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水噴霧ヘッドの放射量はなぜノズル口径の項が要らないのか|配管の耐圧試験と起動用水圧開閉装置の基準を解説

水噴霧ヘッドはなぜノズル口径を計算式に使わないのか

水噴霧消火設備の点検で「配管耐圧試験に合格した」と報告書に書いてあっても、なぜその圧力で試験するのか根拠まで説明できる防火管理者は多くありません。
屋内消火栓の放水量の計算式にはノズルの太さが入っているのに、水噴霧ヘッドの計算式には入っていません。
この違いは偶然ではなく、起動用水圧開閉装置を含めた設備ごとの構造の違いをそのまま表しています。
この記事では配管の耐圧試験・起動用水圧開閉装置・放射量の算出式という3つの実務ポイントを、消防庁の試験基準に沿って整理します。

配管耐圧試験に合格したと報告書に書いてあったんですが、正直どんな圧力をかけているのか分かっていません。

締切圧力の1.5倍の水圧をかける試験です。
屋内消火栓と同じ考え方が使われています。

屋内消火栓の放水量の式にはノズルの太さが入っていましたが、水噴霧はどうなんですか。

水噴霧ヘッドにはノズルの太さという発想がありません。
その理由も含めて確認していきましょう。

この記事の結論
  • 配管の耐圧試験は締切圧力の1.5倍以上の水圧に耐えることを確かめる試験で、屋内消火栓と同じ基準が準用されています
  • 水噴霧消火設備の配管基準は消防法施行規則第十六条第三項第二号の二が第十二条第一項第六号を準用する形で定めています
  • 起動用水圧開閉装置の起動用圧力タンクは容量100リットル以上を備えることが試験基準で求められています
  • 噴霧ヘッドの放射量はQ=K√10Pという式で算出でき、屋内消火栓の式と違ってノズル口径の項がありません
  • ノズル口径の項が無いのは、水噴霧ヘッドが型式ごとに固定された定数Kを持つ構造だからです

水噴霧消火設備の配管耐圧試験・起動用水圧開閉装置・放射量の三つの基準を示す図解

水噴霧消火設備の配管はなぜ屋内消火栓と同じ基準に従うのか

水噴霧消火設備の配管が屋内消火栓と同じ基準に従うイメージ
水噴霧消火設備は名前の響きから独立した設備に見えますが、配管そのものの基準は既存の設備を借りています。
どの条文を準用しているのかを最初に押さえておくと、あとの試験の話がつながります。
消防法施行規則第十六条第三項第二号の二 配管は、第十二条第一項第六号の規定に準じて設けるほか、一斉開放弁の二次側のうち金属製のものには亜鉛メッキ等による防食処理を施すこと。
水噴霧消火設備の配管は屋内消火栓設備の配管基準をそのまま借りています。
条文が「準じて設ける」と定めているのは、配管の材質・耐圧力・管継手といった基準を第十二条第一項第六号にまとめて任せているためです。
水噴霧固有の追加ルールは、一斉開放弁の二次側にある金属製部分への防食処理だけです。
つまり配管まわりの基本ルールは、屋内消火栓・スプリンクラー・水噴霧で共通していると考えて差し支えありません。
次の項目では、この準用された基準の中身、特に耐圧試験の数値を具体的に見ていきます。

