体育館や展示場、アトリウムのように天井の高い空間では、天井にスピーカーを並べるのが難しいことがあります。
国の消防法施行規則は、スピーカーを水平距離10メートル以下の間隔で置く方法と、音の大きさを式で確かめる方法のどちらかを選ぶ形にしています。
四日市市消防本部の審査基準は、天井の高さが20m以上の大空間などについて、第2シグナル音の70デシベルを物差しにした特例を置いています。
この記事では、四日市市の特例を条文の順にたどり、堺市・大阪市・鈴鹿市の基準と並べて、天井の高い空間のスピーカーの決め方の違いを整理します。
四日市市で市民体育館を管理しています。
天井が高くて、スピーカーが壁の上のほうにしか付いていません。
天井の高い大空間には、四日市市の審査基準に70デシベルの特例があります。
スピーカーの間隔ではなく、音の大きさで確かめる考え方です。
音の大きさで決めるのですか。
スピーカーは10メートルごとに要ると思っていました。
国の規則には、間隔で決める方法と音で確かめる方法の2つがあります。
国の規則、四日市市の特例、近くの市の基準の順に読みましょう。
- 国の消防法施行規則第25条の2第2項第3号は、スピーカーを水平距離10メートル以下で置くロと、床から1メートルの高さで75デシベル以上になることを式で確かめるハのどちらかを選ぶ形です
- 四日市市の審査基準は、天井の高さが20m以上の展示場・体育館等とアトリウム、600㎡以上の地下駐車場で、第2シグナル音が70デシベル以上になる配置なら、政令第32条を適用してロ(ロ)どおりに置いた場合と同様に扱うとしています
- この特例には、四日市市の行政指導であることを表すアンダーラインが引かれています
- 堺市は天井高さ10m以上の放送区域について、スピーカーの型式ごとの有効サービスエリアの表を独自の指導基準(★)として置いています
- 大阪市と鈴鹿市の放送設備の節には天井の高さで線を引いた規定が見当たらず、ハによる場合の別記ガイドラインを示しているので、建物のある市の基準で確かめます
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目次
国の基準は放送設備のスピーカーの置き方をどう決めているのか

放送設備のスピーカーの置き方は、消防法施行規則第25条の2第2項第3号で決まっています。
ロ スピーカーの設置は、次に定めるところによること。
(ロ) スピーカーは、(イ)に規定する場所に設置する場合、放送区域ごとに、当該放送区域の各部分から一のスピーカーまでの水平距離が十メートル以下となるように設けること。(略)
ハ スピーカーの音圧又は音色及び設置は、次に定めるところによること。
(イ) スピーカーは、階段又は傾斜路以外の場所に設置する場合、放送区域ごとに、次の式により求めた音圧レベルが当該放送区域の床面からの高さが一メートルの箇所において七十五デシベル以上となるように設けること。(略)
ロは、放送区域の広さでL級・M級・S級を選び、放送区域の各部分から1つのスピーカーまでの水平距離が10メートル以下になるように置く方法です。
ハは、スピーカーの音響パワーレベルや放送区域の平均吸音率などから、床から1メートルの高さの音圧レベルを式で求め、75デシベル以上になるように置く方法です。
ハでは、残響時間が3秒以上の放送区域について、スピーカーまでの距離にも式で上限がかかります。
床の広い大空間でロのとおりに置こうとすると、空間の真ん中にもスピーカーが要ることになります。
天井の高い空間について、各市の基準がそれぞれの取扱いを書いているのはこのためと考えられます(理由までは書かれていません)。
スピーカーの置き方は、2通りから選べるのですね。
うちの体育館がどちらで付いているのかは分かりません。
まずは設置したときの図面を確かめましょう。
スピーカーの位置と数が分かります。
四日市市は天井の高い大空間の非常放送をどう扱っているのか

放送設備のスピーカーは、第2章 第14 非常警報設備 2 放送設備 (2)に書かれています。
