消防車両を全部やめて固定放射設備にすれば、動かす人も減らせるのではないか。
実際にそう考えて共同防災を組んだ事業所からの照会に、回答は一言で答えています。
できない。
その一方で固定放射設備のポンプは2事業所で共有できます。
消防車両をすべて固定放射設備に代えたら、防災要員を減らせるでしょうか。
できないとされています。
設備を替えても防災要員の数は減りません。
高さ15メートル以上のタンクの高さは、どこから測るのでしょうか。
消防活動を行うべき防油堤外の構内道路や空地等の地盤面から、タンク側板の頂部までの高さとされました。
- 消防車両を全て固定放射設備に代替しても、防災要員を減ずることはできません
- 固定放射設備のポンプを2事業所で共有することはできますが、維持管理の規定が明確で市町村長が適当と認めた場合に限られます
- 共有する場合のポンプ容量は、それぞれの事業所に必要な数量を同時に確保できるだけの水量が必要です
- 15メートル以上の屋外貯蔵タンクの高さは、消防活動を行うべき防油堤外の構内道路や空地等の地盤面から側板の頂部までを測ります
- 塔の高さが20メートル以上あっても、20メートル以上の部分で石油の貯蔵や取扱いがない場合は該当しません
▼
目次
固定放射設備にすれば人を減らせるか

政令第15条第1項は、消防車両に代えて固定放射設備を設ける代替措置を認めています。
車をやめて全部固定にした事業所だけで共同防災を組織した場合、防災要員は減らせるのか。
一言で切られています。
固定放射設備は据え付けられていて、運転すれば自動で泡を出します。運転手も機関員も要らないように見えます。
それでも人は減らせません。理由は書かれていませんが、前の記事で見た防災要員の要件から読み取れます。求められているのは車を動かす能力だけではありません。現場で判断し手を動かす人が要ります。
弁を開ける、泡原液を補給する、隣接の設備を冷却する、避難を誘導する。固定放射設備が動いていても、そのすべては人の仕事です。
代替措置は設備の形を変えるものであって、体制を軽くするものではないという整理です。
設備を替えても、人は減らないのですね。
はっきり示されています。
体制の見直しは、人員から考えてください。
固定放射設備のポンプを2事業所で共有できるか

できるとすれば、容量はどう考えるのか。
共有はできます。ただし容量は、それぞれの事業所に必要な数量を同時に確保できるだけの水量が必要です。
前の記事で見た加圧ポンプの共用と同じ考え方です。設備は1つでも能力は足し算になります。
そのうえで2つの条件が付いています。維持管理の規定が明確であること。市町村長が適当と認めた場合であること。
維持管理の規定というのは、どちらがいつ点検し、故障したら誰が直すのかという取り決めです。共同設置の要件で見た、責任の所在を明確にすることと同じ趣旨です。
市町村長が適当と認めた場合に限るという条件は、あらかじめ相談が要るということを意味します。設計を固める前に持ち込む必要があります。
共有できても、容量は同時に確保するのですね。
考え方は共通しています。
必要な水量を、合算して確かめてください。
タンクの高さはどこから測るか

