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建物の基礎はなぜ地盤の沈下に耐える構造にしなければならないのか|建築基準法施行令が定める基礎の構造方法と基礎ぐいの規定を解説

建物の基礎はなぜ地盤の沈下に耐える構造にするのか

古いビルの外壁に細いひび割れが増えてきた、なんて相談を受けたことはありませんか。
実は建物の基礎には、建築基準法施行令で構造の基準が細かく定められています。
基礎は完成すると地中に隠れてしまうため、建てたあとの点検で見落とされやすい部分でもあります。
この記事では、建物の基礎に求められる構造基準と実務での確認ポイントを解説します。

うちのビルも古いので、基礎が大丈夫か心配になってきました。

建物の基礎は建築基準法施行令第38条で、地盤の沈下や変形に耐える構造にすることが定められていますよ。

基礎も法律で決まっているとは知りませんでした。

はい。
所有者や管理者には常時適法な状態に保つ努力義務もありますので、日頃の点検も大事です。

この記事の結論
  • 建築基準法施行令第38条第1項により、建物の基礎は荷重や外力を安全に地盤へ伝え、沈下や変形に対して構造耐力上安全な構造にしなければなりません。
  • 同じ建物に異なる構造方法の基礎を併用することは禁止されています。
  • 高さ13メートル又は延べ面積3,000平方メートルを超える建物では、基礎ぐいの先端を良好な地盤に到達させなければなりません。
  • 基礎は完成後に目視できないため、不同沈下のサインを見逃しやすい部分です。
  • 建物の所有者や管理者には常時適法な状態を保つ維持保全の努力義務があり、異常時は専門家への相談が実務上のポイントです。

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建物の基礎に求められる構造基準と点検の流れを示す図解

建物の基礎はなぜ構造耐力上安全でなければならないのか

建物の基礎に荷重と外力が地盤へ伝わる様子
建物はそれ自体の重さや人や設備の荷重、地震の揺れなど、さまざまな力を受け続けています。
これらの力を安全に地盤へ伝えるのが基礎の役割で、建築基準法施行令にその構造基準が定められています。
建築基準法施行令第三十八条第一項 建築物の基礎は、建築物に作用する荷重及び外力を安全に地盤に伝え、かつ、地盤の沈下又は変形に対して構造耐力上安全なものとしなければならない。
基礎は建物の重さと地震の力を地盤へ逃がす役割を担っています。
この規定は建築基準法施行令第38条第1項に定められており、基礎が果たすべき役割を明確にしています。
基礎が弱いと、建物が傾いたり壁にひび割れが生じたりする原因になります。
地盤の性質は敷地ごとに異なるため、同じ建物でも敷地が変われば必要な基礎の構造も変わります。
まずは自分の建物の基礎がどんな考え方で設計されているのか、次の章で確認していきましょう。

基礎ってただのコンクリートの塊だと思っていました。

実は地盤の性質まで考慮して設計されている、大事な構造部分なんですよ。

異なる構造方法の基礎はなぜ併用できないのか

直接基礎と杭基礎が混在する建物の断面比較
建物の基礎には直接基礎や杭基礎など複数の工法がありますが、1つの建物で自由に組み合わせてよいわけではありません。
条文にはその理由につながる明確な禁止事項があります。
建築基準法施行令第三十八条第二項 建築物には、異なる構造方法による基礎を併用してはならない。
1つの建物に異なる構造方法の基礎を混在させることは禁止されています。
この規定は建築基準法施行令第38条第2項に定められており、直接基礎と杭基礎を同じ建物で併用するようなケースを想定しています。
構造方法の異なる基礎が混在すると、部分ごとに沈下量が異なり、建物全体が傾く不同沈下の原因になります。
増築の際に既存部分と異なる基礎工法を選んでしまうと、この規定に抵触するおそれがあるため注意が必要です。
次の章では、基礎の構造方法そのものにどんな基準があるのかを見ていきます。

増築のときに基礎の工法を変えてしまうこともあるんですか。

はい。
既存部分と違う工法を選ぶと不同沈下の原因になるので、設計段階での確認が欠かせません。

高さや延べ面積の大きい建物の基礎にはどんな基準が加わるのか

杭の先端が良好な地盤に到達する断面図
建物の規模が大きくなるほど、基礎にかかる荷重も重くなります。
一定の規模を超える建物には、基礎の底部をどこまで届かせるかという具体的な基準が加わります。
建築基準法施行令第三十八条第三項(抜粋) 建築物の基礎の構造は、建築物の構造、形態及び地盤の状況を考慮して国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとしなければならない。(略)高さ十三メートル又は延べ面積三千平方メートルを超える建築物で、当該建築物に作用する荷重が最下階の床面積一平方メートルにつき百キロニュートンを超えるものにあつては、基礎の底部(基礎ぐいを使用する場合にあつては、当該基礎ぐいの先端)を良好な地盤に達することとしなければならない。
高さ13メートル又は延べ面積3,000平方メートルを超える重い建物は、基礎ぐいの先端を良好な地盤に届かせる必要があります。
この基準は建築基準法施行令第38条第3項に定められており、床面積1平方メートルあたり100キロニュートンを超える荷重がかかる建物が対象です。
打撃や圧力、振動によって設ける基礎ぐいについても、作用する外力に対して構造耐力上安全なものでなければならないと同条第5項が定めています。
木ぐいを使う場合は、平家建ての木造建築物を除き、常に水面下にあるようにしなければならないという第6項の規定もあります。
自分の建物がどの構造方法で基礎を設計されているかは、建築時の構造計算書や地盤調査報告書で確認できます。

