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補助散水栓はなぜ屋内消火栓より放水圧力の上限が高いのか|スプリンクラー設備の設置後試験の合否判定基準を解説

補助散水栓の放水圧力が屋内消火栓より高い理由を示すアイキャッチ画像

スプリンクラー設備が入った建物でも、天井のヘッドだけでは水が届きにくい場所があります。
そんな場所を補うために設けられるのが、赤いホースの箱でおなじみの補助散水栓です。
実はこの補助散水栓、放水圧力の上限が屋内消火栓よりも高く設定されています。
この記事では補助散水栓とスプリンクラーヘッドの設置後試験の合否判定基準と、圧力の上限が違う理由を整理します。

スプリンクラーの部屋に消火栓みたいな箱があって不思議に思っていました。

それは補助散水栓という設備です。
試験の基準まで順番に見ていきましょう。

屋内消火栓とは基準が違うのか気になります。

圧力の上限がはっきり違います
まず補助散水栓の位置づけから確認します。

この記事の結論
  • 補助散水栓はスプリンクラー設備に附属し、放水圧力0.25メガパスカル以上・放水量60リットル毎分以上で放水できることが求められます
  • 屋内消火栓の2号消火栓は上限が0.7メガパスカルなのに対し、補助散水栓は一メガパスカルまで許容されます
  • ホースを人が保持する屋内消火栓と、天井に固定された設備という構造の違いが上限の差につながっていると考えられます
  • スプリンクラーヘッドは放水圧力0.1メガパスカル以上・放水量80リットル毎分以上(小区画型は50リットル毎分以上)で作動することが求められます
  • 乾式・予作動式のスプリンクラー設備は、ヘッドが開いてから一分以内に放水できることも基準の一つです

補助散水栓とスプリンクラーヘッドの放水圧力の上限が屋内消火栓と異なることを示した図解

スプリンクラー設備にある補助散水栓とはなにか

天井のスプリンクラーヘッドと壁の補助散水栓箱が同じ配管でつながっている様子
補助散水栓は、スプリンクラーヘッドだけでは水が届きにくい部分を補うために設ける設備です。
見た目は屋内消火栓の箱に似ていますが、位置づけはあくまでスプリンクラー設備の一部です。
消防法施行規則第十三条の六第四項 令第十二条第二項第八号の規定により、補助散水栓をスプリンクラー設備に設ける場合にあつては、次に定めるところによらなければならない。補助散水栓は、防火対象物の階ごとに、その階の各部分から一のホース接続口までの水平距離が十五メートル以下となるように設けること。ただし、スプリンクラーヘッドが設けられている部分に補助散水栓を設ける場合にあつては、この限りでない。
補助散水栓は階ごとに、各部分までの水平距離が一定の範囲に収まるように配置されます。
基準となるのは水平距離十五メートル以下という数値で、この範囲であればホース接続口から手動で放水して消火できると考えられているためです。
スプリンクラーヘッドが既に設けられている部分については、この配置基準を適用しなくてよいとされています。
つまり補助散水栓は、ヘッドの散水だけでは心配な範囲を、人の操作でカバーする役割を持つ設備です。

ヘッドの散水を人の手で補う設備なんですね。

そのぶん試験の基準も決められています。
次は放水試験の合否ラインを見てみましょう。

補助散水栓の放水試験はどんな基準で合否を決めるのか

補助散水栓のノズルから放水し圧力計と流量計で数値を確認しているイメージ
補助散水栓を設置したら、実際にノズルから放水して数値を確かめます。
確認するのは放水圧力と放水量の2つです。
消防法施行規則第十三条の六第四項第二号 補助散水栓が設置されるいずれの階においても、当該階のすべての補助散水栓(設置個数が二を超えるときは、二個(隣接する補助散水栓のホース接続口相互の水平距離が三十メートルを超える場合にあつては、一個)の補助散水栓とする。)を同時に使用する場合に、それぞれのノズルの先端において、放水圧力が〇・二五メガパスカル以上で、かつ、放水量が六十リットル毎分以上の性能のものとすること。
合否の基準は、複数の補助散水栓を同時に使ったときの数値で決まります。
ノズル先端の放水圧力は0.25メガパスカル以上、放水量は60リットル毎分以上という下限が定められています。
設置個数が2個を超える階では、原則として2個を同時に使う想定で試験を行いますが、隣接する補助散水栓どうしのホース接続口が30メートルを超えて離れている場合は1個だけの使用で判定します。
すべての箱を一斉に開けて確かめるわけではない点は見落としやすいところです。

