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自衛消防訓練中のケガはなぜ労災になるのか|消防計画に基づく訓練が業務と認められる理由を解説

自衛消防訓練中のケガはなぜ労災になるのか|消防計画に基づく訓練が業務と認められる理由を解説

防火管理者や総務担当者にとって、消火訓練や避難訓練は毎年欠かせない業務のひとつです。
熱心に取り組むほど、訓練中に参加者がケガをするリスクもゼロではありません。
「これは労災になるのか、それとも別の補償なのか」と迷う場面も少なくないでしょう。
この記事では、訓練中のケガがどの制度でどう補償されるのかを、条文にもとづいて整理します。

今度、社員向けの消火訓練を計画しているんですが。

訓練中にもしケガがあったら、という点も気になりますよね。

はい。
それが労災になるのかどうか、正直よく分かっていなくて。

消防計画に基づく訓練なら、業務災害として労災保険の対象になります

この記事の結論
  • 消防計画に基づく訓練中のケガは、労働者災害補償保険法が定める業務災害として補償されます
  • 訓練は消防法施行規則第3条が防火管理者に義務づけている法定の業務です
  • 特定防火対象物では、消火訓練・避難訓練を年2回以上実施し、あらかじめ消防機関へ通報する必要があります
  • 労災保険はパートやアルバイトを含む、雇用契約で働くすべての労働者に適用されます
  • 消防法第36条の3の災害補償とは別の制度なので、混同しないよう注意してください

消防計画に基づく訓練中のケガが労災保険の対象になる流れを示した図解

自衛消防訓練中のケガはなぜ労災になるのか

訓練用の消火器を構える社員と指示をする上司のイメージ
社員に指示して行う消火訓練や避難訓練の最中に、参加者がケガをすることがあります。
このとき治療費や休業中の補償は、誰がどの制度で負担するのでしょうか。
この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「業務災害」という。)に関する保険給付。(労働者災害補償保険法第7条第1項第1号)
結論は「業務上のケガなら労災保険の対象」です
会社の指示や消防計画に基づいて実施する訓練は、従業員にとって通常の勤務と同じ業務にあたります。
そのため訓練中のケガは、私生活での事故とは違い、労働者災害補償保険法が定める業務災害として扱われます。
一方、消防法にも別の災害補償の仕組みがありますが、これは近隣で消火に協力した人向けの制度で、自社の訓練とは適用される条文が異なります。
まずは「訓練中のケガ=労災保険」という基本の切り分けを押さえておきましょう。

うちの訓練中に社員がケガをしたら、労災になるんでしょうか。

会社の指示で行う訓練なら、基本的に労災保険の対象になりますよ。

訓練はなぜ会社の業務として扱われるのか

消防計画の書類を持つ防火管理者とカレンダーのイメージ
消火訓練や避難訓練は、防火管理者が思いつきで行うものではありません。
実は消防法令そのものが、訓練の実施を明確な義務として定めています。
防火管理者は、令第3条の2第1項の規定により、防火対象物の位置、構造及び設備の状況並びにその使用状況に応じ、次の各号に掲げる区分に従い、おおむね次の各号に掲げる事項について(略)防火管理に係る消防計画を作成しなければならない。消火、通報及び避難の訓練その他防火管理上必要な訓練の定期的な実施に関すること。(消防法施行規則第3条第1項第1号チ)
訓練は防火管理者が消防計画に定めて実施する法令上の義務です
この条文により、防火管理者は消防計画の中に消火・通報・避難の訓練を定期的に実施する旨を書き込まなければなりません。
つまり訓練は個人の自由参加ではなく、会社の指揮命令に基づいて行われる活動という位置づけになります。
労災保険が適用されるかどうかは、その活動が使用者の指揮命令下にある業務かどうかで判断されるため、この位置づけが訓練を業務災害の対象にする根拠になります。
消防計画に基づかない私的な訓練や、勤務時間外の任意参加とは扱いが変わる点にも注意してください。

訓練って、消防計画に書かないといけないものだったんですね。

はい、その位置づけが労災の判断にもつながります

訓練の回数や消防への通報にはどんな決まりがあるのか

年2回の訓練日を示すカレンダーと消防署へ通報する電話のイメージ
訓練の実施義務には、回数や事前の手続きについても具体的な定めがあります。
どの建物にどんな義務があるのかを見ていきましょう。
令別表第一(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項、(9)項イ、(16)項イ又は(16の2)項に掲げる防火対象物の防火管理者は、令第3条の2第2項の消火訓練及び避難訓練を年2回以上実施しなければならない。前項の防火管理者は、同項の消火訓練及び避難訓練を実施する場合には、あらかじめ、その旨を消防機関に通報しなければならない。(消防法施行規則第3条第10項・第11項)
特定の用途区分の建物では、訓練は年2回以上と決められています
劇場や病院、ホテル、百貨店など不特定多数の人が出入りする特定防火対象物では、消火訓練と避難訓練をそれぞれ年2回以上実施する義務があります。
訓練を行う際は、事前に所轄の消防署へ通報することも義務づけられています。
この通報や実施記録は、訓練が消防計画に沿って計画的に行われたことを示す証拠にもなります。
万一ケガが発生した場合、労災の手続きでも実施日や内容を裏づける資料として役立ちます。