この高さを、タンク側板の高さで見るのか、防油堤内の平均地盤面から見るのか、構内道路から見るのか。3つの読み方が示されました。
ア 屋外貯蔵タンクの側板の高さ
イ 防油堤内の平均地盤面からの高さ
ウ 消防活動を行う屋外貯蔵タンクの周囲の構内道路からの高さ
問2 設問(1)ウの場合、タンク側板の高さが15メートル未満であつても、構内道路が低く、当該道路面からの高さが15m以上となれば、普通高所放水車等を備え付けなければならないか。
答2 上記1により、屋外貯蔵タンク側板の頂部の高さが15m以上となる屋外貯蔵タンクがある場合には、普通高所放水車を1台備え付けなければならない。
3つの選択肢のうち、ウが選ばれました。
基準になるのは、消防活動を行うべき防油堤外の構内道路や空地等の地盤面です。そこからタンク側板の頂部までを測ります。
理由は測る目的から分かります。高所放水車が必要かどうかを判断するのですから、放水する側の足元からどれだけ上を向くかが問題になります。タンク自体の背丈ではありません。
問2の答えが実務的です。タンク側板の高さが15メートル未満でも、構内道路が低ければ道路面からの高さが15メートル以上になります。その場合は普通高所放水車を1台備え付けなければなりません。
掘り下げた場所に道路がある構内では、カタログ上のタンク高さだけを見ていると判断を誤ります。図面で高低差を確かめる必要があります。
消防隊の足元から測るのですね。
3つの読み方から選ばれました。
図面の高低差で、測り直してみてください。
高さ20メートル以上の工作物の数え方

高さ22メートルの蒸留塔があり、塔内の石油そのものの高さは16メートル。上部は高圧ガスと、高圧ガスと石油の混合部分です。これは該当するのか。
外形ではなく中身で判断されました。
塔の高さが22メートルあっても、20メートル以上の部分に石油がなければ該当しません。条文が求めているのは高さが20メートル以上の場所で石油を貯蔵し又は取り扱うことだからです。
前の項目のタンクの高さとは、測る対象が違う点に注意してください。タンクは側板の頂部まででした。こちらは石油のある高さまでです。
違いは条文の書き方にあります。タンクは高さ15メートル以上の屋外貯蔵タンクという物の大きさで、蒸留塔は高さ20メートル以上の場所で石油を貯蔵し又は取り扱うという行為の場所です。
条文がものを指しているのか行為を指しているのかで、測り方が変わります。
中身のある高さで見るのですね。
外形ではありません。
設備の内部の状況を、確かめておきましょう。
代替措置を重ねて適用してよいか

第3項にも別の代替が定められています。第3項を適用したあとに、さらに第2項を適用してよいのか。
認められました。第3項を適用したあと、その結果に対してさらに第2項を適用できます。
代替の規定が複数あるとき、それぞれ独立に1回ずつしか使えないと読むこともできます。回答はそう読みませんでした。順を追って重ねられます。
ただし当然ながら、それぞれの項の要件は各段階で満たす必要があります。重ねられるのは適用であって、要件が緩むわけではありません。
この記事で見てきた5つの回答を並べると、扱いの型が見えてきます。設備の形は柔軟に選べる。代替も共有も重ねた適用も認められる。しかし能力と人員は動きません。
共有しても容量は同時確保、代替しても防災要員は減らない。判断に迷ったら、この線がどちらにあるかを見ると整理できます。
代替を重ねて使うこともできるのですね。
順に適用できます。
備え付けの計画を、条文と照らしてください。
よくある質問
まとめ
- 全て固定放射設備にしても防災要員は減らせません
- 固定放射設備のポンプは2事業所で共有できます
- ただし容量はそれぞれに必要な数量を同時に確保できる水量が要ります
- 共有は維持管理の規定が明確で市町村長が適当と認めた場合に限られます
- タンクの高さは防油堤外の構内道路等の地盤面から側板の頂部までです
- 塔は20メートル以上の部分に石油がなければ該当しません
- 政令第15条は第3項を適用したあとに第2項を適用してよいとされました
設備の形は選べても、能力と人は動かないのですね。
すっきりしました。
タンクの高さは図面の高低差から測り直してみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 石油コンビナート等災害防止法の運用に係る資料の送付について(昭和59年12月21日 消防地第288号 消防庁地域防災課長から関係都道府県消防防災主管部長あて回答)
- 石油コンビナート等災害防止法施行令第11条・第15条第1項・第15条第2項・第15条第3項
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答には昭和50年代のものが含まれ、条番号や機関の名称等は当時のものです。個別の事案についての適用は、所轄消防署または自治体にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




