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浮沈式のオイルフエンスは認められるか|油回収船の能力と船舶からの油漏出の通報

浮沈式のオイルフエンスは認められるかを解説するアイキャッチ画像

オイルフエンスを常にドルフインやシーバースの周りに張っておけば、いつでも備えていることになりそうです。
ところが回答は、そういう置き方では法でいうオイルフエンスとは認められないとしました。
認められるのは、緊急時に展張船で張り出すために保管しておく場合です。
判断の軸は必要な場所へ持ち出せるかどうかです

常設で張ってあるオイルフエンスは、備え付けているとみなされるのでしょうか。

特定の場所に設置しておく場合には法でいうオイルフエンスとは認められないとされています。
ただし規格を満足し、展張船で展張するために保管しておく場合はこの限りでありません。

接岸中の船から油が漏れた場合、こちらに通報の義務が生じるのでしょうか。

送油のため接岸又は係留中の船舶よりの油漏出は、当該事業所における異常現象と解するとされました。

この記事の結論
  • ドルフインやシーバース等特定の場所に設置しておくオイルフエンスは、法でいうオイルフエンスとは認められません
  • 規格を満足するもので緊急時にオイルフエンス展張船により展張するために保管しておく場合は認められます
  • 油回収船の巡航速度は、空船の速度と所定の油水を積載した速度の調和平均によります
  • 移送や貯留の能力は、10時間程度の連続回収を前提とすれば足ります
  • 油回収装置を普段は船体から取りはずしておく方式の油回収船は認められません

浮沈式のオイルフエンスは認められるか

オイルフエンスは展張船により展張するために保管しておく場合に認められることを示したイメージ
昭和59年12月21日付けの消防地第288号の続きです。
海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律に規定される規格を満たした浮沈式のオイルフエンスを備え付けた場合、石油コンビナート等災害防止法で義務付けられるオイルフエンスを備え付けているとみなされるのか。
問 浮沈式のオイルフエンス(海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律に規定されている規格は満足している。)を備え付けた場合、法で備え付けることが義務付けられているオイルフエンスを備え付けているとみなされるか
答 通常、ドルフイン・シーバース等特定の場所に設置しておく場合には、法でいうオイルフエンスとは認められない。ただし、接続部の型式も含めて施設省令第22条の規格を満足するオイルフエンスであつて、緊急時にオイルフエンス展張船により展張するために保管しておく場合にはこの限りでない
置き場所で結論が変わります
同じ物なのに、置き方によって扱いが分かれました。
特定の場所に常設しておく場合は認められません。そこにしか効かないからです。油が漏れる場所は決まっていません。
認められるのは、緊急時に展張船により展張するために保管しておく場合です。必要な場所へ持ち出せる状態であることが条件になります。
条件がもう1つ付いています。接続部の型式も含めて施設省令第22条の規格を満足すること。他法令の規格を満たしていても、接続部が合わなければつなげません。
前の記事で見た媒介金具の話と同じです。現場でつながるかどうかが、規格の実質になります。

置き場所で結論が変わるのですね。

同じ物でも扱いが違います。
保管の方法を、確かめておいてください。

油回収船の巡航速度はどう決めるか

油回収船の巡航速度は空船と積載時の速度から算定することを示したイメージ
昭和54年1月12日付けの消防地第1号は、油回収船に係る石油の回収能力の認定方法についての通知です。
その別記に巡航速度が出てきます。ところが速度は2つあります。空船の場合と、所定の油水を積載した場合です。どちらを使うのか。
問 「石油コンビナート等災害防止法に基づく油回収船に係る石油の回収能力の認定方法について」(昭和54年1月12日付 消防地第1号 地域防災課長通知)別記中の巡航速度は、空船の場合の速度と所定の油水を積載した場合の速度とが異なる場合、どの速度とすべきか
答 空船の場合の速度と所定の油水を積載した場合の速度の2つを掛けた値を2倍し、それを2つの速度の和で割った値とされたい(調和平均)。
2つの速度をならします
どちらか一方ではなく、両方を使って1つの値を出します。示されたのは調和平均です。
単純に足して2で割るのではありません。調和平均は、往復にかかる時間の平均から求めた速度に当たります。
油回収船は、空で現場へ向かい、油を積んで戻ります。行きと帰りで速度が違うので、往復にかかる実際の時間から平均の速度を出すほうが実態に合います。
細かい話に見えますが、回収能力の認定に直結します。速く見せる計算は使えません

速度は、2つをならして出すのですね。

どちらか一方ではありません。
能力の算定の根拠を、資料に残してください。

移送や貯留の能力はどこまで続けばよいか

油回収船の移送や貯留の能力は10時間程度の連続回収を前提とすればよいことを示したイメージ
施設省令第23条の2第3号は、油回収船の移送や貯留の能力について定めています。
この要件は、第1号および第2号の要件を永続的に維持し得るものでなければならないのか。
永続的にとなると、船の大きさに際限がなくなります。
問 施設省令第23条の2第3号に規定する移送・貯留能力の要件は、同条第1号及び第2号の要件を永続的に維持し得るものでなければならないか
答 10時間程度の連続回収を前提とすれば良い
10時間が前提です
永続的にではなく、10時間程度の連続回収という具体的な目安が示されました。
なぜ10時間か。書かれていませんが、実際の回収作業は日中に行われます。夜間の作業は危険で効率も落ちます。1日ぶんの作業として現実的な長さです。
この考え方は前の記事で見た乾式配管の充水時間と似ています。時計の数字ではなく、現場の動きから逆算して基準が決まっています。
設計する側にとっては上限が示されたことになります。永続的にという読み方をすれば貯留槽をいくらでも大きくすることになりますが、10時間ぶんで足ります。

