消防法施行令別表第一には「市町村長の指定する山林」という項目が、舟車と並んでひっそりと載っています。
指定を受けていなければ無関係だと思われがちですが、実はそう単純ではありません。
舟車と同じ並びだからといって同じ扱いだと思い込むと、点検報告の義務を見落とすおそれもあります。
消防法第2条の防火対象物としての位置づけから、舟車とは異なる点検義務の扱いまで順に確認します。
うちの裏山には看板も建物も何もないので、消防法とは関係ないと思っていました。
実は山林も防火対象物の一種なんです。
順番に確認していきましょう。
山林が防火対象物というのは意外です。
舟車と同じ並びなので、扱いも同じなんでしょうか。
似ているところもありますが違う部分もあります。
条文を順番に見ていきましょう。
- 消防法第2条第2項は、山林そのものを防火対象物に含めています。市町村長の指定が無くても山林自体は防火対象物です
- 消防法施行令別表第一(19)項の「市町村長の指定する山林」は、設備基準など項番号に紐づく規制を適用するために指定を受けた山林だけを区分したものです
- (19)項の山林は、防火管理者の選任義務・避難施設等の管理義務から除外されています(令第1条の2第3項)
- 令第10条第1項の列挙に(19)項は含まれず、原則として消火器具の設置義務もありません(指定可燃物等を貯蔵する場合は別です)
- ただし点検報告義務の除外(令第36条第1項)の対象は(20)項の舟車だけで、(19)項の山林は除外されていません
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目次
山林はそもそも防火対象物に当たるのか

建物や工作物だけが防火対象物だと考えると、山林は関係なさそうに見えます
まずは消防法そのものの定義から確認します
防火対象物とは、山林又は舟車、船きよ若しくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物若しくはこれらに属する物をいう。
山林は、建物と同じ「防火対象物」の一種として法律に書かれています。
消防法は、建築物や工作物だけでなく山林そのものを防火対象物の定義に含めています。
これは市町村長による指定の有無とは関係のない、法律本体の定義です。
つまり指定を受けていない普通の山であっても、消防法上は防火対象物であることに変わりはありません。
では、施行令別表第一に出てくる「市町村長の指定する山林」とは何が違うのでしょうか。
指定を受けていない山も防火対象物だということですか。
そのとおりです。
条文の定義には指定の有無という条件がありません。
どの山林が施行令別表第一(19)項の指定を受けるのか

法律本体の定義とは別に、施行令の別表にも山林が登場します
別表第一(19)項が指しているのはどの山林なのかを確認します
(十九) 市町村長の指定する山林
(二十) 総務省令で定める舟車
(19)項が指すのは、市町村長が個別に指定した山林だけです。
消防法第2条の定義ではすべての山林が防火対象物に当たりますが、別表第一(19)項に区分されるのは市町村長が指定したものに限られます。
消火器具の設置基準や点検義務など、項番号に紐づけて適用される規制のために、山林の中の一部をあらためて区分しているのです。
指定の基準そのものは施行令や施行規則には定められておらず、指定するかどうかは所轄の市町村長の判断に委ねられています。
指定する基準は条文に書かれていないんですか。
はい、全国一律の基準はありません。
市町村ごとの判断に委ねられています。
指定された山林に防火管理者や消火器具は必要なのか

防火対象物と聞くと防火管理者や消火器具をまず思い浮かべます
(19)項の山林がどこまで義務を負うのかを確認します
法第八条第一項の政令で定める防火対象物は、次に掲げる防火対象物とする。
一 別表第一に掲げる防火対象物(同表(十六の三)項及び(十八)項から(二十)項までに掲げるものを除く。次条において同じ。)のうち、次に掲げるもの
(19)項の山林は、防火管理者を定める義務から外れています。
令第1条の2第3項は、防火管理者を定めるべき防火対象物を列挙する前に、(十六の三)項及び(十八)項から(二十)項までをあらかじめ除外しています。
(19)項の山林もこの除外範囲に含まれるため、防火管理者の選任義務はありません。
消火器具についても、設置を義務づける令第10条第1項各号の列挙に(19)項は登場せず、原則として設置義務はありません。
ただし山林の中に指定可燃物や少量危険物を貯蔵・取扱う施設があれば、同項第四号に当たって消火器具が必要になることがあります。
防火管理者も消火器具も要らないなら、舟車とほとんど同じ扱いですね。
そこが実は落とし穴なんです。
次の点検義務で違いが出てきます。
舟車と同じように点検報告も要らないと思ってよいのか

防火管理者も消火器具も原則不要だと分かると、点検義務まで要らないと思い込みやすくなります
令第36条第1項が除外しているのはどの項なのかを確認します
法第十七条の三の三の消防用設備等又は特殊消防用設備等について点検を要しない防火対象物は、別表第一(二十)項に掲げる防火対象物とする。
点検報告義務が除外されるのは(20)項の舟車だけです。
令第36条第1項は、消防用設備等の点検報告義務を免除する防火対象物を別表第一(20)項に限定しており、(19)項の山林は名指しされていません。
防火管理者や避難施設等の管理義務の除外は(十八)項から(二十)項までまとめて扱われるのに対し、点検報告義務だけは(20)項のみが対象という非対称な扱いになっています。
通常は山林に消防用設備等が設置される場面自体が少ないため実害は限られますが、指定可燃物等の貯蔵で消火器具の設置義務が生じた場合は、この除外が無いことがそのまま点検報告義務として効いてきます。
「(19)項も(20)項と同じ並びだから同じ扱いだろう」という思い込みが、この条文では当てはまりません。
てっきり(19)項も(20)項と同じように点検義務も免除されると思っていました。
令第36条第1項が名指ししているのは(20)項の舟車だけです。
(19)項の山林は除外されていません。
山林の管理者は何を確認すればよいのか

実際に山林を管理する立場で、何から確認すればよいかを整理します
指定の有無と設備の有無の両方を押さえておく必要があります
前三号に掲げるもののほか、別表第一に掲げる建築物その他の工作物で、少量危険物又は指定可燃物を貯蔵し、又は取り扱うもの
まず自分の山林が(19)項の指定を受けているかを確認してください。
指定の基準は法令上定められていないため、所轄の市町村・消防署に確認するのが確実です。
指定を受けていない場合でも、消防法第2条の定義上は防火対象物であることに変わりはありません。
指定を受けている場合は、山林内に指定可燃物や少量危険物を貯蔵・取扱う施設が無いかを確認します。
これらに当たる施設があれば消火器具の設置義務が生じ、それにともなって点検報告義務も免除されない点を覚えておいてください。
まずは市町村に、うちの山が指定を受けているか確認してみます。
それが一番の近道です。
次はよくある質問で細かい点を確認しましょう。
よくある質問
まとめ
舟車と同じだと思い込んでいましたが、点検義務の違いがよく分かりました。
指定の有無と設備の有無を確認すれば大丈夫です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第2条第2項
- 消防法施行令別表第一(19)項・(20)項
- 消防法施行令第1条の2第3項
- 消防法施行令第10条第1項
- 消防法施行令第36条第1項
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





