⑶ 火気設備を使用する室の内装材に発泡ポリウレタンを使用したことが急激な延焼拡大要因となった可能性があること。(同通知)
一番の見落としは、機器の内部という死角です。
乾燥機や焼き窯のような火気設備は、外側の清掃はしても内部までは手が回りにくいものです。
油分を含んだカスが酸化熱で自然に発火点へ近づくというリスクは、知識がなければ想像しにくい危険です。
さらに内装材が可燃性かどうかは、建てたときの図面まで確認しないと分からないことが多く、後回しにされがちです。

外側だけ拭いていて安心していました。

まさに内部の清掃頻度が今回の焦点でした。

明日から何を確認すればよいか

清掃記録簿と消防計画を確認するチェックリストの図
ガイドラインの残り2項目は、そのまま日々の確認の手順に読み替えられます。
自分の建物に置き換えて確認してみましょう。
⑶ 防火壁、内装その他の防火上の構造の維持管理に関すること。⑷ 火気設備等を使用する場合の消防法令、各市町村条例等に定める防火措置、必要な点検、清掃、整備及び監視体制その他火災予防上必要な事項に関すること。(同通知)
まず確認したいのは、自分の建物にある乾燥機・焼き窯・厨房設備の内部が定期的に清掃されているかです。
清掃の頻度や実施状況が記録に残っているか、あわせて見直しておきましょう。
火を使う部屋の壁や天井の内装材が可燃性でないか、図面や現物で確かめておくことも欠かせません。
必要であれば、消防計画に清掃頻度や点検体制を具体的に書き加えておくと、担当者が交代しても管理が途切れません。
判断に迷ったときは、専門家に一度現場を見てもらうのが近道です。

今日帰ったら、うちの厨房の乾燥機の中も確認してみます。

はい。
その一度の確認が大きな違いになります。

よくある質問

Q今の防火管理者も再講習でこの内容を学べますか?
A今回の改正は甲種防火管理新規講習・乙種防火管理講習・併催講習が対象で、既存の防火管理者が受ける再講習は対象に含まれていません。
Q火災の原因はどこで確定したのですか?
A消防法第35条の3の2に基づく消防庁長官の火災原因調査の中間報告で、乾燥機内の煎餅カスの酸化熱による発火の可能性が示されました。
Q飲食店や食品工場以外の建物にも関係ありますか?
Aはい。火気設備等を使う部屋の内装や維持管理という考え方は、厨房やボイラー室のある建物であれば業種を問わず参考になります。
Qこの通知は講習のオンライン化とも関係していますか?
Aはい。修了証の発行・交付方法など、講習のオンライン化に関する内容もあわせて改正されています。

まとめ

令和4年2月の新潟県村上市の製菓工場火災(死者6名)を受け、防火・防災管理講習のガイドラインが改正されました。
出火原因は乾燥機内部の煎餅カスの酸化熱、延焼拡大要因は天井の発泡ポリウレタンでした。
対象は甲種防火管理新規講習・乙種防火管理講習・併催講習で、再講習は今回の対象に含まれていません。
追加内容は火気設備の危険性・内装材の重要性・構造の維持管理・点検清掃体制の4項目です。
見落としやすいのは機器内部の清掃頻度と、内装材が可燃性かどうかの確認です。
消防計画に清掃頻度や点検体制を書き加えておくと管理が途切れません。
判断に迷うときは、専門家に現場を確認してもらうのが近道です。

機器の内部まで、今度こそ忘れずに確認します!

判断に迷ったときは、㈱防災屋でもご相談を承っております

防火管理はプロにお任せ下さい

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「防火・防災管理に関する講習のガイドラインの改正について」(令和5年1月20日消防予第41号消防庁予防課長)
  • 「新潟県村上市で発生した工場火災に係る消防庁長官の火災原因調査(中間報告)」(令和4年12月16日総務省消防庁)
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第35条の3の2
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第2条の3

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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