b 次に掲げる展示場、体育館及び地下駐車場等の大空間の任意の場所において、第2シグナル音の音圧が70db以上確保できるように配置した場合は、政令第32条を適用して、省令第25条の2第2項第3号ロ(ロ)の基準に基づき、スピーカーを設置した場合と同様として取扱って支障ないものとする。
(a) 天井の高さが20m以上の展示場、体育館等の防火対象物並びにアトリウムの部分。
(b) 当該空間が2以上の放送区域に区分されない地下駐車場の用途に供される空間で、当該空間の床面積が600㎡以上のもの。
(a)は、天井の高さが20m以上の展示場・体育館等と、アトリウムの部分です。
どちらも、空間の任意の場所で第2シグナル音の音圧が70デシベル以上になるように置けば、政令第32条を適用して、ロ(ロ)の基準どおりに置いた場合と同様に扱うとしています。
この項目の文章には、総則で「本市の行政指導であることが明白な部分」を表すとされるアンダーラインが引かれています(PDFの画像で確認)。
総則は、行政指導の部分は関係者に主旨等を十分説明し、協力を得たうえで指導するとしています。
政令第32条は、次の条文です。
- 国の消防法施行規則第25条の2第2項第3号で、スピーカーはイ及びロ(間隔で置く)かハ(音で確かめる)で設ける
- ロ(ロ)は、放送区域の各部分から1つのスピーカーまでの水平距離を10メートル以下にする
- 四日市市の第14 2(2)ア(ア)bで、(a)(b)の大空間は、任意の場所で第2シグナル音の音圧が70デシベル以上になる配置かを確かめる
- 70デシベル以上を確保できる配置なら、政令第32条(消防長又は消防署長が認めるときは基準を適用しない)を適用する
- ロ(ロ)の基準に基づいて置いた場合と同様に扱う
- アンダーラインの付いた行政指導なので、使えるかどうかは管轄の消防署で確かめる
体育館の真ん中に吊らなくても、70デシベル出ていればよいのですね。
四日市市の審査基準では、政令第32条を使った特例という位置づけです。
使えるかどうかは、管轄の消防署に確かめましょう。
四日市市の特例で地下駐車場と70デシベルはどう読むのか

まず、国の規則が「放送区域」をどう決めているかを確かめます。
放送区域は、床、壁又は戸で区画された部分なので、壁や戸で区切られていない地下駐車場は、1つの放送区域のまま広くなります。
四日市市は、そのような地下駐車場の用途に供される空間で、床面積が600㎡以上のものを、(a)の大空間と並べています。
もう1つ気をつけたいのが、数字の物差しです。
国の規則ハ(イ)の75デシベルは、式で求めた、床から1メートルの高さの音圧レベルです。
四日市市の70デシベルは、第2シグナル音の音圧で、測る音も数字も違うので混同しないようにします。
第2シグナル音は、火災放送の最後に流れるスイープ音で、鈴鹿市の審査基準の文例では「ビューッ、ビューッ、ビューッ」と書かれています。 同じ(ア)には、ほかに2つの項目があります。
aは、カラオケボックス等の遮音性の高い場所を、ロ(ロ)のただし書にかかわらず1つの放送区域として扱うとするものです。
cは、可動式ブース内のスピーカーを、令和5年3月30日の消防予第211号によるとするものです。
また、2 放送設備の書き出しは、平成6年2月1日付け消防予第22号(22号通知)と、平成11年2月2日付け消防予第25号のスピーカーの性能に応じた設置ガイドラインによるほか、とされています。
| 項目 | 国の規則ハ(イ) | 四日市市の特例 b |
|---|---|---|
| 数字 | 75デシベル以上 | 70デシベル以上 |
| 何の音か | 式で求めた音圧レベル | 第2シグナル音の音圧 |
| どこで | 放送区域の床面からの高さが1メートルの箇所 | 大空間の任意の場所 |
| 対象 | 階段又は傾斜路以外の放送区域 | (a)天井の高さ20m以上の展示場・体育館等、アトリウム/(b)600㎡以上の地下駐車場 |
| 位置づけ | 国の技術基準 | 政令第32条を適用する四日市市の行政指導(アンダーライン) |
地下駐車場は、天井が低くても特例の対象になるのですね。
うちの駐車場は壁で区切られています。
