滑り棒は、避難器具の中でもロープと並んで最も簡素な構造の器具です。
棒と取付け具だけに見えても、外径や材質、強度まで条文には具体的な数値が定められています。
数値の範囲を外れると、避難器具としての基準に適合しません。
今回は滑り棒の構造・材質及び強度の基準を、根拠条文から確認します。
うちのビルの避難器具の一覧に滑り棒と書いてあります。
ただの棒なのに基準なんてあるんでしょうか。
単純な形でも太さや材質まで数値で決まっています。
設置の仕方と器具そのものの強さが、それぞれ別の条文にあります。
知りませんでした。
強度まで試験で確かめられているんですか。
圧縮荷重を加える試験まで条文で決まっています。
1つずつ条文で見ていきましょう。
- 滑り棒は施行規則第27条第1項第8号の設置方法と、同項第11号が委任する避難器具の基準の構造・材質・強度という二重の基準がある
- 棒は外径35ミリメートル以上60ミリメートル以下の範囲で一定の値の円柱状とし、表面は平滑にする
- 材質は鋼材又はこれと同等以上の耐久性を有するものとし、耐食性が無ければ耐食加工を施す
- 強度は軸方向に3.9キロニュートンの圧縮荷重を加える試験で亀裂・破損・わん曲を生じないことが条件
- 表示事項は種類・製造者名又は商標・製造年月の3項目
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目次
滑り棒の基準はどこで決まっているのか

だからこそ、取り付け方と器具そのものの強さを別々の条文で押さえておく必要があります。
第8号 すべり棒及び避難ロープは、次のイからハまでに定めるところにより設けること。
イ すべり棒及び避難ロープの長さは、取付け位置から地盤面その他の降着面までの長さとすること。
ロ すべり棒は、その上部及び下部を取付け具で固定できるものであること。
ハ すべり棒及び避難ロープの取付け具は、第五号イ及びロの規定の例により設けること。
第11号 避難器具(金属製避難はしご及び緩降機を除く。)は、消防庁長官が定める基準に適合するものであること。
第8号は「どう取り付けるか」という設置の基準で、長さは取付け位置から降着面までとし、上部と下部を取付け具で固定できることを求めています。
取付け具は第五号(つり下げはしご)と同じ規定の例により、柱や床など構造上堅固な部分に設けます。
一方、第11号は「器具そのものが十分な強度を持っているか」を、消防庁長官が定める基準=避難器具の基準(昭和53年消防庁告示第1号)第五に委任しています。
この告示の第五には、滑り棒の構造・材質・強度・表示のすべてが定められています。
固定できればそれで終わりだと思っていました。
滑り棒自体にも別の基準があるんですね。
そうなんです。
次は棒の太さの基準を見てみましょう。
滑り棒の太さはどうやって決めるのか

だからこそ、棒の太さそのものに条文の基準があります。
一 すべり棒は、次に定めるところによる。
(一)すべり棒は、安全、確実かつ容易に使用される構造のものであること。
(二)棒は、外径が35ミリメートル以上60ミリメートル以下の範囲で一定の値の円柱状のもので、かつ、表面は平滑なものであること。
円柱状の棒で、太すぎても細すぎても認められず、範囲内で決めた一つの値を全長にわたって保つ必要があります。
表面は平滑であることも条件で、握ったときに引っかかりや段差があってはなりません。
太さが範囲で決められているのは、握力だけで自重を支えながら滑り降りる器具だからです。
現地で確認するときは、実際の外径を測って範囲内かどうかを確かめます。
太さにも範囲があるとは思いませんでした。
握りやすさと強さの両立なんですね。
そうです。
続いて材質の基準を見ていきましょう。
滑り棒の材質は何を満たせばよいのか

そのため材質にも耐久性を条件とする基準があります。
二 すべり棒の材質は、次に定めるところによる。
(一)棒は、鋼材又はこれと同等以上の耐久性を有するものであること。
(二)耐食性を有しない材質のものにあつては、耐食加工を施したものであること。
鋼材以外を使う場合でも、鋼材と同等以上の耐久性を持つ材質であることが求められます。
耐食性を持たない材質を用いるときは、耐食加工を施すことも条件です。
屋外に設置される器具なので、さびによって強度が落ちない作りになっているかがポイントです。
点検では棒の表面にさびや腐食が進んでいないかもあわせて見ておきます。
雨ざらしの場所にあるので、さびが心配です。
耐食加工まで条件になっているんですね。
はい、その通りです。
次は強度試験の中身を確認しましょう。
強度試験で何が確かめられるのか

どのくらいの荷重に耐える必要があるのかを見ていきましょう。
三 すべり棒の強度は、次に定めるところによる。
(一)棒は、3.9キロニュートンの圧縮荷重を軸方向に加える試験において、亀裂、破損又は著しいわん曲等の障害を生じないものであること。
(二)棒は、(一)に定める静荷重の2分の1の静荷重を軸方向に加える試験において、永久歪を生じないものであること。
この荷重を加えても、亀裂・破損・著しいわん曲が生じないことが基準です。
さらにこの荷重の2分の1の静荷重を加える試験でも、永久歪を生じないことが条件です。
つまり基準を満たす棒は、通常想定される荷重に対して余裕を持って耐える設計になっています。
見た目にわん曲や変形が無いかは、日常の点検でも確認できるポイントです。
圧縮荷重の試験まであるとは知りませんでした。
見た目のわん曲も点検で見ておきます。
ぜひお願いします。
最後に表示事項を確認しましょう。
現場で何を確認すればよいのか

すべり台や避難用タラップとの違いにも注目してください。
四 すべり棒には、次に定める事項を、その見やすい箇所に容易に消えないように表示するものとする。
(一)種類
(二)製造者名又は商標
(三)製造年月
この3つが見やすい箇所に、容易に消えないように表示されているかを確認します。
すべり台や避難用タラップと違い、滑り棒には長さや勾配の表示は求められていません。
表示が薄れていたり読み取れなくなっていたりする場合は、早めに管理者へ報告してください。
日頃の点検では、外径・材質・表示の3点をあわせて見ておくと確認漏れを防げます。
長さや勾配の表示は要らないんですね。
今度点検のときに3項目を確認してみます。
はい、ぜひ確認してみてください。
次はよくある質問を見ていきましょう。
よくある質問
まとめ
ただの棒に見えても条文の裏づけがあるとよく分かりました。
迷ったときはお気軽にご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則第27条第1項第8号・第11号(e-Gov法令検索)
- 避難器具の基準(昭和53年3月13日消防庁告示第1号、最終改正令和元年6月28日消防庁告示第2号)第五 すべり棒の構造、材質及び強度
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





