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消防法令の届出代行はなぜ行政書士でなければ違法になるのか

消防法令の届出を代行してもらうとき行政書士は必要かを解説する記事のアイキャッチ画像

防火管理者選任届危険物許可申請書を、業者に頼んで代わりに書いてもらう。
よくある話ですが、この「代行」には資格の縛りがあります。
消防庁は令和7年2月、消防法令の書類作成を無資格の業者が代行することは行政書士法違反になりうると全国の消防機関へ改めて注意喚起しました。
誰に頼んでよいかは、思っているより狭く決まっています

消防用設備の業者さんが、防火管理者選任届も一緒に出しておきますよと言ってくれました。
そのまま任せていいのでしょうか。

報酬をもらって書類作成そのものを代行するなら、それができるのは行政書士等だけです。
消防庁が改めて注意を呼びかけています

点検や工事をお願いするのとは、また別の話なんですね。

はい、別の話です。
どこまでが実務で、どこからが書類の代書になるのかを順に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 消防法令の手続でも、行政書士等でない者が報酬を得て書類作成を代行すると行政書士法違反になりうると消防庁が全国に注意喚起しました
  • 対象は火災予防だけでなく、危険物保安石油コンビナート等の保安の手続も含まれます
  • 禁止されているのは他人の依頼を受け報酬を得て官公署提出書類の作成を業として行うことで、違反すると罰則もあります
  • 点検・整備・工事そのものや防火管理者本人としての実務は、書類の代書行為とは別に整理されます
  • 無償で1回だけ手伝ってもらうことは「業として」に当たらないため対象外です

消防法令の手続を行政書士でない者が報酬を得て代行すると行政書士法違反になりうる仕組みを示した図解

消防法令の届出代行はなぜ通知で注意喚起されたのか

消防庁が発出した通知の文書と注意を示す標識のイメージ
令和7年2月25日、消防庁の予防課長・危険物保安室長・特殊災害室長が連名で、全国の消防機関へ通知を出しました。
宛先は各都道府県の消防防災主管部長と、東京消防庁・指定都市の消防長です。
消防法令に基づく各種手続における行政書士法違反の防止について(令和7年2月25日 消防予第75号・消防危第30号・消防特第35号)
消防法令に基づく各種手続(火災予防、危険物保安及び石油コンビナート等の保安の各分野における手続をいう。)においても、行政書士等でない者が防火対象物の関係者等に代わって提出書類の作成を行うことは、行政書士法違反に該当する可能性があります
消防の窓口そのものに向けた注意喚起です
宛先が個々の建物の関係者ではなく、各消防本部・消防署である点に注目してください。
消防庁は消防機関に対して、申請窓口での掲示や口頭での注意喚起を通じて行政書士制度を周知するよう求めています。
裏を返せば、窓口へ提出書類を持ち込む段階で「誰が作ったものか」が問われる場面が実際にあるということです。
自分の建物の届出を誰に頼んでいるか、この機会に一度振り返っておくとよいでしょう。

消防署の窓口に、注意書きの張り紙が出ることもあるということですね。

そのとおりです。
すでに掲示を始めている消防本部もあるので、今度窓口に行ったときに探してみてください

行政書士法の対象になる消防法令の手続きはどこまでか

火災予防と危険物保安の両方の書類が行政書士法の対象になることを示したイメージ
対象は火災予防の手続だけではありません。
通知は範囲をはっきりカッコ書きで示しています。
消防法令に基づく各種手続(火災予防、危険物保安及び石油コンビナート等の保安の各分野における手続をいう。)
行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(中略)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。(行政書士法第1条の3第1項)
火災予防・危険物保安・石油コンビナートの3分野すべてです
防火対象物の防火管理者選任届出書消防計画作成届出書、消防用設備等の設置届出書は火災予防分野の典型例です。
危険物保安分野では、危険物製造所等の設置許可申請書や予防規程の認可申請書が該当します。
これらはいずれも「官公署に提出する」「権利義務又は事実証明に関する書類」であり、条文が業務として想定する範囲に収まります。
書類の種類ではなく、官公署へ提出する目的の書類かどうかで判断されると考えておくと分かりやすいです。

うちはテナントビルなので危険物は関係ないと思っていましたが、届出書自体は対象になるんですね。

はい、そうです。
危険物施設が無くても防火管理者選任届は同じ枠組みの対象になります。

行政書士法は何を禁止しているのか

無資格で有償の書類作成代行を行うことが禁止されていることを示したイメージ
禁止されているのは、誰かに頼まれて書類を作ること自体ではありません。
条文が線を引いているのは、もう少し細かいところです。
行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第1条の3に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。(行政書士法第19条第1項)
「報酬」と「業として」の2つが揃うと違反になります
名目がなんであれ、報酬を得て反復継続して書類作成を行えば「業として」に当たります。
一方で、他の法律に別段の定めがある場合は制限を受けません。弁護士のように、自分の資格を根拠にすでに書類作成が認められている専門職はこの例外に含まれます。
違反した場合の罰則も定められています。1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です(行政書士法第21条の2)。
「代行費用に含まれているから」といった説明だけでは、資格の有無を確かめたことにはなりません。