全部の箱を同時に開けて試すわけではないんですね。

条件に応じて同時に使う個数が変わります。
ここで屋内消火栓との違いを比べてみましょう。

なぜ屋内消火栓より放水圧力の上限が高いのか

人が持つ消火栓ノズルと天井に固定されたスプリンクラーヘッドを並べて比べているイメージ
補助散水栓の放水圧力には下限だけでなく上限もあります。
この上限は、実は屋内消火栓の基準よりも高く設定されています。
消防法施行規則第十四条第一項第十一号ニ 加圧送水装置にはスプリンクラーヘッドにおける放水圧力が一メガパスカルを超えないための措置を講じること。(消防庁通知「消防用設備等の試験基準」では、この上限はスプリンクラーヘッド及び補助散水栓の両方に適用されると示されている。)
屋内消火栓の2号消火栓は放水圧力0.25メガパスカル以上0.7メガパスカル以下という範囲でしたが、補助散水栓は0.25メガパスカル以上一メガパスカル以下と、上限だけが高くなっています。
屋内消火栓はホースを人が手で保持して使う設備で、圧力が上がるほどノズルの反力が強くなり、操作が難しくなってしまいます。
一方でスプリンクラーヘッドは天井に固定された自動放水機器で、人が保持する必要がありません。
補助散水栓はホースを人が持つ設備ですが、スプリンクラー設備の一部として運用されるため、屋内消火栓とは別の上限が設定されているのだと考えられます。

同じホースを持つ設備でも上限が違うのは意外でした。

設備ごとの位置づけで上限が変わります。
次はスプリンクラーヘッド自体の基準を見てみましょう。

スプリンクラーヘッド自体はどんな基準で合否を決めるのか

天井のスプリンクラーヘッドから円錐状に水が広がって放水されているイメージ
補助散水栓と比べておくと、スプリンクラーヘッド自体の基準も理解しやすくなります。
ヘッドの種類によって、放水量の下限が分かれている点がポイントです。
消防法施行規則第十三条の六第二項第一号・第三号 閉鎖型スプリンクラーヘッドのうち標準型ヘッド及び側壁型ヘッドは、それぞれの先端において、放水圧力が〇・一メガパスカル以上で、かつ、放水量が八十リットル毎分以上で放水することができる性能とすること(小区画型ヘッドは五十リットル毎分以上)。同令第十四条第一項第八号の二 乾式又は予作動式の流水検知装置が設けられているスプリンクラー設備にあつては、スプリンクラーヘッドが開放した場合に一分以内に当該スプリンクラーヘッドから放水できるものとすること。
ヘッドの合否基準は、放水圧力と放水量に加えて放水までの速さも見られます。
標準型ヘッド・側壁型ヘッドは放水圧力0.1メガパスカル以上・放水量80リットル毎分以上、小区画型ヘッドは放水量50リットル毎分以上という基準です。
配管の中に水を常時満たしていない乾式・予作動式のスプリンクラー設備では、ヘッドが開いてから水が出るまでに時間がかかりやすいため、一分以内に放水できることも基準に加えられています。
補助散水栓の下限0.25メガパスカルより、ヘッドの下限0.1メガパスカルのほうが低いのは、ヘッドが天井の狭い範囲を密に覆う前提で設計されているためだと考えられます。