壁や戸で区切られていれば、放送区域は区切られた部分ごとに数えます。
図面で区切り方を確かめましょう。
堺市や大阪市や鈴鹿市は天井の高い空間をどう扱っているのか

ただし、線を引く高さも、使う物差しも、書かれている場所も違います。
高天井構造(天井高さ10m以上)を有する放送区域に設置するスピーカーついては、次によること。
a 対象となる高天井放送区域の例
アトリウム、体育館、屋内プール、展示場、ロビー、工場、倉庫等。(原則、用途は問わないものであること。)
b スピーカー1個の有効サービスエリアは第16-2表によること。
c 使用するスピーカーは、第16-3表の値以上の音圧レベルを有すること。
(ク)には、堺市消防局として防火安全性の向上を図ることを目的に定めた指導基準を表す★印が付いています。
(2)の書き出しは「省令第25条の2第2項第3号イ及びロ又はハの規定によるほか、次によること」で、(ク)はその上に重ねる指導基準です。
第16-2表は、天井高さが20mを超える高天井空間と、20m以下の空間に分けて、スピーカーの型式ごとに有効サービスエリアを決めています(PDFの画像で確認)。
| 放送区域 | スピーカーの型式 | 水平設置 L×W(m) | 垂直設置 最大設置高さH(m) | 垂直設置 F(m×m) |
|---|---|---|---|---|
| 天井高さが20mを超える高天井空間(アトリウム、スタジアム、屋内競技場等) | トランペット型 | 50×35 | 50 | 25×25 |
| 同上 | ホーン型 | 40×45 | 40 | 35×35 |
| 同上 | コーン型 | 35×50 | 35 | 50×50 |
| 天井高さが20m以下の空間(展示場、体育館、屋内プール、ロビー等) | トランペット型 | 35×25 | 20 | 10×10 |
| 同上 | ホーン型 | 28×30 | 20 | 20×20 |
| 同上 | コーン型 | 25×35 | 20 | 30×30 |
第16-3表は、スピーカーからの最大距離が50mなら109デシベル、20mなら101デシベルというように、使うスピーカーに必要な出力音圧レベルを決めています。
また、堺市はハによる場合について、ウ 性能規定(◆)で別記の設置ガイドラインによるとしています。
大阪市は、ハによる場合の別記ガイドラインの中で、大空間に触れています。
中身も、ハで置くときに明瞭度の確保を図ることが望ましいというもので、四日市市のような政令第32条の特例ではありません。
大阪市の放送設備の節の第6 特例基準にも、天井の高さで線を引いた項目は見当たりません。
同じガイドラインは、1つの放送区域でイ及びロとハを併用することは認められないとしています。
鈴鹿市の審査基準は、第4章 第14 2 放送設備の(12)で、ハによる場合は別記のガイドラインによるとしています。
第14の本文には、劇場等の吹き抜けを1つの報知区域としてよいとする(6)エはありますが、天井の高さで線を引いたスピーカーの規定は見当たりません。
4市を並べると次のとおりです。
| 項目 | 四日市市 | 堺市 | 大阪市 | 鈴鹿市 |
|---|---|---|---|---|
| 天井の高い空間の線引き | 天井の高さが20m以上の展示場・体育館等、アトリウムの部分(地下駐車場は600㎡以上) | 天井高さ10m以上(20mを超えるかどうかで表を分ける) | 一辺がおおむね20メートル以上の大空間(天井の高さではない) | 放送設備の節に見当たらない |
| 物差し | 第2シグナル音の音圧70デシベル以上 | スピーカーの型式ごとの有効サービスエリアと必要な出力音圧レベル | 明瞭度の確保を図ることが望ましい | 書かれていない |
| 書き方 | 政令第32条を適用してロ(ロ)と同様に扱う | (2)の「イ及びロ又はハの規定によるほか」に重ねる | 別記ガイドラインの運用 | 書かれていない |
| 印 | アンダーライン(本市の行政指導) | ★(堺市消防局の指導基準) | ◆(行政指導基準)は付いていない | 書かれていない |
