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多機能な感知器を使えば設置場所を選ばなくてよいのか|多信号感知器と複合式感知器に課される全部適合のルールを解説

多機能な感知器でも場所は選べないのかを表すアイキャッチ画像

「うちに付いているのは多信号感知器だから、どこに付けても大丈夫」
点検業者からそう説明されて、そのまま信じていないでしょうか。
多信号感知器や複合式感知器は、たしかに高機能な感知器です。
ただし消防庁の通達は、高機能だからこそ厳しい条件を課しています

厨房の前室に付ける感知器を選んでいます。
多信号感知器なら煙も熱も拾えるので、場所を選ばずに設置できますよね。

そこが誤解されやすいところです。
信号の1つでも場所に合わなければ設置基準を満たしません

多機能だから安心と思っていました。
どこを確かめればよいのでしょうか。

5つの視点で順に見ていきましょう。
感知器の種類と全部適合のルールから確認します。

この記事の結論
  • 感知器の設置場所ごとの選び方は、消防庁が定める選択基準の通達に基づいて運用されています
  • 多信号感知器は異なる二以上の火災信号を発信できるものと定義されています
  • 複合式感知器は熱と煙など異なる感知原理を組み合わせたものの総称です
  • 多信号感知器・複合式感知器は、持つ信号のいずれもが設置場所に適応していなければならないとされました
  • 非火災報や失報が続く感知器は、この基準に準じて取り換えるよう指導されます

多信号感知器や複合式感知器の信号がすべて設置場所に適合してはじめて基準を満たす流れを示した図解

自動火災報知設備の感知器の選び方はなぜ通達で細かく定められているのか

厨房の湯気の中で警報が鳴る受信機と困惑する管理者のイメージ
湯気や排気ガスが多い場所では、感知器を1つ選び間違えるだけで警報が鳴りやすくなります。
消防法施行規則は場所ごとの感知器の種類を大枠で決めていますが、現場の環境は法令の条文だけでは書き切れません。
自動火災報知設備の感知器の設置に関する選択基準について(通知)(平成3年12月6日付け消防予第240号 消防庁予防課長/改正:平成6年2月消防予第35号) 自動火災報知設備の設置に係る感知器の選択については、「自動火災報知設備の感知器の設置に関する選択基準について」(昭和60年6月18日付け消防予第77号)に基づき運用しているところであるが、平成3年6月1日に「消防法施行規則及び危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令」(平成3年自治省令第20号)が施行され、自動火災報知設備の感知器に新たに炎感知器の使用が可能となったことに伴い、自動火災報知設備の感知器の設置に関する選択基準の全部を別添のように改めることとした。
消防法施行規則第23条第4項 自動火災報知設備の感知器の設置は、次に定めるところによらなければならない。
きっかけは非火災報と失報という2つの困りごとです
煙感知器を厨房の前室のような場所に付けると、料理の湯気に反応して警報が鳴り続けることがあります。
逆に排気ガスが多い駐車場に不向きな感知器を付けると、本物の火災でも反応が遅れかねません。
消防庁はこの昭和60年の基準を土台に、炎感知器という新しい種類が使えるようになったのを機に選択基準の全部を書き改めました。
どんな感知器がこの基準の対象になるのか、次の章でまず種類を確認します。

法令の条文だけでは、厨房や駐車場のような細かい場所までは決められないんですね。

そのとおりです。
だからこそ通達が場所ごとの実務基準を補っています

多信号感知器や複合式感知器とはどんな感知器なのか

1つの感知器の中に熱と煙の2つの検知素子が入っている断面のイメージ
多信号感知器と複合式感知器は、名前が似ていても中身は別ものです。
まず定義を確かめておきます。
火災報知設備の感知器及び発信機に係る技術上の規格を定める省令(昭和56年自治省令第17号)第2条第19号の2 多信号感知器 異なる二以上の火災信号を発信するものをいう。
同令第2条第15号 熱煙複合式スポット型感知器 差動式スポット型感知器の性能又は定温式スポット型感知器の性能及びイオン化式スポット型感知器の性能又は光電式スポット型感知器の性能を併せもつものをいう。
多信号感知器は1つの原理で複数の信号を出す感知器です
種別や公称作動温度、蓄積機能の有無ごとに違う信号を段階的に発信できる構造とされています。
一方、複合式感知器は熱複合式・煙複合式・熱煙複合式・炎複合式のように、異なる検知原理を1つの感知器に組み合わせたものです。
どちらも見た目は普通の感知器と変わりませんが、中に複数の判定ロジックを抱えている点が共通しています。
この「複数抱えている」という性質が、次の章で説明する設置ルールに直結します。

多信号感知器は1つの原理を段階的に、複合式感知器は違う原理を組み合わせているんですね。

そのとおりです。
どちらも1台の中に複数の判定を抱えています

多機能な感知器を使えば設置場所を選ばなくてよいのか

1台の感知器から出る2本の信号の片方だけに合格マークが付いているイメージ
ここが今回の通達でいちばん間違えやすい部分です。
多機能だから場所を選ばない、というわけではありません。
2 多信号感知器及び複合式感知器の設置について 多信号感知器及び複合式感知器の設置については、その有する種別、公称作動温度又は当該感知回路の蓄積機能の有無の別に応じ、そのいずれもが1により適応感知器とされるものとすること。
答えは、いずれの信号も適応感知器でなければならないという全部適合です
多信号感知器なら種別・公称作動温度・蓄積機能の有無ごとに、複合式感知器なら組み合わせている検知原理ごとに、その1つ1つが別表の適応表に照らして合格している必要があります。
たとえば熱煙複合式スポット型感知器で、熱側の信号は厨房前室に適応していても、煙側の信号がその場所に向いていなければ、感知器全体としては選択基準を満たしません。
高機能な感知器ほど中に抱える信号の数が多く、確認する項目も増えるということです。
どの信号がどの場所に向くのかは、メーカーの仕様書に必ず記載があります。