うちは特定防火対象物だから、年2回はやらないといけないんですね。

そうです。
通報の記録も、あとで実施を証明する材料になりますよ。

労災保険の対象範囲で見落としやすいのはどこか

スーツ姿と作業着姿の2人がひとつの盾に守られているイメージ
労災保険は正社員だけの制度だと思われがちですが、実際の範囲はもっと広くなっています。
実務で誤解しやすいポイントを整理します。
この法律においては、労働者を使用する事業を適用事業とする。(労働者災害補償保険法第3条第1項)
労働者を使用する事業であれば、原則としてすべて労災保険の対象です
パートやアルバイトであっても、雇用契約に基づいて働く労働者であれば、正社員と同じように労災保険の対象になります。
一方で、事業主本人や、指揮命令を受けずに独立して働く個人事業主は、原則として対象外になる点に注意が必要です。
また、消防法第36条の3が定める災害補償は、近隣で消火や救助に協力した第三者や消防作業従事者に向けた別の制度であり、自社の訓練中のケガには適用されません。
「消防法の補償」と「労災保険の補償」を混同しないよう、対象になる制度を正しく区別しておきましょう。

アルバイトの子も訓練に参加させてるんですが、対象になりますか。

雇用契約があるなら、雇用形態にかかわらず対象になります

訓練中にケガ人が出たら防火管理者は何をすればよいか

訓練の記録用紙に記入する担当者と書類のイメージ
実際にケガが起きたときに慌てないよう、日頃から準備しておきたいことがあります。
最後に、防火管理者が今日からできる備えを確認します。
  • 訓練の年間計画と消防計画への記載内容を確認しておく
  • 実施日時・参加者名簿・消防署への通報記録を必ず保存しておく
  • ケガが発生したら、まず労災保険の給付請求手続きを進める(勤務先を管轄する労働基準監督署が窓口)
  • 参加者の雇用形態にかかわらず、対象になり得ることを日頃から周知しておく
訓練の記録を残しておくことが、いざというときの備えになります
ケガをした本人が労災保険の給付を受けるには、療養補償給付などの請求書を労働基準監督署に提出する必要があります。
その際、訓練が消防計画に基づく業務であったことを示す記録があると、手続きがスムーズに進みます。
防火管理者は日頃から実施記録を整理し、万一のときにすぐ対応できる体制を整えておきましょう。
訓練を安全に行うこと自体が、こうした手続きの手間を減らす一番の近道でもあります。

もしケガ人が出たら、まず何をすればいいんでしょうか。

労働基準監督署への給付請求と、訓練記録の準備をすぐに進めましょう。

よくある質問

Qアルバイトの社員が訓練中にケガをしても労災の対象になりますか?
A雇用契約に基づいて働く労働者であれば、雇用形態を問わず労災保険の対象になります。正社員かどうかは関係ありません
Q訓練は年に何回実施すればよいですか?
A建物の用途によって異なりますが、劇場や病院、百貨店などの特定防火対象物では、消火訓練と避難訓練をそれぞれ年2回以上実施する義務があります。
Q訓練の実施を消防署に知らせる必要はありますか?
Aあります。特定防火対象物で訓練を行う場合、あらかじめ消防機関へ通報することが消防法施行規則で義務づけられています。
Q消防法の災害補償と労災保険はどう違いますか?
A消防法第36条の3は、近隣で消火や救助に協力した第三者や消防作業従事者向けの制度です。自社の従業員が訓練で負ったケガは、労働者災害補償保険法による業務災害として扱われます。

まとめ

消火・通報・避難の訓練は消防計画に定めて実施する法定の業務です
訓練中のケガは私生活の事故と違い、業務災害として扱われます
根拠は労働者災害補償保険法第7条が定める業務災害の保険給付です
特定防火対象物は訓練を年2回以上実施する義務があります
訓練の実施前には、あらかじめ消防機関へ通報する必要があります
労災保険はパートやアルバイトを含むすべての労働者に適用されます
消防法第36条の3の災害補償とは別の制度であることを理解しておきましょう

労災になる仕組みがよく分かりました!

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㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 消防法施行規則第3条第1項第1号チ
  • 消防法施行規則第3条第10項・第11項
  • 労働者災害補償保険法第3条第1項
  • 労働者災害補償保険法第7条第1項第1号
  • 消防法第36条の3

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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