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危険物取扱者試験委員はなぜ都道府県の任意設置になったのか|昭和58年の必置規制廃止と条例準則を解説

危険物取扱者試験委員はなぜ都道府県の任意設置になったのかを示すアイキャッチ画像

危険物取扱者試験の問題を作るのは、実は都道府県ではなく「試験委員」という別の仕組みでした。
ところが昭和58年を境に、この試験委員を置くかどうかは都道府県の判断に委ねられることになりました。
きっかけは消防法だけの話ではなく、多くの法律を一度に見直した行政事務の簡素化でした。
今回は「危険物取扱者試験委員の必置規制の廃止について」という通達をもとに、必置から任意設置に変わった経緯と、今も試験が続けられている理由を解説します。

試験委員なんて言葉、聞いたことがなかったです。
危険物取扱者試験に関係あるんですか。

はい、都道府県が試験の問題作成や採点を任せるために置く試験委員のことです。

今もどの都道府県にもいる人たちなんでしょうか。

実は昭和58年から、置くかどうかは都道府県ごとの判断に変わっているんです。

この記事の結論
  • 危険物取扱者試験委員は昭和58年1月23日から必置ではなくなった
  • 設置するかどうか、組織や任期は都道府県の条例に委ねられている
  • 根拠条文は消防法第13条の4第1項及び第2項
  • 試験委員を置かなくても第13条の5の指定試験機関に事務を行わせる道がある
  • 免状の交付権限は試験委員の有無にかかわらず都道府県知事のまま

危険物取扱者試験委員が行政簡素化の一括改正で必置から任意設置に変わり指定試験機関という別の道があることを示した図解

危険物取扱者試験委員はなぜ必置ではなくなったのか

束ねられた法令集の帯が緩み複数の法律の必置規定が一度に見直されたことを示すイラスト
かつて都道府県は、危険物取扱者試験を行うための試験委員を必ず置かなければなりませんでした。
その仕組みが変わったのは、消防法だけを狙った改正ではありませんでした。
危険物取扱者試験委員の必置規制の廃止について(昭和57年7月30日消防危第80号 消防庁長官) 昭和57年7月23日法律第69号をもつて公布された行政事務の簡素合理化に伴う関係法律の整理及び適用対象の消滅等による法律の廃止に関する法律第36条によつて消防法の一部改正が行われ、昭和58年1月23日から施行されることとなつた。今回の消防法の一部改正は、危険物取扱者試験委員の必置規制を廃止し、都道府県の条例により危険物取扱者試験委員を設置することができることとされたものである。
この規制廃止は消防法だけでなく複数の法律を一度に見直した一括整理法の一部でした。
昭和57年に公布された行政事務の簡素合理化に伴う関係法律の整理及び適用対象の消滅等による法律の廃止に関する法律という長い名前の法律が、各省庁の法律にまたがる「必ず置かなければならない」という規定を一斉に見直しました。
消防法第13条の4もその対象になり、危険物取扱者試験委員の設置は義務から任意に変わりました。
施行日は昭和58年1月23日です。
次の章で、条文がどう書き換わったのかを具体的に見ていきましょう。

この行政事務の簡素合理化というのは、消防法以外にも影響があったんですか。

はい、他省庁が所管する法律にも同じような必置規定の見直しが一斉に行われたんですよ。

危険物取扱者試験委員を置くかどうかは誰がどう決めるのか

鎖の外れた庁舎の門に条例の書類が置かれ設置が任意になったことを示すイラスト
必置規制が廃止されたあと、条文はどう書き換わったのでしょうか。
実際の条文を見てみましょう。
消防法第13条の4 都道府県は、危険物取扱者試験の問題の作成、採点その他の事務を行わせるため、条例で、危険物取扱者試験委員を置くことができる。2 前項の危険物取扱者試験委員の組織、任期その他危険物取扱者試験委員に関し必要な事項は、当該都道府県の条例で定める
「置かなければならない」が「置くことができる」に変わったのがこの改正の核心です。
以前の条文は都道府県に試験委員の設置を義務づけていましたが、改正後は置くかどうかも都道府県の裁量になりました。
組織や任期といった中身も、国が細かく決めるのではなく都道府県の条例にゆだねられています。
つまり同じ危険物取扱者試験でも、都道府県によって試験委員の有無や仕組みが違ってよいということです。
では条例には具体的に何を書くよう求められたのか、次の章で見ていきます。

