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防火管理者の講習になぜ上乗せがあるのか|高層建築物や地下街に求められる高度専門講習と管理権原者の責務を解説

防火管理者の講習になぜ上乗せがあるのか|高度専門講習と管理権原者の責務

防火管理者の講習には、甲種・乙種という基本の区分のほかに「上乗せ」の講習があることをご存じでしょうか。
昭和62年、消防庁は防火管理制度の運用基準をまとめて通知し、高層建築物や地下街向けの高度専門講習を位置づけました。
あわせて、防火管理者を選任した管理権原者がどこまで責任を負うのかも明確にしています。
この記事では、上乗せ講習の中身と、管理権原者に求められる役割をあわせて解説します。

うちのビル、防火管理者は選びました。
もうそれで安心していいんですよね。

いいえ、管理権原者自身にも果たすべき責務が残っていますよ。

うちは高層のオフィスビルなんですが、講習は普通のもので足りますか。

建物によっては高度専門講習という上乗せの講習も用意されているんです。

この記事の結論
  • 消防庁は昭和62年、消防法施行令・施行規則の改正にあわせて「防火管理に関する消防法令の運用について」(昭和62年1月24日 消防予第13号)を発出し、防火管理制度の運用基準を全国で統一しました。
  • 甲種防火管理講習はおおむね12時間、乙種防火管理講習はおおむね6時間を基準に、それぞれ年1回以上実施することとされています。
  • 高層建築物(共同住宅を除く)・地下街・防災センターを設けている防火対象物では、消防機関の判断で高度専門講習という上乗せの講習を実施できます。
  • 防火管理者を選任しても、管理権原者は防火管理の最終的な責務を免れません。
  • 消防計画の作成・変更にあたっては、防火管理者の求めに応じて管理権原者が必要な指示を与えるべきことが明確にされました。

消防予第13号による運用統一・高度専門講習の対象3類型・甲種12時間乙種6時間・管理権原者の指示義務の4つのポイントを示した図解

防火管理の運用基準はなぜ通知でそろえられたのか

消防庁の職員が都道府県知事役の人物へ通知文書を手渡しているイラスト
昭和61年末から62年にかけて、防火管理制度に関わる政令と省令が立て続けに改正されました。
バラバラに運用されては困るため、消防庁は基準をそろえる通知を出しました。
防火管理に関する消防法令の運用について(通知)(昭和62年1月24日 消防予第13号 消防庁予防救急課長) 消防法施行令の一部を改正する政令(昭和61年政令第369号)が昭和61年12月9日に、消防法施行規則の一部を改正する省令(昭和62年自治省令第1号)及び防火管理に関する講習の実施細目に関する件(昭和62年消防庁告示第1号)が昭和62年1月23日にそれぞれ公布され、防火管理制度に関し所要の改正が行われたことについては、昭和62年1月24日付消防予第12号により既に通知したところであるが、今般、これらの制度改正に関する運用基準を下記のとおり定めたので、貴職におかれては、その適正かつ円滑な運用により防火安全の確保に努められるとともに、貴管下市町村にもこの旨示達され、よろしく御指導願いたい。
この通知は、政令・省令・告示という3つの改正を現場で一貫して運用するために出されました。
昭和61年12月に施行令が、昭和62年1月に施行規則と講習の実施細目に関する告示が、それぞれ改正されました。
制度の骨格は前年のうちに別の通知(消防予第12号)で伝えられていましたが、今回はその運用基準を細かく定めた続編にあたります。
つまりこの通知を読むと、防火管理講習の区分から管理権原者の責務まで、当時の制度改正の全体像がひとつながりで分かります。

通知って、法律や政令とは別物なんですか。

はい、現場での運用の仕方を消防庁がそろえるためのものなんです。

高度専門講習の対象になるのはどんな建物か

高層ビルと地下街の入口と防災センターの制御盤を並べたイラスト
甲種・乙種の基本講習に加えて、対象が絞られた「上乗せ」の講習があります。
まずはその対象になる建物を確認します。
3 高度専門講習の実施について 防火対象物の大規模化、複雑化等の傾向に伴い、防火管理者及び統括防火管理者に要求される防火管理上必要な知識及び技能がますます高度なものとなりつつあることにかんがみ、各消防機関においても、その実情に応じ、次に掲げる防火対象物における防火管理者及び統括防火管理者を中心として、積極的に、更に高度な知識及び技能の修得を目的とする高度専門講習を実施することとされたいこと。 (ア) 高層建築物(共同住宅を除く。) (イ) 地下街 (ウ) 防災センターを設けている防火対象物
高度専門講習の対象は、高層建築物(共同住宅を除く)・地下街・防災センターを設けている防火対象物の3つです。
高層建築物とは、消防法第8条の2が定める高さ31メートルを超える建築物のことです。
共同住宅が対象から外れているのは、住居用途は事務所や商業施設ほど不特定多数の出入りが多くないためと考えられます。
基本の甲種・乙種の区分(延べ面積300平方メートル以上かどうかなど)とは別に、この3類型だけがさらに手厚い講習の対象になります。

