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スーパーの防火戸に物を置いてはいけないと決まったのはなぜか|長崎屋尼崎店火災後にわずか8日で出た指示を解説

スーパーの防火戸に物を置いてはいけないと決まったのはなぜか

スーパーマーケット等に係る防火安全対策について(平成2年3月26日 消防予第22号)は、長崎屋尼崎店火災からわずか8日後に消防庁が出した通知です。
死者15名を出したこの火災の原因のひとつに、防火戸付近に放置された物品による閉鎖障害が指摘されました。
通知が求めたのは物品の除去と従業員教育というシンプルな2点でしたが、その考え方はいまも生きています。
この記事では通知の中身と、現在の法律にどうつながっているかを確認します

うちの店の防火戸の前、いつも荷物が置いてあるんです。

実はそれ、火災のときにとても危険な状態なんです。

そんなことが法律で決まっているとは知りませんでした。

元は平成2年の火災がきっかけの通知なんです。
まずはその中身から見ていきましょう。

この記事の結論
  • スーパーマーケット等に係る防火安全対策についてでは長崎屋尼崎店火災のわずか8日後に通知が出されました
  • 火災の原因のひとつは防火戸付近に放置された物品による閉鎖障害でした
  • 通知が求めたのは物品の除去従業員教育の徹底という2点だけです
  • この内容はいまでは消防法第8条の2の4という法律の義務になっています
  • 一時的に置いただけでも「みだりに存置」として違反になり得ます

長崎屋尼崎店火災後に出された通知と現在の法律の流れ

なぜ火災からわずか8日で通知が出たのか

煙が立ちのぼる物品販売店舗の建物
事故から通知までの日数を見ると、消防庁がどれだけ急いだかが分かります。
まずは通知が生まれるきっかけになった火災そのものを確認します。
スーパーマーケット等に係る防火安全対策について(平成2年3月26日 消防予第22号 消防庁予防課長) 3月18日に発生した兵庫県尼崎市の長崎屋尼崎店火災では、死者15名、負傷者6名を出す大惨事となった。この火災においてこのように大きな被害が発生した原因、経緯等については、現在究明が進められているところであるが、①火災の初期の段階での消火が有効に行われなかったこと、②煙が出火階の4階から上階の5階へ急速に拡散したこと、③5階において避難が遅れたこと等が指摘されている。特に、濃煙の急速な拡散の原因のひとつとして、防火戸付近における物品の放置による閉鎖障害が生じ、防火区画の形成上不備があったことが指摘されている
火災からわずか8日での発出でした。
消防庁は原因究明を待たず、まず動いた形です。
被害が拡大した理由は初期消火の失敗・煙の急拡散・避難の遅れの3つでしたが、なかでも防火戸付近に置かれていた物品が延焼と煙の拡大を早めたことが名指しされました。
この一文が、次の章で見る「記1」の直接の根拠になっています。

死者15名も出た火災だったんですね。

それだけ緊急性が高いと消防庁が判断したということです。

どの店のどの部分が対象になるのか

スーパーマーケットの売り場と入口
通知が対象にした建物と部分を確認します。
現在の法令でも同じ範囲がそのまま使われています。
消防法施行令別表第一(4)項 百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗又は展示場
対象は百貨店だけではありません。
マーケット、つまりスーパーマーケットや専門店も同じ(4)項に含まれます。
通知が名指ししたのは建物の防火戸・防火シャッター、そして廊下や避難口といった避難路の周辺です。
自分の店がどの部分に当てはまるかは、次の章で通知の中身そのものを読むとはっきりします。

うちはスーパーですけど、百貨店じゃなくても対象になるんですか。

はい、(4)項は物品販売業を営む店舗全般が入ります。

通知は何をせよと求めたのか

防火シャッター前の物品を運び出すスタッフ
通知の本文「記」に書かれているのはたった2行です。
その中身をそのまま確認します。
スーパーマーケット等に係る防火安全対策について(前掲) 記 1 防火戸・防火シャッター及び避難路における閉鎖障害及び避難障害の生じるおそれのある物品の除去の徹底 2 火災発生時における初期対応に係る従業員教育の徹底
求められたのは2つだけでした。
ひとつ目は防火戸やシャッター、避難路をふさぐ物品を今すぐどけること。
ふたつ目は火災が起きたときに従業員が初期消火・通報・避難誘導のどれを先に担当するか、教育で徹底しておくことです。
高価な設備投資ではなく、まず「今ある物を動かす」「役割を決めておく」という運用の見直しから始めさせた点が特徴です。