うちの都道府県が試験委員を置いているかどうかなんて、考えたこともなかったです。

置いていなくても危険物取扱者試験自体は変わらず実施されているので、まずはご安心ください。

条例には何を書くよう求められたのか

円卓を囲む委員の椅子と赤い印を押す公文書と砂時計を描いたイラスト
条例で試験委員を置くと決めた都道府県は、何もかも自由に決めてよいわけではありません。
通達には条例のひな形まで示されています。
危険物取扱者試験委員の必置規制の廃止について(昭和57年7月30日消防危第80号 消防庁長官) 別添条例準則 (設置)第1条 消防法第13条の4第1項の規定に基づき、危険物取扱者試験の実施に関する事務を行わせるため、危険物取扱者試験委員(以下「試験委員」という。)を置く。(組織)第2条 試験委員の数は、○人以内とする。2 試験委員は、県及び関係行政機関の職員並びに危険物の取扱に関し学識経験のある者のうちから、知事が任命する。(任期)第3条 試験委員の任期は○年とする。ただし、補欠の試験委員の任期は、前任者の残任期間とする。
ひな形は設置・組織・任期・規則への委任という4つの条で構成されています。
第1条は消防法第13条の4第1項を根拠に試験委員を置くことを定め、第2条は県や関係行政機関の職員、学識経験者から知事が任命すると定めます。
第3条は任期を、第4条はそれ以外の細目を規則に委ねると定めており、人数や年数そのものは各都道府県が自分で埋める空欄になっています。
つまり全国一律の人数や任期があるわけではなく、都道府県ごとに条例を見ないと分からない仕組みです。
このひな形どおりに条例を作るかどうかも、各都道府県の判断に委ねられています。

人数も任期も都道府県ごとに違うということですね。

そのとおりです。
気になる場合はお住まいの都道府県の条例を確認してみてください。

試験委員を置かない都道府県でも試験は止まらないのか

庁舎から書類の帯が試験機関の建物へ渡っていく様子を描いたイラスト
試験委員が任意設置になったと聞くと、置かない都道府県では試験が止まってしまうように思えます。
ですが実際にはそうなっていません。
消防法第13条の5 都道府県知事は、総務大臣の指定する者に、危険物取扱者試験の実施に関する事務(以下この章において「危険物取扱者試験事務」という。)を行わせることができる。
試験委員とは別に、試験事務そのものを外部に任せる仕組みが用意されています。
消防法第13条の5は、都道府県知事が総務大臣の指定する指定試験機関に試験の実施事務を行わせることを認めています。
現在、危険物取扱者試験の実施事務は、この仕組みにより一般財団法人消防試験研究センターが全国で担っています。
つまり試験委員を条例で置いていない都道府県でも、指定試験機関という別の道で試験は続けられているのです。
ここを混同すると、「試験委員がいない=その都道府県では受験できない」という誤解につながるので注意が必要です。

試験委員がいなくても、試験自体はちゃんと受けられるんですね。

はい、実施の担い手が変わるだけで、試験そのものが止まることはありません。

明日からなにを確認すればよいのか

作業員が案内板のチェックリストを確認しているイラスト
ここまでの仕組みを踏まえて、実務で確認しておきたい点を整理します。
受験する側と、条例を運用する側、それぞれの視点で見ていきましょう。
消防法第13条の2第3項 危険物取扱者免状は、危険物取扱者試験に合格した者に対し、都道府県知事が交付する
試験の実施体制がどう変わっても、免状を交付する主体は変わりません。
受験者として確認すべきは試験案内や申込窓口であり、これは指定試験機関である一般財団法人消防試験研究センターの案内に従えば足ります。
一方、都道府県の条例を扱う立場であれば、自分の都道府県が試験委員条例を持っているか、持っている場合は人数や任期をどう定めているかを確認しておくとよいでしょう。
どちらの立場でも、免状の交付・書換え・再交付は試験委員の有無にかかわらず都道府県知事の権限であることは変わりません。
制度の枠組みが複雑に見えても、実際に動く窓口は一本化されていると考えれば整理しやすくなります。

結局、受験者としては窓口さえ間違えなければいいということですね。

そのとおりです。
制度の内側がどう分かれていても、受験の実務はシンプルなままです。

よくある質問

Q危険物取扱者試験委員を置いていない都道府県では試験を受けられないのですか?
Aいいえ、受けられます。試験委員の有無にかかわらず、実際の試験実施は消防法第13条の5に基づく指定試験機関(一般財団法人消防試験研究センター)が全国で行っています。
Q試験委員は誰が任命するのですか?
A通達に示された条例準則によれば、県及び関係行政機関の職員並びに危険物の取扱に関し学識経験のある者のうちから、知事が任命するとされています。
Qこの規制廃止はなぜ行われたのですか?
A昭和57年法律第69号という行政事務の簡素合理化を目的とした一括整理法の一部として、消防法第13条の4が改正されたためです。
Q免状の交付権限も試験委員に移るのですか?
Aいいえ。試験委員が担うのは問題の作成・採点などの試験事務に限られ、免状の交付は消防法第13条の2第3項により引き続き都道府県知事の権限です。

まとめ

危険物取扱者試験委員は昭和58年1月23日から必置ではなくなった
根拠となる改正法は昭和57年法律第69号(行政事務の簡素合理化に伴う関係法律の整理及び適用対象の消滅等による法律の廃止に関する法律)
消防法第13条の4は「置かなければならない」から「置くことができる」に変わった
試験委員の組織・任期は都道府県の条例で定める
試験委員を置かない都道府県でも指定試験機関が試験事務を担う
指定試験機関は消防法第13条の5に基づき一般財団法人消防試験研究センターが担う
免状の交付は消防法第13条の2第3項により都道府県知事の権限のまま

うちの都道府県が試験委員条例を持っているか、今度調べてみます!

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物取扱者試験委員の必置規制の廃止について(昭和57年7月30日 消防危第80号 消防庁長官)
  • 行政事務の簡素合理化に伴う関係法律の整理及び適用対象の消滅等による法律の廃止に関する法律(昭和57年法律第69号)第36条
  • 消防法第13条の2第3項・第13条の4・第13条の5

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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