放水までの速さまで基準になっているとは知りませんでした。

配管の中の水の有無で条件が変わります。
最後に試験全体の進め方を見てみましょう。

設置後試験はどんな手順で進むのか

バルブと配管を経てポンプにつながる設備を左から右へ順に並べたイメージ
放水試験に入る前にも、確認しておくべき試験がいくつかあります。
段階を踏むことで、最後の放水試験を安全に行えるようにしています。
消防用設備等の試験基準(消防庁通知) スプリンクラー設備の試験基準 起動用水圧開閉装置の作動圧力試験(この試験は3回繰り返す。)は、作動圧力が設定作動圧力値の±0.05メガパスカル以内であること。配管耐圧試験は、最高使用圧力の1.5倍以上の水圧を加え、亀裂・変形・漏水等がないこと。ポンプ性能試験は、締切運転時の締切揚程が定格負荷運転時の吐出揚程の140パーセント以下であること。
放水試験の前に、機器ひとつひとつの性能を個別に確かめる段階があります。
まず起動用水圧開閉装置の作動圧力を3回繰り返して測定し、設定値から大きくずれていないかを確認します。
続いて配管の耐圧試験で最高使用圧力の1.5倍以上の水圧に耐えることを確かめ、ポンプ単体の性能試験を経て、最後に実際の放水試験へと進みます。
補助散水栓とスプリンクラーヘッドは同じ配管につながっているため、手前の段階で不具合を見つけておくことが、放水試験そのものの安全につながります。

圧力の測定を3回も繰り返すんですね。

数値のばらつきを見るための繰り返しです。
最後によくある質問を見てみましょう。

よくある質問

Q補助散水栓は屋内消火栓と同じものですか?
A同じではありません。補助散水栓はスプリンクラー設備に附属する設備で、ヘッドが届きにくい部分を人が操作して補うためのものです。
Q補助散水栓があればスプリンクラーヘッドを設けなくてよい部分がありますか?
A補助散水栓は、階ごとの各部分から水平距離十五メートル以下となるように設ける設備であり、ヘッドの設置を免除するための設備ではありません。
Q補助散水栓が複数ある階では、すべて同時に試験しますか?
Aすべてを同時に使う想定ではありません。設置個数が二を超える場合は、条件に応じて二個または一個の同時使用で判定します。
Qなぜスプリンクラーヘッドには放水量の下限が2種類あるのですか?
A標準型・側壁型ヘッドは80リットル毎分以上、小区画型ヘッドは50リットル毎分以上と、ヘッドの構造によって基準が分かれているためです。

まとめ

補助散水栓はスプリンクラー設備に附属し、階ごとに水平距離十五メートル以下でホース接続口が設けられる
補助散水栓は同時使用時に放水圧力0.25メガパスカル以上・放水量60リットル毎分以上の性能が必要
屋内消火栓の2号消火栓の上限が0.7メガパスカルなのに対し、補助散水栓・スプリンクラーヘッドの上限は一メガパスカルである
上限が違う理由は、ホースを人が保持する屋内消火栓と、天井に固定されたヘッドという構造の違いにあると考えられる
スプリンクラーヘッドは放水圧力0.1メガパスカル以上・放水量80リットル毎分以上(小区画型は50リットル毎分以上)が求められる
乾式・予作動式のスプリンクラー設備は、ヘッドが開放してから一分以内に放水できることも基準になっている
設置後試験は起動用水圧開閉装置・配管耐圧・ポンプ性能・放水試験の順に段階を踏んで確認される

補助散水栓の圧力が高めに設定されている理由がよく分かりました!
次の点検のときに確認してみます。

設備ごとの基準の違いを知っておくことが大切です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則第十三条の六第二項・第四項
  • 消防法施行規則第十四条第一項第八号の二・第十一号
  • 消防庁「消防用設備等の試験基準」(スプリンクラー設備関係)
  • 屋内消火栓設備の屋内消火栓等の基準(平成二十五年消防庁告示第2号)

※本記事は公表されている法令・通知に基づく一般的な解説です。実際の試験結果の判定は、点検資格者や所轄消防署にご確認ください。

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