水噴霧って独自の設備だと思っていたので、配管は屋内消火栓と同じ基準というのは意外でした。

配管が高圧の水を送るという点は共通ですからね。
だから基準を新しく作らず準用しているんです。

配管の耐圧試験はなにを確かめる試験なのか

配管の耐圧試験のイメージ
耐圧試験と聞くと難しそうですが、やっていることはとてもシンプルです。
実際にどんな圧力をどれくらいの基準でかけているのか、消防庁の試験基準から確認します。
消防法施行規則第十二条第一項第六号リ 配管の耐圧力は、当該配管に給水する加圧送水装置の締切圧力の一・五倍以上の水圧を加えた場合において当該水圧に耐えるものであること。
消防庁「消防用設備等の試験基準」水噴霧消火設備試験基準 配管耐圧試験 試験方法:当該配管に給水する加圧送水装置の締切圧力の1.5倍以上の水圧を加える。合否の判定基準:管、管継手、バルブ類の亀裂、変形、漏水等がないこと
耐圧試験の圧力は締切圧力の1.5倍という「倍率」で決まります。
締切圧力とは、加圧送水装置が水をすべて止めたときに配管内へかかる最大の圧力のことです。
その1.5倍の水圧を実際に配管へかけて、亀裂・変形・漏水が起きないかを確認します。
基準の圧力は装置ごとに変わるため、冒頭のような具体的な数値は現場のポンプの性能によって毎回異なります。
点検報告書に試験圧力の数値だけが書かれていても、その根拠は締切圧力からの倍率計算だと分かれば十分です。

うちの点検票にも耐圧試験の圧力が書いてあるんですが、どうやって決まっているのか初めて分かりました。

締切圧力はポンプごとに違うので、数値は現場ごとに変わります。
気になったら点検業者に締切圧力を聞いてみてください。

起動用水圧開閉装置はなぜ必要なのか

起動用水圧開閉装置と起動用圧力タンクのイメージ
配管の中はいつも同じ圧力ではなく、わずかな水漏れやパッキンの劣化でも徐々に下がっていきます。
その圧力低下を見張って自動でポンプを起動させる役目を持つのが起動用水圧開閉装置です。
消防法施行規則第十六条第三項第三号ホ 自動式の起動装置は、自動火災報知設備の感知器の作動、閉鎖型スプリンクラーヘッドの開放又は火災感知用ヘッドの作動若しくは開放と連動して加圧送水装置及び一斉開放弁を起動できるものであること。
消防庁「消防用設備等の試験基準」水噴霧消火設備試験基準 起動用水圧開閉装置 起動用圧力タンク:タンクの容量は100リットル以上のものであること。ただし、ポンプ吐出側主配管に設ける止水弁の呼び径が150ミリメートル以下の場合にあっては、50リットル以上のものであること。配管・バルブ類:起動用圧力タンク又はその直近には、圧力計、起動用水圧開閉器及びポンプ起動試験用の排水弁を設けていること
起動用水圧開閉装置は火災を感知する前の「配管の圧力そのもの」を見張る仕組みです。
配管の圧力が下がると起動用水圧開閉器が働き、火災感知とは別のきっかけでポンプを自動起動させます。
このとき圧力の変化を受け止める役目を持つのが起動用圧力タンクで、容量は100リットル以上が基準です。
配管の主止水弁が細いポンプでは50リットル以上まで小さくできますが、勝手に省略はできません。
点検では圧力計と排水弁が起動用圧力タンクのそばにきちんと設けられているかも合わせて確認します。

起動用水圧開閉装置って、火事のときだけ働くものだと思っていました。

実は火災の前から配管の圧力を見張っています。
だから日頃の点検でタンクまわりも見るんです。

噴霧ヘッドの放射量はどうやって決まるのか

水噴霧ヘッドの放射量算出式と屋内消火栓の放水量算出式を比較するイメージ
水噴霧ヘッドの性能を確かめる放射試験でも、屋内消火栓の放水試験と同じように計算式が使われます。
ただし式の中身を見比べると、屋内消火栓には無い共通点と、屋内消火栓にしかない項目が見えてきます。
消防庁「消防用設備等の試験基準」水噴霧消火設備試験基準 放射量 放射圧力及び放射量は、設置したヘッドの使用範囲内であること。なお、放射量は、次式により算出することができる。Q=K√10P Q:放射量(リットル毎分) P:放射圧力(メガパスカル) K:定数
水噴霧ヘッドの放射量の式にはノズルの太さを示す項がありません。
屋内消火栓の放水量はQ=KD²√10Pという式で表され、Dはノズルの口径、Kは消火栓の号数ごとに変わる定数です。
一方、水噴霧ヘッドの式はQ=K√10Pで、Dに当たる項がそもそもありません。
屋内消火栓はホースの先のノズルを現場で選べますが、水噴霧ヘッドは型式ごとに噴霧の穴の形と大きさが固定されているためです。
つまりKの値そのものにヘッドの構造が織り込まれていて、口径を別途掛け合わせる必要が無いのです。