うちは高さ40メートルのオフィスビルなんですが、対象になりますか。

はい、共同住宅でなければ高さ31メートル超の建物は対象に入りますよ。

高度専門講習はなにを求めているのか

講師が防火管理者たちに講習会場で教えているイラスト
高度専門講習は、基本講習の代わりではなく上乗せの講習です。
位置づけと、基本講習の時間の目安をあわせて確認します。
1 甲種防火管理講習及び乙種防火管理講習の実施について (2) 講習時間は、甲種防火管理講習にあつてはおおむね12時間、乙種防火管理講習にあつてはおおむね6時間とされ、この講習時間内における講習事項ごとの時間数の基準は告示で定めることとしたが、具体の講習科目及び時間数については、この基準を参考として編成することとされたいこと。
高度専門講習は法律で義務づけられた講習ではなく、各消防機関が地域の実情に応じて任意に実施するものです。
基本となる甲種防火管理講習はおおむね12時間、乙種防火管理講習はおおむね6時間が目安とされています。
高度専門講習はこれらを修了した防火管理者・統括防火管理者を対象に、さらに高度な知識・技能の習得を目的として上乗せで行われます。
つまり基本講習を受ければ資格の要件は満たしますが、高度専門講習はそこからもう一段深く学ぶための機会という位置づけです。

高度専門講習を受けないと、防火管理者になれないんですか。

いいえ、資格そのものには影響しません。
あくまで上乗せの学びです。

管理権原者はどこまで責任を負うのか

ビルのオーナーが防火管理者に消防計画の書類を示しながら指示しているイラスト
防火管理者を選んだら、それで管理権原者の役目は終わりでしょうか。
通知は、選任のあとに残る責務もはっきりさせています。
第5 管理権原者の責務に関する事項 防火対象物の防火管理について、当該防火対象物の管理権原者が最終的な責務を有しているものであることは、消防法令の解釈及び過去の火災事例における裁判例からも明らかであるが、ともすれば、管理権原者は防火管理者を選任することにより、免責意識をもちやすく、防火管理の徹底が不十分となる事例も見られるため、次に掲げる事項に留意することにより、実効ある防火管理が実施されるよう努めるものとすること。 (1) 今回、消防計画の作成及び変更にあたつて、防火管理者の求めに応じ、管理権原者が必要な指示を与えるべきことを明確にしたところであるが、その他防火管理上必要な業務の実施にあたつても、同様な要請があるものであること。
防火管理者を選んでも、管理権原者は防火管理の最終的な責務から外れません。
通知は「選任すれば免責される」という思い込みに注意を促し、消防計画の作成・変更のときは管理権原者が必要な指示を与えるべきだと明確にしました。
消防計画づくりを防火管理者だけに任せきりにすると、建物の実態と合わない計画になりかねません。
つまり管理権原者には、選任のあとも防火管理者の求めに応じて関わり続ける役目が残っています。

防火管理者に任せておけば、オーナーは何もしなくていいと思ってました。

いいえ、消防計画の作成や変更では、オーナー側の指示も必要なんです。

明日からなにを確認すればよいのか

建物管理者が電話で消防署に問い合わせながらチェックリストを確認しているイラスト
最後に、実際に何をすればよいのかを整理します。
建物のタイプと、管理権原者としての関わり方の両方を確認してください。
第6 その他の事項 (1) この通知は、昭和62年4月1日から適用されるものであること。
まず自分の建物が高層建築物(共同住宅を除く)・地下街・防災センターを設けている防火対象物のどれかに当てはまるか確認しましょう。
当てはまる場合は、所轄の消防署に高度専門講習の実施予定があるかを問い合わせてみてください。実施は消防機関の判断によるため、地域によって有無が異なります。
あわせて、消防計画を作成・変更するときは、防火管理者からの相談に管理権原者としてきちんと指示を返せる体制を整えておきましょう。
この2つを押さえておけば、選任して終わりではない防火管理の運用に近づきます。

なるほど、まず対象かどうかを確認してみます。

消防計画の指示もあわせて、管理権原者としての役割を見直してみてください。

よくある質問

Q高度専門講習は法律で義務づけられた講習なのか?
Aいいえ、高度専門講習は法定の講習ではなく、各消防機関が地域の実情に応じて任意に実施するものです。
Q高度専門講習を受けないと防火管理者になれないのか?
Aなれます。高度専門講習は甲種・乙種の基本講習を修了したあとに受ける上乗せの講習で、資格の要件そのものではありません。
Q共同住宅は高度専門講習の対象になるのか?
Aなりません。高層建築物の類型からは共同住宅が明確に除かれています。
Q防火管理者を選任すれば管理権原者の責任は無くなるのか?
A無くなりません。管理権原者は最終的な責務を負い続け、消防計画の作成・変更では必要な指示を与えるべきとされています。

まとめ

消防庁は昭和62年、防火管理制度に関わる政令・省令・告示の改正にあわせ「防火管理に関する消防法令の運用について」(昭和62年1月24日 消防予第13号)で運用基準を統一しました
基本講習は甲種防火管理講習がおおむね12時間、乙種防火管理講習がおおむね6時間を目安に、年1回以上実施されます。
高度専門講習の対象は、高層建築物(共同住宅を除く・高さ31メートル超)・地下街・防災センターを設けている防火対象物の3類型です
高度専門講習は法定講習ではなく、各消防機関の判断で任意に実施されます。
防火管理者を選任しても、管理権原者は防火管理の最終的な責務を免れません
消防計画の作成・変更にあたっては、防火管理者の求めに応じて管理権原者が必要な指示を与えるべきことが明確にされました。
通知の根拠となる消防法第8条消防法施行令第3条消防法第8条の2は、発出時から現行まで内容が変わっていません。

管理権原者の役割まで確認できて助かりました。

消防計画の見直しまで、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 防火管理に関する消防法令の運用について(通知)(昭和62年1月24日 消防予第13号 消防庁予防救急課長、改正:平成15年6月消防安第101号、平成21年1月消防予第49号)
  • 消防法第8条・第8条の2
  • 消防法施行令第3条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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