罰則まであるとは思っていませんでした。
知らずに頼んでいた側も何か問われるのでしょうか。

罰則の対象は無資格で作成した側です。
ただ、その書類の内容に不備があれば、困るのは結局建物側になります。

点検や工事の実務行為も違反になるのか

点検や工事の実務行為と書類の代書行為が別に整理されることを示したイメージ
ここが一番混同しやすいところです。
消防設備士や防火管理者に関わる実務までが、まとめて違反になるわけではありません。
(別紙)行政書士でない者が、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類の作成を業として行うことは法律で禁止されています。(法律に別段の定めがある場合を除く。)
禁止の対象は「書類の作成」という行為そのものです
消防設備士による点検・整備・工事は、書類を代わりに作る行為ではなく、設備そのものに対する技術的な実務です。この通知が問題にしている行為とは性質が異なります。
防火管理者に選ばれた人が、自分の職務として消防計画を作り防火管理の実務にあたることも同様です。
ただし、点検結果報告書や選任届出書の作成・提出まで報酬を得て代わりに行う場合は話が別です。理由までは通知に書かれていませんが、誰が実際に手を動かしたかで整理が変わると考えておくと実務で迷いにくくなります。
「点検もお任せください」という言葉の中に、書類の代行まで含まれていないかを確かめておきましょう。

点検してくれた業者さんに、そのままお礼として選任届も書いてもらうのは危ないんですね。

無償で1回だけなら「業として」には当たりません。
繰り返しお願いする関係になっていないかを見てください

代行を頼むとき明日から何を確認すればよいか

代行業者を選ぶときに行政書士登録の有無を確認することを示したイメージ
通知は消防機関に周知の取組を求めるものでしたが、建物側にもできることがあります。
確認は難しくありません。
このため、貴職におかれては、行政書士等でない者が提出書類の作成に関与するなど、違法な行為が行われないよう、申請窓口において、注意喚起の張り紙(別紙参考)の掲示や口頭での注意喚起など、行政書士制度の周知を図る取組の実施をお願いします。
誰が書類を作るのかを最初に聞くだけです
「代行」をうたう業者に依頼するときは、実際に書類を作成するのが行政書士本人かどうかを確認してください。
点検・工事の契約書と、書類作成の依頼は別の契約として扱われているかも見ておくと安心です。
消防署の窓口に注意喚起の掲示があれば、それは飾りではなく実際の制度の話だと分かります。
最終的に届出書へ名前を書くのは建物の関係者自身です。中身を確認しないまま提出する体制は避けてください。

今度見積りをもらうときに、誰が書類を作るのか一言聞いてみます。

それが一番早い確認方法です。
答えに詰まる業者には注意してください

よくある質問

Q防火管理者選任届出書を消防設備業者に書いてもらうのは違反ですか?
A回答は、報酬を得て反復継続して作成を代行すれば、行政書士等でない限り行政書士法第19条に触れる可能性があるというものです。無償で1回だけ手伝ってもらう場合は「業として」に当たらず対象外です。
Q危険物施設の許可申請書も対象になりますか?
A回答は、対象になるというものです。通知は火災予防だけでなく危険物保安・石油コンビナート等の保安分野の手続も含むと明記しています。
Q弁護士に消防法令の書類作成を頼むのは問題ありませんか?
A回答は、問題ないというものです。行政書士法第19条には他の法律に別段の定めがある場合は制限しないという規定があり、弁護士はこれに含まれます。
Q消防設備士に点検や工事を依頼するだけなら注意は不要ですか?
A回答は、点検・整備・工事そのものは書類の代書行為ではないため、この通知が問題にしている行為とは別だというものです。ただし点検結果報告書の作成まで有償で代行してもらう場合は、担当者の資格を確認しておくと安心です。

まとめ

消防庁は令和7年2月、無資格の書類作成代行への注意喚起を全国の消防機関へ出しました
対象は火災予防・危険物保安・石油コンビナート等の保安の3分野すべてです
禁止されているのは報酬を得て業として官公署提出書類を作成することです
違反すると1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金という罰則があります
弁護士など他の法律に定めがある専門職は対象外です
点検・工事・防火管理者本人としての実務は書類の代書行為とは別に整理されます
依頼するときは誰が実際に書類を作成するのかを確認すれば足ります

誰が書類を作るのか、聞くだけでよいと分かって安心しました。
次の見積りから聞いてみます!

報酬の有無、反復するかどうか、そして資格の3点を見れば大きく外しません。
点検や工事のご依頼と合わせてご相談ください
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法令に基づく各種手続における行政書士法違反の防止について(令和7年2月25日 消防予第75号・消防危第30号・消防特第35号)
  • 行政書士法第1条の3・第19条・第21条の2(昭和26年法律第4号)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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