永続的にではなく、目安が示されているのですね。

10時間程度が前提です。
装備の能力を、この目安で確かめてください。

回収装置を普段は外しておけるか

油回収装置を普段は船体から取りはずしておく方式の油回収船は認められないことを示したイメージ
油回収装置は大きく、船に付けたままだとふだんの作業の邪魔になります。
普段は陸に置いておき、出動時に取り付ける方式にできないか。
問 油回収装置を普段は船体から取りはずしておき、出動時に取り付ける方式の油回収船は認められるか
答 認められない
付けたままにします
一言で否定されました。
理由は書かれていませんが、この記事の1つ目の項目と読み合わせると見えてきます。オイルフエンスは持ち出せる状態が求められました。油回収装置は取り外さない状態が求められます。
違いは、その物が単体で働くかどうかです。オイルフエンスは張れば効きます。油回収装置は船に付いて初めて回収船になります。
出動時に取り付ける方式では、取り付けにかかる時間だけ出動が遅れます。取り付ける人が確保できるとも限りません。
前の記事で見た土のうと門扉、呼水装置とスチームエゼクターの話と同じ筋です。間に人手を挟むほど確実性が落ちます

装置は付けたままにするのですね。

出動時の手間を避けるためです。
ふだんの保管の状態を、点検で確認してください。

接岸中の船からの油漏出は通報するか

送油のため接岸又は係留中の船舶からの油漏出は当該事業所の異常現象と解することを示したイメージ
事業所の桟橋に船が接岸し、送油している最中に船から油が漏れた。
漏らしたのは船で、事業所の設備ではありません。それでも事業所に異常現象の通報義務が生じるのか。
シーバースからの送油のための船舶の場合も問われました。
問1 接岸係留中の船舶から油が漏出した場合、事業所に異常現象の通報義務が生じるか
問2 シーバースからの送油のための船舶の場合はどうか
答 1及び2
送油のため接岸又は係留中の船舶よりの油漏出は、当該事業所における異常現象と解する
事業所の異常現象です
2つの問いに同じ答えが返っています。船からの漏出であっても、当該事業所における異常現象と解します。
条件は送油のためであることです。事業所と船が油をやり取りしている最中の話に限られます。
考え方は、その場で何が行われているかにあります。送油は事業所の事業活動です。その活動の最中に起きた漏出なら、船側の設備が原因でも事業所の異常現象になります。
実務上の意味は重いです。船のせいだからと様子を見ることはできません。事業所として直ちに通報する立場になります。
防災規程や連絡体制を作るときは、桟橋やシーバースでの荷役中の漏出を通報対象として明示しておく必要があります。

船からの漏出でも、事業所の異常現象になるのですね。

荷役の場面が対象です。
通報の対象を、防災規程に明記しておきましょう。

よくある質問

Q常設のオイルフエンスは備え付けと認められませんか?
A回答は、通常ドルフイン・シーバース等特定の場所に設置しておく場合には法でいうオイルフエンスとは認められないとしています。ただし接続部の型式も含めて施設省令第22条の規格を満足するもので、緊急時に展張船により展張するために保管しておく場合はこの限りでないとされました。
Q巡航速度は空船の速度を使ってよいですか?
A回答は、空船の場合の速度と所定の油水を積載した場合の速度から調和平均で求めた値とされたいとしています。どちらか一方だけを用いることはできません。
Q貯留能力は永続的に維持できる必要がありますか?
A回答は、10時間程度の連続回収を前提とすれば良いとしています。永続的に維持し得るものである必要はありません。
Q船が漏らしても事業所が通報するのですか?
A回答は、送油のため接岸又は係留中の船舶よりの油漏出は当該事業所における異常現象と解するとしています。接岸係留中の場合もシーバースからの送油のための船舶の場合も同じ扱いです。

まとめ

  • 特定の場所に常設したオイルフエンスは法でいうオイルフエンスと認められません
  • 展張船で展張するために保管しておく場合は認められます
  • 条件として接続部の型式も含めて施設省令第22条の規格を満たす必要があります
  • 巡航速度は空船と積載時の速度の調和平均によります
  • 移送や貯留の能力は10時間程度の連続回収を前提とすれば足ります
  • 回収装置を普段は取りはずしておく方式は認められません
  • 送油のため接岸又は係留中の船舶からの油漏出は、当該事業所における異常現象です

持ち出せる状態と、付けたままの状態。
求められる形が逆なのですね。
すっきりしました。

荷役中の漏出を通報対象として防災規程に明示しておいてください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。

参考・出典

  • 石油コンビナート等災害防止法の運用に係る資料の送付について(昭和59年12月21日 消防地第288号 消防庁地域防災課長から関係都道府県消防防災主管部長あて回答)
  • 石油コンビナート等災害防止法に基づく油回収船に係る石油の回収能力の認定方法について(昭和54年1月12日付 消防地第1号 消防庁地域防災課長通知)
  • 石油コンビナート等における特定防災施設等及び防災組織等に関する省令第22条・第23条の2
  • 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律
  • 消防実務六法 質疑応答編

※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答には昭和50年代のものが含まれ、条番号や機関の名称等は当時のものです。個別の事案についての適用は、所轄消防署または自治体にご確認ください。

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