| ハ(音で確かめる方法)による場合 | 22号通知と平成11年の消防予第25号のガイドラインによるほか(2の書き出し) | ウ 性能規定(◆)で別記ガイドライン | 第3(12)で別記ガイドライン | 2(12)で別記ガイドライン |
つまり、天井の高さで線を引く市と、そうでない市があるのですね。
はい、四日市市は20m、堺市は10mが分かれ目です。
建物のある市の基準で確かめましょう。
天井の高い空間がある建物では明日からなにを確かめればよいのか

平面図と断面図を並べれば、相談の前にかなりのことが整理できます。
- 体育館・展示場・アトリウム・地下駐車場など、天井の高い空間や床の広い空間を図面で拾い出す
- 断面図で天井の高さを確かめる(四日市市は20m、堺市は10mと20mが分かれ目)
- その空間が、床、壁又は戸で区切られて、いくつの放送区域になっているかを確かめる
- スピーカーがロ(間隔で置く)とハ(音で確かめる)のどちらで設けられているかを、設置時の図面で確かめる
- 建物のある市の基準で、天井の高い空間の扱いを開く(四日市市の70デシベル・堺市の表・大阪市と鈴鹿市のガイドライン)
- 改修やスピーカーの付け替えの前に、図面を持って管轄の消防署に相談する
間仕切りを足したり外したりすると、放送区域の数そのものが変わります。
大阪市のガイドラインは、防火シャッター等の閉鎖時にも、警報内容の伝達に必要な音量と明瞭度が得られるよう留意する必要があるとしています。
四日市市の審査基準は令和6年4月1日から適用されていて、最新の版は四日市市消防本部のサイトに掲載されています。
まずは断面図で、体育館の天井の高さを確かめてみます。
はい、放送区域の数も一緒に見ておくと消防署への相談もしやすくなります。
改修の前に確かめましょう。
よくある質問
まとめ
天井の高い体育館の非常放送の考え方が分かりました。
天井の高さと放送区域を図面で確かめてみます!
市ごとの扱いを確かめた図面があれば、相談も早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」(令和6年4月1日適用)総則 1 はじめに・4 基準の適用範囲、第2章 第14 非常警報設備 2 放送設備 (2) スピーカー ア 設置位置等 (ア)a〜c 四日市市消防本部「審査基準・告示・ガイドライン」のページ
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第二十二版(令和8年4月1日改正)第1章 総則 4 凡例、第3章 第1節 第16 非常警報設備 Ⅱ 細目 1 放送設備 (2) スピーカー ア 放送区域 (ク)・第16-2表・第16-3表、ウ 性能規定 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」(最近改正 令和8年6月1日)第2章 第6節 非常警報設備(放送設備)第3(12)・第6 特例基準・別記 放送設備のスピーカーの性能に応じた設置ガイドライン 第2 2(1)〜(3) https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第4章 第14 非常警報設備 2 放送設備 (6)エ・(7)・(12) https://www.city.suzuka.lg.jp/shobo/1012943/1016101/index.html
- 消防法施行令第32条
- 消防法施行規則第25条の2第2項第3号
※本記事は公表されている法令および各市消防本部・消防局の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準・審査基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。「見当たらない」「書かれていない」とした項目は、各市が公開している基準の該当する節を読んだ範囲でのものです。スピーカーの配置や特例が使えるかどうかの個別の判断は、所轄消防署にご確認ください。