たった2つだけなんですね。
もっと細かい基準を想像していました。

詳しい基準は後から出た62号や63号で追加されています。

実務で見落としやすいのはどこか

物品でふさがれた通路と片付いた通路の比較
「少しの間だけ」という置き方が一番の落とし穴です。
現在の法律ではどう扱われるかを確認します。
消防法第8条の2の4 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、当該防火対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設について避難の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理し、かつ、防火戸についてその閉鎖の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理しなければならない。
この通知が求めた内容は、いまは法律そのものになっています。
平成2年当時は行政指導でしたが、現在は第8条の2の4が同じ内容を義務として定めています。
条文は「放置」だけでなく「みだりに存置」も禁止しており、一時的なつもりで置いた場合でも対象になり得ます。
「後で片付けるつもり」が通知の意図する再発防止に反することを、まず店舗内で共有しておく必要があります。

忙しい時間帯だけ、少し置いてしまうことがあります。

それも対象になり得ます。
この条文の詳しい中身は別の記事でまとめています。

明日からなにを確認すればよいのか

防火戸を点検するスタッフとチェックリスト
通知が求めた2つのことを、日常の運用に落とし込みます。
特別な設備投資は要りません。
消防法施行令第3条の2第2項 防火管理者は、前項の消防計画に基づいて、当該防火対象物について消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わなければならない。
通知の2つの指示は、消防計画の項目にそのまま落とし込めます。
記1は日常点検に「防火戸・避難路の周辺確認」を追加するだけで対応できます。
記2は消火・通報・避難誘導の役割分担を消防計画に明記し、年に複数回の訓練で確認することに当たります。
どちらも新しい設備を買う話ではなく、今の運用を見直すだけで足ります。
迷ったときは所轄消防署に日頃の管理方法を相談しておくと安心です。

なるほど、設備投資じゃなくて運用の見直しで足りるんですね。

はい、まずは防火戸まわりを今日チェックしてみてください。

よくある質問

Qこの通知はいまも効力がありますか?
A通知そのものを廃止する後継の通知は見当たりませんが、通知が求めた内容の中心部分は現在消防法第8条の2の4という法律の条文に明文化されています。実務では条文の内容で判断して差し支えありません。
Q対象になるのはスーパーマーケットだけですか?
Aいいえ。通知の宛先は百貨店等全般で、現在の第8条の2の4も百貨店・旅館・飲食店・地下街などほとんどの防火対象物を対象にしています。
Q一時的に置いただけでも違反になりますか?
Aなり得ます。条文は「放置」だけでなく「みだりに存置」も禁止しており、短時間のつもりでも対象になります。
Q記2の従業員教育とは具体的に何をすればよいですか?
A火災発生時に誰が初期消火・通報・避難誘導のどれを担当するかを消防計画に定め、訓練で確認することです。役割分担があいまいなままにしないことが重要です。

まとめ

スーパーマーケット等に係る防火安全対策については平成2年3月26日、消防予第22号として発出されました
火災からわずか8日という異例の早さで出された緊急の通知でした
きっかけは3月18日の長崎屋尼崎店火災で、死者15名を出す大惨事でした
濃煙拡大の一因は防火戸付近の物品放置による閉鎖障害でした
通知が求めたのは「除去の徹底」と「従業員教育の徹底」の2点だけでした
この内容はいま消防法第8条の2の4という法律上の義務に明文化されています
一時的に置いただけでも「みだりに存置」として違反になり得ます

防火戸の前を片付けるだけで、法律の義務も守れるんですね。

はい、日々の巡視に組み込むだけで防げます。
㈱防災屋でもご相談を承っています。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • スーパーマーケット等に係る防火安全対策について(平成2年3月26日 消防予第22号 消防庁予防課長)
  • 消防法第8条の2の4
  • 消防法施行令別表第一(4)項
  • 消防法施行令第3条の2第2項

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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