大型の船や鉄道車両も、消防法上は防火対象物の一種です。
ただし建物と同じ基準がそのまま当たるわけではありません。
消火器具だけで足りる反面、防火管理者も点検報告も要らないという扱いになっています。
消防法施行令別表第一(20)項が定める「舟車」の範囲と、建物とは違う規制の形を順に見ていきます。
うちの会社が持っている資材運搬船には消火器しか置いていません。
これで消防法上は大丈夫なのでしょうか。
大丈夫です。
その船は消防法上舟車という扱いになります。
舟車という区分があるんですね。
建物とはどう違うのか心配です。
条文を順番に見ていきましょう。
建物とは異なる独自の規制の形があります。
- 消防法施行令別表第一(20)項の「舟車」は、総トン数5トン以上で推進機関を有する舟、または鉄道営業法等に基づき消火器具の設置が義務づけられている車両のいずれかを指します
- この(20)項に当たる舟車には、面積の条件なしに消火器具の設置が義務づけられます
- 舟車は、消防法施行令第1条の2第3項が定める防火管理者を定めなければならない防火対象物から除外されています
- 舟車は、避難施設等の管理義務を定める令第4条の2の3の対象からも除外されています
- 舟車は、別表第一の中で唯一、消防用設備等の点検報告義務が全面的に要らないとされている防火対象物です(令第36条第1項)
▼

目次
総務省令で定める舟車とは何を指すのか

まずはこの「舟車」という言葉がどこまでを指すのか確認します。
舟車とは、船舶安全法第二条第一項の規定を適用しない船舶、端舟、はしけ、被曳船その他の舟及び車両をいう。
消防法は、山林や建築物だけでなく、舟車も防火対象物に含めています。
舟車に当たるのは、船舶安全法第2条第1項の規定(通常の船舶検査)が適用されない船舶や、端舟・はしけ・被曳船、そして車両です。
大型のタンカーや定期旅客船のように船舶安全法の検査を受ける船は、ここでいう舟車には含まれません。
つまり舟車とは、他の法律の安全規制から外れている船や車両を、消防法がすくい上げて防火対象物として扱う仕組みです。
普通の船はみんな舟車になるんですか。
うちの船は船舶検査を受けています。
いいえ、船舶安全法の検査を受ける船は対象外です。
舟車に当たるのは検査の対象外の小型船などです。
どんな船や車両がこの(20)項の対象になるのか

条文の2つの要件を確認します。
令別表第一(二十)項の総務省令で定める舟車は、法第二条第六項に規定する舟車のうち、次の各号に掲げる舟及び車両とする。
一 総トン数五トン以上の舟で、推進機関を有するもの
二 鉄道営業法、軌道法若しくは道路運送車両法又はこれらに基づく命令の規定により消火器具を設置することとされる車両
舟は、総トン数5トン以上で、かつ推進機関(エンジン等)を持つものに限られます。
推進機関のないボートや、総トン数が5トン未満の小型の舟は、この要件に当てはまりません。
車両は、鉄道営業法・軌道法・道路運送車両法又はこれらに基づく命令で既に消火器具の設置が義務づけられている車両に限られます。
つまり対象になるのは、他の法律の側で消火器具の設置がすでに求められているか、一定の規模を超える舟に限られています。
5トン未満の小さい作業艇は対象外ということですか。
そのとおりです。
推進機関があっても5トン未満なら対象外です。
消火器具の設置基準はどうなっているのか

建物とは異なり、面積による線引きがありません。
消火器又は簡易消火用具(以下「消火器具」という。)は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。
一 次に掲げる防火対象物
イ 別表第一(一)項イ、(二)項、(六)項イ(1)から(3)まで及びロ、(十六の二)項から(十七)項まで並びに(二十)項に掲げる防火対象物
令第10条第1項第1号イは、劇場・病院・地下街などと並べて(20)項の舟車を挙げています。
これらは延べ面積にかかわらず消火器具の設置が義務づけられる、優先度の高いグループです。
一般の事務所や工場((15)項等)は延べ面積150平方メートル以上という条件がありますが、舟車にはこの条件がありません。
設置する消火器具の種類は、別表第二の適応表に従って、火災の種類に応じたものを選びます。
面積の条件がないのは、どうしてですか。
理由までは条文に書かれていませんが、劇場や地下街と同じ優先グループに置かれているようです。
面積にかかわらず備えておきましょう。
なぜ防火管理者も点検義務も要らないのか

読者が誤解しやすいポイントを確認します。
法第十七条の三の三の消防用設備等又は特殊消防用設備等について点検を要しない防火対象物は、別表第一(二十)項に掲げる防火対象物とする。
令第36条第1項は、別表第一(20)項の舟車だけを名指しして、消防用設備等の点検報告義務から外しています。
さらに、防火管理者を定めるべき防火対象物を列挙する令第1条の2第3項も、(16の3)項及び(18)項から(20)項までをあらかじめ除外しています。
避難施設等の管理義務を定める令第4条の2の3も、同じ範囲を除外対象にしています。
「消火器具は要るのに防火管理者も点検も要らない」という組み合わせは、建物の感覚で読むと見落としやすい落とし穴です。
防火対象物なのに防火管理者が要らないなんて、不思議です。
条文の列挙からあらかじめ外されているとおり、舟車は防火管理者も点検も対象外です。
対象になる船や車両の管理者は何をすればよいのか

消防法側と他の法律側、それぞれの手続きを混同しないことが大切です。
前項に規定するもののほか、消火器具の設置及び維持に関する技術上の基準は、次のとおりとする。
二 消火器具は、通行又は避難に支障がなく、かつ、使用に際して容易に持ち出すことができる箇所に設置すること。
総トン数5トン以上で推進機関を持つ舟か、他の法律で消火器具の設置が決まっている車両かを確かめます。
対象であれば、別表第二の適応表に沿った消火器具を設置し、通行や避難の支障にならない場所に置きます。
船舶安全法側の検査(船舶検査証書等)を受けていても、消防法側の消火器具の確認は別に必要です。
防火管理者の選任や点検報告は対象外なので、消火器具そのものの備えに意識を向けてください。
とりあえず消火器を置いておけば安心ですね。
それだけで消防法上の義務は果たせます。
種類と本数は別表第二の基準に沿って選んでください。
よくある質問
まとめ
舟車は消火器具だけで足りると分かって安心しました。
建物とは違う扱いもしっかり整理できました。
対象かどうかの確認と、消火器具の設置だけ覚えておいてください。
それ以上の手続きは要りません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第2条第6項
- 消防法施行令別表第一(20)項
- 消防法施行令第10条
- 消防法施行令第1条の2第3項
- 消防法施行令第4条の2の3
- 消防法施行令第36条第1項
- 消防法施行規則第5条第10項
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