うちのビルは高さがあるので、杭がどこまで届いているか気になります。

構造計算書や地盤調査報告書に記載されていることが多いので、まずはそこを確認してみましょう。

基礎の不具合はなぜ見落とされやすいのか

不同沈下でひび割れた外壁とゆがんだ建具
基礎は完成すると地中に隠れてしまうため、目で見て異常に気づくのは簡単ではありません。
だからこそ、建物の他の部分に現れるサインを見逃さないことが大切です。
建築基準法第八条第一項 建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。
基礎の異常は建物の他の部分に現れるサインから気づくことが多いです。
建築基準法第8条第1項は、所有者や管理者に建物を常時適法な状態に維持する努力義務を課しています。
外壁のひび割れが斜めに走っていたり、ドアや窓の建付けが急に悪くなったりするのは、基礎の不同沈下のサインであることがあります。
床にわずかな傾きを感じる場合も、ビー玉を転がしてみるなど簡易な方法で気づけることがあります。
これらのサインを放置すると、建物全体の構造安全性に関わる問題に発展するおそれがあります。

ドアの建付けが悪くなったのは、基礎のせいかもしれないんですね。

そうですね。
気になるサインがあれば、早めに専門家に相談することをおすすめします。

基礎の異常が疑われるときは何を確認すればよいか

クリップボードとひび割れを測る計測器具
最後に、実際の建物でなにを確認すればよいかをまとめます。
特別な資格がなくても、まず目視でできることがあります。
建築基準法第十二条第一項(抜粋) (略)特定行政庁が指定するもの(略)の所有者(略)は、これらの建築物の敷地、構造及び建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は建築物調査員資格者証の交付を受けている者にその状況の調査(これらの建築物の敷地及び構造についての損傷、腐食その他の劣化の状況の点検を含む。)をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。
気になるサインがあれば、まず外壁や床の状態を目視で確認します。
外壁のひび割れの向きや幅、建具の開閉具合、床の傾きなどを一通りチェックします。
基礎そのものを掘り起こして確認するような調査は、専門業者に依頼するのが安全です。
定期報告(法第12条点検)の対象になっている建物では、建築基準法第12条第1項に基づく調査の機会に合わせて確認するのも実務的な方法です。
気になる箇所が見つかったら、建築時の構造計算書や地盤調査報告書と照らし合わせ、必要であれば特定行政庁や専門家に相談しましょう。

定期報告のタイミングに合わせて確認すればいいんですね。

はい。
気になる箇所があれば、無理せず専門業者に相談してください。

よくある質問

Q古い建物の基礎にも第38条の基準は適用されますか?
A建築確認を受けた当時の基準に適合していれば直ちに違反にはなりませんが、建築基準法第8条により所有者や管理者には常時適法な状態を保つ努力義務があるため、不同沈下などの異常があれば改善が必要です。
Q直接基礎と杭基礎はどう違うのですか?
A直接基礎は建物の荷重を基礎の底面から直接地盤に伝える工法で、杭基礎は地中深くの良好な地盤まで杭を打ち込んで荷重を伝える工法です。施行令第38条第2項により、この2つを同じ建物で併用することはできません。
Q基礎ぐいの先端はどこまで届かせる必要がありますか?
A高さ13メートル又は延べ面積3,000平方メートルを超え、床面積1平方メートルあたり100キロニュートンを超える荷重がかかる建物では、施行令第38条第3項により基礎ぐいの先端を良好な地盤に到達させなければなりません。
Q基礎の異常は自分たちだけで確認してもよいですか?
A外壁のひび割れや建具の建付けなど地上からの目視確認は所有者や管理者でも可能ですが、基礎そのものの調査や補修は専門業者に依頼するのが安全です。

まとめ

✔建築基準法施行令第38条第1項により、建物の基礎は荷重や外力を安全に地盤へ伝える構造にしなければなりません。
✔異なる構造方法による基礎の併用は禁止されています。
✔高さ13メートル又は延べ面積3,000平方メートルを超える建物は、基礎ぐいの先端を良好な地盤に到達させる必要があります。
✔木ぐいを使う場合は常水面下にあるようにしなければなりません。
✔建築基準法第8条は所有者・管理者に常時適法な状態を保つ維持保全の努力義務を課しています。
✔外壁のひび割れや建具の建付け不良は不同沈下のサインであることがあります。
✔定期報告の対象建物では第12条第1項の調査の機会に合わせて基礎の状態も確認しましょう。

うちの基礎も、まずは外壁やドアの様子から確認してみます!

基礎の点検や補修でお困りでしたら、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第38条第1項・第2項・第3項・第5項・第6項
  • 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第8条第1項・第12条第1項

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または専門家にご確認ください。

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