セルフ式の給油取扱所では、顧客自身がノズルを操作してガソリンを入れます。
平成27年、静岡県浜松市のセルフスタンドでは、給油ホースの亀裂からガソリンが噴出する事故が続けて起きました。
従業者はホースにひびがあることを点検で把握していたにもかかわらず、交換や給油の制限をせず営業を続けていました。
この記事では、危険物の規制に関する規則が従業者に求める監視・制御の義務と、事故が起きたときに講ずべき応急措置を解説します。
うちのセルフスタンドでも、給油ホースにひびを見つけたらどう対応すればいいのか心配になります。
実際に浜松で、ホースのひびを放置したまま事故が起きています。
順番に見ていきましょう。
セルフ式だと、見ているのは機械だけなんでしょうか。
いいえ、従業者による監視と制御が義務づけられています。
今日はその仕組みを整理しますね。
- 平成27年、浜松市のセルフスタンドで給油ホースの亀裂からガソリンが噴出する事故が続けて発生しました
- 従業者はホースのひびを把握していたのに交換や給油の制限をせず営業を続けていました
- 危険物の規制に関する規則第40条の3の10は、従業者による監視・制御・指示を義務づけています
- 事故が発生した場合は、消防法第16条の3にもとづく応急措置と消防機関への通報がどちらも必要です
- 給油ホースは著しい引張力が加わったときに安全に分離する構造が基準になっていますが、亀裂への対応は別の話です
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目次
セルフ給油所の事故はなぜ2回続けて起きたのか

その安全を支えているのが、従業者の監視と設備の構造基準です。
身体にガソリンが付着し、引火すれば顧客の生命にかかわる被害につながるおそれがありました。
通知は、点検でひびを把握していたのに営業を続けた判断そのものを問題視しています。
セルフスタンドは、危険物に詳しくない一般の顧客が自分で給油する分だけ、設備側の安全に頼る比重が大きい施設です。
まずこの事故の構図を押さえたうえで、セルフ式がどんな基準で成り立っているのかを見ていきます。
ひびを知っていたのに、なぜ営業を続けてしまったのでしょうか。
通知もその判断を誠に遺憾だと述べています。
次は対象になる設備を見ていきましょう。
どの給油取扱所のどの設備が対象になるのか

危険物の規制に関する規則が、構造そのものを具体的に決めています。
給油ホースには、強く引っ張られて外れても安全に分離する構造が基準として定められています。
これは、顧客が車を発進させてホースを引きちぎってしまうような場面を想定した基準です。
一方で、浜松の事故は引っ張られて外れたのではなく、ホース自体に亀裂という劣化が生じたことが原因でした。
破断時の構造があるからといって、亀裂への対応まで免除されるわけではありません。
ホースが外れても安全な構造になっているなら、亀裂くらいは気にしなくていいのでしょうか。
破断時の構造と亀裂の放置はまったく別の問題です。
次は従業者に求められる義務を見ていきます。
通知は従業者に何を求めているのか

その役割を担うのが従業者です。
顧客の給油作業を直視等で監視し、必要なときは制御装置でホースへの危険物の供給を止めます。
非常時には、全ての固定給油設備を一斉に止める権限と手段まで求められています。
これは条件付自動制御装置を使う場合でも、安全上支障があるときには人が引き継ぐ前提になっています。
つまりセルフ式であっても、安全の最終判断は従業者に残されています。
監視するだけでなく、全部を止める操作まで求められているんですね。
はい、一斉に止める手段まで備えておく必要があります。
次は実際の事故で見落とされていた点を確認します。
実務で見落としやすいのはどこか

浜松の事故は、まさにその典型例です。
通知は、ホースの交換や給油の制限といった事前の対応だけでなく、事故発生後の応急措置と通報も怠っていたと述べています。
消防法第16条の3は、事故が起きたときの応急措置と通報をどちらも義務として定めています。
応急措置だけ行って通報を忘れる、あるいは通報だけして拡散防止を後回しにする、という片方だけでは義務を果たせません。
日頃の点検でひびを見つけた時点で手を打っていれば、そもそも事故発生後の対応自体が要らなかったことになります。
通報が遅れただけでも、法律違反になってしまうんでしょうか。
応急措置と通報はどちらも義務で、どちらかだけでは足りません。
最後に明日からの確認事項をまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

日々の点検の積み重ねで防げます。
ひびのあるホースを使い続けたまま営業する判断は、今回の通知が最も問題視した点です。
交換や給油の制限といった対応を先に済ませ、応急措置と通報の手順も従業者どうしで確認しておきます。
制御装置で一斉に危険物の供給を止める操作も、いざというときに迷わずできるよう普段から把握しておいてください。
顧客の安全は、設備の基準だけでなく、従業者の日々の点検と判断で支えられています。
ひびを見つけたら、まず給油を止めることから始めればいいんですね。
それが最初の一歩です。
そのあとで交換と通報の手順を確認してください。
よくある質問
まとめ
ひびを見つけたときの対応がよく分かりました。
来週にでも点検表を見直します!
点検表の見直しはいつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所における事故防止対策の徹底について(平成27年10月13日 消防危第245号、消防庁危険物保安室長)
- 消防法(昭和23年法律第186号)第16条の3(危険物の流出等の事故時の措置)
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第28条の2の4(顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所)・第28条の2の5(顧客に自ら給油等をさせる屋外給油取扱所の特例)・第40条の3の10(顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所における取扱いの基準)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