言われてみれば、水噴霧ヘッドの穴の大きさなんて現場で選んだことがありません。

そのとおりで、ヘッドの型式を選んだ時点で放射性能も決まっています。
点検では型式表示のラベルを確認しています。

明日からなにを確認すればよいのか

水噴霧消火設備の点検で確認すべきポイントのイメージ
ここまでの3つの基準は、どれも点検報告書のどこかに数値として現れています。
最後に、防火管理者として何を見ればよいのかを整理します。
  • 配管の耐圧試験欄に記載された圧力が、締切圧力の1.5倍という計算と整合しているか
  • 起動用圧力タンクの容量が100リットル以上(または50リットル以上の緩和条件)を満たしているか
  • 起動用圧力タンクの近くに圧力計・起動用水圧開閉器・排水弁がそろっているか
  • 噴霧ヘッドの型式表示ラベルが確認でき、放射圧力の範囲内で使われているか
数値そのものを覚える必要はなく、根拠を追える状態にしておくことが実務では大切です。
点検報告書に並ぶ数値は、どれも今回確認した条文や試験基準のどれかにつながっています。
分からない数値が出てきたら、点検業者にその根拠を尋ねる習慣をつけましょう。
根拠を追えるようになると、点検結果の異常にも早く気づけるようになります。
次回の点検では、この記事で見た3つのポイントを一つずつ照らし合わせてみてください。

数値の意味が分かると、点検票を見る目が変わりそうです。

根拠が分かれば、異常への気づきも早くなります。
次の点検でぜひ確認してみてください。

よくある質問

Q水噴霧消火設備の配管の耐圧試験は誰が行うのですか?
A消防設備士や消防設備点検資格者が、設置後試験や点検の中で行います。試験の実施自体は専門業者に任せるのが一般的です。
Q起動用圧力タンクの容量が100リットル未満だと基準違反になりますか?
Aポンプ吐出側主配管に設ける止水弁の呼び径が150ミリメートル以下であれば、50リットル以上という基準まで下がるので、一律に違反とは限りません。配管の口径とあわせて確認する必要があります。
Q水噴霧ヘッドの放射量算出式のKの値はどこで確認できますか?
Aヘッドの型式ごとに定まる値で、多くは型式適合のラベルや製造者の資料に記載されています。現場で計算し直す必要はありません。
Q水噴霧消火設備の起動装置は必ず自動式にしなければなりませんか?
Aいいえ。防災センター等に受信機や総合操作盤が設けられ、火災時に直ちに手動式の起動装置でポンプと一斉開放弁を起動できる場合は、自動式に代えることが認められています。

まとめ

水噴霧消火設備の配管は消防法施行規則第十六条が第十二条を準用し、屋内消火栓と同じ耐圧基準に従う
配管の耐圧試験は締切圧力の1.5倍以上の水圧に耐えることを確かめる試験である
試験の合否は管・管継手・バルブ類の亀裂・変形・漏水の有無で判定される
起動用水圧開閉装置は火災感知より前の配管圧力の低下を見張り、ポンプを自動起動させる仕組みである
起動用圧力タンクの容量は100リットル以上(条件により50リットル以上)が基準になる
水噴霧ヘッドの放射量はQ=K√10Pという式で算出でき、屋内消火栓の式のようなノズル口径の項が無い
ノズル口径の項が無いのは、型式ごとに固定された定数Kにヘッドの構造が織り込まれているためである

配管も起動装置もヘッドも、それぞれ根拠を持って基準が決まっているんですね!

はい、根拠が分かれば点検も怖くありません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則第十二条第一項第六号(屋内消火栓設備に関する基準の細目)
  • 消防法施行規則第十六条第三項(水噴霧消火設備に関する基準)
  • 消防法施行規則第三十二条(標準放射量)
  • 消防庁「消防用設備等の試験基準」水噴霧消火設備試験基準・屋内消火栓設備試験基準

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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