片方の信号さえ合っていれば十分だと思っていました。

そこが誤解の元です。
信号のすべてが合っているかを確認してください

この全部適合のルールを見落とすとなにが起こるのか

多機能な感知器だから安心と考える管理者と鳴り続ける警報を対比したイメージ
「多機能だから安心」という思い込みは、そのまま現場のトラブルにつながります。
通達は既設の感知器についても指導の方針を示しています。
2 既に設置されている感知器で非火災報が多く発生する感知器又は失報のおそれのある感知器については、本基準に準じて感知器の取換えを指導すること。
落とし穴は、多機能な感知器ほど不適合に気づきにくいことです
単機能の感知器なら合わないと分かりやすいのに対し、多信号感知器や複合式感知器は一部の信号だけが場所に合っていない状態でも、普段は普通に動いているように見えます。
その結果、非火災報が続いても原因が感知器の選定ミスだと気づかれないまま放置されやすくなります。
通達は、こうした非火災報が多い感知器・失報のおそれのある感知器を本基準に準じて取り換えるよう指導することとしました。
点検で「原因不明の誤作動」が繰り返し報告される感知器があれば、まずこの全部適合の視点で見直してみてください。

誤作動が続く感知器、そのままにしていました。

それは取り換えの指導対象にあたる可能性があります。
点検業者に一度相談してみてください。

明日から何を確認すればよいのか

メーカーの仕様書を手にして天井の感知器を確認する管理者のイメージ
最後に、今日から動ける手順に落とし込みます。
確認する順番を間違えなければ、大きく手戻りしません。
消防法施行規則第23条第5項 (略)第一号及び第三号に掲げる場所にあつては煙感知器を、第二号及び第三号の二に掲げる場所にあつては煙感知器又は熱煙複合式スポット型感知器を、第四号に掲げる場所にあつては煙感知器又は炎感知器を、第五号に掲げる場所にあつては炎感知器を、第六号に掲げる場所にあつては煙感知器、熱煙複合式スポット型感知器又は炎感知器を設けなければならない。
まず確認するのは、設置場所がどの環境区分に当たるかです
階段や傾斜路、厨房、駐車場のように、規則と別表はあらかじめ場所ごとの環境区分を用意しています。
次に、その感知器が多信号感知器や複合式感知器であれば、メーカーの仕様書で種別・公称作動温度・蓄積機能の有無ごとの信号を洗い出します。
洗い出した信号のすべてが、その環境区分の適応表に合格しているかを1つずつ突き合わせます。
どれか1つでも合わなければ、その感知器は設置基準を満たさないので、取り換えを含めて点検業者に相談してください。

環境区分の確認から始めればいいんですね。
順番が分かって助かりました。

はい。
信号を全部洗い出してから照らし合わせるのが一番の近道です。

よくある質問

Q多信号感知器を使えばどんな場所にも設置できますか?
Aいいえ。通達は、多信号感知器及び複合式感知器の設置について、その有する種別、公称作動温度又は当該感知回路の蓄積機能の有無の別に応じ、そのいずれもが適応感知器とされるものとすることを求めています。
Q多信号感知器と複合式感知器はどう違いますか?
A多信号感知器は、その有する性能、種別、公称作動温度又は公称蓄積時間の別ごとに異なる二以上の火災信号を発信できるものと定義されています。複合式感知器は、熱複合式や煙複合式のように異なる感知原理を組み合わせたものを指します。
Q非火災報が多い感知器はどうすればよいですか?
A通達は、既に設置されている感知器で非火災報が多く発生する感知器又は失報のおそれのある感知器については、本基準に準じて感知器の取換えを指導することとしています。
Qこの選択基準はどんな場所に適用されますか?
A消防法施行規則第23条第4項から第7項までの規定の適用を受ける、自動火災報知設備の感知器の設置場所全般に適用されます。じんあいや排気ガスが滞留する場所など環境が悪い場所ほど選択を誤りやすくなります。

まとめ

選択基準の通達は非火災報や失報を防ぐために設置場所ごとの感知器を定めています
多信号感知器は種別・作動温度・蓄積時間ごとに異なる二以上の火災信号を発信します
複合式感知器には熱複合式・煙複合式・熱煙複合式・炎複合式の種類があります
多信号感知器・複合式感知器はいずれの信号も適応感知器とされる必要があります
1つの信号だけが適合していても設置基準を満たしたことにはなりません
非火災報が多い感知器や失報のおそれのある感知器は取り換えの指導対象です
まず設置場所の環境区分を別表と照らし合わせるところから始めます

多機能だから大丈夫ではないと分かって助かりました。
仕様書を見直してみます。

信号のすべてが適合しているかだけは忘れないでください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 自動火災報知設備の感知器の設置に関する選択基準について(通知)(平成3年12月6日付け消防予第240号 消防庁予防課長/改正:平成6年2月消防予第35号)
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第23条第4項・第5項
  • 火災報知設備の感知器及び発信機に係る技術上の規格を定める省令(昭和56年自治省令第17号)第2条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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